2008年11月10日
日産自動車株式会社
独立行政法人日本原子力研究開発機構

日産自動車と原子力機構、
世界で初めてエンジン内部の潤滑オイル挙動の高速度可視化技術共同開発を開始
−CO2排出量削減に向け、低燃費エンジン開発を加速−

日産自動車株式会社(本社:東京都中央区銀座 社長:カルロス ゴーン 以下、日産)と独立行政法人日本原子力研究開発機構(本部:茨城県東海村 理事長:岡ア俊雄 以下、原子力機構)は10日、クルマの低燃費化によるCO2排出量の削減に向けて、エンジンや駆動系部品内部の潤滑オイルの挙動を可視化する技術の共同開発を開始したと発表した。

原子力機器用中性子可視化装置(イメージ図)

自動車のエンジンにとって、潤滑オイルの挙動*1によるフリクション(摩擦)ロスを低減することは、CO2排出量削減のための重要な課題である。これまでは高速回転するエンジン内部の潤滑オイルの複雑な動きを可視化計測、あるいはシミュレーションする技術がなかったため、フリクションロスの要因を明確にすることができなかった。今回の共同開発に先駆けて、両者はエンジン内部の潤滑オイル挙動の高速撮像に関する技術的検討を行った。その結果、「高速度撮影中性子ラジオグラフィ」という、軽金属製容器内部の水やオイルの流動を中性子で透過しスローモーションで観察・計測する高速度可視化計測・解析技術*2を応用することにより、エンジン内部の潤滑オイルの挙動も可視化できることを確認した。

エンジン内部の潤滑オイル挙動の高速度撮影(例)

今回の共同開発では、世界で初めて高速で運転するエンジン内部の潤滑オイル挙動解析を実現するための撮像システムと解析手法の開発を進めていく。原子力機構は原子力分野での中性子計測のノウハウを生かし、エンジンに適した撮像システムの検討と流体挙動解析手法の開発を、日産はエンジン撮像システムの製作と実際のエンジンを用いた可視化実験を行い、エンジン開発・設計への技術適用を、共に原子力機構東海研究開発センター原子力科学研究所の研究用原子炉JRR-3*3を活用し、進めていく。両者の連携により、更に最適なオイル循環設計を可能とし、低フリクション設計の最適化による低燃費化を加速させ、CO2排出量の削減を目指す方針である。

*1: クランクシャフトがオイル飛沫を叩く現象、エンジン各機構部へのオイル潤滑状況、ファイナルドライブギアへの供給状況など
*2: 高速度で変化する物を高速度ビデオカメラなどを用いてスローモーションで観察したり、その動画像から速度などを計測したり解析したりする技術。その一例である「高速度撮像中性子ラジオグラフィ」は、高速度ビデオカメラと画像強度増幅器を組み合わせて、高速度で変化する現象をはっきりと撮影するための可視化技術。
*3: 原子力機構東海研究開発センター原子力科学研究所にある中性子ビーム実験や照射研究等広い分野で利用されている世界有数の高性能汎用研究炉。 (参考URL http://www.jaea.go.jp/04/ntokai/index.html

以上

参考部門・拠点:原子力基礎工学研究部門

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