用語説明

1)軟X線
約0.1 - 2keVのエネルギーが低くて透過性の弱いX線。
2)DNA損傷
DNAに起こる不可逆的な分子構造の変化で、大きく分けて、核酸塩基の変化、鎖の切断、架橋があげられる。
3)イオン化
電荷的に中性な物質が、正または負の電荷をもつ原子あるいは原子団に変化する物理現象をイオン化、または電離と呼ぶ。イオン化に伴い分子外に電子が放出され、その結果、分子内に正孔(電子の不足によってできた孔で、見かけ上、正の電荷を持っているように見える)が生じる。
4)鎖切断
DNA二重らせんの一本の鎖の糖−リン酸主鎖骨格部位の切断。糖部位の分解などの損傷によって生じる。
5)核酸塩基
DNA中で遺伝情報を担う部分で、プリン塩基(アデニンとグアニン)とピリミジン塩基(チミンとシトシン)が含まれる。DNA二重らせんでは、アデニンはチミンと、グアニンはシトシンと水素結合による塩基対を形成する。

6)プラスミドDNA
環状の二本鎖DNAで、細胞の染色体DNAとは別の分子である。大きさは、小さいもので数千塩基対、大きなものは数十万塩基対もある。元々のプラスミドDNAは捩れを伴った閉環構造を持つが、分子中に鎖の切断が1箇所存在すると、そのねじれが解け、開環構造に変化する。
7)イオン化に必要なエネルギー
電子の内殻(K殻)への光子(X線)吸収が起こり、電離(イオン化)が起こるために必要なエネルギーは、炭素・280eV、窒素・400eV、酸素・535eV、リン・2150eVである。
8)ゲル電気泳動法
DNAなどの電荷を持った物質が、その溶液に電場を加えたとき、一方の極に向かって移動する現象を利用して、ゲル内での移動距離の違いからDNAの形態や分子量を分離する実験手法。
9)修復タンパク質
DNA損傷を除去する塩基除去修復では、DNA上の損傷を見つけて異常塩基のデオキシリボースとのN-グリコシド結合を加水分解するDNAグリコシラーゼと、その脱塩基部位を認識して、3’側あるいは5’側のホスホジエステル結合を切断するAPエンドヌクレアーゼという二種類のタンパクが存在することが知られている。塩基除去修復タンパク質の代表的なものとして、チミンやシトシンなどピリミジン塩基に生じた変異を認識・除去するエンドヌクレアーゼ III (Nth)とグアニンやアデニンなどプリン塩基に生じた変異を認識・除去するホルムアミドピリミジンDNAグリコシレース(Fpg)が知られている。

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