陸域地下構造フロンティア研究 
−第2フェーズの計画−


(第1フェーズの成果)



1.陸域地下構造フロンティア研究の概要
1.1 地震総合フロンティア研究


 阪神・淡路大震災を契機に、地震防災対策特別措置法が平成7年6月に成立した(図1-1)。同措置法に基づき科学技術庁長官を本部長とする地震調査研究推進本部が総理府に設置され、国内の地震観測網を強化するとともに今後の地震研究を強力に推進することとなった(図1-2、1-3:組織は平成7年当時)。

 これを受け、科学技術庁においては、科技庁傘下の関係研究機関(核燃料サイクル開発機構、理化学研究所、海洋科学技術センター、日本原子力研究所、宇宙開発事業団)が地震総合フロンティア研究を進めてきた(図1-4)。

1.2 陸域地下構造フロンティア研究

 サイクル機構では、地下深部での地殻の動きに着目し、地震発生機構の解明を目指すとともに、新たな地震観測手法の開発を行う陸域地下構造フロンティア研究を実施した(図1-5)。本研究は図1-6に示すように、(1)地震発生に関する研究、(2)地震発生と地下水挙動に関する深地層総合研究、(3)活断層帯での地殻活動研究の3つの研究テーマからなり、岐阜県東濃鉱山および神岡鉱山を活用して実施した(図1-6、7)。

1.2.1 地震発生に関する研究(図1-8 〜 1-11)

[研究の目的]
 プレート境界1)あるいは内陸活断層で起こる大地震の発生機構を解明するため、精密制御定常信号システム(アクロス)を開発し、地下深部の断層面近傍で起こる微小な地殻内変動を遠隔監視観測する。

[調査研究の内容]
〇アクロスシステムの開発
 地震波速度の分布構造(音波アクロス)および電気伝導度2)の分布構造(電磁波3)アクロス)をリモートセンシング4)で解明し、さらに地殻の微小変動を常時モニターするための地下探査法を開発する。アクロスシステムの原理は、複数の周波数の正弦波5)を精密に制御した人工地震波を定常的に発信し、信号を時間区間蓄積記録装置(TSS)6)によって受信するものである。
 音波アクロス震源装置は平成8年7月に東濃鉱山に設置され、震源のGPS7)制御定常運転が確立し、平成11年6月からは連続運転を開始した。受信実験は東濃鉱山とその周辺で主に行っており、震源から100km離れた岐阜県上宝町でも受信に成功している。
 電磁アクロス送信電極は、平成11年11月に東濃鉱山に設置され、平成12年1月から運転を開始した。受信実験は主に東濃鉱山周辺で行い、送信源から3km離れた地点で受信実験を実施した。

〇地殻変動観測
 地震発生が予測される地域において、地下深部の地殻歪、応力や地下水の状態などをアクロスシステムによって常時モニターし、地震発生に至る地殻変動の時間変化の解析を行う。この段階になれば、同システムは地殻変動調査のみならず、地下資源調査や火山噴火予知研究などの調査手法としても活用可能となる。

1.2.2 地震発生と地下水挙動に関する深地層総合研究(図1-13 〜 1-16)

[研究の目的]
 地震発生に関連して、震源域では地殻変動や地下流体変動が発生して、その影響が地表付近に及び、岩盤中の応力や歪・地下水圧・地下ガスの濃度に変化をもたらす可能性が指摘されている。地殻変動や地下流体変動の関連・メカニズムを解明するための基礎データを得るため、高精度の観測機器の開発とともに、歪・傾斜−地下水−地下ガスなどの精密な連続観測体制を確立する。得られたデータから、地震発生に伴う地震前・地震時・地震後の変動を把握して、地震発生との因果関係を解明する。

[調査研究の内容]
〇地震発生と歪の関係に関する研究
 3成分歪計、傾斜計、加速度計(3成分)を組み込んだボアホール8)地殻活動総合観測装置を用いて、東濃鉱山の坑道内や試錐孔内において連続観測を行い、地震発生と地殻歪等との関係を解析している。ボアホール地殻活動総合観測装置は、平成9年度までに東濃鉱山と三浦半島の油壺観測所(東大地震研究所)に埋設され、油壺観測所では伊豆の群発地震活動に関連した前兆的な地殻変動を検出した。また、地盤の初期応力を計測する新たな機器として、深度1000mまで適用可能なバッテリー駆動の回収型歪計の開発を行った。

○地震と地下水挙動および地下ガス濃度の関係に関する研究
 東濃鉱山周辺の試錐孔には地下水位計9)(3箇所)、間隙水圧計10)(2箇所)、地下水温計、気圧計、雨量計、マスフィルタ型ガス分析計11)を設置して、連続観測を行い、地震発生と各観測項目との関係を解析した。東濃鉱山周辺の観測井では、地震前兆の可能性がある地下水位などの変動を多くの地震について検知した。このような強い地震応答性を持つ観測井は、地震前兆現象の研究に重要である。
 東濃鉱山の調査坑道にラドン12)計(8箇所)を平成8年度から順次設置し、連続観測を行った。坑道排気口にもラドン計およびマスフィルタ型ガス分析計を配置することにより、坑道全体を一つのセンサーとして地震前後でわずかに変化する地下ガス濃度の観測を可能にした。
 また、種々の観測データを一元的に管理するための観測ネットワークの整備を行った。

1.2.3 活断層帯での地殻活動研究(図1-17 〜 1-21)

[研究の目的]
 活断層の形成(地震の発生)メカニズムを解明するため、活断層を横断する調査坑道を掘削し、活断層の深部構造と断層破砕帯13)の性状などを調査研究する。さらにGPS観測や微小地震観測を行い、活断層の活動様式を明らかにする。

[調査研究の内容]
〇跡津川断層の活動様式の把握
 跡津川断層系14)は、我が国の断層では特異なクリープ15)性の変位を伴う可能性が示唆されている。これらのメカニズムを解明するため、主に地震学的および測地学的手法を用いて、跡津川断層上で生じているスリップの量をmmのオーダーで明らかにする。このため、周辺域の広域的地震活動、および近傍の微小地震観測、連続GPS観測(平成8年度から)を実施した。これらの観測によって、跡津川断層のクリープをモデル化することを試みた。
 また、断層破砕帯を伝わるトラップ波16)の観測を平成9年度から行っており、断層破砕帯の地下構造の解明を進めた。
 さらに、断層周辺の基礎情報取得のため、断層周辺の広域地質調査、空中写真判読、反射法地震探査17)(バイブロサイス18))、TDEM探査19)、トレンチ20)調査および地層抜き取り調査などを実施した。

〇活断層調査坑道における活断層研究
 跡津川断層と併走する茂住−祐延断層21)を対象として、地表下300mにおいて断層を貫く延長480mにわたる活断層調査坑道を、平成8年度から9年度にかけて掘削した。このような活断層研究のための調査坑道は、世界でも初めてであり、活断層を直接かつ連続的に調査することが可能である。
 坑道内では、断層面周辺の力学的歪の連続観測、弾性波22)や比抵抗23)の精密測定、間隙水圧測定などを行い、断層近傍における岩盤透水性の変化などの解明を進めた。
 また、調査坑道から湧出する地下水の化学組成・同位体組成を分析し、断層運動に関連する断層内の水の流れや岩石−水反応を調査した。岩盤の破砕の強弱と水質との関係などが明らかにされた。

1.3 研究実施体制

 地震総合フロンティア研究では、地震研究の中でも未踏であり先端的な部分の研究を、組織の枠組みを越えて総合的に推進することとされている。これを踏まえ、陸域地下構造フロンティア研究では、多分野にまたがる研究領域を対象として、広範な分野の専門的研究者を結集して、参加研究者の意志に基づく創造的、基盤的研究を実施した(表1-1)。
 本研究は開かれた流動的な研究システムで実施するため、サイクル機構の規定にある客員研究員制度を活用し、大学等国内研究機関のほか、海外からも研究者を招聘して進めた。教授・助教授クラスの非常勤客員研究員に加えて,新進気鋭の若手研究者を常勤客員研究員としたところが特徴の一つである。
 本研究は大きく3つのチーム(テーマ)に分かれて実施され、各チームの研究員構成の推移は表1-2に示す通りである。
 各チームとも大学や国立研究機関と研究協力を実施しており、アクロス研究チームは野島断層研究プロジェクト、地震地下水研究チームは東大地震研と、活断層研究チームは跡津川断層研究で地質調査所などと協力体制を築いた。
 本研究は東濃地科学センターが所掌し、地質環境長期予測研究グループが研究業務の執行調整および運営管理に当たった。
 本報告書は、平成8年度から平成12年度における「陸域地下構造フロンティア研究」第1フェーズの研究成果を各研究担当者が執筆し、地質環境長期予測研究グループが全体の取りまとめを行った。

1.4 資金計画

 陸域地下構造フロンティア研究の予算の推移を表1-3に示す。平成7年度に補正予算で約8.4億円が認可され、本研究が開始した。その後は毎年約2億円の予算で実施した。
 各チームの主要調査研究項目と、それに要する観測機器等の推移は表1-4に示す通りである。

(藤原 治・松末 和之)


2. 地震発生に関する研究(アクロス)
2.1 研究の目的‐意義

 当初の提示目的:能動的に地下の構造と状態を直接見る「光」と「目」、すなわち、地下の地震波速度と電気伝導度の分布構造、さらにそれらの微小変動をリモートセンシングする刷新的な地下探査手法(アクロスシステム)を一つの技術体系として開発し、その実用化をはかる。

 意義:次のように多面的である。

 (1)日本が世界に発信できる新手法の開拓
 (2)新しい地下構造探査、監視技術の開発研究の遂行
 (3)地震発生場の監視観測の基礎確立による地震予知研究戦略
 (4)地下のカラーホログラフィー24)に発展できる技術の出発点
 (5)その他、全ての地下構造解析、監視の理工学的に有用な基礎と実用など

 (熊沢 峰夫)

2.2 研究目標

 当初の提示目標 : 地震発生が予測される地域において、地下深部の地殻歪、応力や地下水の状態など地震発生過程を制御する諸要因をアクロスシステムによって常時モニターし、これによる地震発生場と物理過程の時間発展解明。
 現時点における研究目標:上の「多様な意義」で述べた将来の発展に資することを考慮しつつ、これまでの地震予知・噴火予知研究で専ら地表面近傍に発生する諸現象の受動的な観測に依存しているのを補完するのが目的である。本研究課題の5年間の達成目標は、アクロスの理論的・技術的基盤の確立、およびテストフィールドにおける具体的な事例の提示に基づいて、地震発生場である日本列島地下状態監視システムの具体的設計を提案することである。

(熊沢 峰夫)

2.3 研究計画

 互いにリンクした二つの側面、即ち、(T)ハードウエアの技術開発+データ解析理論と計算アルゴリズム25)の開発研究、およびそれらによる(S)地下構造解明 を3つのステップとする年次計画とした。(但し、この計画は、予算規模、可能な研究員規模、研究条件などについての資料のない段階で設定したものである。)


註1. 実施項目の内容
   [技術開発研究(T)]
        T‐:アクロスシステム基本技術実証
        T‐:アクロスシステム標準的手法への確立
        T‐:アクロスシステム実用性の向上
   [地下構造と地震発生場の研究(S)]
        S‐:実用目的の試験観測による技術蓄積
        S‐:日本列島地下常時モニタリングシステム設計
        S‐:日本列島地下常時モニタリングシステム具体化
註2.    →:研究はJNCの枠をはみ出して発展して行くことを示す

(熊沢 峰夫)

2.4 研究成果

(1) 短い要旨
 名古屋大学で構想段階にあったアクロスは、地震総合フロンティア研究において、基礎研究と開発研究の積上げが行われ、実用化への堅実な発展を果たすことができた。個別課題の報告は、それを担当した各研究スタッフが成果現状を奔放に報告する。

(2) 研究成果の構造についての要旨
1) 論的基盤の確立
 アクロスでは非破壊的な連続サイン波を定常的に地下に送信し、その受信信号の解析によって、遠距離でも高いS/N比26)で複数の波の走時27)を高精度で決定できる、と主張して出発した。当時、それは原理的に不可能だと考える研究者が主だった。現在は、線形力学系の励起入力−応答関係を記述する伝達関数の基本的性質の分析、情報理論に基づいた信号と雑音の性質に基づく存否セプストラム理論28)の定式化などを行い、アクロスの理論的基礎をほぼ確立した。また当初は、アクロスは電磁波にも適用できると述べるだけの段階であったが、高周波数の地中レーダー29)領域から低周波数のMT30)領域(電磁的変動は拡散場)までを一元的に記述する伝達関数を導き、アクロスを用いて波線にそった群速度の周波数依存性を決定する理論を定式化した。弾性波と電磁波の分散と吸収がアクロスの観測量であり、地震発生場の構造敏感性についての研究に有用であることが明らかになった。特に、電磁物性の周波数依存性(誘電分散)が、地下に存在するH2O分子を介した電気化学反応の効果で、地震発生場の水が遠隔監視可能な観測対象であることを理論的に示した。
 最終年度において、アクロス信号の最適設計法を提示し、具体例を数値計算によってその具体例を示した。分散性の著しい電磁波について、地殻内に期待されるパラメータを用いた伝達関数の数値計算例を示し、地殻深部の構造情報を抽出できる条件を具体的に示した。伝達関数を地下構造とその状態に変換する手段として、レイパス解析とモード解析の相補的機能を明らかにし、順問題の戦略を波動論と物性論の両面で明らかにした。水平構造における順問題の計算プログラムを作成し、数値計算によって、観測戦略検討の基礎を固めた。

2) 技術的基盤の確立
 本研究の出発時点では、名古屋大学構内において20Hz、数10 kgfまでのプロトタイプ音波送信装置とテレメーター同期の受信による試験が行われた段階で、実用装置の実現は技術的に極めて困難、というのが大方の見方であった。
 フロンティア研究の成果として、東濃鉱山に50Hz、20tonfまでの実用試験装置を開発設置し遠方への音波信号送信を実証した。その同期制御精度はサブマイクロ秒を達し、開発した時間区間蓄積記録装置を使ったFM送受信(複数のサイン波の同時扱い)と多重送受信(混信なく複数の送信装置で同じ周波数帯信号の同時扱い)を実証した。さらに時間区間蓄積記録装置の試作試験、多種の地震計とその地下アレイ31)の特性試験などの積み重ねにより、弾性波の伝播時間測定精度として、数マイクロ秒も達せられる基盤を確立した。しかし、アレイ観測に必要な廉価高忠実地震計の開発確保には対応不適の結果、目標を果たしていない。また、機動性のある可搬型音波送信装置(HIT)、電磁アクロス送信装置などの技術開発も行いつつある。
 弾性波アクロスに必須の信頼性のある加速度計の検定方法について基本戦略を明示し、その一次検定技術を積み上げ(計量研究所と共同研究)、二次検定装置の設計製作を行った。また、地表の環境変動の影響を排除する地震計設置手法を開発し、その設置を行った。また、電磁アクロス信号送信装置の送信特性の時間変動監視計測試験によって、問題点の洗い出しを行い、次段階で進むべき具体的方向を明確に示すことができた。高速データの高速サンプリングを行う時間区間蓄積記録装置を設計製作した。改良したHIT型装置の運転試験を行い、その機能を確認するとともに将来改善すべき問題点を明らかにした。

3) テストフィールド事例研究
 東濃アクロスシステムとしては、東濃鉱山音波送信装置から送信する信号は100km離れた地点でも検出された。一方、東濃鉱山周辺5kmの探査では、名大の瑞浪地震観測壕内の地震計アレイによって、この地域の地下に散乱体が存在することを確認したがそれを同定する観測システムは未だ十分でない。これはそのための地震計確保がまだ出来ていないからである。しかし、現状での最高水準の地震計を使用した観測システムの整備は進めており、東濃鉱山のボアホール内に設置した地震計によってS/N比約104という高精度の伝達関数の連続データ取得を実現し、地震波速度の日変化と降雨による微小な変化も検出している。また、地下130mにGPS同期坑内地震計アレイを設置し、アレイとしてのデータ取得も始めた。電磁アクロスでは、プロトタイプ送信装置と鉱山近傍の受信試験によって数kmまでの信号検出ができることを確認した。これで、東濃アクロスシステムとして弾性波と電磁波の同時連続送信による構造解明、状態監視システムのプロトタイプがほぼ形作られ、データ取得が始められた。
 正馬様用地に設置したHIT型装置による送信信号を、同敷地内の10数点で観測し、10〜60 Hzにおける伝達函数データの取得をおこなった。東濃鉱山からの弾性波送信信号は、鉱山地下坑道に設置した地震計アレイによる観測データが蓄積された。また、名古屋大学瑞浪地下壕中に弾性波観測アレイを建設し観測を開始した。
 なお、東濃アクロスシステムの他に、淡路島の野島断層と岐阜県各務原にも音波送信装置を設置し、監視観測を積み上げている。
 野島断層では断層を貫く試錘孔への注水によって近傍の地震波速度と電気伝導度の微細な変化がとらえられている。野島断層層添いに設置した地中音波送信装置の14ヶ月連続運転(停電時の短時間休止は除く)によって、鳥取県東部地震に際して弾性波速度の変化を検出した。また、気圧変化による微少な弾性波速度変化を検出した。
 淡路、東濃共に、潮汐歪と相関する地震波速度変化は現在の検出限界以下(<10-4 )である。

4) 総括
 アクロスを構成する多数の個別的な理論的あるいは技術要素のそれぞれについて、全体系中の位置付けを明らかにしつつ、一連の具体的ないくつかの開発研究を継続発展させた。研究成果の一部については数編の論文を作成し査読学術誌に投稿した。
 東濃鉱山に地中音波送信装置が設置されてからの5年間に、それまで単に構想段階にしかなかったアクロスの理論と技術の開発研究を積み上げ、弾性波アクロスと電磁波アクロスの両方について、識者の目には明白に見える実体を確保し、平成12年度では、これまでの不足分を補完して次段階(第2フェーズ)における実用化への研究開発の基盤とその具体的方策を与えるレベルを達した。

(3) 研究成果の提示内容
 アクロスの開発研究では、これまでの概念と異なる視点での理論的枠組みにあるアクロスを具体的実用技術にするため、当初は、必要な要素技術が何であるのかさえ必ずしも明らかではなかった。アクロスは線形力学系の構造を調べる汎用手法であるから、その適用対象にも目標にも方法にも多数の分岐がある。しかも研究者の関心の対象も社会的ニーズの方向も広い。例えば、アクロスの目標を限定し集中投資すべきだ、という意見があったし、現在でも各方面から我田引水の開発要求がくる。その対象限定の提案として、たとえば、地震予知研究の他に、地殻構造のトモグラフィ32)、市街化地域の潜在断層の非振動検出、場所の特定はなくてもよいから地震波速度の潮汐変動を検出、物理探査の手段、マグマ溜まりの検出、物性測定の手段、構造物の非破壊試験、トンネルの崩落予測、廃棄物処分場の監視など、実に広範にわたる。したがって、アクロスとしての大局的方向は明白でも、局所的個別的には、基礎理論、装置開発、観測システムなどの方法、適用の対象すべての面で極めて模索的な要素が大きく、数多くの思考錯誤、試行錯誤を行う必要があった。アクロスは論文を書かないで研究の食い散らしをやっている、という指導的立場の研究者からの酷評がでるのも尤もな面がある。しかし、存在していないものを創り上げて行く段階での食い散らしは非常に重要なアプローチであったと確信している。食い散らして関連領域を見た成果として、食い散らした中からいろいろな要素や急所が次第に見えてきたし、アクロスのもつ意味や位置付けも明解になって来たのである。そのことは「研究成果」とは通常は呼ばないが、本研究のまぎれもない成果のひとつである。
 本フロンティア研究で評価を受けるために提示する個別研究成果は、莫大な模索研究のうちで、個別研究課題について東濃地科学センターに常勤している担当者の限られた時間でお目にかけられる形にできたものだけである。また、名古屋大学の共同研究者の寄与を網羅していないが、それは単に時間などの物理的制約によるものである。チームリーダーは非常勤であるが、研究内容の性格上、纏まりは特に悪い研究報告を行う。
 アクロスの開発研究は、いずれひとつの理論体系/技術体系として形をなす途中の過渡段階にあるので、そのつもりで見ていただきたい。

