平成19年9月5日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
世界で初めて数百MeV級重イオンで1ミクロン以下のビーム形成に成功
−耐放射線性半導体、バイオなどの最先端研究の促進に期待−

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡撫r雄)(以下、「原子力機構」)は、高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設TIARAのサイクロトロン(1)を用いて、数百MeV級重イオンで直径1ミクロン以下のマイクロビーム(2)の形成に世界で初めて成功しました。

 従来、高周波電圧を用いる円形加速器であるサイクロトロンで加速したイオンビームは、エネルギーの広がりが大きいために小さく集束してもピントが合わず、マイクロビーム形成(ビーム径の微小化)が困難とされてきました。
 これに対して、高崎量子応用研究所放射線高度利用施設部ビーム技術開発課の研究グループ(代表:横田渉ビーム技術開発課長)は、イオンを加速するための高周波電圧を従来の正弦波状電圧から台形状電圧に変えることで、エネルギーの広がりをビームのマイクロ化に不可欠である従来の数分の1(約0.05%)に狭めることを可能にしました。またこれに加えて、ビーム発生・加速過程の安定化及びビーム集束レンズ(3)系の高精度化などの技術を総合してマイクロビーム化を行いました。
 これらの結果、直径0.6ミクロンの260MeV-ネオンビームを実現することに成功しました注)

 これにより、微細なビームを試料の奥深くまで照射する各種実験が可能となり、イオンビームの応用範囲の拡大が期待されます。このうち、人工衛星等に搭載する半導体デバイスの耐放射線性研究分野での成果については9月6日の応用物理学会(北海道札幌市:9/4〜8)で発表予定です。また、本技術は真空中で実現したものですが、生きた細胞などを試料にするために大気中で直径1ミクロンを実現する技術開発も進めており、バイオ応用技術研究など最先端の研究分野での本ビームの更なる利用促進と研究成果が期待されています。

注)これまで高エネルギー重イオンでは、ミュンヘン工科大学の静電加速器で100MeV-酸素イオンで約1ミクロンを達成した例があります。


 ・世界で初めて数百MeV級重イオンで1ミクロン以下のビーム形成に成功 −耐放射線性半導体、バイオなどの最先端研究の促進に期待−
 ・補足説明資料
 ・用語説明
 
以 上

参考部門・拠点:高崎量子応用研究所


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