平成19年5月9日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
30日間連続運転によりHTTR燃料が世界最高の品質を示す
 
ポイント
 高温工学試験研究炉(HTTR)における初めての30日間連続の定格出力(約30MW)運転により、商用規模で生産した高温ガス炉用燃料の核分裂生成物(FP)閉じこめ能力が世界最高水準にあることを確認した。

 
概要
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡撫r雄、以下「原子力機構」という)は、高温工学試験研究炉(HTTR)を用いて高温ガス炉技術の基盤の確立及び高度化を目指した研究開発を推進しており、その一環として、HTTRの運転により高温ガス炉の特性データの取得・蓄積を進めております。

 高温ガス炉の燃料には、被覆燃料粒子を使用します。これは、燃料核(ウランの酸化物等)を芯としてその外側を耐熱性に優れた炭化ケイ素等のセラミックスの被覆層で四重に包んだ微小な球(直径1mm弱)です。これらの被覆層は、ウランの核分裂により発生する核分裂生成物(FP)を燃料粒子の中に閉じ込める役割を果たします。被覆燃料粒子は1600℃程度の耐熱性があり、金属被覆よりも高温で用いることができるため、約1000℃の温度で運転する高温ガス炉の燃料に適しています。HTTRに用いている被覆燃料粒子は、原子力機構が原子燃料工業(株)と共同で開発したものです。
 原子炉運転中の燃料のFP閉じ込め性能については、1次冷却材(ヘリウムガス)中のFP濃度が安定する30日間程度の連続運転により確認する必要があります。
 HTTRにおいては、平成10年の臨界から初めて、30日間に及ぶ定格出力運転(原子炉出口冷却材温度は約850℃)を平成19年3月27日から4月26日にかけて実施しました。この運転において、燃料のFP閉じ込め性能を示す1次冷却材中のFP濃度が、海外の高温ガス炉燃料の実績値に比べ1/10から1/1000と桁違いに低い値であることを確認しました。これは、HTTRの燃料が世界最高水準の品質を有していることを示すものです。

 原子力機構では、今後、より厳しい温度条件である高温試験運転(原子炉出口冷却材温度は約950℃)状態で50日間以上の連続運転を行い、燃料性能をはじめ、炉心特性、高温機器の性能、1次冷却材中の不純物特性等のデータを引き続き取得する計画です。
 本成果は、“高温の熱源や経済性に優れた発電手段となり得る高温ガス炉とこれによる水素製造技術の研究開発等を推進する”との原子力政策大綱に沿ったものであり、エネルギーの安定供給と環境保全に役立つ高温ガス炉の開発に役立つものとして世界的にも注目されています。
 
 【補足説明資料
 【用語解説

参考部門・拠点:大洗研究開発センター

以 上

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