(熊沢 峰夫)

2.4.1 東濃音波アクロスシステムの開発成果とその総合レビュー

 陸域地下構造フロンティア研究プロジェクト・アクロス研究チームは、岐阜県土岐市に位置する東濃鉱山をテストサイトとして、地下構造とその時間変動とを精密計測する手法の開発を行っている。この5年間におけるアクロス研究チームにおける開発成果のうち音波アクロスに特定してレビューを行う(図2.4.1-1)。

(1) 東濃地域における音波アクロス研究
 正弦波による周波数領域の伝達関数を調べる手法は、ものの性質を調べるための汎用手法である。これを弾性波や電磁波による地下探査に適用するための技術開発を、我々アクロス研究チームは行ってきた。これまでの研究は、これが未開拓の汎用手法であるので、当面は特定の調査対象をリジットには限定せず、装置の開発や改良および解析法、探査手法などを広く考え、しかし地道に進めてきた。本報告では、東濃でのアクロス研究を探査システムの開発とフィールドスタディ2つに分類して説明する(図2.4.1-2)。両者の関係は相補的であり、出来上がった探査システムは即座にフィールドに持ち込まれ、テストされ、改造・改良を繰り返していくという方針で進めてきた。

1) 探査システムの開発
 探査システムには、震源装置、観測装置およびデータ処理(ソフトウェア)の開発が含まれる。
 震源装置については、20tonf級回転型アクロス震源の製作や試験の他、2tonf級可搬式回転型アクロス震源(HIT)の改良などが進められている。紙上の段階では、遠距離低周波送信装置、磁気駆動式直線加振型震源装置などの検討や設計を行っている。本報告では、20tonf級回転アクロス震源装置に焦点を当てる。
 観測装置では、種々の地震計の試験、地震計の開発や検定に関する検討、およびデータロガーに関する検討と種々の時間区間蓄積型記録計の開発などが挙げられる。
 データ処理では、探査システムの一部としては、時系列データを周波数系列データに変換し、震源関数(現状では回転周波数から、発生力・変位・速度・加速度を計算)を除すことで周波数領域での伝達関数を求めるところまでを含む。その後の解析法としては、走時解析・モード解析などの手法の考案やプログラム作成が進められてきている。

2) フィールドスタディ
 主として、20tonf級回転型アクロス震源装置を用いて地下構造と時間変動とのそれぞれをターゲットとした実験を進めている。理想的には両者は同じ一連の探査で得られるものであるが、現実的には、後者は、変動が非常に大きい場合を除いて、かなりS/Nを稼がないと紛れが大きく検出が困難なため、近距離で信号レベルが大きい探査を除いて、ここでは便宜的に分けている。

(2) 震源装置の開発
 現時点で稼動している回転型アクロス震源装置について説明する。この震源装置の開発は、大きく4段階に分けることができる(図2.4.1-3)。

1) 回転型アクロス震源装置の開発
 20tonf級東濃音波アクロス送信装置の基本設計は平成6年から名古屋大学で行われ、阪神淡路大震災を挟んで、平成7年度に着工、平成8年7月に完成した(図2.4.1-4)。6×3.5×2.3mの鉄骨コンクリートの基礎(岩盤カプラー33))に偏心モーメントの異なる3機の回転型アクロス震源装置が組み込んである。それぞれの震源装置は、異なる回転周波数で最大約20tonf(105N)の力を発生する。縦置きと横置きの二通りの設置方法により、極性の異なる地震波を発生することができる。偏心質量の回転は、サーボモータにより行われ、外部制御パルスによる位相制御方式となっている。岩盤カプラーは、20tonfの発生力に対しても周囲地盤の疲労破壊強度を超えない1/10気圧以下の応力となるサイズに設計された。岩盤カプラーは、第三系34)の泥岩中に設置されている。これは岩盤とは言えない硬さであるが、かなり固結しており、建築上の基礎としてはしっかりとした地盤である。

2) 位相・周波数制御の精密化と回転計測
 サーボモータの回転は、外部制御パルス(以下制御パルス)による回転位相制御が行える(1パルス1/2000回転)。震源制御では、この基準となる制御パルス列を如何にデザインし精密化するかということと、モータ回転が制御パルスにどの程度忠実に追従するかを調べるところからスタートした。

a) 制御パルス
 まず、制御パルスの基準クロックとして我々はGPSクロックを採用した。これは、後で述べる観測装置との同期をとりやすいことと、非常に安定した周波数基準となり得ることからである。GPSクロックは、単独で用いる場合、衛星条件がよければUTC35)(世界協定時)に対して40nsec〜1μsecレベルで同期した時刻信号(1PPS)を生成する。また、良いGPSクロック(例えばTrue Time XL-DC)などでは、nsecオーダーで1PPSに同期したサンプリングクロック(1k、1M、5M、10MPPS)を発生している。以下に述べる制御パルス発生装置は、この10MPPSを基準として用いている。
 さて、地下構造を精密に求めるためには、周波数毎の伝達関数が時間変動する影響を避けるために、同時に複数の周波数データを取得することが必要である。一台の回転型アクロス震源装置でこれを実現する唯一の方法は、周波数変調(FM)である。制御パルス周波数を正確にスイープ36)させることでモータの回転周波数を変化させ、FM送信を実現できる(図2.4.1-5)。
 本研究では、GPSに同期しながらも、任意の周波数のFM変調パルス列を発生させる装置をDDS(Direct Digital Synthesizer)により実現した(図2.4.1-6)。市販の32bitDDSを用いることで、アクロス回転周波数に換算して58nHz(5.8×10-8Hz)の分解能が得られる。DDSはGPSクロックを基準として非常に精度の高い周波数を発生することができるが、量子化による丸めにより、設定値に対して微小なずれ(上述の分解能)を本来的に有している。このことは、震源の位相が直線的にドリフトすることを意味している。その程度は最大で6.6×10-4rad /hourである。このため、長時間観測の場合は、1時間毎にファイル化したデータから位相の直線ドリフト分を補正した後に、必要な時間数だけのスタッキング37)を行っている。ドリフト分を震源側でフィードバック制御することも可能だが、PCによっては動作の信頼性が低い場合もあるので今のところ採用していない。その後48bitのDDSが入手可能となったためパルス発生装置の改良を行った。これにより実現できる周波数分解能は、0.89pHz(8.9×10-13Hz)に達し、位相のドリフト量は7.5年間で6.6×10-4radとなる。
 理想的なFM信号波のデザインも試みており、送信周波数帯域で振幅を均一化するためにはノコギリ波が良いこと、帯域制限を行うためにはサイン波が良いことがこれまでの研究で分かっている。モータの制御パルスに対する追従性から前者は困難であり、後者はパワーをもたない周波数が存在することから、これまでは、up-sweepとdown-sweepの時間比率を3:1ないしは7:1程度にした三角波を用いてきた。最近ではサイン変調を複数組み合わせて、振幅の均一化をほぼ満たしつつも、同時に帯域制限にも優れ、なおかつモータの追従性も良好な複合サイン変調を考案し、実戦投入している。次の課題は、回転型アクロスの発生力が周波数の2乗に比例して大きくなることによる振幅の不均一性を、低い周波数ほど滞留時間を延ばすというセンスで、如何にデザインするかということになる。

b) 実際の送信波形とモータ回転
 上述の装置を用いた実際の送信波形の例を複合サイン変調について示す(図2.4.1-7)。FM信号波は、変調周期10秒をもつ基本のサイン波に、その2倍高調波(5秒周期)を合成してある。2倍高調波の周波数偏差を決めるには、結果として得られるFM送信波のスペクトルデータにおいて、ターゲット周波数帯域内での振幅の最小値が最大になる場合を数値的に求めている。
 比較としてあげた、3:1三角波と比べて、振幅のばらつきは同程度であるが、ターゲット周波数帯域の外側での振幅が急峻に減少しており、良好な帯域制限がなされている。また、モータ回転の計測からも、制御パルスに対するモータの追従性が良いことが理解できる。なお、実測データにおけるギザギザは、モータ回転におけるサーボ系の揺らぎを示していると考えらる。これは一定周波数回転の場合にも見られることであり、位相で見て10-3rad以下のランダムな揺らぎとなっている。

c) 精密制御により得られる恩恵
 制御パルスのタイムキーピングを厳密にすることで、アクロスでは様々な観測方法が可能となる。その最たる方法の一つが、複数の震源装置を同時に稼動させながらも、相互に混信をおこさない多重送信である(図2.4.1-8)。FM送信の中心周波数を適切に選択することによって、あるFM信号の周波数系列データを別のFM信号の周波数系列に入れ子にしたり、帯域をずらしたりすることでお互いに干渉しない観測を行うことができる。図2.4.1-9には、実際に2台の送信を行ったスペクトルデータを示す。周波数系列を互いに入れ子にした場合と、帯域を変えて送信した場合の実例を示している。
 さて、上述のように回転型震源の偏心質量の回転位相と周波数のコントロールは極めて精密に行えるようになった。これは、発生力の大きさと位相のコントロールが精密にできることを意味しており、発生力は既知のものとして扱えるようになったと言ってよい。しかし、力が既知であっても、実際に発生する波動は、周囲の媒質に依存するため、震源関数は実際の振動を測定しなければ分からない。ここで、震源開発は振動計測という段階に入った。

3) 岩盤カプラー振動の精密測定
 震源開発における次の課題は、ファーフィールドに送信される波動場(震源関数)を如何に知るかということである。この課題に対して、岩盤カプラー上での振動計測からスタートした。図2.4.1-10は、No.3 ACROSSを用いて、5Hz刻みのFM変調送信した際に得られた、岩盤カプラー上でのサーボ式加速度計による測定の一例である。制御パルスから計算できるFM波形による震源(本体)関数を除して、各周波数毎の岩盤カプラー上での伝達関数(振幅と位相)を表している。振幅や位相における、例えば23.5Hzや27.5Hzに見られる凹みや段差は、設置・メンテナンス用に設けているチェーンブロックを支持するためのアングルの共振を拾ったものである。こうした震源室内にある共鳴体が、遠方へ送信される波動にどの程度の影響を与えるものかは現在までのところ明確でなく、次の研究課題の一つである。
 また、このことは、送信所の建物や岩盤カプラーの設計をどうするかについての示唆を与えている。典型的な例が、淡路島のアクロス送信所である。東濃と同等の震源装置が設置されているが、花崗岩の岩盤中にコンクリート基礎(岩盤カプラー)があるということと、震源装置を囲む建物は東濃に比べると大きく堅牢なものとなっているという違いがある。図2.4.1-10には、淡路島の岩盤カプラー上で得られた地震計(速度計)の記録の一例も示してある。東濃に比べて周波数による振幅変化が極めて大きいことが一目瞭然である。この原因としては、花崗岩自体がパワーショベルで掘れるほど亀裂が多く決して岩盤の条件としては良くなかったのではないかということと、建物内の空気の共鳴を地震計が拾ってしまっているということの2点を考えているが、その後の十分な詰めはなされていない。震源近傍に2点、10m深度のボアホールが掘削されて、そこで観測が出来るようになったので更なる原因究明に臨みたい。

4) 震源関数の精密決定問題
 今後は、岩盤カプラー周辺での計測も更に進めて、震源関数を精密に推定するという課題にアプローチしていきたいと考えている。また、この課題に対しては、計測だけでなく、地下構造推定とそれによる振動場のモデル化・モデル計算などを同時に進めるべきであり、その筋の専門家とも共同して進めていく必要があると考える。

(3) 観測装置の開発
 音波アクロスの観測装置は、地震計と時間区間蓄積型記録計から構成される(図2.4.1-11)。計測の基本は、送信正弦波の位相・振幅を精度良く求めるということに尽きるが、精度という言葉のうち、特に重要と思われる点をまずまとめ、その後地震計と時間区間蓄積型記録計についての個別問題に言及する。

1) 応答の直線性
 センサーをはじめとして観測装置の非線型応答があると、特にFM信号のように複数の周波数を扱う場合には、周波数間でクロストーク38)が発生し、本来の信号に高調波などが被り、振幅・位相データにバイアス39)を生じる。非線型性が無視できないような観測装置においては検定を適切に行い、出力の振幅値から入力の振幅が正確に補正できるようにしておく必要がある。

a) 特性の安定性
 微妙な時間変動を捉えようとする場合は、観測装置自体にそれ以上の変動があると何を見ているのか分からなくなる。観測装置自体を環境変動に強いものとするか、装置自体がある程度環境の影響を受けても、温度など設置環境を安定させたり、温度特性などをあらかじめ検定したり、また、常時キャリブレーションを行って補正できるようにするなどして、装置特性変動を取り除く必要がある。

b) 精度よく検定された周波数特性
 地動(変位、速度、加速度)という物理量を紛れなく測るためには、装置自体の振幅や位相などの周波数特性が良く検定されてあらかじめ分かっている必要がある。これは、特に多数のセンサー・観測装置を使用する場合に大変重要となってくる。

2) 地震計の検討(図2.4.1-12)
 アクロス観測用の地震計として求められる性能は、他の地震研究用で望ましいと考えられるものと異なるものではない。結局、地動の変位か速度か加速度を、忠実に出力するセンサーであるということになる。忠実にということを多少整理してみると、

  周波数特性が適切に検定されている
  感度の直線性に優れている
  特性の安定性に優れている
  横感度が小さい
  自己ノイズが小さい

 ということなる。は他と異なり、地動ノイズとの比較で相対的に決まる条件である。の条件は、物理量を計測する以上当然のことである。特に観測の守備範囲が広がってくれば、異なる種類の地震計を用いざるを得なくなるはずであるが、相対的に比較ができなければ話にならない。現状で、の条件を満たし得る地震計の方式は、バネや磁束の性質が良好な部分だけを動作範囲に設定して精度を上げているフィードバック式の地震計であると考えられる。
 一方、個別の性能以外に地震計に求められることがある。地下探査において、地表付近の不均質性は、地下構造を歪めて見せるバイアスあるいは雑音として働く。これを取り除くためには、多数の地震計をアレーとして用いて、表層の不均質による補正をしてやる必要がある。また、補正という観点だけでなく、興味ある構造の空間波数に応じて、エリアシング40)を起こさないような密度の空間サンプリングが必要である。こうした観点から、地下構造を精密推定するためには、性能の良い地震計を多数用意する必要があるということになる。小型で取り扱いが簡便で、かつ比較的安価なフィードバック式地震計となると、強振計に用いられているサーボ式加速度計が候補に挙がる。しかし、小型のサーボ式加速度計は自己ノイズが大きく、地動ノイズが小さいところで、より小さい信号を観測しようという用途には適さない場合が多い。そこで、当面は少なくともテストフィールドである東濃鉱山での地動ノイズ(5〜100Hzで約10-6m/s2Hz1/2をやや下回る程度)以下の自己ノイズの地震計を特定する目的で、種々の加速度計の自己ノイズ測定を行い(図2.4.1-12)、結果としてAを選定した。これらの過程で、自己ノイズの最も大きな原因が振り子の位置検出感度不足に起因することを突き止め、自己ノイズが小さいサーボ式加速度計の概念設計を行った。
 採用した地震計は、坑道内およびボアホールに設置する前に、レーザー干渉計により振動校正を行う空気軸受け加振装置により全数検定を行った。その際、メーカーの提供する従来の検定方式では、特に位相特性、直線性、横感度の検定において様々な問題を有していることを突き止め、検定法の方向性に関する考察を進めた。現在、二重回転円盤式検定装置や3軸加振装置などの検定方式などについても、計量研究所やメーカー等と協同して検討を進めつつある。今後は、より簡便な検定方法として、基準加速度計を6個以上設置した剛体ブロックを、アクロス震源で加振して剛体ブロックの運動の推定とそこに設置した地震計の検定とを同時に行う装置の製作を行っていく予定である。

3) 時間区間蓄積型記録計(図2.4.1-13)
 送信される信号がFM波であり、含まれる周波数の数も実験によって異なることを前提として、対応が容易な時系列取得方式の受信装置を開発してきた。受信装置としては検波方式も可能であるが、低周波の受信では以下のような困難があるためである。
 段階的に周波数をスイープして周波数をスキャンする方式では、全周波数を終えるまでに地下や周囲環境の時間変動によるバイアスが生じる。FM波の周波数成分すべてを同時に受信する検波装置の製作が難しい。また、時系列データを取得することにより時間領域と周波数領域の両方でデータを吟味でき、特に時間領域で現象を扱い慣れた者にとっては現象を理解しやすいというメリットもある。
 時系列でデータを取得する場合に、送信信号の位相情報を精度よく求めるためには、送信装置との間で時計の同期精度が重要となる。上で説明したように、我々は、震源装置をGPSによりUTCに対して常時1μsec以内で同期したクロックを基準に制御しており、そのため、受信装置も同様にGPSクロックを用いて、A/D41)のサンプリングクロックを同期させてやれば、近距離から遠距離まで同期精度が保証されることになる。
 アクロスの観測では、これは計測における理想であるが、ノイズフリー、バイアスフリーデータの取得を目指すということを念頭においている。
 ノイズフリーの理想に少しでも近づくために、センサーやデータロガーの自己ノイズを極力排除することはもちろんのこととして、アクロスでは長時間の観測によるS/Nの向上を積極的に取り入れる。取得データのフーリエ変換42)を考える。理想的な正弦波の振幅は時間によらず一定であるが、ランダムノイズのパワースペクトル密度43)はデータ取得時間が長いほど減少するので、長時間のデータ取得を行えばS/Nを向上させることができる。現実的には、闇雲に長いデータを取得することは、記録媒体や計算などの手間を増大させるため工夫を要する。アクロスの場合は、見たい信号の周波数が既知であるため、その整数倍の時間区間で区切ってスタッキングを行うことで、S/Nを向上できる(時間区間蓄積)。時間区間の整数分の1の周期をもつ正弦波信号は加算回数に比例してその振幅が増大するが、一方ランダムノイズは、加算回数の平方根でしか振幅が増えない。こうした考えに立って、種々の時間区間蓄積型記録計(Time Segment Stacking-recorder:TSS)を開発してきた。
 バイアスフリーという意味では地震計と同様に、

 周波数特性が適切に検定されている
 直線性に優れている
 安定性に優れている

 といったことを時間区間蓄積型記録計にも課すこととなる。アナログ回路に関しては、周波数特性分析器やネットワークアナライザのような周波数領域の伝達関数をダイレクトに測定できる装置があり、比較的精度良く検定が行えるが、A/D変換器に関しては、メーカスペックに頼らざるを得ない段階であるというのが現状である。
 現在までに開発してきた時間区間蓄積型記録計の一覧を図2.4.1-14に示す。様々な観測形態に対応出来るように機種を揃えてきた。バッテリー駆動・小型の機動観測用、センサーにダメージを与えない光通信型ボアホール用、多チャンネルのアレー観測用などである。まだまたそれぞれ欠点があるが、改良が現在も進められている。

(参考):A/Dを駆動するサンプリングクロックは、GPSクロックにより生成する。これまでに開発した時間区間蓄積型記録計のサンプリングクロックは、それぞれの方法でGPSクロックとの同期を試みており、その精度はまちまちである(図2.4.1-14)。最近のPLL技術を応用した方法では、GPSエンジンから1PPSを取り出し、このタイミングを常時データロガ−の内部時計として用いる周波数電圧制御型−温度特性補償機能付水晶振動子(VC-TCXO:Voltage Controlled-Temperature Compensated Crystal Oscillator)の発振周波数にフィードバックしてやり、GPSクロックと常に同期したサンプリングクロックを生成させる方法が、確実に精度が得られる。ちなみに、GPSエンジンからの1PPSには揺らぎがあるので、ある程度の時定数をもったフィードバックが必要である。この方法で常時数nsec〜μsec以内で平均的GPS1PPSに同期したクロックができる。なお、単独でGPSクロックを用いる場合は、UTCに対しては100nsecからμsec程度の同期であるが、同じGPSエンジンを用いた2つのシステムを近くで使用する場合の相対精度は更に良いはずである。

