平成19年5月25日
国立大学法人東北大学
独立行政法人日本原子力研究開発機構
国立大学法人大阪大学
 
超ウラン・ネプツニウム化合物で初めて超伝導を発見
 
 東北大学金属材料研究所(所長・中嶋一雄)附属量子エネルギー材料科学国際研究センター(センター長・四竈樹男)の塩川佳伸教授、青木大助手、独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長・岡撫r雄)先端基礎研究センター(センター長・籏野嘉彦)の芳賀芳範研究副主幹、大阪大学大学院理学研究科の大貫惇睦教授らは、ネプツニウム化合物として世界初の超伝導体NpPd5Al2(ネプツニウム・パラジウム5・アルミニウム2)を発見した。

 ネプツニウム(Np)は、元素の周期表でウラン(U)とプルトニウム(Pu)の間に位置する元素である。一般に、ウラン以降の元素は「超ウラン元素」と呼ばれ、天然には存在せず、原子炉の核反応で生成する人工元素である。強い放射能を持つことから、取り扱いが難しく、限られた施設でしか実験することができない。近年、超ウラン元素及びその化合物は、原子力技術における重要元素としてだけではなく、基礎科学的な観点からも注目が集まっている。

 ところで超伝導は、多くの金属が低温で示す現象である。そこでは電気抵抗が完全に消失し、損失なく電流を流すことから応用面でも注目されている。超伝導は、磁場により容易に破壊されてしまう。これまでに報告されているネプツニウム化合物は多くが磁性体であり、内部では磁場が発生しているために超伝導が実現する可能性は低かった。

 今回、新たに発見した化合物NpPd5Al2は新規化合物であり、NpとPd(パラジウム)の化合物を探索している過程で偶然に見つかった。組成分析及びX線構造解析により、正方晶の結晶構造を持つことを明らかにした。超伝導転移温度は、絶対温度5K(ケルビン)(-268℃)である。特筆すべき点として、(1)超伝導が壊れる上部臨界磁場が15テスラ(地磁気の50万倍)と極めて高いこと、(2)ネプツニウムが磁性を持っているにもかかわらず超伝導が実現していること、(3)この超伝導は、現在実用化に向けて研究が進められている高温超伝導体(銅酸化物超伝導体)と類似の性質を示すこと、が挙げられる。

 この発見は、「ネプツニウム化合物は超伝導にならない」という従来の常識を覆すものであり、ネプツニウムをはじめとする超ウラン元素及びその化合物が、まだまだ探索し尽くされていないことを意味する。また、超伝導発現機構の解明が進むことで新たな超伝導素材、磁性材料の開発につながる。今回、ネプツニウムの持つ新しい側面が見つかったことで、このような基礎研究がますます重要視されている。

 この成果は、日本物理学会の欧文誌「Journal of the Physical Society of Japan(JPSJ)」6月号(電子版5月25日)にレター論文として速報が決定しており、また、同誌の注目論文に選ばれた。



 ○参考図
以 上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター


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