【補足資料4】

用語説明


1) 核破砕ターゲット
核破砕反応は、500MeV以上に加速した陽子が重金属に当たったときに原子核をいくつもの破片に砕く反応で、1GeVの陽子なら1個あたり30個もの中性子を発生させることができる。陽子をぶつける重金属を核破砕ターゲットと呼び、固体ではタングステン、ウランなど、液体では水銀、鉛・ビスマスなどが候補として考えられている。ADSで用いる大強度の核破砕ターゲットとしては、冷却が容易、沸点が高い、化学的に安定であるなどの理由から鉛・ビスマス溶融合金が有力視されている。

2) マイナーアクチニド
原子番号89のアクチニウム(Ac)から103のローレンシウム(Lr)までのアクチニド元素のうち、アクチニウムを除いた元素群はアクチニドと呼ばれる。使用済み燃料の中に含まれるアクチニド元素のうち、主要な元素であるウラン(U)と生成量の比較的多いプルトニウム(Pu)を除いた元素をマイナーアクチニド(MA)と呼ぶ。具体的には、ネプツニウム(Np)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)を主として指しており、何れも放射性核種である。特に、Np-237(半減期:214万年)、Am-241(半減期:433年)、Am-243(半減期:7370年)が多くの割合を占める。

3) 加速器駆動未臨界システム(ADS)
体系を未臨界に保ったまま強力な中性子源で核分裂による出力を維持するシステムである。通常、数百MeV以上に加速された陽子による核破砕反応(スポレーション反応)で発生する中性子を中性子源とする。体系が未臨界であるため、異常時には加速器を停止すれば急速に出力が低下する。また、臨界炉に比べて即発臨界までの裕度が大きい。

4) 液体重金属(鉛ビスマス)を用いた強力中性子源
加速器駆動未臨界システム(ADS)においては、強力な中性子源が必須であり、照射による損傷が少ない、冷却が容易である、化学的に安定であるといった観点から、液体鉛ビスマスが選択されている。液体鉛ビスマスを用いた強力中性子源の開発が、ADS開発の重要なステップとされている。

5) MEGAPIE参加機関
    (フランス)
        CEA:フランス原子力庁
        CNRS:フランス国立科学研究センター
    (イタリア)
        ENEA:イタリア新技術・エネルギー・環境庁
    (ドイツ)
        FZK:カールスルーエ研究センター
    (スイス)
        PSI:ポール・シェラー研究所
    (ベルギー)
        SCK・CEN:ベルギー原子力研究センター
    (日本)
        JAEA:日本原子力研究開発機構
    (韓国)
        KAERI:韓国原子力研究所
    (米国)
        DOE:エネルギー省


6) サイクロトロン
電荷を持つイオンを強い磁界と高周波電界を用いて真空中で加速する装置であり、イオンとして陽子などが用いられる。陽子はサイクロトロン中の磁界に閉じ込められて同心円上の軌道を描きながら、電界で加速される。PSIでは575MeVのエネルギーに加速された陽子は、光速の約80%に到達する。サイクロトロンで加速された陽子は原子核研究、固体物理研究、ラジオアイソトープの製造、医療などに利用されるほか、重原子に当てることによって核破砕中性子を発生させ、中性子を利用した研究に用いられる。

7) J-PARC(大強度陽子加速器施設)
原子力機構と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で東海村に建設中の陽子加速器施設と利用施設群の総称。加速した陽子を原子核標的に衝突させることにより発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの二次粒子を用いて、物質・生命科学、原子核・素粒子物理学などの最先端研究及び産業利用が行われる予定。


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