用語説明

 
1)希土類金属・アクチノイド類
 イットリウム(Y)やイリジウム(Ir)及びランタノイド類(周期律表において、57番目のLaから71番目のLuまで)を希土類金属と呼びます。周期律表において、90番目のThから103番目のLrがアクチノイド類です。これらの原子は外殻にf電子と呼ばれる電子を持っており、原子によってその個数が異なります。


2)超伝導
 超伝導とはある温度以下で電気抵抗がゼロになる現象をいい、通常の状態から超伝導に移り変わる温度のことを臨界温度又は超伝導転移温度(Tc)とよびます。超伝導が初めて見いだされた物質はTc=4.15 K(-269°C)の水銀で、オランダのカマリン・オンネスが1911年に発見しました。単一の原子からなる金属では、Pb(鉛)、Nb(ニオブ)などがそれぞれ7 K,9 K以下で超伝導体となります。超伝導の特長を利用して、超伝導マグネット、リニアモーターカー、電力輸送、電力貯蔵など様々な分野への応用が期待されています。


3)重い電子
 金属中において、電気伝導を担っているのは伝導電子です。重い電子とは、磁石の材料などに用いられている希土類や、アクチノイドを含んだ化合物において、金属的な電気伝導を示すにもかかわらず、伝導電子の質量が、自由電子の質量の数百倍〜千倍も「重く」なっているかのように観測される現象です。


4)角度分解光電子分光法
 物質に紫外線などの光を照射し、試料表面から放出される光電子の個数とエネルギーの関係を調べることにより、物質内の電子状態を調べる実験手法を光電子分光法と呼びます。この手法により、物質内の電子のエネルギー分布を直接観測することが可能です。角度分解光電子分光法では、光電子の角度分布を計測し、固体内の電子の運動量も計測することが可能であり、バンド構造とフェルミ面を実験的に決定可能です。


5)f電子
 希土類やアクチノイド化合物の超伝導や磁性などの起源となる電子。比較的高い運動エネルギーを持ちながらも、その軌道の空間的な広がりは大きくないという特徴を持っています。そのため、化合物を形成した際には、結晶中を動ける状態と、動けない状態の中間的な複雑な性質を示し、理論的な取り扱いが困難です。


6)バンド構造
 固体中の電子のエネルギーと運動量の関係をバンド構造と呼びます。固体によって独自の構造をとっており、電子の性質ならびに物性を特徴づける物理量です。


7)フェルミ準位
 絶対零度において、金属的なバンド構造の底から電子を詰めていったとき、最も高いエネルギーの持つ電子のエネルギーをフェルミ準位と呼びます。フェルミ準位付近のエネルギーを持つ電子は、有限温度において電気伝導や熱伝導などの伝導現象に寄与します。

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