平成20年5月23日
J-PARCセンター

J-PARC 50GeVシンクロトロンへのビーム入射及び周回に成功

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄)及び大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長 鈴木厚人)の共同運営組織であるJ-PARCセンター(センター長 永宮正治)は、両機構が平成13年から茨城県東海村で建設を進めてきた大強度陽子加速器施設J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)において、最終段加速器である50GeVシンクロトロンへの陽子ビーム入射及び周回に、平成20年5月22日に成功しました。

また同センターでは、引き続き、物質・生命科学実験施設において、核破砕反応による中性子発生のための試験を予定しており、J-PARCの平成20年度後半からの本格的な利用開始に向けた準備を進めています。

●概要

J-PARCの50GeVシンクロトロンは、第2段目の加速器である3GeVシンクロトロンから入射された3GeV(30億電子ボルト、光速の約97%のスピード)の陽子ビームを、50GeV (500億電子ボルト、光速の約99.98%のスピード)まで加速することを目指している陽子シンクロトロンであり、1周約1,600m、直径約500mの我が国最大の陽子加速器です。3GeVシンクロトロンと同様に、新磁性材料を活用して開発された従来比約2倍の加速電界を持つ高周波加速システムなど、随所に世界最先端の機器を使用した装置です。

加速試験に関しては、平成18年11月より初段加速器であるリニアックで開始しましたが、平成19年1月にリニアックの所期エネルギー(181MeV)、同年10月に3GeVシンクロトロンの所期エネルギー(3GeV)を達成しました。今回は、この3GeVの入射エネルギーで陽子ビームが50GeVシンクロトロンの所定の軌道を周回していることを確認したのですが、これは1台数十トンもの電磁石がおよそ400台、1周約1,600mに亘り0.2mm以下の精度で正確に据付けられていることや、技術的な開発要素が多くあった入射システムが所定の機能を満たしていることなどが確認できたものです。今後はさらにビーム軌道の調整を続け、最初の目標である30GeV(300億電子ボルト)まで陽子ビームを加速します。平成20年度後半から21年度にかけて、原子核・素粒子実験施設やニュートリノ実験施設へ陽子ビームを取り出し、K中間子、ニュートリノなどを用いた種々の最先端科学分野での研究を順次開始する予定です。

J-PARCは、21世紀の科学や技術の研究・発展に大きく貢献する、我が国が世界に誇る最先端の多目的研究施設であり、中性子を利用した研究施設としては、米国オークリッジ国立研究所のSNS(Spallation Neutron Source) などと並ぶ世界最高性能の研究施設となります。またK中間子施設としては世界のセンターとなり、さらにニュートリノ研究施設としても世界最先端の性能を持つものです。大強度陽子ビームから発生する中性子・ミュオンやK中間子、ニュートリノなどの様々な二次粒子を利用して、原子や原子核、素粒子の極微の世界を探求する研究は、物理学、化学、生物学などの基礎科学の発展に貢献するとともに、ライフサイエンス、工学、情報・電子、医療など、広範な研究分野への利用が期待されています。

以上


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