平成19年12月13日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
1万キロメートル離れた欧州から日本での核融合実験に成功
−イーター・サテライトトカマク計画での遠隔実験への適用性を実証−

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡撫r雄、以下「原子力機構」と言う)は、那珂核融合研究所(茨城県那珂市)にある臨界プラズマ試験装置(JT-60)への約1万キロメートル離れたドイツのマックスプランク・プラズマ物理研究所からの遠隔実験に成功した。
 これは、原子力機構が開発した高度なセキュリティーと高速のデータ通信機能を合わせ持つシステムにより、欧州の研究者が現地にいながらインターネット回線を通じて日本の研究者とほぼ同等の環境で実験を実施できることを、世界で初めて実証したものである。
 今回の成功により、欧州に建設される「国際熱核融合実験炉イーター」の遠隔実験1)と日本で実施される「核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動(幅広いアプローチ活動)」のサテライトトカマク計画2)での遠隔実験の成功に向けた中核的な技術開発の目処が立った。
 核融合研究では、青森県六ヶ所村に建設される国際核融合エネルギー研究センター内のイーター遠隔実験センターから欧州(仏国カダラッシュ)に建設されるイーターへの遠隔実験、サテライトトカマク計画における欧州から日本への遠隔実験を見据えて、日欧間の遠隔実験システムの開発が進められている。
 遠隔実験では、装置保護と安全運転を担保する制御システム3)への不正侵入防止のために高度なセキュリティー確保が必要である。実験中は実験条件の作成・変更と設備状態の確認等を迅速かつ頻繁に行い、これらをリアルタイムで反映させるため、データ通信の高速・安定化が不可欠である。また、高度なセキュリティー保持には通信の監視、認証、暗号化等のセキュリティー関連プロセスが必須であるが、通信の応答速度が低下するために高度なセキュリティーと高速データ通信の両立が課題であった。

 このため原子力機構では、システム計算科学センターが開発したグリッド・コンピューティング4)基盤(IT Based Laboratory (ITBL)基盤ソフトウェア5)を進化させたAtomic Energy Grid InfraStructure (AEGIS)6))におけるセキュリティー技術を用いて、高度なセキュリティー環境下でのインターネット回線を用いた遠隔実験システムを開発してきた。
 同システムの高いセキュリティーは、過去に国内で行った遠隔実験7)により実証済だが、今回、国内に比べて回線の遅延が懸念される約1万キロメートル離れた欧州からの遠隔実験においても有効であることを実証した。


 ・1万キロメートル離れた欧州から日本での核融合実験に成功
 ・用語解説
以 上


参考部門・拠点:那珂核融合研究所


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