(4) 東濃地域実験サイトの構築
 東濃鉱山を中心として大きくは100kmの遠方まで、音波アクロス震源の守備範囲と考え、東濃地域実験サイトを構想した。地下構造を精密に求めるためには、震源関数を精密に求める必要があるが、これには、震源近傍ほど波数の大きな構造まで知る必要がある。これは、受信点においてもしかりで、アレー観測が是非とも必要である。近くほど密にというイメージは、ちょうどパワーズ・オブ・テン的な発想で地理的配置を考えるのが分かりやすい(図2.4.1-15)。近傍の速度構造(Vp:約2〜3km/s)と送信周波数(5〜50Hz)を考慮すると、数百m以内に密に地震計を並べて観測し、震源関数とその時間変動を常時モニターするのが望ましいと考えられるが、種々の制約の中、未だその対応は充分できているとは言えない。

1) 東濃鉱山アクロス施設位置図(図2.4.1-16):半径500mスケール
 現時点で岩盤カプラ−上以外では、ボアホール(98SE-01 : 203m)に1点、鉱山坑道内に8点の観測点を設置している。坑道内の地震計アレーは、2000年2月末から観測体制に入ったばかりで、データ取得を進行中である。2000年度中には、97FT-01号孔の地震計にTSSを接続して観測を開始した。また、98SE-01号孔の地上部、98FE-01号孔の孔底(150m)と地上部とに地震計を設置した。ニアフィールドを含む観測点として、震源関数の把握およびその変動を捉えること、深部からの反射波および各務原アクロスなどの遠方からの信号を捉えることを目的としている。また、地下水の遮水壁の役割を果たしていると考えられている月吉断層の両側での地震波の伝播や地震波速度変動の差異を追うなどの興味深いテーマもある。更に自然地震の観測も同時に行う。震源関数の把握のためには、臨時に観測点を置いて密に観測していく必要があるが、アクロス震源が鉱山用地の端に位置するため、地震計を設置できる場所の制約があり、偏りがあるのが残念である。

2) 東濃鉱山周辺臨時観測点(図2.4.1-17):半径5〜10kmスケール
 水理試験などの目的で、ボアホール(DHシリーズ孔)が掘削された借地を利用した臨時観測点である。現在、各観測点のサイト調査を行っている。10×10m〜30×30mの面積の敷地があるため、ここに地震計アレーをおき、深部反射波など種々の地震波相の検出を目指す。10kmは、ちょうど土岐花崗岩体のスケールであり、この規模の地下構造体への適用試験となる。

3) 名古屋大学テレメータ地震観測点(図2.4.1-18)半径50〜100kmスケール
 遠方での観測は、名古屋大学のテレメータ観測点のデータを活用させて頂いている。現在、大学の多くのテレメータ観測点では、GPSに同期したサンプリングクロックを用いてA/D変換を行っており、連続データを取得している。この連続記録を必要に応じてスタッキングしてやれば、TSSと同じに使えるのである。単一周波数信号(25Hz:10tonf)の送信では、これまでに101km(上宝:京都大学防災研究所)まで信号が約6日間のデータで確認されている。また、FM信号(13Hz±3.5Hz:13Hzで5.4tonf。0.1Hz刻み70本の周波数の同時送信)の観測では、約9日のデータで、29km(豊田)まで信号が確認されている。

(5) 実験結果概要

1) 到達距離試験−距離による振幅減衰の一例(図2.4.1-19)
 アクロス震源装置で探査を行う場合に、観測点までの距離と地動ノイズレベルから、どの程度の時間のスタッキングが必要であるかの目安を得るため、単一周波数( 25Hz:10tonf )であるが、距離による振幅減衰の観測試験を行った。図2.4.1-19で、20kmまでの観測点は1時間のデータ、20km以遠の観測点は、6日間のデータから求めている。
 信号の振幅は、ほぼ距離の2乗に反比例して減少している。図では、地震観測点の代表的なノイズレベルが時間領域での値で記されているが、信号が検出できるかどうかは送信周波数付近のノイズのスペクトル振幅密度による。図の右側の目盛りは、発生力1Nあたりにした振幅で、震源の能力あるいはFMで各周波数での発生力を知って、どの程度の距離とノイズレベルのところで検出可能かが推定できる。

2) 地震波相分離および走時解析実験(図2.4.1-20)
 孔底地震計を利用して震源距離209mにおける伝達関数を求めた。震源は、No.3 ACROSS(縦置き、35Hz機)で、5Hz〜35Hzの周波数を4分割してFM送信して得られた周波数系列データを、モータ回転のデータから導いた震源関数で除した伝達関数とそれをフーリエ変換して求めた時系列データの一例(上下動)とを示す。図では、0.064秒と0.164秒に地震波相の到達が見られ、それぞれP波44)(3,300m/s)とS波45)(1,300m/s)に対応すると考えられる。存否法による更に詳しい解析は現在進行している。また、モータの右回転と左回転場合の両方のデータを取得しており、この2つののデータを合成することで直線加振の場合のデータが得られるので、各地震波相のパーティクルモーションとの対応なども調べている。

3) 地震計アレー観測実験(図2.4.1-21、2.4.1-22)
 鉱山から2.4kmの距離にある、名古屋大学地殻変動観測壕の中に地震計を8m間隔で13点L字型に配置し、アレーによる観測を行った(図2.4.1-21)。No.3 ACROSSを用いて3:1の三角波によるFM送信を行い、17.5〜22.5Hzで0.1Hz間隔に51点得た。観測壕は高速道路の近くにあり、周囲の工事などでノイズレベルが高く、S/Nを確保するために約5日間のデータをスタッキングして用いた。
 アレイの解析は、周波数領域で見かけ速度に合わせて位相をずらし、時間領域に戻して足し合わせてビームフォーミング46)するという、 センブランス法47)と同様な手法であるが、計算は全て周波数領域で行っている。この方法によって波の到来方向と見かけ速度が分かる。
 図2.4.1-22は、震源方向からの平面波を仮定して、アレイ解析を行った結果である。地震波相の同定はまだ十分とは言えないが、走時と別の探査で分かっている付近の地震波速度構造を参考に、到来方向がほぼ震源方向であるP波、S波、表面波48)、深部からの反射波、到来方向が震源と反対方向からの地震波相を検出した。

4) 時間変動観測実験(図2.4.1-23)
 1999年度の後半から連続運転が可能となり、同じ観測点で、震源から到来する信号の変動を調べる実験を行った。観測点は、2)の実験と同じ震源距離209mの孔底地震計によるものである。一例として紹介するのは、9.5〜15.5Hzで0.1Hz刻みで送信した結果である。これより大きい周波数帯では、気温変化に連動した振幅・位相変動が大きいため、その影響が小さい帯域でどんな変化が検出されるかを狙った。
 得られた記録から周波数系列データを求め、観測開始時を基点として、それぞれの周波数の位相・振幅の相対的な変化だけを抽出した(図2.4.1-23)。日周変動が見られるが比較的小さく、周波数によってその位相が異なっている。それに比べてステップ状に変化する比較的大きな位相・振幅変動が目に付く。この変化は、鉱山で観測している降雨データと比べると、変動の大きさと降雨量とが非常に良い相関を示していることが理解できる。
 この変化は、岩盤カプラー上での振動の位相・振幅変動は209m先の変動に比べると桁で小さいため、送信状態の変動によるものではないと考えられる。予備的に行った岩盤カプラーの周りでの散水実験(1.5ton程度)でも変化が見られていないことから、震源周囲の比較的広い範囲の変化を総合して捉えているのではないかと考えられる。今後、この問題は、坑道アレーでの観測や散水実験などを継続してアプローチして行きたい。

(6) 今後の展望(図2.4.1-24、2.4.1-25)
 東濃鉱山を中心とした、中部地域をテストフィールドとして実験を進めてきた。ここで得られた様々な知見をもとに、日本列島地下常時モニターへの展望と提案とを盛り込むビジョンを、絵巻物としてまとめてみた。図で大出力アクロス震源とは、現在設計中の100tonf級回転型アクロス震源装置(低周波遠距離送信装置)を想定しており、中出力アクロス震源とは、20tonf級回転型アクロス震源装置を想定している。

(國友 孝洋)

2.4.2 キロメートル領域の構造解明監視観測に向けた可搬型弾性波送信技術の開発

(1) はじめに
 可搬型弾性波アクロス震源(通称HIT)は、火山や内陸地震の発生場など特定地域や物理探査などの限定された領域(数km領域)での弾性波による構造解明および監視観測を行うための「機動的観測手法」である。
 HITは、1997年度NEDOのプロジェクトとして、名古屋大学・小川克郎教授の指揮の下、地熱地帯における構造探査手法として設計・開発され、1997年12月の名古屋大学構内での実験を経て、1998年1月には鹿児島県山川地熱発電所で送信実験が行なわれた。山川実験では、さまざまな問題が浮上し実用化に向けての課題が残された。残念なことに、それ以後、実験および関連技術の研究・開発は一時休眠状態にあった。
 地震の震源想定地域や火山の地下(根)では、物性や構造の変化がもたらす弾性波特性の変化が生じると考えられる。それらを監視観測することは、地震や噴火の予知への積極的アプローチであり、陸域地下構造フロンティア研究プロジェクトにおいても最重要課題のlつである。我々は、本プロジェクトにおいて1999年度より、HITの技術研究開発を再開し、従来の様々な問題の解決に必要な技術開発と、将来の機動的観測に必要な基礎データの取得を行う準備を開始した。本報告書では、従来のHIT開発研究の概要と実用化に向けての研究課題について整理するとともに、本プロジェクトにおける技術開発研究の進行状況を報告する。

(2) HITの特長と実用化に向けた技術開発の課題
 開発理念にそったHITの四つの特長についての簡単な説明と、これまでに確認された問題点の整理をおこなう。

1) 特長:移動観測システム
 HITシステムは、主に、加振部・制御部・電源部・震源特性計測部、の4つのシステムから構成されている(図2.4.2-1)。加振部は、震源装置や地表面カプラー板など地表面に設置し、実際に地下へ弾性波を送信する部分である。制御部は、モータ制御盤や位相制御のためのパソコン・GSP時計などで構成され、アクロスの特徴である精密制御をおこなう。電源には、交流電源(200V,15A)または発電機を用いる。震源持性計測部は、地震計および波形計測システムから構成される。これらは、ユニック付3tトラックで運搬できるように大きさと重量が設計されている。上記は、従来開発の段階でほぼ一通り完成している(図2.4.2-2)が、のシステムの確立は今後の重要な課題になっている。HITでは、設置する地盤と加振部との接触度によって震源特性が変化するので、震源特性を記述するための計測システムは必要不可欠である。よって、本研究では早急なシステム確立を目指した。

2) 特長:リニア・ユニットによる加振
 固定型弾性波送信震源(FIT)では、一個の回転体「シングルユニット」を用いるのに対し、HITでは、二つの回転体からなる「リニアユニット」方式を採用してる。図2.4.2-3に示すように、2つの回転体を互いに逆位相で同期回転させることで、一定方向に振幅が正弦的に変化する波を発振できる。これによって、ターゲット構造に対して、直接的に水平方向・上下方向の分極性波動を送信することが可能になる。分極性波動を正確に地中に送信するには、加振部が剛体運動を行っていること、加振部と地盤との接触が適切に行わていることが必要である。後者の問題については後述するとして、ここでは、加振部に関する問題を整理する。
 HITの加振機本体は、大きさ660mm×520mm×400mm、重さ約300 kgの鉄の直方体である。これが、大きさ約1500mm×1500mm×50mmの地表面カプラー板の中心に固定され、加振部の最小単位となる。加振部は、地盤との摩擦力によって地表面に固定される。地表面カプラー板には、追加荷重用カプラー板もあるが、基本構造は同じなので、本体取付け用カプラー板には、加振に対する強度を持たせる工夫が必要である。以下は、山川実験において明らかになった、従来型本体取付け用カプラー板と本体に関わる主な問題点である。

 ・水平力支持剛性の不足
 ・たわみ剛性の不足
 ・二種類の本体取付けカプラーが存在
 ・HIT‐V型ではモーメント変更窓が力プラーヘの取付け面側に存在

 これらは震源特性に直接反映される因子であり、早急に解決すべき問題で、本研究の重点課題である。

3) 特長:偏心モーメント変更による発生力の調整
 偏心モーメントを変更できると、設置する地盤に破壊を生じさせない程度の発生力で広い周波数範囲の弾性波送信が可能になる。これにより、様々な条件の地表面へのHITの設置が可能になるのである。
 単一の偏心おもりによって地面にかかる単力Fは、偏心質量M、偏心半径R、偏心おもりの回転周波数fを用いて、

 F = M R ( 2 π f )2

 で表される。HITの一次モーメントMRは最大で0.15 kg mで、f=50 Hz で回転させる場合には、発生力は約1.5 x 104 Nとなる。
 HITでは、2つの回転柱のほぼ中間に82 mm径のネジ穴があり、その中を径方向に約100mmおもりが移動し、0〜0.15 kg mの範囲で偏心モーメントが変更できる。図2.4.2-4は、偏心半径とカプラー板上で得られる加速度の関係を表したものである。振動周波数は一定(30 Hz)である。回転軸からの偏心おもり重心までの距離が離れるのに比例して一次モーメントは大きくなる。
 ここで問題となるのが、偏心おもりの位置の測定方法である。従来の実験では、回転するおもりを手動で固定しながら、基準点からの距離をノギスで測定し、偏心半径に換算する手法をとってきた。しかし、回転するおもりの面に対し、再現性のある距離測定は予想以上に困難で時間を要し、作業効率を損なわせる。したがって、実験を行っていく上で、偏心おもり位置の測定を、正確かつ簡便にできるジグ49)があることが必要であった。

4) 特長:地表面設置における工夫
 HITを用いた精密な構造探査は、加振部を平坦で一様な堅さの面に適切に設置することから始まる。地表面の不均一性は、応力集中を生み、これがカプラー板の滑りや加振部からの力が均等に地盤に伝わることを妨げる原因の一つになるので、我々がHITを実用化するには、適切な設置面を常に確保できる工夫が重要になるのである。しかし、地表面には傾斜と凸凹があり堅さの分布も一様でないため、地表面カプラー板を地面に密着させるのは極めて困難である。
 図2.4.2-5は、東濃鉱山施設内にHITを設置した際に行った床養生の様子である。ここでは、従来の方法と同じく、枠内に砂を敷き詰め、平らな台座を作り、装置を設置した。このとき均等に均したと思われた設置面でも凸凹や堅さの分布は一様ではなく、運転時の振動も場所によって変わると予想される。山川実験においては、カプラー底面と地盤表面との接触面積ば30%程度だったという報告もある。
 このように、HIT設置において、平坦で堅さ分布の一様な設置面を確保することは最重要課題であり、本プロジェクトにおける大きな開発目標である。

5) HITとFITの特徴の比較
 図2.4.2-6に、HITと固定型弾性波送信震源(通称FIT)との特徴の比較をまとめる。両者は、送信周波数帯域や発生力の違いから、探査のターゲットとする地下構造の規模が異なる。前述したが、HITがその機動性を生かし火山など比較的限定された領域の探査を目的とするのに対し、FITは、大規模な破砕帯や地震断層などの比較的大きな構造探査と長期変動の検出を主目的としている。このように、我々がアクロス震源による構造探査や監視観測を行うにあたっては適切な装置を選択することが重要である。

(3) 陸域地下構造フロンティ研究プロジェクトにおけるHITの技術開発研究
 現在、我々は、前節で述べた幾つかの技術的・構造的問題点に対して次の4つの開発目標

 ・カプラー板上の振動計測システムの確立
 ・新型カプラーの設計・製作と本体の改良
 ・作業性向上のためのジグ開発
 ・送信安定性確保のための構造敏感シート(OZAB)の開発

 を挙げ、そのための技術開発研究を行っている。ここでは各々の進行状況について報告する。

1) カプラー板上振動計測システムの確立
 高精度の構造探査と監視観測を実現するには、弾性波送信を行っている間は震源での振動特性を常時モニターし、震源特性を正確に把握しなければならない。ここでいう震源とは加振部とその近傍の領域を指し、震源特性は両者の振動応答特性を反映したものをいう。HITの場合、加振部の設置は地表面に行うので、震源は加振部とごく近傍の地盤表層部と考えるのがよい。一般に、地盤の震動特性は構造や地盤種によって異なるので、設置の都度、震源特性を調査する必要がある。したがって、震源特性計測システムは、加振部に組み込まれているのが望ましい。
 そこで本研究では、本体取付け用カプラー板の上に地震計を固定設置し、記録計等とともに一括したシステムとして確立することを目指している。図2.4.2-7は、現在製作中の計測部のシステム概略図である。カプラー板上での振動計測に適当な地震計として、リオン製LS-10C加速度地震計を採用した。地震計には、固定用の台座を製作し三成分計として用いている。カプラー板の四角にはLS‐10Cを、また加振機の天頂部にはア力シV401加速度地震計(三成分)を設置した。得られる波形は、アンプ・フィルター回路を通し、KlSS(Kunitomo lnterface Signal System)によって記録される。KISSについては、図2.4.1-14を参照されたい。
 上記の基本システムのほか、カプラー板周辺には、アカシV401地震計を2組配置し、加振部から近傍地盤へどのように振動が伝わっていくのかも観測する。周辺部の地震計は場所を変えて測定する用途もあるため、移動させやすいように記録計には独立型の白山データマークLS-8000SH(ACROSS)を用いている。なお本システムでは、使用する全ての機器について周波数応答特性を調べ、今後それらを一次処理用データベース化していく予定である。

2) 新型本体取付け用カプラー板の開発と本体の改良
 前述したように従来型の本体取付けカプラー板には、力学剛性の不足による送信不安定性や用途限定などによる不具合がある。これらの問題点を解消するため、我々は新規の本体取付け用カプラー板を製作した。ここでは、現在までの開発状況を報告する。

a) 基本概念
 HIT加振部の運動の基本は、加振機本体の運動に対して、それを支えるカプラー板が剛体運動することである。よって加振部に要求される機能は、加振機本体に対しては正確な運動性能、カプラー板に対して加振機の運動を地下へ線形的に効率良く伝達する性能、である。また、加振方向に制約されないカプラー板および操作性のよい加振機本体であることも必要である。
 本節では、上記の機能を有するため、水平・上下加振共用の新型カプラー板を製作し、本体の改良提案を含めた、改良型HIT加振部の開発について述べる。

b) 水平・上下加振共用カプラー板の製作
 水平加振と上下加振に共用できるカプラー板を製作するには、従来の各加振方向に対応するように作られたカプラー板の力学的問題を解決し、両方向の加振に耐えられる強度をもつ構造を考案しなければならない。水平加振時のロッキング振動や、上下加振時のたわみ発生の原因として、回転重心に対する水平支持剛性の不足、本体とカプラー板の側面までの底面のたわみ剛性不足、他のカプラー板との接合の為に設けたカプラー側面の切れこみによる剛性低下
 などが挙げられる。
 新型カプラー板では、たわみ低減方策として、板の底面に本体の傍にまで伸びるヒレ(底面に対して鉛直な鉄板)を複数配置した。本体の水平支持のためには、背の高いヒレで本体を固定・支持することにした。また、側面の切れこみは排除し、接合はボルト締め方式に変更し、側面剛性の補強策とした(概念図:図2.4.2-8、設計図:図2.4.2-9)。

c) 加振機ギアボックスの改良の提案
 従来の上下加振用装置では、偏心モーメントの変更窓が本体下面側に位置したため、偏心モーメントの変更作業では本体をカプラー板から一度取り外さなければならないなどの不便があった。これは、ギアボックスの油循環系の構造的制約によるものであった。しかし、本研究の検討により、この問題はギアボックスの交換によって解消されることが判明し、名古屋大学によって改良された。

d) 反転機能付本体アタッチメントの製作
 前述の本体の改良によって、加振機の向きを変更させることが可能になるので、カプラー板もしくは他の部品による反転機構を装備すれば、加振方向を自由に選択できることになる。そこで、我々は本体を90度回転させるための反転機能付本体アタッチメントの製作を行った。
 アタッチメントに要求される機能は、加振中も安定して本体を支持できる強度、ハンドル操作などによる簡単な反転操作、カプラー板への容易な取付け作業、などである。考案されたアタッチメントの概念図を図2.4.2-8に、設計図を図2.4.2-9に示す。本体を両側面から支え、その側面を回転させることで本体も回転する仕組みになっている。アタッチメントは本体よりひと回り大きな箱型なので、カプラー板への取付け床面積は広く、結果として加振部の力学剛性の増強にも役立つ構造になっている。

e) そのほかの機能
 これまで加振部の移動にはクレーンを用いていたが、キャスターを四隅に付設することで、実験現場での水平移動を容易にした。キャスターは、加振装置とカプラー板の重量を支えられる強度をもち、本体への取り外しが可能になっている。また高さの調節も可能にしている。

