【用語解説】

注1)一般相対性理論

互いに加速運動(次項参照)する観測系の物理現象を統一的に記述する理論。アインシュタインは、重力の影響が加速運動の効果と等価であることに気づき、1905年に自身が発見した特殊相対性理論を、重力を含む理論へと拡張しました。一般相対性理論によって、従来のニュートン力学では謎とされていた水星の近日点移動が解明され、新たに重力レンズ効果、重力波、ブラックホールといった天体現象が予言されました。現在では、GPSによる位置計測のためも利用されています。物体の回転運動は、加速運動の一種なので、回転運動を精密に扱うためには一般相対性理論が必要になります。

注2)加速運動

速さや方向の変化を伴う運動。車の加速・減速のような直線的な速さの変化だけでなく、カーブを曲がるときのような方向の変化を伴う運動も加速運動に含まれます。物体の回転も加速運動の一種です。

注3)アインシュタイン・ドハース効果

磁場をかけて磁気を帯びさせた物体が回転運動をする現象。物体の磁性と回転運動の密接な関係を量子力学成立以前の1915年に発見しました。

注4)量子力学

1926年に成立した、ミクロの世界を記述するための基礎理論。エレクトロニクスやナノテクノロジーは、すべて量子力学を基盤として発展してきました。

注5)スピン

電子が持つ自転のような性質であり、磁気の起源であることが知られています。スピンには上向きと下向きという2つの状態があります。

注6)角運動量

回転する強さを表す量。回転運動する物体は角運動量を持ち、物体の間で角運動量を受け渡すことが可能です。電子のスピンも角運動量を持ち、電子スピンの角運動量と磁石の持つ角運動量とを互いにやりとりすることによって、磁気記憶媒体の情報を読み書きすることも可能になります。

注7)スピンホール効果

電子の持つ電気の流れ(電流)が磁気の流れ(スピン流)に変換される現象。電子のスピンが物質中を流れると、流れを横向きに曲げる力が働く現象が以前から知られている。このとき、上向き状態のスピンと下向き状態のスピンでは逆向きの力を受ける。スピン流では上向き状態のスピンと下向き状態のスピンが逆向きに流れているため、両者とも同じ方向に曲げられる結果となり、スピン流の流れと垂直な方向に電流が発生します。

【論文名・著者名】

“Effects of mechanical rotation on spin currents”(スピン流に対する力学的回転の効果)
Mamoru Matsuo, Jun’ichi Ieda, Eiji Saitoh, and Sadamichi Maekawa


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