平成18年6月26日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
地域病院との連携によるJRR-4を用いたがん治療研究への貢献
− 村立東海病院との初の協力によるBNCT臨床研究の実施 −

 
 日本原子力研究開発機構(理事長 殿塚猷一、以下「原子力機構」)は、この度、初めて、近接する地域病院である茨城県東海村立東海病院と連携して、BNCT研究者が東海研究開発センター原子力科学研究所にある研究炉JRR-4を用いて実施するホウ素中性子捕捉療法(BNCT: Boron Neutron Capture Therapy)の臨床研究への協力を行う。

 原子力機構では、医療機関と協力し、JRR-4を用いた先端的ながん治療法であるBNCTの臨床研究に貢献してきており、これまでの臨床件数は、悪性脳腫瘍を中心に50件に上る。
 がんの治療方法としては、外科的治療、化学的治療及び放射線治療があるが、放射線治療の一つである中性子を用いるBNCTは、悪性脳腫瘍等の難治がんに対して非常に高い治療効果が期待できるとともに、治療後のQOL(生活の質)が優れていることから、その臨床研究が全国規模で実施されるようになってきた。しかし、現時点でこのBNCTの臨床研究に使用できる原子炉は、JRR-4が国内で唯一である。
 一方、最近のBNCTの臨床研究は、治療効果の向上及び脳腫瘍以外の難治がんへの適用拡大の段階に至っており、BNCTの実施直前にがんの位置等を正確に把握することが必要である。このためには、がんの状況を正確に把握できるCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像法)等の最新医療設備が整備され、かつ、それらを用いた検査をBNCTのできるだけ直前に行うことが好ましいため、BNCT を行うJRR-4にできるだけ近い医療機関の協力がBNCTの臨床研究の推進には望まれるところである。
 今般、こうした条件に合致する茨城県東海村立東海病院(平成18年5月開院)との間でBNCT臨床研究に対して連携が可能になったことから、6月27日、初めて同病院を利用して大阪医科大学(主治医:宮武伸一助教授)がJRR-4でのBNCTの臨床研究を行うこととなった。

 原子力機構は、BNCTの臨床研究のより円滑な推進等原子力技術の医療応用を促進するため、今後も村立東海病院を始めとした地域病院との連携を進めていく所存である。


添付資料:
  資料1:「村立東海病院との協力体制」(PDF、51kB)
  資料2:「ホウ素中性子捕捉療法の原理と特徴」(PDF、61kB)
  資料3:「BNCT研究における研究分担」(PDF、27kB)
  資料4:「JRR-4の中性子ビーム設備」(PDF、173kB)
  資料5:「JRR-4でのBNCT臨床研究の現状」(PDF、22kB)

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