3) 作業性向上のためのジグ開発
 (2)2)節で述べたように、偏心おもりの位置の測定は極めて作業性が悪く、実験現場での作業効率を損なわせる。そこで、我々は、位置測定のためのジグの設計・製作を行った。ジグが満たすべき条件は、0.1mmの精度での再現性のある距離測定、簡易な取り扱いと操作性、容易に入手できる軽量かつ剛性のある素材、である。概念模式図を図2.4.2-11に、設計図を図2.4.2-10に示す。

4) 送信安定性確保のための構造敏感シート(OZAB)の開発
 カプラー板の設置には、平坦で一様な堅さの設置面の確保が最も重要であるが、実際の野外設置ではこれは非常に難しい条件である。そこで我々は、様々な地表面条件に対して、適切に加振部の設置ができるように、地表面カプラーと地盤の問をつなぐ「形状と強度を自在に制御できるシート状カプラー」(通称OZAB)の開発に着手した。ここでは、試作第1号の開発について報告する。

a) 基本概念
 OZABは、加振部と地表面との間に挿入し用いる。OZABに要求される主な機能は、上面は加振部に密着する、下面は凸凹のある地面の形状に合わせて変形しながら地表面に密着する、シート内部素材は高い剛性を有する、上部の運動がそのまま下部の地盤へと線形的に伝達される、簡単な作業・操作で制御ができる、の5点である。

b) 形状と強度の制御可能な素材
 形状と強度を自在に制御できる素材の選択について述べる。まず重要なのは、「何」によって制御をおこなうかである。考えられる方式は、OZABの内部素材による制御と外部構造による制御である。OZAB試作第1号ではの方式による制御を試みることにした。
 我々は「制御できる素材」として砂を試験的に採用した。砂は、含水量や受ける実効圧力の変化によって構成粒子間の接触構造が敏感に変化し、力学的性質が著しく変化する性質をもっている「構造敏感物質」の一つである。水分含有量の調節と扱いが比較的容易で、入手しやすい素材であることが採用した理由である。

c) OZABの機能に関する定量的検討
 OZABに要求される機能(上記イ)の)に必要なOZAB構成要素の力学的性質の定量的検討を行った。
 まず、HITを上下方向に加振する場合のOZAB上面の強度について述べる。加振部の最大発生力は2 tonfであるから、加振部が空中に浮かないようにするには、加振機本体・地表面カプラー板の総重量が2 ton以上あればよい。このとき、加振部と設置面との間に働く応力は法線応力だけであるから、カプラー板の設置面、つまりOZAB上面は、加振部との接触で破壊されないように平坦で、0.89 tonf/m2(= 0.0876 bar)程度の法線応力に対する強度があればよいことになる。
 一方、水平加振の場合には、振部とOZABとの接触及び、OZABと地盤との接触の度合が問題となる。加振部の総重量2 ton(接触面積2.25m2)で、2tonfの発生力で運転させる時、加振部が横滑りしないためには、接触面との摩擦係数は1以上、せん断応力は約0.1bar以上必要である。実際の地表面では摩擦係数は0.3以下であるから、これまでは、山川実験のように、荷重用カプラー板を増設し設置面積を拡大することで、摩擦力を上げ、せん断応力を低下させ対応していた。しかし、複数枚カプラー用の巨大なOZABを製作することは現実的でないので、ここでは、一枚のカプラー板の設置で摩擦力を増加させることを考えた。
 OZAB内を減圧すると砂を押し固める圧力を与えることになる。例えば0.5気圧に減圧しただけでも砂を固める静圧として0.5 bar与えたことになり、約10tonの追加荷重を地表面カプラーで与えたことに相当し、摩擦力も大きくなる。しかも、OZAB内部の強度は非常に高まり、剛体カプラー板に近い性質をもつことになる。つまり、加振部とOZABを組み合わせて地盤に設置することは、地表面に直に設置するより、凸凹への密着性が増すと共に、地盤との摩擦力も上げることになるのである。
 以上より、加振部と地表面との接触に関して考慮すべき点は、地表面カプラー板とOZABとの間の摩擦強度及び、地面の強度、の二点に集約される。前者は加振部の重量とOZAB上面との摩擦係数の問題で、後者は設置場所によって変化する条件であるので、設計には主に前者を考慮した。
 次に、OZAB下面のシートの選択について述べる。シートは、直下の地表面の凹凸形状に整合できる柔軟性、水を漏らさない防水性、準真空に対応できる不通気性と強度、せん断応力に対する適度な引張強度と破断強度、などの機能を有するものが必要である。候補として、数種のゴムシートやテント生地などが挙がっているが、試作第一号では、0.15 mm厚の土木用防水シートを試験採用した。ゴムシートなので延性などの問題点もあるが、優れた防水性と柔軟性、加工が容易であることが選択理由である。

d) OZAB試作第一号の構造と機能
 OZABを図2.4.2-12に示す。上面は鉄板(1500 mm x 1750 mm x 10 mm)、下面は土木用防水シート(厚さ0.15 mm)で構成されている。流体や空気が漏れないように、シートを金属平板で上面に圧着し、中には砂と流体の混合物を封入して用いる。空気や流体の注入・排出用パイプを内部に通し、注入・排出用口はOZAB上面隅に配置した。
 OZABを実際に機能させる仕組みを簡単に説明すると、まずOZAB内に流体を注入し加振する。この時内部の砂が流動し、下面の凸凹と上面の平面に整合する形状になる。次に、形状を保ったまま流体を排出し、真空ポンプ等を使ってさらに減圧する。すると大気圧とカプラーの荷重による応力が、砂の粒子間に圧縮応力として働き、砂の実効強度と実効剛性が増加する。これによって、上部の加振部と地盤は密着し、加振部は平坦で均等な堅さ分布をもつ面に設置されることになる。つまり、任意形状に柔らかく変形させその形を保ったまま硬化させたり、また必要に応じて軟化させたりが、外部操作で簡単にできるOZABが実現できるのである。
 上記の機能のほか、内部の水の排出を効率よく出来るようにヒータ機能の追加やシート・内部素材の変更など、まだ考慮すべき点もあるが、最終的には誰もが簡単な操作で扱うことのできるOZABを製作していく予定である。

(4) 今後のHIT研究の課題
 これまで行ってきた各種の技術開発に引き続く、主な研究課題は、

移動観測に簡便なシステムを実用システムとしてデザインを行う
新型カプラーと改良型本体の性能試験により、構造や強度等の確認を行うとともに、実用化に向けたマニュアルを作成する
OZAB試作第一号の加振実験による性能試験の結果から、適切な素材や構造の検討をおこない、第2号の設計・製作を行う
震源の動的振動特性を記述する方法を確立し、運転時にも準リアルタイムでモニターできるソフトウェアを開発する

 である。いずれもHITの実用化に欠かすことのできない技術開発と研究であり、今後のHITの技術開発研究における重要な課題である。

(5) まとめ
 本報告書では、1999年度より開始した可搬型弾性波送信震源HITに関する技術開発研究の内容とその進行状況について報告を行った。現在のHITはまだ技術開発の段階であり、改善すべき課題や未知の問題点を含んでいると考えられるが、HITによる構造探査および監視観測の技術は、近い将来我々に大きな恩恵をもたらしてくれるであろう。

(鶴我 佳代子)

2.4.3 東濃における電磁アクロス送受信システムと試験観測の結果

(1) はじめに
 東濃アクロスシステムの一角をなす電磁アクロスについての概略を示す。
 そもそもなぜ地震波探査50)が行える音波アクロスが存在するところで電磁波探査51)に相当する電磁アクロスを行うかについて説明する。第一に、地震波探査と電磁波探査では、それぞれ物性値として全く独立な情報を得られ、地下の構造や物性について異なる側面から調べることが可能である点が挙げられる。第二に、特に電磁波探査で求まる電気伝導度は水の存在によって桁で変化し、地中の水に関連する状態を調べるためには電磁波の方が有利である点があげられる。このように弾性波と電磁波の探査を同時に行うことによって、地殻内応力、応力に伴うクラックの変動、移動する水の挙動などの推定が行えるであろう。これらの変動は、地震発生場の監視という立場においても重要な観測量であろう。水と地震に関する地殻の構造敏感性は複雑に結びついていると考えられ、そのメカニズム解明のためにも、地震波・電磁波両方の探査を同じ場所で行うことが有用である(図2.4.3-1)。
 このような考えで、電磁アクロスを立ち上げ、実現するために必要な理論上の考察、技術開発を進めてきた。

(2) 電磁探査法としてのアクロスの特徴
 電磁探査法の一種としての電磁アクロスの特徴は、

送受信点間の伝達関数を求める手法
精密制御信号を用いることによる高いS/N比のデータ取得
拡散現象から波動現象まで統一的に解析
分散性の大きな伝播も解析可能

 などが挙げられる(図2.4.3-2)。
 特徴のは地下の三次元構造と時間変動を測定するのに最も基本的な情報を取得する観測手法であることを示しており、詳細は2.4.4のセクションで説明する。
 特徴のは送信信号も精密に制御することによって、受信側でのスタッキングでノイズレベルを下げ、信号成分を取り出せることを示している。このことにより、信号伝播中の減衰・位相ズレを精密測定することが可能である。
 特徴のは電磁波を用いた探査を周波数範囲に依存せず統一的に取り扱えることを示している。一般の電磁探査法では、使用する周波数領域ごとに基礎方程式を近似して用いている。例えば地下数kmの探査を行うMTなどでは周波数範囲は数mHzから数kHzの電磁波を用い、Maxwell方程式を拡散方程式に近似して取り扱う。一方、細かな地層や数mオーダーの不均質性をみる地中レーダでは周波数は数百kHzから数百MHzで、波動方程式を用いる。この両者の中間の周波数領域では近似を使わないで解析する必要がある。そのため周波数領域ごとの近似を使わずに2点間の伝達関数を求める解析手法を理論的に求めた。
 特徴のは低周波数の領域では伝達関数の分散が大きいのが特徴であるが、その場合にも対処できることを示している。解析に存否法を用いると狭い周波数範囲内のデータから群速度を求めることができ、周波数範囲を少しずつ変えていくことにより、群速度の細かい分散性を明らかにすることが可能である。

(3) 東濃電磁アクロスシステム
 前節で示したように、アクロスでは使用する周波数範囲を特定する必要はないが、先行している音波アクロスのことを考慮し、

  音波アクロスの記録装置を共用できること
  音波アクロスとの相補的な探査を目指す
  試験結果を通じてハードウェアの必要な性能を導き出す
  アクロスによる探査に適した解析法の開発
  空中電磁探査などで行われた東濃鉱山周辺10km四方の結果との対比

 を行うことが目標である。そのため、まず遠くまで信号が届き、かつ音波アクロスで用いている100Hz以下の低周波数範囲の探査実施にしぼり、それに必要な探査システムの開発を進めてきた。

1) 送信システム
 送信システムは東濃鉱山敷地内に設置した(図2.4.3-3)。

a) 電極
 低周波数で効率良く地下に電磁波を送れるように、接地電極間に電圧をかけ電流を投入する方法で送信を行うことにした。電極は東濃鉱山敷地内で間隔をできるだけ広く取るように三点設置した。その三点は辺長およそ100mの三角形の頂点に位置する。W電極は試錘孔のケ−シング52)(地表付近のみで長さ6m)を用い、N、S電極は長さ1m程度のステンレス棒を接地抵抗低減剤と混ぜながら8本ずつ打ち込んだ。接地インピーダンス53)は極力抑えるようにしたが、ケーシングで1Ω、他の2点は20Ω程度であった。

b) 制御送信装置
 電極をつなぐケーブルを鉱山倉庫内のアクロス観測室まで引き込み、送信装置と接続した。精密に位相制御された信号を送信するために、送信機器はGPS時計に同期させている。信号発生方法は現在、二方法から選択でき、ひとつは安定化直流電圧入力からGPS時計に同期したスイッチングによって交流出力とする方法である。この装置は48V、5Aの電力を出力可能である。もうひとつはパワーアンプで、ファンクションジェネレータ54)などで作った信号を電圧増幅して出力する装置である。こちらは最大出力150V、2Aの装置を使用している。

c) 送信信号監視装置
 これらの装置から出力される信号はコンピュータでモニターし、電極間電圧・電流を連続記録していている。これは伝達関数を求める際の送信側の波形を把握しておくために必要であるのと同時に、送信点近傍の状態の変動もモニターできることになる。

2) 受信システム
 送信点から2.2km離れた東濃地科学センター内に、電磁アクロス定常観測点を設置した(図2.4.3-4)。

a) 電極
 受信電極は微小な電位差や正確な電位差波形を記録できるように、銅・硫酸銅水溶液の非分極電極を用いた。電極間隔は40mで、東西・南北の電場2成分を観測している。

b) データロガ−
 データ取得もGPS同期していることが必要であり、また時間区間蓄積型記録計を用いることにより、データ量を増やさずにデータのS/Nを向上できる。現在は DATAMARK LS8000 を用いている。

c) 臨時観測点
 定常観測点に加えて、鉱山周辺の電磁波放射の様子を調べるためにサイクル機構の試錘孔用地内などで臨時観測を行った。範囲は鉱山からの距離約3kmまでの4点である。臨時観測点では、金属棒電極による東西・南北電場2成分の測定を行っている。

(4) 試験観測
 前章で述べた送受信システムを用いた試験観測を行った。結果が示されている観測期間は平成12年1月から現在までである。また、実験期間中、送信信号は0.5Hz周期の矩形波を用いた。観測は200Hzサンプリングで行った。

1) 時間連続記録
 まず、送信信号がどのようなものであり、受信点でどのようなものが観測されるかを見た。図2.4.3-5には、送信している信号の様子、およびそれと同時刻に観測された受信信号を示している。送信モニターで観測された電流と電圧は0秒で符号を変え、0.5Hzであることが確認できる。このような矩形波に近い送信信号であるので、基本周波数の奇数次高調波も同時に送信されている。
 送信点から約150m離れた監視区域内の観測点のNS成分では、時間記録データを見ただけでも0.5Hzの矩形波が到達していることがわかる。パワースペクトル密度37)でみると、高調波までよくわかり、ピークが鋭いことから、装置の同期精度が良いことも確認できる。ただし、信号のピークは商用電源からのノイズと比べると小さい。
 一方、送信点から約2.2km離れた東濃地科学センターのNS成分の観測では、時間変動とパワースペクトル密度ともに信号が届いているようには見えない。

2) スタッキングの効果
 遠距離において微小な信号を見るためにセンターでのNS成分の結果についてスタッキングを行った。図2.4.3-6には、200秒のデータから得られた10Hzまでのパワースペクトル密度と、200秒のデータを145回スタック31)したデータのスペクトルを示した。200秒のデータでは見られなかったピークが145回スタックした結果では見えてくることがわかる。これは、ランダムノイズのパワースペクトラム密度がスタッキング時間の平方根に反比例する一方、送信信号は一定であるので、信号が到達していたことが確認できた。逆に200秒のデータではノイズレベルがシグナルレベルより大きいか同程度であったため信号が確認できなかったことがわかる。約8時間(200sec×145)のスタッキングでの基本周波数の信号のS/N比は約10である。
 つぎに、スタッキングとともにある周波数成分がどのように変化するかをみた。送信信号に含まれている周波数は、スタッキングが少ない間は値の変動が大きいが、ある程度スタックされていくと一定値に落ち着くことがわかる。一方、信号成分ではない周波数では、変動しながらもだんだん時間と供に減少していくことがわかる。

3) 距離減衰
 このようにスタッキングによって求められた受信した信号が送信点からの距離に応じてどのように変わっていくかを見た。比較するのは各観測点で観測された0.5Hzの電場の絶対値である。送信がダイポール放射55)とみなせるので、ダイポールの軸からの角度に応じた絶対値の補正を行っている。送信点からの距離200mから3200mの間に信号の絶対値が10-4 V/m から10-6 V/mまで変化しているので、距離約3km程度までは、距離依存性はほぼ距離の2乗に反比例するという結果が得られた。これらの信号成分の大きさは商用電源によるノイズレベルより小さかったにも関わらず、送信信号が確認できている。

4) 受信信号の周波数依存性
 まず伝達関数の絶対値の周波数依存性を求めた(図2.4.3-7)。ただし、距離依存性は確かめたので0.5Hz信号を基準にして高調波成分の振幅比がどのような依存性を示すかをみた。比較したのは送信点からそれぞれ200mと1300mの監視区域とDH9の観測点である。どちらも高周波数になると減衰しているが、遠距離のDH9の方が振幅減衰の大きいことがわかる。
 次に各観測点では南北・東西の2成分を観測しているので、周波数成分の軌道を水平面で表してみた。各周波数成分は一般には楕円で表されるので、その長軸とN軸となす角度θと、南北成分に対する東西成分の位相差φを、放射方向を特徴付けるパラメータと考え、これらの周波数依存性を求めた。比較したのは、送信点からそれぞれ1300mと2200m離れたDH9とセンターでの観測結果である。位相差 φの結果は周波数依存性としては同じトレンドを示しているが、θの方は傾向が異なっていることがわかる。この違いは、信号の伝播途中および受信点での地下の特性を表しているのではないかと考えられる。これらの詳しい検討は現在進めている。

(5) まとめ
 音波アクロスと相補的な探査が行えるような電磁アクロスシステムを開発・研究してきた。これまでの実績は図2.4.3-8にまとめたように、

 ・低周波数での探査の開発:東濃鉱山とセンターに送信装置・定常観測点の設置
 ・約3km離れた観測点で送信信号を確認

 残っている問題点としては、

 ・ハードウェアの改善:特に高出力化と高周波数化
 ・観測点:特に人工物による影響をさける、および影響の評価
 ・得られたデータから地下情報への焼き直し

 などがあげられる。特に電磁波の場合、送信信号をデザインすることが音波アクロスに比べ容易なので、現在使っているスイッチングによる送信と波形増幅による送信方法の特性比較を通じて、送信方法別による違いも検討課題のひとつである。東濃電磁アクロスシステムとしては、実際に音波アクロスとリンクした探査を行えるようにするのが課題である。

(中島 崇裕)

2.4.4 電磁アクロス信号論・レーダ領域数値実験・MT領域方法論
−信号処理の視点から見た探査方法の最適化−

(1) はじめに
 アクロス技術開発の今後の方向性を検討するために、信号処理の視点からアクロス信号について考察する。つまり、アクロスの目指す目的を達成するのに適した信号を理論面から検討する。ただし、地震波アクロスと電磁波アクロスではハードウェア実現が可能な信号が異なるので、本稿では電磁波アクロスに焦点をあてた。

(2) アクロスの目的と実現方法
 アクロスの目的は3次元構造とその時間変化を測定することである。図 2.4.4-1 に示すように、3次元構造を測定するにはその情報を集めやすい量を使う必要がある。また、構造の変位量は定常量に比べて非常に小さいと考えられるので、これを検出するには精密測定が必要になる。また、連続観測も要求される。
 これらの要求は次の3つの条件から成る適切な信号方式を用いることで満足できる。

  複数周波数を含む時系列の測定
  同じ波形の繰り返し出力・スタック保存
  条件を満たす波形の設計・使用

 最初の条件は3次元情報を得るためのものである。図 2.4.4-2 にある2つの電磁探査法のうちインピーダンスを用いる方法は受信点近傍の2次元構造の探査に適している。これに対し、電場・磁場の時間変化を測定すると3次元構造の情報を得やすい。また、単一周波数よりも複数周波数を使用する方が多くの情報を得られる。
 2番目の条件はノイズレベルを下げ、精密測定を実現するためのものである。このために、同じ波形を繰り返し送信し、受信側でこれを何周期かごとにスタックする。
 最後の条件は S/N 比を向上させ、かつ一定にするためのものである。ただし、S/N 比が定義される量はデータの解析方法に依存する。そこで、この条件について説明する前にデータの解析法について触れておく。

