平成22年1月14日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

JMTRの照射利用高度化への技術開発に成功
−世界の照射試験炉に先駆け、中性子照射環境制御手法を開発−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄:以下「原子力機構」という)は、ベリリウム金属微小球を充填した照射キャプセルホルダーを用いた、「世界初の中性子照射環境制御手法の開発」に成功しました。これにより、世界の照射試験炉に先駆けて、利用者が求める中性子照射条件に対して、より満足が与えられる中性子場の提供に目処が得られました。

材料試験炉(JMTR)を含めて世界中の汎用照射試験炉では、中性子照射試験は、一般的に箱型の無垢材(ベリリウム金属またはアルミニウム金属)から内部をくり抜いて製作したホルダーに、照射試料を入れた円筒形の容器(以下、照射キャプセル)を挿入して行われます。これまでは、照射試料に対する中性子照射条件制御は、1つの照射孔において「照射キャプセルホルダーの無垢材質を選択すること」と「照射キャプセル内に中性子調整材料を装荷すること」で行われてきました。しかしながら、今回開発した中性子照射環境制御手法は、照射キャプセルを保持するための箱型のアルミニウム製ホルダーに0.2〜2mm程度のベリリウム金属微小球等を詰め、その詰め具合を調整して中性子散乱断面積を制御することにより、照射試料への中性子のあて方を無段階に制御することを可能にするものです。この手法を用いることにより、利用者が求める中性子照射条件(熱中性子束密度や中性子スペクトル)、すなわち軽水炉燃料の線出力密度、医療診断用99Mo等の短半減期ラジオアイソトープの製造量やシリコン半導体への31P添加量、核融合炉材料への中性子照射効果(He生成量/dpa比)など、民間利用等の幅広い利用者のニーズに対して、より満足のいく照射利用がタイムリーに提供可能となります。

今後、「軽水炉の長期利用に係る安全研究や次世代炉開発」、「医療診断用ラジオアイソトープ、シリコン半導体などの産業利用の拡大」や「核融合炉材料開発などの科学技術の向上」などへの大きな貢献が期待されます。

以上

参考部門・拠点:大洗研究開発センター

戻る