平成17年12月26日
 
岡﨑副理事長フランス出張報告
(第9回ヨーロッパ原子力会議出席等)


 
 平成17年12月10日より18日にフランスへ出張し、第9回ヨーロッパ原子力会議(ENC2005)へ参加し「日本原子力研究開発機構の設立と高速増殖炉開発」について講演するとともに、統合に伴うフランス原子力庁(CEA)との新協定に調印した。その後、CEAのヴァルロー研究センター/マルクールサイト、カダラッシュ研究センターを訪問して今後の研究協力に関する意見交換を行った。

 
1. 第9回ヨーロッパ原子力会議(ENC2005)
 本会議は、欧州原子力学会及び米国原子力学会主催で「21世紀の原子力:基礎研究からハイテク産業まで」と題してベルサイユで12月12日〜14日にわたり開催された。世界約30の国・国際機関から約700名の出席があった。我が国からは、加納参議院議員、町原子力委員、岡﨑副理事長を始め、約20名の出席があった。
 その中で、「将来の原子炉及び燃料(Generation IV)」セッションで、岡﨑副理事長がCEAのBouchard氏と共同議長を務めるとともに、高速炉サイクルの研究開発を中心に、量子ビーム技術、水素製造、核融合等の原子力機構の主要なミッションについて、その活動状況と開発の進め方について紹介した。


ENC2005で講演中の岡﨑副理事長

   ENC2005会議と並行して、会議場建屋及び建屋外のテントを利用したENCの展示が開催された。世界10ヶ国以上の原子力関係機関67社・グループからブース展示があった。原子力機構は、もんじゅ、核融合、J-PARC、HTTR・水素、安全性・核不拡散の6分野を中心として、パネル展示(6枚)、液晶画面によるCD(もんじゅ2台とHTTRが1台)、パンフレット(16種)配布から構成されるブース展示を行った。欧州の研究機関と並んで、原子力機構として全分野を紹介するブース展示を行うことによって、多くの参加者に関心を持って頂き、新法人の紹介を成功裡に実施することが出来た。

 
2. フランス原子力庁との協定調印
 「フランス原子力庁と日本原子力研究開発機構との原子力研究開発分野における協力に関するフレームワーク協定への調印式」が、パリのCEA本部で12月13日に執り行われ、岡﨑副理事長、Bugat長官が署名した。本協定は、旧原研と旧サイクル機構で締結していた協定を統合し原子力機構として締結するものである。
 調印に先立ち、岡﨑副理事長より『日本側の法人統合の動きに合わせ、統合の準備段階から協定の1本化に積極的に協力し、統合後、驚くほどの速さでCEAとJAEAとの協定が締結できた』との感謝の言葉が述べられた。Bugat長官より、『今後の燃料サイクルの実現が原子力利用において、大変重要な課題であり、これまでの技術開発を踏まえ、日仏間での協力をさらに発展させ得る素地が出来た』との挨拶があった。


CEAとJAEAとの原子力研究開発分野における協力に関する
フレームワーク協定調印式でのBugat長官と岡﨑副理事長


 
3. ヴァルロー研究センターのマルクールサイト訪問
 本センターは、ローヌ川沿いの谷間にある原子力エネルギーの開発施設であり、高速増殖炉フェニックス及び廃棄物処理処分研究施設のアタランテ等があり各施設を見学した。
 フェニックスは、1994年から安全上の改造及び補強を行い、2003年に運転を再開し、2003年の稼働率は73%であり、2004年の稼働率は84%となっている。現在発電とともに、照射施設として利用しており、18dpa/6ヶ月の照射が可能である。高速炉、ADS等の材料照射、マイナーアクチニドや長寿命放射性廃棄物の核変換の試験を2009年まで実施して運転を終了の予定。その後、フェニックスでのこれらの試験はもんじゅでの国際協力での研究開発に引き継がれる予定である。
 見学にあたり、岡﨑副理事長より『1昨日、Bugat長官と「CEAとJAEAの協力協定」に調印することができた。本日、その具体的な活動をスタート出来、気持ちを新たにした。フェニックスが終了するのは残念だが、常陽及びもんじゅで協力させていただくとともに、バックエンド分野での協力も進めていきたい』との挨拶があった。

 
4. カダラッシュ研究センター訪問
 本研究センターは、マルセイユの北40kmにあり、核エネルギー開発施設を国際共同研究に提供することで、欧州及び国際共同研究の研究基盤にすることを目指している。原子力施設は、1960年代から1970年代に建設された6機の研究用原子炉、ホットラボ、液体及び固体の廃棄物処理施設、放射性物質の貯蔵施設が3箇所ある。更に、AREVA等の関連会社の燃料製造施設、核融合実験施設があり、ITERの建設が決まっている。
 核融合では超伝導トカマクのトールスープラの実験施設がサイトの北側にあり、定常化の研究が行われている。ITERはサイト北側のカダラッシュ研究センターのサイト外に建設が予定されている。建設予定地は、緩やかな勾配のある場所であり、斜面を削って建設するとのこと、またITER職員の子弟用の外国人学校等はサイト北西のマノスクという町に建設予定とのことであった。
 見学にあたり、岡﨑副理事長より『核融合はITERにかかっており、ITERと国内計画を結びつけることが大事であり、ブロード・アプローチでは十分にEUと協力していきたい。出来るだけ早く職員をカダラッシュに派遣し、早く準備活動を立上げるべきと思っている』との挨拶があった。なお、ITER職員の受入は1月初めから開始し、外国人のビザ、滞在許可書、学校等の手続きすべてをカダラッシュの事務所で済ますことが出来るようにするとのことであった。


ITER予定地でITERサイト責任者から
サイトレイアウトの説明を受ける岡﨑副理事長


 
5. まとめ
 本出張でのENC2005、CEA-JAEAの協定調印等及び各施設への訪問等を通して、以下の印象を得た。
 
 エネルギー需要増大、石油価格の高騰、京都議定書による環境への考慮等から、欧州において、ここ数年原子力ルネッサンスが言われており、EPR建設やGen-IVを始めとする研究開発、ビジネス等に向けた原子力関係者の期待と活気を終始感じた。
 
 本国際会議において、欧州の研究機関と並んで、原子力機構として全分野を紹介するブース展示を行うことによって、多くの参加者に関心を持って頂き、新法人の紹介を成功裡に実施することが出来た。
 
 燃料サイクルの開発に関するフランス及び日本の方針は同様であり、統合に対応したフランス原子力庁との新協定の調印により、燃料サイクルを中心とした研究開発を加速することができる。
 
 原子力大国フランス、日本は80年代、90年代の難しい時代をともに乗り越えて来たので、今後とも日仏間の協力を更に進め、エネルギー問題及び地球温暖化問題に対処するための原子力利用開発を着実に進めることの重要性を再確認した。
 
 核融合研究開発も、ITER計画及びブロードアプローチ計画を中心とした新たなフェーズに入り、今後さらに日仏協力を密にして進める必要がある。
 
 最後に、核分裂エネルギー及び核融合エネルギー開発とも新たな時代に入り、原子力エネルギー利用研究開発の新たな時代を日仏が世界の先頭に立って切り開く時代となり、今後の原子力利用の研究開発に携わる者として、決意を新たにした。
 
以 上


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