平成22年5月17日
国立大学法人茨城大学
独立行政法人日本原子力研究開発機構

重水素を燃料とする高効率燃料電池を開発
−高効率発電システムを目指して−

茨城大学(学長:池田幸雄)工学部(茨城県日立市中成沢町4-12-1)と日本原子力研究開発機構(理事長:岡ア俊雄)量子ビーム応用研究部門(茨城県那珂郡東海村白方白根2-4)は共同で、重水素を燃料とする高効率的な燃料電池を開発しました。

重水素燃料電池は、重水素1)を燃料とする燃料電池2)です。燃料電池は約170年前に発明された発電装置の一種で、宇宙・海洋などの分野でまず利用されました。その後様々な燃料電池が研究されてきましたが、水素を燃料とするものが最も性能が高く、これを凌駕する燃料電池はありませんでした。現在、家庭用や自動車搭載用燃料電池の実用化に向けた開発競争が繰り広げられていますが、これらも水素を燃料とするものです。今回、茨城大学と日本原子力研究開発機構は共同で、重水素を燃料とする固体高分子形燃料電池システムを開発し、その発電試験を行った結果、水素を燃料とした場合と比較して約4%起電力3)が増大することが実証されました。

重水素は酸素と反応して重水となります。重水は自然水の中に0.015%の割合で含まれ、地球上に広く存在しています。重水や重水素は、放射性物質ではないので、それらの取り扱いに大きな困難はありません。また、発電により生成した重水は回収し、別途電気分解にて再び重水素へ変換して繰り返し利用します。

今回開発した重水素燃料電池の応用先として、限られたスペースに高効率で燃料を搭載する必要のある潜水艦への搭載などが考えられます。日本では、海洋研究開発機構が、深海巡航探査機「うらしま」4)の動力源として燃料電池を実用化し、世界最長の深海連続航続距離を記録しています。同機構は、燃料電池システムの更なる高性能化に取り組んでおり、海中用動力源としての重水素燃料電池の適用可能性の検討を始める予定です。

本件の重水素燃料電池に関する技術的詳細は、5月19-20日に東京・船堀で開催される燃料電池開発情報センター(FCDIC)主催の第17回燃料電池シンポジウムで発表する予定です。

以上

参考部門・拠点:量子ビーム応用研究部門

戻る