被控訴人「準備書面」の概要(東京高裁・損害賠償請求控訴事件)

 本書面は、控訴人らの控訴理由書(平成19年9月3日付け)における控訴人らの主張に対する被控訴人の反論を述べたものである。

1.事実経過について
 (1) 控訴人らは、@総務部次長は、平成8年1月12日の第2回記者会見での理事長の虚偽の答弁に合わせて、同日の第3回記者会見で虚偽の答弁を行い、この事実が発覚した場合には、理事長辞任・動燃解体という事態が必至であるという状況の中で、虚偽答弁の発覚を恐れて自らの死を選択せざるを得ないところに追い詰められたのである、A理事長が第2回記者会見で嘘をついたので、本当のことをいえば大混乱を招くことが第3回記者会見出席者(総務部次長、広報室長、理事)の共通了解となっていた等と主張する。
 しかし、@理事長が第2回記者会見において、2時ビデオの本社存在を知った日について言及した事実はなく、また、A総務部次長が第2回記者会見に出席した事実はないし、第2回記者会見時の理事長の質疑応答内容が報告されたという事実もなく、したがって、総務部次長は第2回記者会見における理事長の具体的発言内容は知らなかったのであるから、控訴人らの主張は、根拠のない、事実を離れた仮想の主張である。

 (2) 控訴人らは、本件控訴審での主張の構築から、2時ビデオが本社に存在していたことが判明した日が平成7年12月25日であるのならば、そのように、正直に回答するようにとの理事長指示が、第2回記者会見前の打合せで行われたものであり、第3回記者会見前の打合せでなされたとは全く考えられないと主張する。
 しかし、理事長との打合せに参加した5名の証人のうち3名は理事長の指示があったのは第3回記者会見前の打合せであるとしており、第2回記者会見前の打合せであったとする証人2名が記憶違いをしていないとすれば、2回の打合せのそれぞれで、理事長の指示があったと考えるのが合理的である。


2.自殺の予見可能性、結果回避可能性について
 (1) 控訴人らは、総務部次長の発言が虚偽であることが判明した場合には、理事長の進退や動燃の存続に重大な影響を及ぼすことを前提として、動燃は、総務部次長が自殺する具体的可能性を認識していたと主張する。
 しかし、第2回記者会見で、既に理事長自らが理事長の進退について答えているのであるから、総務部次長の第3回記者会見での発言が理事長の進退いかんに影響を及ぼすということはない。また、総務部次長がした「1月10日」という発言が、正しくは「12月25日」であることが判明した場合に、控訴人らが主張するような、動燃が解体される具体的可能性が大きかったことを示す証拠はない。
 総務部次長が自殺するという具体的可能性の有無について言えば、むしろ、総務部次長のようすは第3回記者会見の前後を通じ、普段どおりであり、自殺をうかがわせる兆候は全くなかったのである。

 (2) 控訴人らは、動燃が直ちに訂正記者会見をしていたならば総務部次長が自殺する可能性も生じなかったと主張する。
 しかし、動燃は、第3回記者会見の翌日午前の定例会見において訂正を考えていたのである。
 また、当日の報道関係者においても、2時ビデオの本社存在の判明時期は重要な事柄とされていなかったのであるから、第3回記者会見終了時刻(1月12日午後10時05分)から総務部次長の死亡時(1月13日午前5時ころ)までの短時間(約7時間)内に、直ちに訂正記者会見をすべきということにはならない。

以上


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