平成19年5月18日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
ダイヤモンドを超伝導に導く格子振動の発見

 
●ポイント
   ・ ダイヤモンド超伝導体1)の格子振動2)の直接観察に世界で初めて成功
   ・ その結果、最もエネルギーの高い種類の格子振動(縦波光学格子振動3))が、ダイヤモンドの超伝導現象を引き起こしている証拠を発見
   ・ より高い転移温度を持つダイヤモンド超伝導体の創製へ期待


●前提
 金属を極低温に冷やすことで電気抵抗がゼロになる超伝導状態が発現することは古くから知られている。これは極低温下で金属内の結晶を構成している原子が振動を起こす(格子振動)ことにより、それが媒介となってマイナスの電荷を持つ電子がお互いに引力を及ぼしあってペアーを作る結果として発現する。つまり、格子振動が電子と相互作用することによって起きる現象である。もともとは絶縁体で電子が存在しないダイヤモンドに、高密度の不純物(今回の場合、ホウ素)を注入することで電子が発生し、比較的高い温度(〜11K)で超伝導が発現することが2004年に発見されている。その発現機構の解明が室温超伝導体の創製へとつながることが期待され、物質・材料科学の分野で大きな注目が集まっている。


●概要
 独立行政法人日本原子力研究開発機構【理事長 岡撫r雄】(以下、「原子力機構」という)は、早稲田大学、独立行政法人物質・材料研究機構、独立行政法人理化学研究所および財団法人高輝度光科学研究センター(以下、「JASRI」)と共同で、初めて観測可能なスケール(厚さ100μm)の単結晶超伝導ダイヤモンドの作製に成功し、大型放射光施設SPring-8の放射光X線を用いて、その格子振動の直接観察に世界で初めて成功した。その結果、格子振動の中で最もエネルギーの高い種類の振動(縦波光学格子振動)のみが異常に弱まっていることを発見した。これは、この格子振動が電子と強く相互作用している結果と考えられるので、この振動がダイヤモンドの超伝導化を引き起こしている可能性が高いことが特定された。これは、原子力機構・量子ビーム応用研究部門・X線量子ダイナミックスグループのモーリッツ・ヘッシュ(Moritz Hoesch)博士研究員らによる成果である。
 この発見を設計指針とすることでより高い転移温度を持つダイヤモンド超伝導が創製されることが期待される。
 本成果は、米国物理学会の学術誌"Physical Review B Rapid Communication"の4月18日の電子版に掲載された。


  ダイヤモンドを超伝導に導く格子振動の発見
  補足説明
  用語説明
以 上
 

参考部門・拠点:量子ビーム応用研究部門


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