用語説明

(1) 超ウラン元素(TRU)
ウランの原子番号である92よりも原子番号の大きい元素。プルトニウムやアメリシウム、ネプツニウム、キュリュウムなどがあります。TRUはtransuraniumの略。
(2) 超伝導相転移端温度計(TES)型マイクロカロリーメーター
超伝導を利用してX線などの微少な熱量を測定する熱量計。特に微少な熱量を測定する熱量計をマイクロカロリーメーターといいます。
TESはSuperconducting Phase Transition Edge Sensorの略。
(3) プルトニウム(Pu)
原子番号94の元素。元素記号はPu。核燃料物質として高速増殖炉やプルサーマル発電炉に用いられます。核燃料物質中にはPu同位体として238Pu, 239Pu, 240Pu, 241Pu及び242Puが主に存在します。
(4) アメリシウム-241(241Am)
アメリシウムは原子番号95の元素。元素記号は Am。241Puのβ崩壊から生成されるため、核燃料物質中ではPuとほぼ同時に存在します。
(5) エルエックス線(LX線)
X線は軌道電子の遷移を起源とする電磁波。プルトニウムはα崩壊によってウランに変わりますが、LX線はその崩壊に伴いウランのL殻の軌道に電子が遷移して発生するX線です。

エルエックス線(LX線)

(6) スペクトル
ここでは、γ線やX線の放射線のエネルギーごとの強度の分布をいいます。
(7) 核燃料物質
ウランやプルトニウムなどの原子力発電所の燃料となる物質。
(8) アルファ(α)線
放射性物質のα崩壊によって放出される放射線。α線は高い運動エネルギーを持つヘリウム4原子核です。物質を透過する力が弱く、紙などでも遮へいされます。
(9) 質量分析法
物質の質量の違いから物質の分析する方法。測定対象の物質をイオン化し、高電圧をかけた真空中で飛行させて、磁場等で質量毎に分離して測定します。測定対象物質をイオン化するための処理が必要です。
(10) エネルギー分解能
放射線検出器でX線などの放射線のエネルギーを測定するときに、X線のエネルギーを細かく識別できる能力。エネルギー分解能が良いほどスペクトル中のピークの幅が狭く鋭いピークになります。鋭いピークであればあるほど、他のピークとの識別が容易になります。

エネルギー分解能

(11) 超伝導
特定の金属や化合物などの物質を超低温に冷却したときに、電気抵抗が急激にゼロになる現象。
(12) 半値幅
山形のピークの広がりの程度を表す指標。ピーク値の半分の高さでの幅で表されます。放射線測定ではエネルギー分解能を表すのに使われます。
(13) LX線の放出率
α崩壊に伴いLX線が放出される割合。Puの同位体ごとに放出率が異なります。
(14) 先行基礎工学研究
原子力機構の公募型の共同研究制度。原子力機構が取り組む研究開発プロジェクトに先行する基礎工学研究において、原子力機構が研究協力テーマを設定し、研究目的を達成する上で必要な研究協力課題を募集しています。
(15) 透過力
放射線の物質中を通り抜ける能力。X線は物質を透過しやすく、人体内部の撮影などに利用されていますが、α線は透過し難く、紙などでも遮へいされます。
(16) 半導体検出器
半導体の性質を利用した放射線測定器。従来の放射線測定器のなかでは最もエネルギー分解能が高く、γ線やX線の分析測定に用いられています。
(17) 肺モニタ
人体の肺中のプルトニウム量を測定する装置。人体の外側から測定するためにPuから放出されるLX線を測定しています。主に身体汚染トラブルなどの緊急時に使用されます。
(18) X線望遠鏡
宇宙からのX線を観測する望遠鏡。現在、天文学では様々な波長での観測が行われ、電波望遠鏡、赤外線望遠鏡、可視光望遠鏡、紫外線望遠鏡、X線望遠鏡などが用いられています。
(19) mK(ミリケルビン)
温度を表す単位。国際単位系の基本単位の一つです。ケルビンはすべての分子の運動が停止する絶対零度を0ケルビン(K)とした温度で、0ケルビンは-273.15℃。 1ミリケルビンは1ケルビンの1/1000です。
(20) keV(キロエレクトンボルト)
エネルギーを表す単位。電子1つが1ボルトの電位差で受けるエネルギー。1キロエレクトンボルトは1エレクトンボルトの1000倍です。
(21) Puのγ線測定に係る研究
米国の国立標準研究所(NIST)などで核物質の探知を目的とした研究が行われています。(Scientific American 2006年11月号 参照)
Puから放出されるγ線やK殻のX線はエネルギーが高く、LX線よりも透過力は強いのですが、放出割合はLX線の1/100以下と低いために少ない量の分析にはLX線測定が有利です。一方、LX線はエネルギーが低いために物質内での減衰があり、厚い物質を通しての測定ではγ線などの測定が有利です。

239Puから放出されるX線及びγ線の割合

(22) 237Np、244Cm
237Np、244Cmは超ウラン元素の核種。使用済燃料再処理後の放射性廃棄物となるので、MOX燃料に混ぜ合わせて燃焼させることが研究されています。

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