(3) 解析方法

1) 解析モデル
 アクロスで使用する精密制御信号は従来のコントロールソース法56)と比較して量的な違いを持つ。しかし、この違いは従来非線形であった解析モデルシステムを線形システムに帰着させるという質的違いをももたらす。従って、アクロスで使用するモデルと解析方法は従来のコントロールソース法とは異なるものになる。
 送信点から送り出された電磁波は図 2.4.4-3 のように3次元構造中での反射や透過を繰り返し、複数の経路を経て受信点に至る。これをレイパス的イメージで捉えるとマルチチャンネルの伝達関数を持つモデルで表現できる。このモデルの受信信号は送信信号と伝達関数のコンボリューションであり、このシステム全体は非線形である。
 従来のコントロールソース法は送信信号が未知の部分を含むが、アクロスの精密制御された送信信号は既知である。従って、アクロスの場合には受信信号から送信信号の影響を取り除くことができ、図 2.4.4-3 の非線形システムは図 2.4.4-4 下部に示す線形システムに置き換えられる。このときには伝達関数が間接的な測定量となる。
 さらにこのシステムを変形すると個々の関数を直列につなぎ変えた形になり、プロニー型の自己回帰モデル57)で表現できる。従って、このモデルのパラメータを推定すれば個々のチャンネルの伝達関数を推定できる。

2) 解析例
 解析の具体的なイメージをつかむために人工的に合成したデータとその解析結果を示す。図 2.4.4-5 に示す2層水平構造に 0.5 MHz の矩形チャープ信号58)を送信する設定を考える。電磁波のパスは矢印で示した2つを仮定し、受信信号には 20 dB のランダムノイズを付加する。
 解析では図 2.4.4-6 のように送受信信号をまずフーリエ変換し、除算により伝達関数に直す。次に、この伝達関数をプロニー型の自己回帰モデルに当てはめてパラメータ推定を行う。その結果は図 2.4.4-6 下図のようになり、解析用データと推定値が良く一致した。また、インパルスレスポンスにあたるプロニースペクトルでは、2つのピークが直達波と反射波の到達時間を良く表している。

(4) S/N 比の制御

1) 波形の設計
 上述の解析方法を想定すると S/N 比は伝達関数の次元で定義される。ただし、送信信号のノイズが小さい場合には、伝達関数の S/N 比は受信信号のそれと見做せる。
 従って、S/N 比を大きくするには、受信信号のスペクトル振幅を大きくすればよい。そのためには、狭い周波数帯域の信号を使用し、その遮断特性を急峻にする。また、解析の精度を上げるには受信信号の S/N 比を一定にする必要もある。
 このような要求はディジタル信号を用いることで簡単に実現できる。図 2.4.4-7 は、一様媒質の探査に適した送信信号波形を設計した例である。振幅特性に伝達関数をかけるとノイズと平行な曲線になり、S/N 比が一定になるように設計してある。この例では周波数帯域は 2.0-4.0 Hz、サンプリング間隔は 5.0 ms、サンプル数は 1000 である。この場合の離散周波数の間隔は 0.2 Hz となり、対象帯域には 11 の離散周波数が存在する。
 時系列振幅が最小となるように、この振幅特性にランダムな位相を与えると図 2.4.4-7 下の時系列波形になる。この波形の繰り返しを送信信号として使用すれば高精度の結果を得ることができる。

2) 最適化
 上述の波形設計法ではノイズの特性と伝達関数が既知でなければならない。そこで、実際には図 2.4.4-8 に示す手順で設計と探査を交互に行うことが必要になる。まず、ノイズや装置の特性を測定した後、表層抵抗等の予備的情報を用いて直達波の検出に適した波形を設計する。次にこの信号を使って伝達関数を測定し、その結果を利用して透過や反射波をも検出しやすい波形に修正する。この操作を繰り返すことで、最終的に最適な波形を得ると共に高精度の伝達関数を決定することができる。

(5) おわりに
 現在までに3次元精密測定を行うための信号方式について理論的に考察した。特に解析モデルについて整理し、従来のコントロールソース法との違いを明らかにした。また、S/N 比を制御するための波形の設計方法も考案した。この方法を取り入れることで従来得られなかった高精度の結果を得られると期待できる。
 今後は理論とハードウェア技術やコスト等との妥協点を探りつつ、目的に近づくことが課題である。

(横山 由紀子)


3. 地震発生と地下水挙動に関する研究
3.1 研究の目的・意義


 地震発生に関連して、震源域の周辺では地殻変動が生じ、地殻深部では地下水や地下流体に変化がおこる可能性が指摘されている。地殻変動、地下流体変動のメカニズムを解明するための基礎データを得るため、各種のボーリング61)井を利用して3次元深層総合観測を実施する。具体的には、岩盤歪、地盤傾斜、地下水圧、地下水温、ラドン濃度、希ガス62)放出量などについて、必要に応じて機器を開発し、連続測定を行う。観測データから地震発生に伴う地震前、地震時、地震後の変化を把握し、地震発生との因果関係を解明する。
 地震発生と地下水挙動に関する研究では、測定精度を向上させることとならび長期間安定した観測を続けることが重要である。我々のグループが取り組んだ課題の多くは、測定システムが未完成のまま観測を開始したものが多く、長期連続観測を可能とするシステムを目指したことを付言したい。
 この中で、インテリジェント回収型歪計63)の開発、長周期の地震波の解析に適した歪地震計へのボアホール地殻活動総合観測装置の改良、観測装置への落雷対策などが今後の地震観測に威力が示されることが期待される。

(脇田 宏)

3.2 研究目標

 地震の先駆現象を見つけることは災害を軽減する上に重要である。地下深部での地殻歪の変化を高感度歪計、地下水、溶存ガスの変化などを利用して効果的に検出する。
 地震は地下深部で発生することから、地下深部に存在する流体の移動に関する知識が欠かせない。現状では、こうした研究に対する組織的観測はほとんど行われておらず早急に実施する必要がある。

(脇田 宏)

3.3 研究計画
3.3.1 深層観測井の掘削

観測に適した観測井を複数掘削し、相互比較を行う(図3.3-2、3.3-4)。

3.3.2 地下水位・水圧・水温連続観測

 空間的に密に分布する観測井を用いて、地層中の地下水位・水温の観測を行う。幾つかの観測井では多深度での水圧・水温観測を行う。地層ごとに水理的性質及び地殻歪に対する応答特性を把握する。地震に関連した地下水位・水圧・水温変化を検出する。そして、地震による地下水変化の特徴や空間的な広がりを理解し、地下水変化のメカニズム解明に繋げる(図3.3-2、3.3-4、3.3-7)。

3.3.3 地殻歪の変化に関する研究

 掘削孔底にボアホール地殻活動総合観測装置を設置し、岩盤歪(3成分)、傾斜(水平直交2成分)、加速度(3成分)の連続観測をおこなう。さらに、オーバーコアリング法64)による初期応力推定のための回収型多成分歪計の開発をおこなう(図3.3-2、3.3-4、3.3-8、3.4.2-5)。

3.3.4 地下ガス濃度連続測定

(1) 新しく開発されたPINフォトダイオード65)型ラドン計を用い、東濃鉱山内の地下水および岩盤から放出されるラドンの濃度を連続観測し、地震現象と比較する(図3.3-5、3.3-6、3.3-8)。

(2) シリコン中空糸型気体分離モジュール66)とマスフィルター型四重極質量分析装置を用い、孔底の地下水溶存気体を連続測定する機器を開発する(図3.3-2、3.3-6〜3.3-8)。

3.3.5 多成分観測データの地震動に対するレスポンスの比較

 地震によるP波やS波、表面波から長期の余効変動67)までの変動に対応して、加速度計や歪計(歪地震計)、地下水位などの様々なデータが得られる。この地震動に対する個々の観測項目のレスポンスを、条件が異なるボアホール毎に比較することにより、観測項目の変動のメカニズムの解析の手がかりを掴む。

3.3.6 多成分観測データの収録、相互比較

 多成分観測データの比較検討のため、多種多様なデータの一元的収録・表示システムを開発する。

3.3.7 観測井・観測機器の設置

 東濃鉱山の位置図、及び東濃鉱山周辺の地震地下水チームが観測機器を設置している観測井の分布図を、それぞれ図3.3-1、図3.3-2に示す。東濃鉱山周辺の地質は、土岐・瑞浪市街を中心にほぼ円形に分布する白亜紀68)末期に貫入した基盤の土岐花崗岩の上に、中新統の瑞浪層群の湖成又は海成堆積層(下層から土岐夾炭累層下部・上部、明世累層、生俵累層)が堆積して形成されている。また、鉱山をほぼ東西に月吉断層が走っている(図3.3-3〜3.3-5)。この断層は北盤下がりの逆断層で上下の変位は約30mにもなる。東濃地域及び鉱山周辺の北北西−南南東断面と図3.3-2に示した観測井の地質柱状図を図3.3-4に示す。ここには同時に、地下水位観測(3箇所)の対象としている深度や、水圧観測位置(2箇所×5深度)、ボアホール地殻活動総合観測装置(坑道内も含めて2箇所)の埋設位置などを示す。鉱山の坑道と地質分布との位置関係を図3.3-5に示す。坑道内のボアホール地殻活動総合観測装置(1箇所)、ラドン観測装置(8箇所)、マスフィルター型質量分析装置(1箇所)の配置は図3.3-6に示す通りである。各観測機器の設置概要を図3.3-7、図3.3-8に示す。
 多深度水圧観測では、幾つかのパッカー69)で区切られた内の観測対象区間に水圧プローブを設置して水圧・水温の連続観測を行っている。ボアホール地殻活動総合観測装置は、周囲の岩盤と馴染むようにモルタル70)を使用して埋設されている。
 各観測点毎に、観測項目・対象としている地層を整理すると、以下のようになる。

観測点 観測項目 対象としている地層 月吉断層との位置関係
<坑道外>
SN-1 地下水位・水温 土岐夾炭累層下部 北側(下盤)
SN-3 地下水位・水温 土岐花崗岩 北側(下盤)
(・気圧・雨量)
97FT-01 地下水位・水温 土岐花崗岩 北側(下盤)
・溶存ガス・歪
・傾斜・加速度
98FE-01 地下水位・水温 土岐花崗岩 北側(下盤)
TH-8 P1 地下水圧・水温 土岐花崗岩 北側(下盤)
TH-8 P2 地下水圧・水温 土岐花崗岩/夾炭累層 北側(下盤)
TH-8 P3 地下水圧・水温 土岐夾炭累層上部 北側(下盤)
TH-8 P4 地下水圧・水温 明世累層 北側(下盤)
TH-8 P5 地下水圧・水温 生俵累層 北側(下盤)
(・気圧・気温)
TH-7 P1 地下水圧・水温 土岐花崗岩 南側(上盤)
TH-7 P2 地下水圧・水温 土岐花崗岩 南側(上盤)
TH-7 P3 地下水圧・水温 土岐花崗岩/夾炭累層 南側(上盤)
TH-7 P4 地下水圧・水温 土岐夾炭累層上部 南側(上盤)
TH-7 P5 地下水圧・水温 明世累層 南側(上盤)
(・気圧・気温)
<坑道内>
H-1 歪・傾斜・加速度 土岐花崗岩 南側(上盤)
node1ch.0 ラドン[岩盤より] 明世累層 南側(上盤)
node1ch.1 ラドン[岩盤より] 土岐夾炭累層上部 南側(上盤)
node2ch.0 ラドン[地下水より] 土岐花崗岩/夾炭累層 北側(下盤)
(KNA-2) ・流量・水質(・気圧)
node2ch.1 ラドン[地下水より] 土岐花崗岩/夾炭累層? 不明
・流量
node2ch.2 ラドン[岩盤より] 土岐花崗岩 南側(上盤)
(・気温・湿度)
node3ch.0 ラドン[岩盤より] 土岐夾炭累層下部 南側(上盤)
node3ch.1 ラドン[岩盤より] 土岐夾炭累層上部 北側(下盤)
node3ch.2 ラドン[坑道内空気より]主に土岐夾炭累層下部 南側(上盤)
通気立坑 坑道内空気組成
(・気温・湿度)

 これらの観測点は一部を除いてネットワーク化され、そのデータが電話回線を通じて、東濃地科学センターや関連大学に回収されている(図3.3-9)。また、特に坑道内の8箇所のラドン計では、データをネットワーク化して1箇所のデータロガーに集めて、ワークステーションに取り込んでいる(図3.3-10)。

(脇田 宏)

3.4 研究成果
3.4.1 東濃鉱山周辺における地下水位・水圧観測結果


 地震に関連した地下水位変化のメカニズム解明を目指して、空間的に密に分布している東濃鉱山周辺の観測井で観測研究を行ってきた。幾つかの観測井では特徴を持った地震に関連する地下水位・水圧変動を検出した。そして、地殻変動・地下水溶存ガス成分の測定結果との比較による総合的な評価の礎とするために、各地層の水理的性質を調査し、地震に関連した地下水位・水圧変動の基礎的な評価を行った。その結果を以下に報告する。
 東濃地域の様々な地層中の地下水をターゲットとして、東濃鉱山周辺の観測井SN-1号孔、SN-3号孔、97FT-01号孔、TH-7号孔、TH-8号孔、98FE-01号孔で地下水位・水圧の測定を行っている(図3.3-4)。これらの観測井での長期連続観測の結果を図3.4.1-1に示す。また、東濃地科学センターが行っているAN-1号孔、AN-3号孔、MIU-1号孔、MIU-2号孔での間隙水圧測定の結果も随時利用させて頂いている。
 地下水位・水圧には図3.4.1-2に示すように

  日常的な地球潮汐71)に対応する変動
  日常的な気圧変化に対応する変動
が観測されている場合がある。さらに
  人工的要因(井戸掘削や水理試験など)に関連する変動
が観測されることも分かった。また、地震の前後には
  地震前のSN-3号孔の地下水位変動
  地震直後のSN-3号孔の地下水位の急な低下
  地震後の長期にわたる地下水位・水圧変動
  地震前のSN-1号孔の地下水位の上昇
  地震波に対応するSN-3号孔の地下水位の振動
などの多岐にわたる現象が、個別に或いは複合して観測された。
 上記の分析により、観測井毎に地下水位挙動が違うことが明らかになった。この挙動の違いを、その原因分析と共に、定量的に解釈した。

(1)(2) 地下水位・水圧の潮汐・気圧への応答(表3.4.1-1、図3.4.1-2)
 SN-1号孔, SN-3号孔, 97FT-01号孔, 98FE-01号孔では、地下水位を測定している。これらの観測井には、地下水位に潮汐現象や気圧応答が明瞭に現れるものや極わずかしか現れないものなど、様々な様相を見せている。これらの原因は観測井の孔径に依存する井戸貯留や岩石の不均質さによる観測井近傍の透水性の違いであると考えられ、短周期の現象ほどその影響をより大きく受けている。
 TH-7号孔、TH-8号孔、AN-1号孔、AN-3号孔、MIU-1号孔、MIU-2号孔では、パッカーを用いた多深度の間隙水圧を測定している。各深度での間隙水圧変動に必要な水量は非常に少なく、井戸貯留の影響を余り受けないと考えられる。基本的に間隙水圧には潮汐現象や気圧応答が明瞭に現れている。
 潮汐・気圧応答の解析(図3.4.1-3、図3.4.1-4)から明らかになった事は主に以下の二点である。

地下水位・間隙水圧の潮汐振幅を求めることで、1〜2cycle/dayの範囲での地下水位・間隙水圧の歪感度を推定できた。多段式間隙水圧測定の結果から、土岐花崗岩領域では、間隙水圧の潮汐振幅は測定点での間隙水圧の絶対値に依存することが分かった。
SN-1号孔の地下水位は長周期側で気圧応答係数が大きくなっていることから、土岐夾炭累層下部中の地下水は土岐花崗岩よりも被圧が良い(地表との水理的な繋がりが悪い)ことが推定される。土岐花崗岩は山腹などに露頭があるが土岐夾炭累層下部層は露頭が殆ど無いことが東濃地科学センターの調査から判明しており、気圧応答の結果と矛盾しない。

(3) 人工的要因に関連する地下水位変動
 東濃鉱山坑道内のKNA-2号孔でリークテスト(揚水試験に相当)を行い、周辺の観測井の水位の変動を測定した。KNA-2号孔でのリーク点は月吉断層下盤側の土岐夾炭累層下部と土岐花崗岩の不整合面付近である。月吉断層下盤側の土岐夾炭累層下部と土岐花崗岩の地下水位に低下が見られた(図3.4.1-5)。しかし、月吉断層下盤側の土岐夾炭累層上部より浅い地層と月吉断層上盤側では、水位に変動は見られなかった。
 東濃鉱山南東に隣接する正馬様用地内で深さ1,010mのMIU-2号孔(SN-3号孔の南東約1kmの位置)が掘削され、土岐花崗岩領域の深度約900mで月吉断層を貫通した。元々、東濃鉱山坑道の影響で月吉断層の上盤側と下盤側の間では地下水位に大きな差が保たれていたところに、貫通によってMIU-2号孔が月吉断層の上盤側と下盤側の間の水路となって、1998年11月から2000年1月までの間、下盤側から上盤側への地下水移動が起こった。1年間以上続いた地下水移動の結果、土岐花崗岩領域を中心に、下盤側では地下水位がTH-8号孔で約8m、SN-3号孔で約7m低下し、上盤側では地下水位がTH-7号孔で約4m上昇した(図3.4.1-1)。
 東濃鉱山敷地内の00SE-03号孔では月吉断層下盤側の花崗岩領域を掘削中に大量の逸水が発生した。これは断続的に注水を行ったことに等しく、月吉断層下盤側の土岐花崗岩と土岐夾炭累層下部の地下水位には明瞭な変動が見られた。透水性が良いと思われる観測井では、一日単位での逸水量(注水量)の変動に対応した地下水位変動が見られた。
 月吉断層の上盤側と下盤側で地下水位に恒常的に大きな差が維持されていることなどから考えると、月吉断層は遮水壁の役割を果たしていると推測される。また、月吉断層が遮水壁となっている以外、土岐花崗岩の地下水系は全体として3次元的につながりが良いと推測される。

(4) 地震前のSN-3号孔の地下水位変動
 1994年10月4日の北海道東方沖地震や1994年12月28日の三陸はるか沖地震などの地震の前にSN-3号孔の地下水位が低下するなどの変動を示した(図3.4.1-6)。この原因を解明することが地下水位観測の出発点であった。水位低下に関連して、KNA-2号孔から漏水があったとの記録があり、両者の関連性が検討された。そこで、1998年にKNA-2号孔において、(パッカーを拡張させる窒素ボンベを外すことにより漏水を起こさせる)リークテストを行った。その結果、SN-3号孔の地下水位が低下することが確かめられ、リークテスト時の地下水位低下の大きさは地震前の地下水位低下と同程度であることも分かった(図3.4.1-5)。尚、KNA-2号孔から漏水が起こるのは、ボンベ圧が通常のパッカー圧(約15kgf/cm2)よりも低下した時である。
 すなわち、大地震前のSN-3号孔の地下水位変動はKNA-2号孔で生じた漏水の結果であると推測された。KNA-2号孔で漏水が生じた原因については、KNA-2号孔のパッカーへ供給する窒素ガスボンベの圧力低下によると解釈される。窒素ガスボンベの圧力低下には、自然な圧力低下による自発的な漏水と解釈できる例(1994年12月15日頃からの漏水)もあるが、急激な圧力低下の場合(1994年9月25日頃からの漏水)は原因が不明で、帯水層そのものが地震前に変化した可能性も考えられ、さらに原因の追求が必要である。

(5) 地震直後のSN-3号孔の地下水位の急な低下
 地震発生直後のSN-3号孔の地下水位低下を1989年以降で35回以上観測した(図3.4.1-7)。この変化は常に水位の低下で、地下水位低下量は数cm〜数十cmであった。SN-3号孔の地下水位の歪感度を考えると、地震の震源でのズレによる広域の地殻変動が地震発生直後のSN-3号孔の地下水位低下の直接の原因ではないと推測できる。加えて、土岐花崗岩は水理的につながりが良いと推測されるにも関わらず、周辺の観測井では類似の現象は見られない。これはSN-3号孔のごく近傍の小さな領域に起きた地震誘発現象を表わしている可能性が強い。

