用語解説


1)放射性核種の基礎データ(放射性核種崩壊データ)
 放射性核種が崩壊する際の半減期、崩壊形式と分岐比、崩壊系列、放出される放射線のエネルギー及び強度に関するデータ。MIRD委員会4)は、診断、治療で用いられる放射性核種について、これらの情報を取りまとめた“MIRD: Radionuclide Data and Decay Schemes”を1989年に出版した。


2)Auger電子
 電子軌道の電子が、原子核に捕獲されたり、X線等で励起されて放出されたりすると、電子軌道に空席が生じる。この電子軌道の空席へ外側の軌道の電子が遷移する際、軌道間の遷移に相当するエネルギーを与えられ放出される電子。放射性核種の崩壊では、軌道電子捕獲、内部転換等により、電子軌道に空席が生じるために、eV〜keV のAuger電子が多数放出される。これらは、人体内でnm〜µmの非常に短い距離で全てのエネルギーを与えるために、DNAの損傷などを評価する上で非常に重要になる。


3)米国核医学会(The Society of Nuclear Medicine (SNM))
 核医学に関する科学、技術、臨床への利用を促進するために1954年に設立された学会。会員数約16,000人。


4)MIRD委員会(The Medical Internal Radiation Dose (MIRD) Committee)
 米国核医学会にある常設委員会。放射線医薬品の投与による内部被ばく線量を評価するための手法、モデル、データの開発を行っている。これらの研究成果は、MIRD Pamphletと呼ばれる刊行物によって公開され、核医学、放射線防護等の分野において利用されている。


5)分子イメージング研究
 生体内での遺伝子やタンパク質などの様々な分子の挙動を、生物が生きたままの状態で画像化し観察する技術。生体を構成する分子の動的で総合的な活動を把握できるため、新しい薬の開発、疾患の診断や治療の評価に役立つ技術として、近年、世界中で活発に研究が進められている。


6)DECDC2
 原子力開発、加速器や放射性同元素をはじめとする放射線利用における放射線防護のための被ばく線量評価に幅広く対応するために、日本原子力研究所において開発された放射性核種崩壊データベース。


7)米国環境保護庁(The United States Environmental Protection Agency (US EPA))
 米国民の健康、自然環境の保護を目的とするアメリカ合衆国連邦政府の行政機関。1970年に活動を開始し、正規職員数は約18,000人、本部はワシントンD.C.にある。原子力機構はUS EPAと、1986年(当時、日本原子力研究所)から放射線防護分野における研究協力の協定を締結し協力している。


8)評価済み核構造データファイル(Evaluated Nuclear Structure Data File (ENSDF))
 原子核の構造・崩壊に関する基本データを、実験データの評価から決められた形式で数値化し、格納したデータファイル。国際原子力機関(IAEA)がとりまとめる核データの国際ネットワークの下で、評価・更新が定期的に行われている。日本も、日本原子力研究開発機構シグマ委員会ENSDFグループが、ENSDFの評価・編集に貢献している。


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