用語説明
 
1)トリチウム
 原子核が陽子1個と中性子2個からなる水素の放射性同位体。和名は三重水素。半減期12.3年で最大18.6keV、平均5.7keVのβ線を放出し、3Heに壊変。自然界では宇宙線と大気構成元素の核反応によって生成し、その評価量は年間160〜200g程度。


2)トリチウムプロセス研究施設
 核融合炉開発に向けたトリチウム工学技術の研究開発施設で、国内唯一(核融合研究では現在世界最大規模)のグラムレベル大量トリチウム取扱施設(トリチウム貯蔵許可量は22.2PBq=約63g)です。これまで、核融合炉燃料システムの主要プロセス(燃料精製・捕集・同位体分離・貯蔵)の基本特性を把握し、ITER等の次期核融合装置の設計に反映するとともに、20年以上にわたるトリチウム安全取扱・施設運転管理の実績を蓄積してきました。最近では、ブランケット増殖トリチウム回収システム開発を重点とし、トリチウム汚染防止・除染等に関する研究にも幅広く利用されています。


3)中性子
 英語ではニュートロン(nとも書く)といい、素粒子の一つで、陽子とともに原子核を構成します。電荷は0、質量は1.6749×10-27kgです。単独では不安定で、半減期12.5分でβ-崩壊して陽子に変わります。電気的に中性で原子核内に容易に入ることができるので、核反応を起こすのに使われます。単位面積を毎秒通過する中性子の数は、中性子束(Neutron Flux)と呼ばれます。単位は中性子数/(cm2・秒)です。


4)放射化
 中性子との相互作用により、材料(特に真空容器内部の機器・構造材料等)中に放射性物質ができることを放射化と呼びます。できた放射性物質の種類(半減期、放射線種、エネルギーなど)と濃度を総合して、放射化のレベルを判断します。例えば、放射性廃棄物の処理処分については、放射化レベル(放射性物質の濃度レベル)に応じ、高βγ廃棄物・低レベル廃棄物・極低レベル廃棄物及びクリアランスレベルなどに分類し、レベル毎に適切に処分します。


5)トリチウム増殖ブランケット
 重水素とトリチウムの反応を用いた核融合炉では、重水素とトリチウムが燃料です。しかし、トリチウムは天然に存在しないため、人工的に作り出す必要があります。そこで、核融合反応が発生しているプラズマを包むような構造体にリチウム化合物を入れて設置し、核融合反応によって発生する中性子を利用してリチウム原子を核反応によりトリチウムに転換することが考えられています。そのためのリチウム化合物及びそれを収納する構造体をトリチウム増殖ブランケットと呼びます。


6)臨界プラズマ試験装置(JT-60)
 欧州のJET装置と並んで世界最大のトカマク型核融合実験装置。核融合炉の炉心プラズマの実現を目指して、超高温プラズマの発生やそれを定常的に維持する研究開発が進められています。今後、幅広いアプローチ活動の中でサテライトトカマク装置に改造され、先進的な核融合研究が行われます。


7)国際熱核融合実験炉(ITER)計画
 制御された核燃焼プラズマの維持と長時間燃焼によって核融合の科学的・技術的実現性を実証することを目指したトカマク型の核融合実験炉計画。1992年から日本・米国・欧州・ロシアの国際協力として推進され、9年間の工学設計及び、主要機器の技術開発を行った。2005年にフランスのカダラッシュに建設することが決まり、2007年に国際事業体「ITER国際核融合エネルギー機構」が発足しITER建設が開始され、10年後の運転開始を目指しています。


8)幅広いアプローチ活動(BA)
 核融合エネルギーの早期実現を目指し、国際熱核融合実験炉(ITER)計画の支援やITERの次のステップである発電用核融合原型炉の開発のための研究開発を行う日欧の共同事業です。この事業はITERの建設期間(10年間を目処)に、日本で行われることになっていて、次の3つのプロジェクトがあります。@国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動、A国際核融合エネルギー研究センター、Bサテライトトカマク装置。

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