平成18年9月14日
早川ゴム株式会社
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
耐放射線特性に優れた汎用のゴム材料を開発
 
 早川ゴム株式会社(社長 早川雅則)(以下、「早川ゴム」と言う)と独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 殿塚猷一)(以下、「原子力機構」と言う)は協力して、既存のゴム材料に比較して耐放射線性能が約5倍以上優れた汎用ゴム材料を開発した。

 放射線の利用が進む中、放射線環境で使用する設備側機器材料の改良も進められている。本件は現在、茨城県東海村で原子力機構と高エネルギー加速器研究機構が共同で建設を進めている大強度陽子加速器施設(J-PARC)の建設資材としてのゴム製緩衝材・シール材の耐放射線特性を改良する作業の中で開発された。

 一般的には高放射線環境で使用できる材料は、無機材および化学的にベンゼン環1)構造を有する高価な有機材料程度に限定され、高放射線環境の緩衝材・シール材に汎用のゴム材料適用が可能となれば、コストの面、作業性の面などから大きなメリットが得られる。

 ゴムのような高分子材料は放射線環境に置かれると、隣接する分子を接続する「架橋反応」と、分子鎖を切断する「崩壊反応」が並行して発生する。架橋反応が進むとゴムの弾力性を失い(硬化)、崩壊反応が進むと形状を保つのが困難(融解、軟化)となる。従来のゴム材料は構成材料にも依るが、硬化劣化型か軟化劣化型のどちらかに分類され、放射線吸収線量2)で1〜1.5MGy(メガグレイ)で本来の弾性体としての機能または形状を失うものであった。

 本件の開発は、これまでの汎用材料の中で最も耐放射線特性が優れているEPDM材:エチレン・プロピレン・ディエン共重合体ゴムに新しいアイディアに基づく添加剤を加え、放射線吸収線量9MGy超でも弾性体としての機能および形状を維持する汎用のゴム材料を得たものである。

 本開発により得られた新規のゴム材料は、JISで規定される引張伸び、破断強度、硬さなどの試験項目に加え、建設資材としての必要な工学的試験をクリアし、建設資材(異種建築物接合部の止水板部材)として製品化された。J-PARCに於いては加速器トンネルの接合部止水・緩衝材に使用されている。また、更なる適用範囲として、陽子加速器冷却水配管の接続シール部や超伝導電磁石などの大型真空装置の気密シール部への適用試験が現在進められている。

 高放射線環境に於いても汎用ゴム材料が使用可能となれば、原子力施設の広範な分野での使用が考えられる。無機材使用箇所においては設備コストの低減となり、止むを得ず従来型のゴム材を使用している箇所に於いてはその交換頻度を大幅に下げることによる作業被ばくの低減と、それに伴うコスト低減が期待できる。

 なお、本成果は、9月15日発行の日本ゴム協会誌2006年9月号に技術論文としてその詳細技術内容が紹介される。


 ・補足説明/用語解説(PDF、984kB)
以 上

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