用語解説

1)ITER(国際核融合実験炉)計画
「イーター」と読み、日本、欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インドの7極の協力により、フランスのカダラッシュに熱核融合実験炉を建設し、核融合エネルギーの科学的・工学的実現可能性を実証する国際研究開発プロジェクトです。
2)ダイバータ
プラズマに直接面する壁のうち、プラズマから発生する不純物をガス化して排気ポンプへと導き、プラズマの純度を維持する役割をもった機器です。ダイバータはプラズマを閉じ込めるための磁力線が入射する位置に設置されるため、プラズマから大きな負荷(たとえば熱負荷等)を受けます。ダイバータに入射した粒子(イオン)は、その表面でガスになり、不純物ガスとして排気されます。また、入射した粒子によってダイバータの表面が損耗して不純物を生じることがあるため、その表面保護タイルにはプラズマへの影響が少ない低原子番号材料である炭素系材料、もしくは表面損耗自体が少ないタングステン等が使用されます。
3)最大20MW/m2の高熱負荷
ITERの通常運転時に想定されるダイバータへの入射熱負荷は最大20MW/m2であり、既存の原子炉の炉心における熱負荷の10倍以上に相当します。身近なところでは、この熱負荷は家庭用ホットプレート(直径40cm、消費電力1.3kW)の約2000倍に相当するものであり、2リットル入りのやかん(底面の直径15cm)の水をわずか2秒で沸騰させることができます。
4)炭素繊維複合材
炭素繊維の中に炭素基材を含浸させた耐熱材料のことで、高熱伝導性のものでは常温で純銅の1.5倍から2倍の熱伝導率をもつ材料が開発されています。原子炉等で使用される等方性黒鉛に比べ、熱伝導率と機械的強度が高いことが特徴です。用途は異なるものの、スペースシャトルの外壁の一部に同様の材料が使用されています。正確には炭素繊維強化炭素複合材(Carbon Fiber Reinforced Carbon Composite:CFC)と呼ばれています。
5)ロウ付け
同種あるいは異種の材料同士を接合する方法の1つで、ロウ材と呼ばれる双方の材料に対して濡れ性をもつ接合材料を溶融させて接合を行うものです。ロウ材の成分として銀を含む「銀ロウ」を用いた銀ロウ付けがよく知られています。ITERでは炉心プラズマから生じる中性子によって、銀がカドミウムへと変化して真空容器を汚染するため、銀を含まないロウ材を使用しています。
6)ITER工学設計活動(ITER工学R&D)
ITER設計活動においてITERの工学的技術を確証するための研究開発を指しています。七大工学R&D(ITER中心ソレノイドモデルコイル開発、ITERトロイダル磁場コイル開発、大型真空容器開発、ブランケット開発、ダイバータ開発、ブランケット遠隔保守技術開発、ダイバータ遠隔保守技術開発)を2001年に完遂しました。
7)ITER機構
ITERを建設、運転する国際機関。2007年10月24日に発効したITER協定に基づく独自の法人格を有する国際機関です。

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