平成22年 理事長年頭所感

原子力機構が発足してから今年で5回目の新年を迎え、今年は第一期中期計画の最終年度にあたる節目の年となりました。

今年度の残り3カ月は、現中期計画をしっかり締め括り、これまでの成果を次の第二期中期計画に活かしていかなければならない重要な時期であります。

近年、将来のエネルギー安全保障と地球温暖化防止が人類の持続的発展にとって重要な課題との認識が高まってきております。世界各国の重要な問題として、その解決に向けた取り組みが求められております。

そのために原子力機構は、原子力エネルギーの長期にわたる利用を目指し、高速増殖炉サイクル技術や核融合技術の実用化に向けた研究開発を始め、基礎基盤研究を含めた幅広い研究開発に、今後も引き続き取り組んでいかなければなりません。

今年の原子力機構の最重要課題は「もんじゅ」の運転再開です。もんじゅ運転再開に対する国内外からの厚い期待に応え、この分野で我が国が引き続きリーダーシップを発揮していくとの新たな決意をもって臨んでいきたいと思っております。このため、ナトリウム漏洩事故以降、長期停止していた設備の点検・補修や近年のトラブルに対する再発防止対策等を含め、「安全性総点検報告書」を取りまとめました。今後、運転再開のために機構が行うべき準備作業を早期に終了させ、保安院による安全確認および地元のご理解を得て、今年度内の運転再開を、機構の最重要課題として何としても達成したいと考えています。

平成13年から高エネルギー加速器研究機構と共同で建設を進めてきたJ-PARCについては、一昨年の「物質・生命科学実験施設」完成に加え、昨年は「原子核・素粒子実験施設」と「ニュートリノ実験施設」が完成し、本格的な研究利用を開始しました。これにより、高崎量子応用研究所、関西光科学研究所並びに東海研究開発センターの各施設を併せた量子ビームプラットフォームが整いました。今後、これらの研究施設を産業界の参画も得て最大限に活用し、世界最先端の科学技術の開発に挑戦することで、人類の発展に貢献する革新的な研究成果が生み出されることを期待しています。

核融合研究については、国際熱核融合実験炉ITER建設計画及び日欧共同で実施する幅広いアプローチ(BA)活動について着実な推進を図っていきます。本年3月には、青森県六ヶ所村の国際核融合エネルギー研究センターにおける3つの研究施設が完成し、いよいよ本格的な研究を開始する段階に入ります。

また、那珂核融合研究所の臨界プラズマ試験装置 JT-60の超伝導化改修を進め、将来の核融合炉の実用化に向けたITER計画及び幅広いアプローチに係る取組を着実に進めていきます。

高レベル放射性廃棄物については、地層処分実現に向け、北海道幌延町と岐阜県瑞浪市における深地層研究を引き続き進めます。

また、研究施設等廃棄物の処分に係る実施主体として、昨年2月に「埋設事業推進センター」を設置して体制を強化し、11月には、「埋設処分業務の実施に関する計画」(実施計画)について文部科学大臣及び経済産業大臣より認可をいただきました。今後はこの埋設処分事業を、透明性を確保し、安全を最優先に、国民から理解と信頼を頂けるよう、国及び関係機関と連携・協力して着実に進めていきます。

そのほか、原子力の発展の基盤をささえる安全研究、基礎基盤研究なども引き続き取り組んでまいります。

特に核不拡散については、昨年就任されたオバマ大統領がプラハ演説において、核兵器の無い世界を目指すというビジョンを示し、国際的な核軍縮の潮流が生み出されようとしております。原子力の平和利用と核不拡散の両立に向け、我々原子力機構として進んで国際社会に貢献できるよう、取り組みます。

原子力機構法には、原子力機構の業務が「人類社会の福祉及び国民生活の水準向上に資することを目的とする」ことが記載されております。

我々原子力機構は、常にこの目標に向かって邁進してまいります。

そして、機構の経営理念のもと、「高い志」、「豊かな発想」、「強い意志」という3つのスローガンを胸に、役職員一丸となって広い視野を持ち業務に取り組んでいきたいと思います。

独立行政法人日本原子力研究開発機構

理事長  岡ア 俊雄


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