平成21年8月27日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
丸和電機株式会社

超重力場を用いた同位体分離法の実現のカギとなるロータを世界で初めて開発

独立行政法人日本原子力研究開発機構【理事長 岡ア俊雄】(以下、「原子力機構」)の先端基礎研究センター極限環境場物質探索グループの小野正雄研究員らと丸和電機株式会社(以下、「丸和電機」)技術部回転機械課の末吉正典らは、超重力場(地上の重力の数十万倍の遠心加速度場)(1)を用いて「固体」や「液体」状態にある物質中の同位体(2)を分離する方法の実現のカギとなる超遠心機(3)ロータを世界で初めて開発しました。

近年、原子力機構は、熊本大学衝撃・極限環境研究センターの真下茂教授らとの共同研究において、超重力場での「固体」および「液体」中の同位体の沈降現象(4)を確認しました。以後、原子力機構は熊本大学と共同で同位体の沈降機構の解明を目指した研究を行う傍ら、丸和電機と技術開発チームを形成し、本ロータの開発に取り組みました。その結果、最大重力場(遠心加速度場)40万G(1G=9.80665m/s2)、最高ロータ温度400℃までの条件で、高速回転中に外部から試料を供給し続けながら、内部の2つの沈降槽に重い同位体と軽い同位体を分配できる外径80mmのチタン合金製ロータの開発成功に至りました。

当該方法は、将来的には、病気診断や治療に用いられる放射性医薬品の製造に必要な同位体分離工程に利用できると考えています。具体的には、海外輸入に依存しており医療現場への安定供給が望まれる「モリブデン-99(がん、心筋梗塞、脳卒中などの画像診断に欠かせない放射性同位体テクネチウム-99mの親核種)」を、原子炉を利用して効率よく製造する方法への適用の可能性を検討中です。

本研究は、主に原子力機構黎明研究採択課題(5)として実施された内容です。また、本研究成果は、後日、学術誌「Review of Scientific Instruments」に掲載予定です。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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