用語説明


1) 「5f電子」
 ウラン化合物の超伝導や磁性などの起源となる電子。ウラン原子を構成する92個の電子のなかでも、比較的高い運動エネルギーを持つが、その軌道の空間的な広がりは大きくないという特徴を持つ。そのため、化合物を形成した際には、結晶中を動ける状態と、動けない状態の中間的な複雑な性質を示し、理論的な取り扱いが難しい。
 
2) 「バンド構造とフェルミ面」
 固体中の電子は周期的な原子の並びの間を運動しているが、その原子の周期性により、電子の取りうるエネルギーと運動量の間に固有の関係が生まれる。この電子のエネルギーと運動量の関係を表した曲線をバンド構造と呼び、この構造から固体中の電子の性質を知ることができる。電子はエネルギーの低いバンドから順に占有されてゆくが、あるバンドが途中までしか占有されない場合物質は金属となり、占有された部分と占有されない部分の境界をフェルミ準位と呼ぶ。このフェルミ準位に存在する電子の運動量を、運動量空間中に示すと3次元的な形状となるが、これをフェルミ面と呼ぶ。それぞれの金属は固有のフェルミ面形状を持っており、その形状は金属の性質が特徴付けるため、「金属の顔」とも呼ばれる。
 
3) 「角度分解光電子分光」
 物質に紫外線などの光を照射し、試料表面から放出される光電子の個数とエネルギーの関係を調べることにより、物質内の電子状態を調べる実験手法を光電子分光法と呼ぶ。この手法により、物質内の電子のエネルギー分布を直接観測することが可能である。角度分解光電子分光では、光電子の角度分布も計測し、固体内の電子の運動量を計測することが可能であり、バンド構造とフェルミ面を実験的に決定可能である。
 
4) 「相対論的バンド理論」
 結晶中の電子のエネルギーと運動量の関係を計算する理論をバンド理論と呼ぶ。ウランの5f電子は速度が光速に近くなる場合もあるため、より現実に近い電子状態を計算するには、相対論的効果を取り入れることが重要になり、相対論的効果を取り入れた計算を相対論的バンド理論と呼ぶ。

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