平成18年4月27日
独立行政法人
日本原子力研究開発機構
 
カザフスタン共和国との共同研究(EAGLEプログラム)によりFBRの炉心溶融事故を模擬した実験に成功
−今後のFBR設計について、過酷な事故条件を設定しても安全性が確保される見通しを確認−
 
 日本原子力研究開発機構(理事長 殿塚猷一)(以下、原子力機構)では、高速増殖炉(FBR)の炉心溶融事故を模擬した高度な実験技術を日本原子力発電株式会社の協力のもとカザフスタン共和国との共同研究(平成12年より開始)により開発してまいりましたが、このたび、ナトリウムを用いた実験を実施しました。
 FBRの炉心溶融事故においては、溶融した高温の燃料がどのように振る舞うのかが事故の影響を左右しますが、このような事故の状況を模擬するためには、高い性能を持つ実験施設と高度な実験技術が必要であるため、規模の大きな実験は実施されていませんでした。このため、従来の安全評価ではかなり保守的な想定をして対策の妥当性を確認して来ました。
 原子力機構では、客観的な実験データによってFBR本来の安全特性を見極め、適切に設計や安全評価に反映するため、カザフスタン共和国国立原子力研究センターとの共同で新しい実験技術を開発しました。ここでは、実験専用の原子炉内に設置された二重容器の中で燃料溶融状態を作り出してナトリウム中での燃料の動きなどを調べます(図1)。このような実験は同原子力研究センターのIGR(図2)チームが持つ高い技術力を活用することで初めて可能になりました。
 この実験の実現のためには、試験燃料を予め設定された温度まで確実に加熱する技術と、溶融燃料の移動を観測する測定技術、燃料及びナトリウムを確実に容器内に保持・格納する技術の開発が不可欠でした。このため、3つのステップ(図3)を踏んで開発に取り組んでまいりましたが、その最終段階の実験に成功しました(3月6日実施)。この実験では、約8kgの試験燃料(濃縮度17%のUO2燃料)をねらい通りに溶融させ、原子炉内に設置した中性子検出器など100を超える多数の計測器の信号変化などから、ナトリウム中での燃料移動の様子を把握することに成功しました(図4及び図5)。
 今回得られた実験データは、これまでのデータと合わせて、高温の溶融燃料が炉心の周辺部、特に下部に存在するナトリウム中に流出してナトリウムと混合し、適切に冷却されるまでの過程の確認に活用されます。このようなデータの取得により、FBRサイクル実用化戦略調査研究において検討されているFBR設計が保守的な事故条件を想定しても十分な安全性を持っていることを確認していく計画です。


 【用語説明


※本件分野を専門とされる外部の専門家から、補足説明を加えることで本件成果をより正確に理解をしてもらえる、とのご指摘をいただいたことから、平成18年5月26日に、当初発表した内容に以下の補足説明を追加しました。
(追加補足説明)
 ○図4「中性子検出器信号による燃料移動の把握」に補足説明を追加
 ○図5「燃料流出を示すデータの例」を新規で追加

以 上

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