(6)地震後の長期にわたる地下水位・水圧変動
 SN-3号孔では地震後長期の地下水位変動が何度も観測されている。特に、1997年3月16日愛知県東部地震後は、多くの観測井(図3.3-4)で地下水位・水圧の上昇が観測された(図3.4.1-8)。2000年10月6日鳥取県西部地震後の場合、新規に連続測定が始められた観測井の中には地下水位・水圧の低下が観測される例も見つかっている。土岐花崗岩中で水平方向に地下水移動が起こった可能性が考えられる。

(7) 地震前のSN-1号孔の地下水位の上昇
 地震発生の1週間程度前からSN-1号孔の地下水位が10-30cm程度上昇する例が数度見つかった(図3.4.1-9)。これらは潮汐・気圧では説明できない変化であり、今のところ、人為的な要因の可能性も見つかっていない。なお、SN-3号孔の地下水位を始めとする他の観測井の地下水位・水圧には、類似の地震前の変動は見られない(図3.5-1)。この地震前の地下水位変動は、巨礫を含む堆積岩である土岐夾炭累層下部の中の地下水にだけ起きた現象と推測できる。また、土岐花崗岩中に設置された地殻活動総合観測装置(97FT-01号孔)での歪測定からは、SN-1号孔の地下水位の変動と同時期に、主歪の方向や剪断歪成分の変動が起きていることが分かった。詳細は3.5節にて述べる。

(8) 地震波に対応するSN-3号孔の地下水位の振動
 日本時間1999年9月21日2時47分に発生した台湾地震(M7.7)による長周期の地震波(表面波)に対応して、SN-3号孔の地下水位に変動が検出された(図3.5-3)。しかし、SN-1号孔や97FT-01号孔の地下水位には変動は見られなかった。97FT-01号孔での歪や傾斜にも変動が見られた。地震波の周期での各観測井毎の地下水位の歪応答を推定でき、地層の弾性的・水理的性質を知る手がかりとなる。詳細は3.5節にて述べる。

(9) 測定結果の解釈
 上述の地下水位・水圧測定結果から、以下に解釈を行った。

1) 地下水位変化と地震のマグニチュード・震源距離
 SN-1号孔、SN-3号孔の地下水位変化の有無と地震のマグニチュード・震源距離との関係を調べた。大きく近い地震ほど、地下水位変化を引き起こしやすいという大まかに関係があることは分かった(図3.4.1-10の上)。しかしながら、SN-3号孔の地震直後の地下水位の低下量と地震のマグニチュード・震源距離との間に明確な関連は見られない(図3.4.1-10の下)。これは(5)で述べた「地震の震源でのズレによる広域の地殻変動が、地震発生直後のSN-3号孔の地下水位低下の直接の原因ではない」との推定の間接的な裏付けになる。

2) 同じ土岐花崗岩中の地下水位の振る舞いの違い
 水平距離約50m、深さ約10m離れた場所で同じ土岐花崗岩の地下水位を観測しているSN-3号孔と97FT-01号孔がある。この2つの観測井の間で、測定された地下水位の挙動が非常に大きく異なることが分かった(表3.4.1-2)。SN-3号孔の地下水位には、明確に潮汐・気圧応答・地震波応答が見られるのに対し、97FT-01号孔の地下水位には、ごく小さな潮汐・気圧応答しか現れず、また地震波応答は検出されていない(図3.4.1-11)。
 この原因として、観測井の内径と観測井近傍の透水性の違いが考えられる。Hsieh et al.(1987)のモデルを用いることで説明を試みた。それぞれの観測井の内径がもたらす井戸貯留の影響と観測井近傍の花崗岩の局所的な透水性がもたらす影響を評価し(図3.4.1-11)、この2つの要因が同じ土岐花崗岩の地下水位の測定結果に大きな挙動の違いを生じさせることを示した。
 このように、近傍の同じ岩石中の地下水を測定したとしても、同じ現象に対して同じ変動が現れるとは限らないことが分かった。

(北川 有一)

3.4.2 地殻活動総合観測装置による地殻変動観測とその応用としての初期応力測定

 東京大学地震研究所により開発されたボアホール式の地殻活動総合観測装置は、全国約50ヶ所に設置され、地震予知のための基礎データを提供している。特に、地震研究所の伊東観測点では、群発地震活動の前から最大地震の発生に至る過程に明瞭な前兆的地殻変動を観測した。この観測装置を東濃鉱山周辺や地震研究所の油壺地殻変動観測所に設置し、地殻変動連続観測を行い、伸縮変化や傾斜変化、加速度計による記録と、他の地震予知研究に関連する観測項目との比較をした。また、総合観測装置の改良と関連する測定装置の開発を行った。
 フロンティア研究では地震の前兆現象を解明を目的として、地殻活動総合観測装置による地殻変動の連続観測を始めた。この本来の目的だけでなく、フロンティア研究を持続する中で、総合観測装置の応用範囲を広げることができ、地震発生に関連する研究だけでなく、深地層に関連する他の多くの分野の研究に貢献できることが分かった。

(1) 伊東観測点
 図3.4.2-1は、伊東観測点の位置と群発地震の震源、及び、伊東観測点に設置した代表的な構成の地殻活動総合観測装置を示す。この観測装置は、小型でありながら多項目の観測を高精度で行える。最近では、ジャイロ方位計72)の代わりに、フロンティア研究により新しく開発した磁気方位計を使用し、観測装置を埋設した後は、この磁気方位計を用いて、今まで得られたことがない地下深部における地磁気変化の連続測定が行えるようになった。
 図3.4.2-2は、伊豆半島沖の群発地震の活動に関連した、傾斜ベクトルと最大主歪の時間的変化を示す。何れの地震活動においても、群発地震の活動に2日ほど先行する、前兆的傾斜ベクトルと最大主歪変化が観測され、最大地震の発生の前に、この傾斜ベクトルと最大主歪の方向が、テクトニックな応力の方向になることが分かる。この例のように、地震の前後で、地球潮汐の振幅程度の異常な現象が生じれば、その変化を検出できる。この観測装置は、地震予知だけでなく、地辷りや土石流の予測に利用できるし、高温に耐える観測装置に改良すれば、噴火予知研究に利用できる。

(2) 東濃鉱山
 図3.4.2-3は、1998年4月22日に発生した地震前後の東濃鉱山における地殻活動総合観測装置による観測結果である。図の上方が加速度、下方が歪と傾斜変化である。1ガルを越える加速度を受けながら、地殻活動総合観測装置は安定に作動したことが分かる。平成11年度には、新しくデータ収録システムを開発し、地殻活動総合観測装置の歪計の出力を歪地震計として利用できるようになり、加速度計との比較も可能になった。1999年9月21日の台湾大地震直後に観測された歪変化と地下水位の変化等がよい相関を示し(図3.5-3)、この種の資料が蓄積すれば、地震発生に関連する地殻の異常変動の物理的なメカニズムの解明が期待できる。

(3) 油壺における傾斜変化の比較
 図3.4.2-4は、油壺観測所における40mの長さの水管傾斜計と地殻活動総合観測装置内の改良後の傾斜計の記録を比較したものである。図の写真が、地殻活動総合観測装置内の傾斜計である。記録の比較から分かるように、地殻活動総合観測装置内の傾斜計は、小型でありながら水管傾斜計と同程度の測定精度を有することが分かる。フロンティア研究により傾斜計の測定精度を向上させることができたため、図3.4.2-2で示したような地震発生に関連する異常現象を検出できる可能性がより多くなった。図示はしないが、油壺観測所における地殻活動総合観測装置によるボアホール式の加速度計による記録は、横坑内に設置されている通常のサーボ型加速度計による記録と遜色のない良質の記録である。

(4) 地殻活動総合観測装置の改良
 地殻活動総合観測装置は、センサー部を地下深部にモルタルで埋設するため、修理することはできない。多くの場合、落雷によりセンサー部が損傷する。このフロンティア研究で、歪計や傾斜計の信号を地下で高精度のデジタル値に変換し、そのデータを光ファイバーで地表に伝送する、落雷対策を施した高精度のデータ収録システムを開発した。開発した新システムでは、歪計や傾斜計のデータをGPS時計に同期して20ビット、200Hzでサンプリングできる。このため、この収録システムを使用すれば、地震動の帯域を対象とする地殻変動の研究が可能であるし、サンプリングされたデータを積算し平均化することで、従来の長周期の地殻変動帯域の歪変化や傾斜変化の測定精度が向上する。
 センサー部に振子を使用する長周期の地震計は、水平方向の振動と地震計が受ける傾斜変化との区別ができず、水平成分の記録は不正確で解析に適していない。しかし、地殻活動総合観測装置の歪計は、大地震の場合であっても、水平方向の大きな振動を正確に記録できる。今まで、大地震の場合の正確な水平方向の振動の記録は得られたことはなく、新システムによる歪地震計の記録が蓄積すれば、地震工学の分野の研究に重要な知見を与えるデータとなる。将来は、この分野へのボアホール歪計の応用が期待できる。
 現時点では、ボーリング孔の孔底に歪計を設置する構成であるが、同じボーリング孔に深度を変えて複数設置できる歪計を開発し、広域の観測網を展開すれば、地殻変動観測と歪地震動の観測を3次元的に行うことができ、深地層の挙動がより正確に把握できる。

(5) インテリジェント回収型歪計
 図3.4.2-5の上方に、図3.4.2-1で示した地殻活動総合観測装置の歪計を応用した、インテリジェント回収型歪計を示す。この回収型歪計は、高精度の歪計のセンサー部を低消費電力化し、マルチプレクサー73)・A/D変換器・メモリー・電池を一体化したもので、測定装置に信号ケーブルや電源ケーブルがない。この測定装置を地下深部に埋設し、モルタルの固化後にオーバーコアリングを行って初期応力を解放する。そして、オーバーコアリング前後の歪変化から、インバージョンで初期応力を測定する。信号ケーブルや電源ケーブルがないため、地下深部であってもオーバーコアリングが行える。図3.4.2-5の下方に、東濃地方のボーリング孔で行ったオーバーコアリングの前後のインテリジェント回収型歪計による歪変化を示す。オーバーコアリング前後の歪変化や、測
 定装置回収時の水圧による歪変化が明瞭に記録されている。解析結果から、主歪の方向と大きさは、

   N54.2°E方向が、3.32MPa
   N35.8°W方向が、2.52MPa

の様になった。

 この測定装置により、2000年1月に、500mの深度で初期応力の測定に成功した。この測定方法は、水圧破砕法74)と異なり岩盤を破壊しないため、同じ地点に地殻活動総合観測装置を埋設できる。地震予知を目的とする地殻変動の連続観測は新時代を迎えつつある。すなわち、岩盤に作用している初期応力と岩盤の破壊強度に関する情報を知り、その同じ地点で地殻変動の連続観測を行い、歪変化を介して地震発生に関連する応力の時間的変化が測定できる、地震予知にとっての新時代になった。その先駆けとしての初期応力測定装置と測定方法を、フロンティア研究により開発できた。この測定装置や測定方法は、深さ1km以上であっても使用ができ、今後、超深度に関わる研究に貢献する。

(石井 紘・山内 常生)

3.4.3 東濃鉱山周辺におけるラドン観測結果

(1) 観測目的と概要
 ラドン(Rn)を使用して地下水挙動を調べ、地震に伴う変化を検出しようとする研究は、東京大学や地質調査所により20年以上に及ぶ着実な観測研究が積み重ねられてきており、他の溶存ガス・水位・圧力・水温などとともに重要な指標となっている。岐阜大学で新たに開発されたPINフォトダイオードを利用した高感度Rn検出器を使って、リアルタイム、安価という特質を利用し、東濃鉱山における多点観測を継続中である。
 東濃鉱山坑道内での本観測の利点と意義は、以下のようにまとめられよう。

地下深部のため、環境要素(特に、気温や降水)の影響を受けやすいRn濃度観測では、極めて有利な観測条件となっている。
地表からの深度の異なる観測が可能で、地質条件の異なる地層のデータも得られる。
水量は少ないが安定して湧出している地下水があり、水質等のデータも蓄積されている。
地表付近ではのような条件のため殆ど不可能な、岩盤から直接放出されるラドン濃度の測定が実施できる。
坑道全体を「1つのRn放出体」と考えた、新しいアイディアの観測を実行できる。
他の基本観測データも多く、Rn濃度変化の原因を定性的・定量的、総合的に評価することができる。

(2) 観測点の配置
 上記の利点を活かす観測として8箇所の観測点を配置し、1997年より観測を開始した。これらの観測では、上記に相当する観測点を2箇所、の観測点を5箇所、の観測点を1箇所設置した(図3.3-6)。また、これらの観測点で得られたデータをネットワーク化して構内の1箇所に集め、ワーク・ステ−ションに取り込んでいる(図3.3-10)。

(3) 観測結果
 初期には、落雷などによる送電不良や坑内作業などで観測の中断が多数回発生しており、そのために観測システムが大きな影響を受けることも多かった。1998年以降では、未だ改良を検討する余地も残されているが、かなり安定してデータが得られており、その概要を以下に述べる。

1) Node2のデータ(岩盤及び湧水中からのRn放出量の変化)
 1998年1月〜2000年12月までのNode2 ch.1の観測データを図3.4.3-1に示した。Node2 ch.0(95m試錐室)はこの間、他の目的である地下水のリークテストなどでRnデータは不安定であり、長期的な変化を議論することはできないが、Node2 ch.1(120m回避所付近)では季節変化などを含めた変化を知ることできた。また、Node2ch.2の岩盤からのRn濃度変化が、湧水量の変化とは異なった季節変化(2か月程度のずれ)をしていることが観測された。メカニズムを含め、原因と2点間の相互関連を検討するには、さらに長期の観測を必要とする。

2) 湧水中のRn濃度
 Node2 ch.0およびNode2 ch.1の観測点の湧水については、その帯水層が同一であるかどうかについて過去の研究でも検討されてきたが、明確な結論は得られていない。Rn濃度変化から、両点は20m程度しか離れていないにもかかわらず、短周期(24時間以下)の相関は低く(1998年3〜6月の解析)、その係数も時期的な変化があることが今回明確になった。しかし、その原因については、幾つかの可能性を指摘できるのみである。長周期の相関はかなり高く(0.54以上)なっている。

3) 岩盤中からの放出Rn濃度
 岩盤中からのRnの放出量については、1998年の1年間について4箇所(Node3ch.0を除く)のデータを詳しく検討した(図3.4.3-2)。その結果、短周期(24時間以下)の変化については、弱い1日程度の周期が見出されているが潮汐変化ではなく、気温・気圧変化との相関も低いことが確かめられた。長周期変化から確認できた観測点相互の変化は極めて類似しており、相関係数も0.72〜0.90である。また,位置は離れているが,深度の大きな花崗岩中の観測点(Node2ch.2)と土岐夾炭累層上部(Node3ch.1)の観測点の2点間の相関が極めて高いことは興味深い。下表に、各地点間の相関係数を示した。


4) 坑道内大気のRn濃度
 坑道内大気は主扇風機の排気能力(300m3/sec)よって計算すると8-10分で入れ替わり、吸入される大気温も大きく変化している(図3.4.3-3)。坑道内の温度・湿度の場所的な分布を11〜12月の測定から見ると、立坑より吸入された外気が湿度は10%/100m、温度は3℃/100m程度の急激な変化をしている(図3.4.3-4)。攪拌による大気の混合等も考慮すると、実際に坑道壁からのRn放出量を代表するのに十分な滞留時間であるとは断言できないが、一定の変化を検出できる状態であると考えられる。1998年1〜8月の坑道内大気温度とRnの相関は図3.4.3-5に示したようであるが、時間的な遅れや湿度・気圧との重相関などについてさらにデータ集めて解析を進める必要がある。

5) 湧水中のRn濃度の異常変化

1998年6〜8月のKNA-2号孔のリークテストに伴い湧水の状態が変化した。特に、6月9日からNode2ch.0への導水が止まったため、計器の動作状態をRnの半減期からチェックする機会となった(図3.4.3-6)。

同上の実験に際してNode2ch.1への影響を見ると、リークテストが開始されてからNode2 ch.1のRn濃度変化は短周期成分が無くなり、殆ど一定値を示している。このことは、両湧水間には何らかの相互作用が働いていると考えられるのであるが、2)に述べたように、短期間変化の差異を考慮に入れると原因を明確にはできない。

地震によるRn濃度変化について調査すると、この間に観測地域周辺に発生した顕著な地震として、1997年12月14日の愛知県北東部地震(M4.2)、1998年4月22日の 岐阜県・三重県境付近の地震(M5.4)、1998年8月12日および16日の長野県中部地震(M4.7、M5.4)、1999年11月29日の愛知県西部の地震(M4.7)などが上げられる。この中でいくつかの地震については、不明瞭な変化が見られるが、特に最新の愛知県西部地震の折には、Rn濃度のCo-seismicな変化と考えられるような異常を検出している(図3.4.3-7)。

(4) まとめ
 東濃鉱山内におけるRn濃度の観測では、環境要素との詳しい検討などのために、さらに長期の観測を必要としている。また、その成果を高めるために、本観測システムについては静電捕集型の高感度Rn測定計器としての利点を活用しつつ、環境要素の影響を実験的により詳しく調査することも必要である。
 1999年8月より坑道内の観測データは、電話回線を使用し岐阜大学で直接監視しデータの異常検出などもできるようになった。現在、研究者にはパスワードを発行して、データを公開し、活用に努めている。

(田阪 茂樹・佐々木 嘉三)

3.4.4. 東濃鉱山及びその周辺における地下ガス観測

(1) 観測目的と概要
 地震に伴う変動と地下から放出されるガスの関連を指摘する研究が、ラドンを始めとして数多く紹介されている。地震に伴う変動が報告された様々なパラメータ(歪・傾斜・地下水位・間隙水圧・ラドン濃度など)と地下ガスとの関連を研究することを目的として、マスフィルタ型四重極質量分析計(QMS:図3.4.4-1a)を用いた地下ガスの連続観測方式を新たに試みた。
 具体的には、以下の様な段階を踏んで地下ガス観測を実施した。

東濃鉱山において、坑道全体をセンサーとみなして、換気の為に坑道全体の空気が収斂する通気立坑から直接空気を吸引してマスフィルタ型質量分析計に導入し、連続観測を実施する(1997年3月末より観測開始)。

上記の実績を踏まえて、観測井中の地下水にシリコン中空糸型気体分離モジュールを投入して、地下水に溶存しているガスを直接連続的に採取し、同分析計で連続観測を実施する(1998年3月末より観測開始)。

 ガス採取のための吸引には、小型のダイヤフラム型真空ポンプを用いた(図3.3-8)。採取されたガスの一部を、可変リークバルブを通じて質量分析計(QMS)に導き、分析器本体の真空ポンプで引きながら連続測定を行なった。典型的な大気組成のガスが入って来た場合、その質量数毎の(ピーク強度の)スペクトルパターンは図3.4.4-1b(縦軸:logスケールのピーク強度、横軸:質量数)のようになる。この内、質量数2(H2)・4(4He)・18(H2O)・28(N2)・32(O2)・36(36Ar)・40(40Ar)・44(CO2)等を選択して、連続観測を行った。

(2) 観測結果

1) 東濃鉱山における地下ガス(坑内空気)の連続観測結果
 1997年3月〜1999年12月までの観測データを図3.4.4-2にまとめた。一部時間軸を拡大したものを図3.4.4-3a,bに示した。分析計内部に導入するガスの圧力によるピーク強度の違いを補正するために、36Arを基準にした組成比・同位体比で示した。また、H2・H2O・CO2以外は、基準大気の測定によって補正を行った。坑道内での電気工事の関係上、観測データは所々断続している。停電の間隔が短いため、その都度ブランクの測定や大気標準の測定が行えず、時期によって測定値に段差が見られる。また、CO2等は停電復旧後に比の値が回復するまで時間がかかる(図3.4.4-2)。しかし、一覧してガスの種類毎の特質を以下の様に明確に分類することが出来た。

40Ar/36Ar:全体として年周変動など周期的な変動を示さず、ほぼ大気の値(295.5)で一定だった。

18H2O/36Ar:年周変動及び日周変動を示す。この変動を、外気の影響を受け易い測定室付近の温湿度及び受け難い通気立坑入口付近の温湿度と比較した結果、相対湿度には相関せず、測定室付近の気温の年周・日周変動との相関が極めてよいことがわかった。

