平成22年4月5日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

光の圧力で、粒子にエネルギーを限りなく与えられることを理論的に提唱
−超小型粒子線がん治療装置開発に大きく前進−

独立行政法人 日本原子力研究開発機構【理事長 岡ア俊雄、以下「原子力機構」】光医療研究連携センターのブラノフセルゲイ客員研究員らは、モスクワ物理工科大学、ピサ大学、マックスプランク研究所の協力のもと、これまで提唱してきました“レーザーピストン加速法”において、これまで得られた値より、はるかに高いエネルギーを持つ粒子が発生できる理論を新たに提唱しました。

光医療研究連携センターでは、がん患者の体への負担が少ない画期的な治療法とされる粒子線治療装置をコンパクトにするために、レーザーによる粒子加速の研究を行っています。治療装置の実現のためには、理論計算に基づいて技術開発を行う必要がありますが、本理論は、従来の理論計算の中に、加速中の粒子からなる薄膜状のプラズマの面密度1)が時間とともに減少するという条件を加えることで、これまでよりもはるかに効率のよい加速が可能になり、ある条件下では加速できるエネルギーの限界がなくなることを発見したものです。

今後、この理論が示す結果に基づいて、プラズマの面密度制御技術を確立できれば、粒子線がん治療に必要な200MeV の陽子は、強度200TW(200兆ワット)のレーザー光を厚さ数ナノメートルの薄膜ターゲットに照射することで達成されると予想され、これまでの理論で示されていたレーザーより5分の1のサイズでレーザー治療器が実現できることになります。

本研究は、文部科学省科学技術振興調整費先端融合領域イノベーション創出拠点の形成「光医療産業バレー拠点創出」及び文部科学省科学研究費補助金20244065『「光速飛翔鏡」による新しいX線発生機構の研究』の一環として実施しました。

本研究成果は、2010年4月2日(現地時間)に米国物理学会レター誌Physical Review Letters (Bulanov et al.)の電子版に掲載されました。

以上


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