平成22年5月12日
独立行政法人 日本原子力研究開発機構
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台

太陽系に存在する最も希少な同位体タンタル180が超新星爆発のニュートリノで生成されたことを解明

日本原子力研究開発機構(理事長・岡ア俊雄)量子ビーム応用研究部門の早川岳人研究主幹、先端基礎研究センターの千葉敏研究主幹、国立天文台(台長・観山正見)理論研究部の梶野敏貴准教授らの共同研究グループは、これまで宇宙における起源が不明であったTa-180(タンタル180)1)が、超新星爆発2)において発生する膨大な量のニュートリノ3)による核反応で生成したことを理論的に明らかにしました。

太陽系には約290種類の同位体が存在しており、それぞれの起源(宇宙の何処で、どのような核反応で生成されたか)の解明が進んできました。しかし、太陽系で最も希少な同位体であるTa-180の起源は残された大きな謎でした。これまで超新星爆発のニュートリノで生成した仮説が有力視されていましたが、太陽系に存在すべきTa-180の推定量が実在量より多すぎるという問題がありました。これは、Ta-180には安定な核異性体4)と短時間で消滅する基底状態5)が存在しますが、推定量には核異性体だけでなく基底状態の量も含んでいるためでした。

これまで超新星爆発において刻々と変化する温度に対する核異性体の割合を計算出来なかったのですが、核異性体と基底状態を異なる同位体と見なす新しいモデルによって計算を可能にしました。この計算結果を用いることで、超新星爆発ニュートリノによるTa-180の推定量が実在量と一致しました。すなわち、初めて太陽系に存在するTa-180を定量的に説明できました。同時に超新星爆発における電子型ニュートリノの平均エネルギーは12MeVでなければならないことも判明しました。

この結果は、スーパーカミオカンデ6)で期待される超新星ニュートリノ観測の予想、ニュートリノ振動の理解にも貢献します。なお、本成果はPhysical Review CのRapid Communicationとして出版される予定です。

以上

参考部門・拠点:量子ビーム応用研究部門

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