2H2/36Ar:H2は実際のH2と分析管内でH2Oより分解したH2の混合気体を測定している。そのため短期的にH2O変動の影響を受けることがあるが、長期変化は異なる。しかしばらつきは大きい。図3.4.4-3aの2月9−10日の変動は、QMSのガス取入れ部の改造によるものである。

44CO2/36Ar:人為的な変動を示す(入坑者の呼気を捉える)。

4He/36Ar:通常はほぼ一定。組成比は大気の値よりも高く、ウラン系列等の放射性核種からの壊変起源の4Heの影響と考えられる。稀に人為的な変動を示す(坑道内の鉱石室の扉を開閉した際の4He放出を捉える)(図3.4.4-3a)。

 以上より、平常時のデータが把握できた。人為的な変動などの影響が現れることから、ガスの取込み及び測定が正常に行われていることが確認できた。
 地震に伴う変動について、例を同じ図3.4.4-3a,bに示す。1998年2月10日の岐阜県中部の地震(M4.2)の前後に見られる一部の変動は、前述の通りQMSの改造に伴う変動である。また、Rnで変動が見られた1999年11月29日の愛知県西部の地震(M4.7)においても、それ以外の地震に対しても、平常時の変動に匹敵する程の観測に掛かる顕著な変動は確認できなかった。

2) 97FT-01号孔における地下水溶存ガスの連続観測結果
 1998年3月〜1999年12月までの観測データを、36Ar叉は28N2を基準にした組成比・同位体比に直して図3.4.4-4a,bにまとめた。また、H2・H2O・CO2以外は、基準大気の測定によって補正を行った。1998年3月〜1999年8月までの観測結果には、以下の特徴が見られた。

4He/36Ar〜観測当初、大気の値(0.167)の2倍程の値を示すが、1998年5月中旬から急速に低下し、以後大気組成とほぼ同様の値を示す。ちなみに、0℃及び25℃の純粋な水に大気組成の気体が飽和状態に溶け込んだ場合の4He/36Ar比は、0.0291及び0.0459(Ozima and Podosek, 1983)であり、これらの値と比べても約10倍ほど高い値を示す。

32O2/28N2は、全体として大気の値より低い期間が多い。顕著に低い時期は、観測開始当初(1998年3月末〜6月上旬)及び1998年11月〜12月の間だった。

全体として、間歇的なピークが多数存在する。

40Ar/36Arは大気の値(295.5) よりやや高い比を示す間歇的なピークが見られるが、総じて大気の値とほぼ同じで一定であった。

 図に見られた間歇的なピークを詳しく見るために、生の観測量を図3.4.4-5a,bにまとめた。但し、後者は、各観測項目毎の変動を比較するために、各ピークのスケールを無視して並べたものである。間歇的なピークが多く見られるのは、観測開始当初(1998年3月末〜6月上旬)及び1998年9月中旬〜12月頃、である。また特徴として、ガスの種類によって逆相関を示し、2H24He、18H2O、28N2、Arは増加を示すのに対して、32O244CO2は減少を示す。
 観測開始当初、及び間歇的なピークの示すガス組成に共通して見られる特徴は、低濃度の酸素を含むガスということであり、これは、溶存酸素濃度が低い東濃鉱山周辺の地下水の特徴に合致している。このことから、純粋な地下水溶存ガスは、観測開始当初及び間歇的なピークの時のみ測定されていて、それ以外の大部分は大気が混入したガス成分を測っていたものと考えられる。
 その原因としては、97FT-01号孔の地下水位が、観測当初から一方的に低下するだけ(図3.4.1-1)であり、且つストレーナー75)設置位置にある花崗岩の透水性が低いため周囲の帯水層からの水の供給が乏しかったことがあげられる。このため、観測井に溜まっている地下水中の溶存ガスを観測することになり、1998年6月上旬で溶存ガスが枯渇したため、ガスを吸引するためのダイヤフラムポンプ(図3.3-8)から大気組成のガスがQMSの中に逆流していたと考えられる。1999年末までに水位が上昇したのは(リークテスト終了後の)1998年9月中旬〜11月頃のみで、この時、間歇的なピークが多く観測されており、かつ低酸素ガスも観測されていたことから、溶存ガスの供給があったことを支持する。
 測定が成功している時点における地下水溶存ガスの組成は、大気組成に比べ低酸素濃度であること以外に、4He/36Ar比が大気と平衡な水の値より有意に高い値(約10倍)を示し、40Ar/36Ar比では大気の値より僅かに高いか、ほぼ同じ値であった。特に後者の希ガスの組成比(4He/36Ar)・同位対比(40Ar/36Ar)に関しては、同じ土岐花崗岩に掘削された別の1000mクラスのボアホールの様々な深度からサンプリングされた地下水中の溶存希ガスをスタティックな条件でセクター型の質量分析計によって測定した結果(3He/4He比が大気の値より1桁以上小さく、40Ar/36Ar比は大気の値とほぼ同じ)とよく一致していた(Morikawa, 2001, personal communication)。
 地下水溶存ガスの観測においては、東濃鉱山の場合と異なり、観測そのものに問題があって、多くの期間、地震時の変動を考慮できる状態ではなかった。正常に観測できていた頃、1998年4月22日の岐阜県・三重県県境(三重県北部)の地震(M5.4)があったが、これに伴う顕著な変動は観測できなかった。

(3) まとめ
 地下ガス観測に関しては、人為的な変動を含めた環境要素の変動を捉えることが十分可能であり、これに匹敵する変動が生じれば検出は可能である。しかし、現段階まで地震に関連した変動を捉えることは出来なかった。地下水溶存ガス測定においては、シリコン中空糸型気体分離モジュールの適用試験を兼ねている面もあるが、地下水位の一方的な低下及び透水性の低さから、十分なガス観測に至らなかった。測定が成功した時期において得られた溶存ガスの結果は、別の測定手法を用いた研究結果とも整合しており、実際の溶存ガスの測定が正常に行われていたことを示す。成果を高めるためには、より透水性の高い観測井に適用することも含めた改善や、連続観測による基礎データの蓄積が必要である。

(吾妻 瞬一)

3.5 多成分観測データの地震に対するレスポンスの相互比較例

(1) 1999年8月20日岐阜県美濃中部の地震(M3.9)及び1999年8月21日和歌山県北部の地震(M5.4)に関連した現象の考察(図3.5-1)
 地震発生の1週間程度前から土岐夾炭累層下部を対象としたSN-1号孔の地下水位に上昇が見られた。同時に、土岐花崗岩を対象とした97FT-01号孔での地殻歪観測(直線トレンドは取り除いてある)にも変動が見られた。さらに地震後には、土岐花崗岩を対象としたSN-3号孔の地下水位の低下、及び土岐夾炭累層下部と土岐花崗岩の境界部の地下水溶存ラドン濃度を測定しているNode2 ch.0(KNA-2号孔)で、ラドン濃度の低下が観測されている。ただしRaA/RaC'も変化しているのでラドン計の測定条件が変化した可能性もある。
 最大主歪(主歪1)は楕円形の長い方の成分(最小主応力の方向)、最小主歪(主歪2)は楕円形の短い方の成分(最大主応力の方向)であり、地殻歪の観測結果は、(フィリピン海プレートによる)広域の応力場が少し変化したことを意味していると思われる。なお、図3.4.1-9で示した地震前のSN-1号孔の地下水位上昇が表われた幾つかの地震は、その震源の深さが40-70km程で、潜り込んだフィリピン海プレートで起こった地震であり、上部地殻中の地震ではないという共通点を持っている。
 地質的水理的な特徴からは以下の事が言える。月吉断層北盤側の堆積岩類は基盤である土岐花崗岩の上の狭い範囲のみに存在し、月吉断層南盤側の堆積岩とは、難透水面としての性質を持つ月吉断層によって、水理的には遮蔽されている。このような状態での月吉断層北盤側の土岐夾炭累層下部中の地下水は被圧が良い(周りの地層との間の透水性が小さく封じ込められた状態)と解釈される。これはゆっくりとした変形に対して大きな応答を期待できる可能性を意味する。そのことからSN-1号孔の地下水位上昇は、長周期の地殻歪に対する応答が原因の可能性が考えられるが、同時期の土岐花崗岩中の地下水位には地震前の上昇が見られないことを考慮すると、地殻体積歪(面積歪)で説明できるとは考えにくい。しかしながら、土岐夾炭累層下部層は巨礫を含む非常に不均質な堆積岩であり、また異方性も推測されるので、単純に体積歪(面積歪)に対する応答とは限らない。実際、97FT-01号孔での地殻歪観測でも主歪の方向や剪断歪成分に大きな変動が見られる(図3.5-2)。現時点では、これ以上の詳細は不明である。

(2) 地震波に対応する歪・傾斜・地下水位の振動(図3.5-3)
 日本時間1999年9月21日2時47分に発生した台湾地震(M7.7)による長周期の地震波(表面波)に対応して、97FT-01号孔での歪や傾斜、SN-3号孔の地下水位に変動が起きたことが分かった。これは地殻内での歪・間隙水圧の関連性や地層の弾性的・水理的性質を知る重要な手がかりとなる。今後の事例の蓄積によって、地震に関連する地殻内部現象を把握する上での重要な知見が得られると期待できる。
 また、ボアホール地殻活動総合観測装置が歪地震計として高い性能を持つことを示している。地殻内部での流体を含む地層での歪・地下水の観測結果は、液状化現象を始めとする地盤の震動特性の研究に貢献できるであろう。

(3) 1999年11月29日の愛知県西部の地震(M4.7)に関連した現象の考察(図3.5-4)
 この地震の直前に、土岐夾炭累層下部と土岐花崗岩の境界部の地下水溶存ラドン濃度を測定しているNode2 ch.0(KNA-2号孔)でラドン濃度の低下が観測されている。測定結果は、ウラン壊変系列の上流に位置するRaA(218Po:半減期3.05分)の低下が、同系列の下流に位置するRaC'(214Po:半減期0.164ミリ秒)の低下より少し先行し、全体としてRaA/RaC'が一定している。この変動はラドン計の内部へ取り込んでいる地下水溶存ラドン濃度の低下が起きた場合に期待できる変動パターンであり、測定条件の変化の可能性は小さい。他の測定項目には、地震前の変動は見られない(注釈:図3.5-4に見られる地震前の地下水位のわずかな上昇は気圧応答である)。地震直後には、SN-3号孔での地下水位低下と97FT-01号孔での傾斜のステップが見られる。
 RaAや RaC'を低下させるには、観測対象としている地下水が、ラドン濃度のより低い地下水と混合した等の流動状態を変化させた可能性が考えられるが、現時点では詳細は不明である。

(吾妻 瞬一・北川 有一)

3.6 全体のまとめ

 これまでの5カ年計画では、地震発生に対して応答性の高い東濃地域の特徴を生かし、地下水変化、地殻変動に関連する総合観測研究の基礎を確立することに重点を置いてきた。同時に,本研究では新観測手法の開発にも力点をおいてきた。
 観測における主な成果と、新観測手法の開発における主な成果は以下のようになる。

(1) 観測における主な成果

・東濃鉱山周辺において、多くの地震に関連する地下水位変動、多深度間隙水圧変動、地殻変動、水中ラドン濃度変動を検出した。

・幾つかの観測井における地下水位・間隙水圧変動に関して、地震前・地震直後・地震後(数日〜1ヶ月後)のそれぞれの変動を捉え、特に地震直後及び地震後の変動の原因を推定した。地震前の変動に関しては、その原因の特定までは至っていない。

・地球潮汐・気圧・地震動といった地殻歪、及び地下水位・間隙水圧に変動をもたらす現象から、東濃鉱山周辺地域の基本的な特性としての、地殻歪と地下水位・間隙水圧の関係の周波数応答特性を導いた。

・ボアホール地殻活動総合観測装置によって、伊豆の群発地震活動に関連した地殻変動を検出した。また、東濃地域のほぼ真下、深さ数10kmの地震に対して、地震の数日前から土岐花崗岩におけるせん断歪や主歪の角度に特徴的な変動を記録した例が観測された。この動きに連動していると思われる土岐夾炭類層下部の地下水位の変動も観測された。

(2) 新観測手法の開発における主な成果

・深い試錐孔に適用可能かつ回収によって再利用可能なインテリジェント回収型歪計を開発した。現在まで、その適用深度は約500mにまで及んでいる。

・ボアホール地殻活動総合観測装置を改良し、その中の石井式歪計を水平動を正確に記録できる歪地震計として利用できる体制を確立した。また、傾斜計を改良することで、従来の水管傾斜計並みの測定制度を実現した。

・四重極質量分析計を用いて、地下ガス成分を連続的に高精度で測定する手法を確立した。また、地下水溶存ガスを地下水から連続的に直接採取する手法を取り入れた。

・東濃鉱山坑道内での各深度におけるラドン観測や、東濃鉱山周辺の観測井における多深度間隙水圧観測など、地域を立体的に捉える観測点を整備し、連続観測を実施した。更に、深さ1000mの試錐孔における多深度間隙水圧観測に着手した。

 今後、地震現象との関連性を解明するのに役立つデータが得られることが期待できる。また,1000mもの深さの試錐孔に適用可能な初期応力の測定法など世界に誇れる新技術の実用化にも明るい見通しが得られている。

(脇田 宏・吾妻 瞬一・北川 有一)


4.活断層帯での地殻活動研究
4.1 研究の目的・意義


 活断層はどのような構造をつのか、いかなる過程を経て地震発生に至るのか、多くの点が不明なままである。本研究の目的は、数十キロメートルから、破砕帯の岩石の顕微鏡で見る数ミリメートルまでの、広い範囲のスケールの研究を通して、活断層の構造と挙動を明らかにしようとするものである。ここでは、地震計とGPS受信機を用いて広域の動きをさぐり、地質学的、精密計測の手法を用いて破砕帯およびその近傍の岩石の性質を理解しようとするものである。 
 地震の予測ないし予知は、地震のメカニズム研究の究極の目標である。もちろん一足飛びに達成は難しい。断層周辺でどの様に応力や歪が蓄積され、断層の破壊に至るのか、地震発生の場と物性の理解が必要である。本研究は、跡津川断層系(図4-1)に焦点を当て、断層の構造や挙動を集中的に観測、観察を通して、断層のメカニズム研究を進める。

4.1.1 本研究の特徴−調査坑道と広域調査

 本研究の特徴は、世界で始めて掘削された活断層調査専用の坑道を用いた研究にある。この調査坑道を見学した世界の研究者は、「こんな素晴らしい施設が活断層研究ためだけに作られたのか」と一様に驚いている。地震研究におけるこの調査坑道の持つ意味は大きい。
 活断層破砕帯は浸食されやすく、破砕帯が地表で観察できる場合は希である。たとえ観察できても、地表に現われた破砕帯の岩石は、風化や侵食により変質し、地震断層が生じたときの物理・化学的状態を示さない。したがって、この種の変質した岩石の分析を通して、地震発生時の状態を推定することは難しい。また、地震観測のような機器を用いる測定でも、断層付近は一般に谷や窪地を作り、地形的影響を強く受けるため測定そのものが困難なことが多い。活断層を貫いた活断層調査坑道はこれらの難点を解決してくれた。
 今日まで、活断層を貫くトンネルは数多く掘削されてきたにもかかわらず、活断層調査坑道が必要だった。一般に、活断層の破砕帯部分はもろく掘削は困難であり、多くの場合、掘削と同時にコンクリートを注入し、壁を固めトンネルを安定させる。通常のトンネル工事では、活断層調査に必要な地質や物性の調査や試料の採集などは、十分に行われないまま掘り進む。さらに掘削終了後、トンネル内で精密観測はもとより、長期にわたる繰り返しの調査観測は不可能である。調査坑道は“わざわざ”掘らなければならない。

4.1.2 跡津川断層・茂住−祐延断層を選定した理由

 地震研究にとって興味深い、かつ断層を貫ぬく調査坑道を掘削することが可能な活断層はどこにあるのだろうか?このような条件を満足させる断層や地点は日本では限られる。跡津川断層の近くには、現在も稼働している神岡鉱山があることから、ここが最適調査地点として選ばれた。
 神岡鉱山(岐阜県神岡町)の茂住坑道からは、茂住-祐延断層までは100mの位置にある。日本でもっとも活断層にアクセスしやすい坑道であろう。掘削の装置や施設も既存のものが利用できる。掘削後も、調査坑道の維持や管理等の運用も容易である。神岡鉱山は新しい地下利用に力を入れており、東大宇宙線研究所のスーパーカミオカンデ53)も誘致している。
 さらに、茂住坑道は、岐阜県北部にある跡津川断層系の中にある。本地域では、京都大学防災研究所が、1967年に観測所を設置し、地殻変動と地震観測を行ってきた。1976年より地震観測網のテレメータ化を実施し、その後観測点は能登地方にも拡げられた(Mikumo et al.,1981)。20数年間の観測を通して、跡津川断層に沿う線状の地震分布、北アルプス火山の間での地震活動の相補性、地震空白ブロックの発見など興味深い現象が見つけられた(図4-2)。一方、国土地理院により、跡津川断層の東側(跡津地域)でクリープが、測地測量の手法により明らかにされた。日本で最初に発見された活断層上のクリープでもありその解明も本研究のテーマの一つである。

(安藤 雅孝)

4.2 研究目標

 本研究は、調査坑道内の調査ばかりでなく、調査坑道を取り囲んで、集中的に広域な観測を行う。跡津川断層、茂住-祐延断層を取り囲み、大規模(約50km)、中規模(5km)、小規模(500m、調査坑道サイズ)の異なるスケールで断層およびその周辺の構造や動きを観測や観察を通して追跡する。どのような背景を持つテクトニクスの場にあり、どのような構造を持つ断層型であるかを知った上での、断層に関する総合的研究である。
 活断層調査坑道(図4-1)の利用には二つの目的がある。それらは、深部での活断層破砕帯の観察や観測を行う。地下深くの良好な観測に適した環境を利用する。各研究項目は、これらのそれぞれの特質を活かすように組み立てられた。破砕帯は過去の地震を記録する記録紙であり、どんな温度・圧力条件のもとでどのような破壊が生じたかを明らかにできる。調査坑道内の調査から、茂住−祐延断層のすべりはゆっくりしたクリープ性の存在も指摘されている。破砕帯の物質を採取して、破砕帯の年代(地震発生の年代)、すべりの様相を推定する。

(安藤 雅孝)

4.3 研究計画

 本研究では、坑内における観測や調査をはじめ、活断層を取り囲む広域の地殻の構造や変形の様相を追跡する。同じ時間軸上に、異なるスケールと異なる項目の変動を並べて、活断層の応力蓄積過程を追跡するのが、本研究の計画の柱である。

4.3.1 調査坑道内の計画

 調査坑道を利用する重要な計画として、断層破砕帯のトラップ波の観測がまずあげられる。480mの長いトンネルは、この種の観測を可能としている。断層に直交して地震計を10mおきに設置し、破砕帯の中を伝わる波をキャッチして地下深部で断層が、どのように繋がっているか明らかにできる。トラップ波の観測は、調査坑道の4km 南の跡津坑道(神岡鉱山)でも行われる。跡津坑道では、さらに地質調査所により地殻歪の観測も進められている。活断層付近で応力がどのように変化するかも重要な課題である。地形の効果も考慮しつつ応力測定や解析が進められる。
 坑内ではほぼ一年中温度が一定に保たれ、降雨の影響も少ない。トンネルの中は温度は一年中一定で、雨が降った影響も現れにくい。このため地殻歪、電気伝導度、地震波速度変化など精密な測定が可能となる。佐野(1996)は、極めて興味深い観測結果を釜石鉱山で得た。GPS観測結果と地震波速度変化は、地震時の瞬間的な変動に対して同じような性質を示すが、地震後のゆっくりした変動に対しては、地震波速度は異なるレスポンスを示した。地殻が応力緩和を起こしているためかもしれない。岩石中の割れ目を水が移動すると、地震波速度は回復する。このメカニズムを明らかにするために、比抵抗、地殻歪、地震波速度を同時に測定する必要がある。このような測定によりはじめて、気象擾乱を取り除き、テクトニックな信号を取り出すことができる。本研究では「一面破砕法」と呼ばれる応力測定法の開発研究も行われる。
 さらに、破砕帯にとって、地下水がどのように化学的、物理的な作用をするかは重要な課題である。地下水が破砕帯の鉱物と反応し、破砕帯を変質させ、その反応した地下水はさらに下部の破砕帯と反応を続ける。地下水がなければ破砕帯は急速に成長しない。このような地下水研究の重要性を、調査坑道を利用して、化学的および陸水学的な面から研究を行う。

