用語説明

1)がん遺伝子Bcl-2
ヒト濾胞性B細胞リンパ腫(B-cell lymphoma:Bcl)から見つけられたがん遺伝子(がんの発生を促す遺伝子)で、多くのがんでは正常細胞にくらべて発現量が増えている。
2)イオンビーム
原子から電子を剥ぎ取った原子核(イオン)を加速器によって光速の数十分の一から数分の一程度にまで高速に加速したもの。
3)アポトーシス(細胞の自殺)
異常な状態にさらされたとき、あるいは、おたまじゃくしの尾が消失する際のように発生(体の形作り)の過程で、細胞が自ら死ぬことをアポトーシス(apoptosis)といい、枯死と訳されることもある。
4)イオン照射研究施設(TIARA)
バイオ技術や材料科学などの先端的科学技術研究専用として、原子力機構高崎量子応用研究所内に設置された世界で最初のイオン加速器施設。AVF型サイクロトロンと3台の静電加速器で構成され、世界に先駆けたイオンビーム育種技術や大気中の生体試料に対する重イオンマイクロビーム照射技術などを用いた様々な研究が行われている。
5)発現
遺伝子発現ともいい、遺伝子からタンパク質が産生される過程をいう。通常は、遺伝子の情報に基づいてメッセンジャーRNAがつくられ、その情報が翻訳されてタンパク質になる。
6)LET(線エネルギー付与、Linear Energy Transfer)
電離性放射線が物質中を通過する際、飛程の単位長さ当りに平均して失うエネルギー。各種の放射線のうち、X線やガンマ線、陽子線(水素イオンビーム)はLETが小さく(1 keV/μm以下)、ヘリウムよりも重い炭素やネオンなどの重イオンビーム(重粒子線)はLETが大きい(数十〜数千keV/μm以上)。
7)がん抑制遺伝子p53
ゲノムの守護神とも呼ばれるがん抑制遺伝子(がんの発生を防ぐ遺伝子)で、翻訳されたタンパク質の大きさが53 kDaであることから、p53と名付けられた。
8)細胞分裂停止
細胞は、DNA複製と細胞分裂をくり返して増殖する。がん抑制遺伝子p53が正常に機能している場合は、放射線で生じたDNA損傷等を検知すると細胞分裂を停止してDNAの修復を試みる。完全に修復すれば細胞分裂を再開し、そうでなければアポトーシス(細胞の自殺)を起こす。がん抑制遺伝子p53が正常に機能しなくなると、DNA損傷等の異常を無視して細胞分裂と増殖が暴走する。
9)酸素効果
酸素が少ない条件では、酸素が豊富にある場合と比較して、放射線によって細胞が死ににくくなる。酸素効果は、放射線による腫瘍細胞の死に易さ/死に難さを決める重要な因子である。
10)HeLa細胞
ヒト子宮頸がんから樹立された培養細胞株で、医学・生物学研究に広く利用されている。
11)生物学的効果比(RBE、Relative Biological Effectiveness)
放射線の種類による効果を比較するために、利用される指標。ある反応を起こすのに必要な基準となる放射線(X線やガンマ線など)の量を、同じ反応を起こすのに必要な比較したい放射線(重粒子線など)の量で割ることにより算出される。

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