平成18年9月4日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
九州日立マクセル株式会社
 
電力損失の極めて少ないミリ波アンテナ基板の開発に成功
−放射線グラフト重合技術により次世代ミリ波1)アンテナの実用化が可能に−

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 殿塚猷一 以下「原子力機構」と言う。)と九州日立マクセル株式会社(取締役社長 落合 正彦)は、放射線グラフト重合2)技術を用いてフッ素樹脂基板の表面を改質することにより、次世代のミリ波アンテナに不可欠な電力損失が極めて少なく、銅箔との接着強度も倍増できるアンテナ基板の開発に成功しました。これは原子力機構量子ビーム応用研究部門金属捕集・生分解性高分子研究グループの玉田正男リーダー、瀬古典明研究員らと、九州日立マクセル株式会社新分野開発部坂田栄二部長、伊藤直樹研究員らによる研究成果です。
 アンテナ素材としては、誘電率3)が小さく電気的特性が優れたフッ素樹脂基板が理想ですが、フッ素樹脂は、導体パターン(一般的に銅)との接着力が弱いため、これまでは導体に凹凸を付けてからフッ素樹脂基板に貼り付けてアンテナを製作していました。しかし、このような方法によって製作したアンテナは、導体表面の凹凸による電力損失のため、周波数の低い領域での使用に限られていました。この問題を解決するため、原子力機構が長年培ってきた放射線によるグラフト重合技術を適用し、銅と相性の良い親水性基をフッ素樹脂基板に導入することで、導体表面の凹凸処理なしにアンテナ基板を製作することに成功しました。接着強度も未処理基板の2.5倍にあたる1.0kgf/cmに向上しております。この基板の誘電率を九州大学産学連携センター間瀬淳教授の協力を得て測定した結果、加工前後でフッ素樹脂基板の誘電特性にはほとんど変化がなく、フッ素樹脂本来の低損失特性を維持した高性能アンテナ基板が製作できる見通しが得られました。また、コスト試算の結果、この手法を用いることで、従来より2割程度安価でかつ高性能の小型平面ミリ波アンテナが製作できることもわかりました。
 本研究開発により、フッ素樹脂基板を用いた低損失平面ミリ波アンテナの製作が可能になると、携帯電話や衛星通信など高周波通信分野での需要が急増するだけでなく、非接触、非侵襲の医療診断への応用を通して医学への貢献も期待できます。本成果は、9月18日〜22日に上海で開催されるInternational Conference on Infrared and Millimeter Waves and Terahertz Electronics 2006(赤外とミリ波、テラヘルツ波電子工学における国際会議)において発表する予定です。


  電力損失の極めて少ないミリ波アンテナ基板の開発に成功
  補足解説資料
  用語説明
以 上

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