4.3.2 調査坑道外の広域にわたる計画

 跡津川断層の大きな特徴は“クリープ”が進んでいることであろう(図4-4)。このために、国土地理院は、1976年より跡津川断層沿いの2ヶ所で断層を挟んで辺長測量を続けてきた。B地点付近で、右ずれのセンスで年2mm程度の割合でずれるのがわかったが、A地点付近の測線網ではずれは見つかっていない。断層には、ずるずるすべる部分(前者)とぴったり固着している部分(後者)との両方があると考えられる。この2つの性質がからみあって、断層の性質が決められる。地理院の測線距離はほぼ2km程度だが、断層からの直線距離は500m以内のため、クリープが断層面上のどの深さで進んでいるのかがわからない。深い部分までクリープが進んでいれば、その動きは断層の両側に拡がっている。浅いところにクリープが集中すれば、変動は断層のすぐ近くだけに集中するはず。これらの変動は、断層を囲む広い地域で観測して解明を目指す。このため、断層を挟んだ12点でGPS観測が進められている。さらに、現在クリープが起きている部分では、微小地震が起きていないことが明らかにった。
 したがって、地震観測、GPS観測を基本に、広域の変動と跡津川断層のクリープとの関連を明らかにする。また、地質調査をもとに跡津川断層とそれに付随すると思われる茂住−祐延断層との関連を明らかにする。地下で見られる断層が、どのような頻度で地震を発生させてきたのか、重要な断層のパラメータを追求する。

4.4 研究成果
4.4.1 広域地震観測


(1) 研究の目的
 跡津川断層系では、地震の震央76)分布が地表に見られる活断層と極めてよく一致している。また、跡津川断層系ではその3つの主な断層に沿って地震が線状に並ぶ。この断層では1858年にM7.0安政飛騨(飛越)地震が発生している。さらに、断層の一部でクリープ運動が見いだされている。上記のような特徴を総合的に観測される他の項目と比較し、地震観測による地震活動の精査によってあきらかにし、将来の地震発生機構を解明することが、本研究の目的である。
 茂住-祐延断層を横断して掘削された調査坑道内では種々の観測が実施されているが、この結果を上記のような断層系における地震活動との関連で理解するためには、断層系全体における地震活動を背景として理解しておく必要がある。したがって、調査坑道周辺を含む断層系全体における調査を、調査坑道に対するサイトサーベイとして実施し、坑内計測結果と関連づけて、応力の蓄積、地震発生過程を明らかにすることも本研究の目的である。また、坑内計測のために、震源データなどを提供することも目的の一つである。

(2) 研究の目標
 微小地震観測によって、震央分布と活断層の対応が良いことが判った。この地域の観測網は観測点間隔が約30kmもあり、地震の深さを議論するには十分ではないが、この観測網のデータで地震が上部地殻のみに発生していることが明らかにされた。さらに進んで、断層面と活断層の関連を調査するためには観測網の充実が必要であった。
 この断層の一部において,クリープ現象が見出された。クリープ地域はサン・アンドレアス断層77)では熱流量78)が高く地震の震源が浅い。しかし、跡津川断層では、クリープ地域の震源が浅いとは言えずむしろ深い。これが震源決定の誤差によるものかどうか、クリープ地域と他の地域とはどのような違いがあるのか、これらの調査を地震観測の最初の目標とした。

(3) 研究計画
 観測網を密にすることが震源の精度向上の第一歩である。跡津川断層周辺に6点の臨時観測点を年次計画で順次設置し観測を続けている。データは京都大学防災研究所上宝観測所に伝送し、他の観測点のデータとともに処理されるようにした。こうして図4.4.1-1に示すような、広域かつ高密度な観測網を稼働させることができた。実際には、東京大学地震研究所、名古屋大学理学部、防災科学技術研究所などの観測点のデータが収録されている。1997年には地質調査所によって三川原に300mの深井戸観測点が設置され、この観測点の地震計のデータも観測網に加えて解析している。
 全観測点のデータは上宝観測所に集められて、既設の定常観測網とともに解析されている。既設観測網が存在したので、本プロジェクトの地震観測を効率よく進めることができた。地震調査研究のために既設の観測網のデータをほぼリアルタイムで有効に利用できるようにすること、さらに、多少時間がかかっても精度のよい震源データを提供することは、今後の研究にとって大切だと思われる。

(4) 研究成果

1) 断層沿いの震源分布
 図4.4.1-2には臨時観測点など断層近傍の観測点を含むデータのみを用いて、再決定した震源分布を示す。三川原、洞、茂住、山ノ村、祐延、寺路、天生、蛭谷の観測点が含まれたデータでP波の観測データが6点以上のものを用いた。震央距離分布にはそれほど大きな違いは見られず、3つの断層に沿って地震が並ぶ傾向は同じである。一方、深さ分布は著しく改善された。まず、地震の下限が明瞭になり、断層沿いでの変化が良くわかるようになった。また、地震の上限が下限とほぼ平行に変化することが分かる。特にクリープしているとされる地域では、深さ7km程度までは地震が非常に少なく、その下方で地震が17-18kmの深さまで発生している。さらに、震源が決定できない小さな地震も少ないことは茂住観測点のS-P時間79)の頻度分布でも確認されているが、全く発生しないかどうかはさらに長期間の観測を要する。実際、2000年10月にはこの地域に4個の地震が観測されている。
 この傾向が跡津川断層と茂住−祐延断層で同じかどうかみるために、それぞれの断層沿いの深さ分布を作成した(図4.4.1-3)。この結果、地震発生層の中ではそれぞれの断層面に同じような地震の発生がみられ、地表の割れ目は地下10−17kmまで同じような形状であることがわかった。牛首断層は地震活動が低いのでさらにデータの蓄積を要する。

2) 断層沿いの地震活動
 断層北東部の祐延観測点を含むことによって、深さのばらつきが小さくなり、この付近では地震発生層の厚さが薄くなる傾向があることがわかってきた。一般に、地震発生層が浅くなる地域では、地震発生層の厚さも薄くなる傾向があるようである。このことは地殻内地震発生のメカニズムを知る上で重要であると思われる。しかし、これはさらにデータを蓄積して確認する必要がある。
 図4.4.1-4には跡津川断層に沿う地震の時空間分布を示す。示した範囲は図4.4.1-2の断面と同じで断層に沿って70kmの長さをとってある。地震活動はクリープ地域の両側で活発であり、クリープ地域はランダムに地震が発生しているように見える。
 図4.4.1-5には跡津川断層沿いの地震数と地震のMを深さの断面図とともに示す。地震数は断層から幅20kmの地震について、2kmごとの数を示した。数の議論にはマグニチュードの下限を考慮すべきであるが、今回は数が少ないので全データを用いた。Mを考慮しても大勢は変わらないが、これはMの分布(図4.4.1-5の中図)を見ればわかる。図4.4.1-5上図により茂住付近のクリープ地域の両側で地震が数多く発生していることがわかる。また、この地域ではM3.2の地震が最大で両側のM4.3程度の最大マグニチュードと比較して、放出される地震のエネルギーが少ないことがわかる(図4.4.1-4中図)。

3) クリープ運動との関連についての検討
 クリープ地域の地震の深さが深いことは、カリフォルニアのサン・アンドレアスと比較すると全く逆になる。サン・アンドレアス断層でのクリープ地域は、熱流量が高く、地震の下限が浅い。しかし、跡津川断層では逆であることがわかった。今のところ完全な答えはないが次のように考えることができる。断層は両側の動きを受けて止まっている。これを支えているのが地殻上部の地震発生層だと考えると、ひずみ速度が大きい地域では深いところまで地震が発生して全体を支える必要がある。図4.4.1-6にはこの様子を模式的に示した。クリープ地域はひずみ速度が大きく、この両側で地震が数多く発生する。これはひずみの不連続のためであろう。クリープ地域の深い地震のストレスドロップ80)は大きく、この地域は大きなひずみを蓄積しているのではなかろうか。したがって、通常は地震活動が低く、大きな地震も発生しない。この付近が破壊すれば大地震が発生するのではなかろうか。
 GPSの稠密観測結果ともこのモデルは調和的だといえる。すなわち、断層はshear zoneを形成しており、全体としてはロックしている。断層地域は両側の動きを支えていることになる。このことはより広い地域のGPS測定からも確かめられつつある。

(伊藤 潔)

4.4.2 GPS地殻活動観測

(1) 研究の目的・意義
 最近の国土地理院全国GPS観測網による観測成果により、新潟から跡津川断層を通り、琵琶湖に抜ける変位速度場の急変帯が注目される(図4.4.2-1)。この変位速度場の急変帯には過去の内陸地震が帯状に分布し、測地測量からのインバージョン解析81)からも内陸地震活動からも、活発なゾーンであることが指摘されている。東からの北米プレートと西からのアムールプレートのプレート境界は糸井川−静岡構造線(フォッサマグナ)を通るという説が提唱されていたが、GPSでの変位速度場から見るかぎり、両プレートはこの急変帯あたりで衝突し、このゾーンは、新潟−神戸衝突帯と命名されている(Sagiya et al.,2000)。このゾーンに位置する、跡津川断層には微小地震が断層に沿って分布している。また、断層中央部直上では国土地理院の精密光波測量観測より1.5mm/年の変位速度を持つクリープが観測されており、跡津川断層は日本で唯一、地表クリープ運動が確認されている断層であると言える。こういった跡津川断層系およびその深部延長部での、固着・すべり分布の詳細を明らかにし、内陸活断層における応力蓄積形態の解明を目的とする。

(2) 研究目標
 図4.4.2-1から分かるように、跡津川断層周辺の国土地理院全国GPS観測網の観測点分布はまばらすぎて、跡津川断層系での、固着・すべり分布の詳細を明らかにするには適していない。従って、跡津川断層に直交する基線上に7点(上宝KMTX、神岡KAMI、割石WARI、牧MAKI、茂住MOZU、猪谷INOT、楡原NIRE)からなる稠密GPS観測点(図4.4.2-2中▲、また図中●は国土地理院GPS観測点を表わす)を設置して、1997年4月未より観測を開始している。研究目標は、跡津川断層系における変位速度場を1mm/年の精度で観測することにより、地表クリープまで含めた断層の固着・すべりの詳細を明らかにすることである。

(3) 跡津川断層帝稠密2周波GPS観測網
 観測点は谷間にあるためできるだけ受信状況をよくするために、主として公共の建造物の屋上に設置されている。ただし、茂住観測点(MOZU)のみ、3mのアンテナ柱を建て観測を行っている。受信機は2周波GPS受信機アシュテックZ−12を用い、各観測点でデータは30秒サンプリングで取得され、京都大学防災研究所地震予知観測センター上宝観測所に公衆回線で収録されている。
 データ解析にはGPS解析ソフトウェアBernese Ver.4.2を用い、周辺の国土地理院GPS観測点のうち5観測点データと本研究で設置している7観測点データを併せて、1日毎に解析している。まず、上宝KMTK親測点の座標を筑波からITRF96座標系で求め、上宝の座標を固定して、2時間毎の大気天頂遅延量とともに各観測点の座標を日々推定している。図4.4.2-3に時系列解析例として、KMTXを固定点としたMAKI,WARI、KAMI3観測点の東西成分時系列を示す。
 MAKI観測点は跡津川断層上にあり重要な位置を占めているが、GPS衛星からのデータ受情状況にやや問題があるため、2000年10月から同じく跡津川断層上に位置する土観測点でも並行して2周波GPS観測を開始した。

(4) 1周波GPS親測
 定常観測を継続することによって、変位速度で1mm/年の精度で跡津川断層と牛首断層に挟まれた領域における小さな変位速度場の詳細を明らかにすることが第一であるが、これらのデータをもとに成果の項で述べる跡津川断層だけしか考慮していない簡単な固着モデルに加え、茂住−祐延断層・牛首断層での固着も考慮に入れた、跡津川断層系での固着モデルの構築を目指している。
 このため、定常観測に加え、国土地理院の精密光波測量でクリープが親測されている、MAKI観測点付近を囲むように3点の1周波GPS観測点を山頂に設置し、1999年及び2000年の夏季に観測を行った(図4.4.2-2のMAKI周辺△)。山間部であるため電源がなく、消費電力の小さな1周波GPS受信機を用い、太陽電池を用い、メモリーにデータをため込み収録を行った。冬季には積雪のため観測はできず、今後夏季3〜4ケ月程度の観測を行い、断層直上でのクリープ運動の検証を行う。
 また、本研究では断層を横切る1側線しか設けていないので、断層の他の領域での動きを見るため、東の有峰湖周辺で、これも夏季のみであるが2点のGPS観測を行つた(断層東部に位置する△)。点線の三角の地点に可能ならもう一点増設して、今後毎年観測を行い、有峰湖周辺での変動場も明らかにする予定である。
 これらの観測はまだ1999年と2000年の2回であり有意な変動結果を得るに至っていない。豪雨により道路が決壊し車でのアクセスが困難で徒歩によるデータ回収を行う必要がある等かなり困難な観測状況にあった。また、夏季のみの観測であるため、信頼度にかけるという点がある。今後はメモリーを増やし、また冬季での寒冷・積雪といった悪条件にも耐えうる観測体制を構築し、2001年度からは、夏季のみならず冬季の観測も行う予定である。

(5) 第1フェーズにおける研究成果

1)観測結果
 図4.4.2-4は、1997年から1999年までの解析結果を示したものである。解析結果は上宝KMTKに対する相対座標変化であるが、それを跡津川断層上の国土地理院観測点950279に対する水平変位速度ベクトルとして、矢印でプロットしてある。黒矢印(OBS(GSI))は国土地理院の日々の解析結束を示したものである。本研究での解析結果(本研究の跡津川観測網7観測点+国土地理院5観測点)は、赤い矢印(OBS)で描いている。国土地理院での黒矢印と赤矢印がほぼ一致していることから、2つの独立な解析はほぼ同じ変位速度場を与え、本研究での解析精度は国土地理院と同程度を有していることが分かる。
 表4.4.2-1に、国土地理院観測点950279に対する、変位速度の南北・東西線分とその標準偏差(SD)の数値を挙げておいた。この表から分かるように、解析から求められた形式誤差は、1mm/年以下を達成しており、また、WARIとMAKIの数値を見てみると、断層直上で観測されている1.5mm/年の変位速度を持つ地表クリープと調和的な動きをしていることが分かる。しかしながら、形式誤差は小さく見積もられている傾向にあり、1.5mm/年の地表クリープ変動を解明したとは言い切れず、有意な動きを解明する観測精度を達成するにはあと2〜3年の観測期間を要するであろう。
 まず、断層から離れた国土地理院観測点、例えば跡津川断層からそれぞれ約25km離れた南の観測点940058は西に6.5mm/年の速度で、北の観測点950249は東に5mm/年の速度で変位しているのが分かる。また、観測点KMTKから北へ跡津川GPS観測網を見ていくと、観測点KMTKから観測点KAMI、 WARIと断層に近づくにつれ、変位速度が小さくなりまた変位速度ベクトルの方向が断層に平行成分を持つようになる。さらに、北上して跡津川断層を超えると、変位速度ベクトルの向きは逆転し、MAKI・INOTといった跡津川断層と牛首断層に挟まれた観測点では、変位速度が小さくなっている。さらに北上して牛首断層を超えた観測点NIREでは再び大きな変位速度を示している。

2) 断層固着モデル
 上記のGPS観測を説明しうる簡単なモデルを図4.4.2-5に示す。跡津川断層下約15kmの深さまで固着しており、断層を境とする厚さ15kmの東西両弾性地穀ブロックが約20mm/年の速度で東西に収束しているというモデルである。
 このモデルから計算される変位速度ベクトルを図4.4.2-4に青矢印(CAL)で示している。図4.4.2-4から分かるように、この単純なモデルは跡津川断層と牛首断層に挟まれた領域の外側では観測された変位速度ベクトルを良く説明している。しなしながら、領域の内側では速度ベクトルが小さく跡津川断層と牛首断層といったゾーンで固着したモデルを考える必要があろう。
 前に述べたように、精密光波測量に観測されている跡津川断層直上での1.5mm/年の地表クリープについては、図4.4.2-4 ・表4.4.2-1の観測値で見る限り矛盾はしていない。見かけ上誤差より大きくて有意そうに見えるが、概して変位速度の見積もり誤差は小さめになっており、今しばらくの2周波観測を続け、また連続した1周波観測もあわせて行えば、地表クリープの微細構造が明らかにされると期待される。

(平原 和朗)

4.4.3 地質グループからの報告

(1) 研究目的・意義
 科学技術庁地震フロンティア研究の一環である「陸域地下構造フロンティア研究」は、「活断層の形成メカニズムを解明するとともに,新しい地震観測手法を開発するために、活断層を横断する調査坑道を掘削し、活断層の深部構造と断層破砕帯の調査研究を行う」ことを目的とし,跡津川断層系を対象として、地殻応力測定の開発,坑道調査,物理調査の3項目を掲げた調査研究を行った。本調査研究は平成8(1996)年度から開始され、平成12年度までの5カ年計画として実施された。以下ではこれを便宜的に「陸域地下構造フロンティア研究第1フェーズ」と呼ぶ。
 第1フェーズの研究は,まず初年度には調査研究計画の端緒として,跡津川断層系茂住-祐延断層の破砕帯を貫通する調査坑道が完成した。第2年度以降、坑道掘削と坑内における各種観測と跡津川断層系を横切るGPS受信機アレイによる測地観測がはじまり、既往の微小地震観測とあわせて跡津川断層系の活動様式の把握,断層メカニズムの解明をめざした総合的な調査研究が行われてきた。
 地質グループでは、本研究第1フェーズにおける研究課題として、「横山衝上断層や跡津川断層との関係」「クリープ現象の検出」「茂住祐延断層は、現在成長中の断層か」「茂住断層は安政飛越地震で動いたか」などを掲げた。本グループは、これらの諸問題の解明なくして、内陸地震を引き起こす活断層の形成過程を明らかにすることはできないとして、活断層調査坑道内の地質調査のみに限定せず広域的に地表地質調査を実施してきた(図4.4.3-1)。

(2) 研究目標
 本研究第1フェーズで地質グループが掲げた主な研究目標は、以下の4項目であった。

・茂住−祐延断層通過位置の確認ならびに断層形態の解明
・活断層調査坑道内地質調査および断層破砕帯の記載、断層ガウジ82)の物性解析
・茂住−祐延断層に関する活動性の解明と評価(茂住−祐延断層ストリップマップ83)の作成)
・跡津川断層系全体における茂住−祐延断層の位置づけならびに形成過程の解明

(3) 研究成果

1) 活断層調査坑道の地質
 活断層調査坑道の地質は、神岡鉱業(株)による探鉱資料、調査坑道掘削先進ボーリング・調査ボーリング、掘削中の地質観察により明らかにされた。調査坑道ならびにその周辺の地質は白亜紀前期の手取層群長棟川累層に属する砂岩・泥岩互層(猪谷互層)からなる。調査坑道内では、この手取層群を切ってA、B2つの顕著な破砕帯が確認された(図4.4.3-2)。いずれも明瞭な破砕帯構造が観察されるとともに、地表で延長が推定される茂住-祐延断層の断層面の方向(走向N50゚E、傾斜80゚S)と一致し、ほぼ水平ないし低角な条線が認められた。破砕帯物質の検討からは右横ずれの断層運動が重複して起こっている破砕組織が認められること、断層内生成物質の解析からは破砕帯が浅いところで形成されたことが明らかにされた。これらのことからA、B2つの破砕帯は右横ずれの茂住-祐延断層のものであると結論された。
 本研究の第1フェーズが基礎研究のレベルであり、第2フェーズでは応用・観測研究に重点を置くべきであるとするならば、地質グループによる第1フェーズの研究は,坑道掘削の準備段階を含めて、条件づくり(基盤整備)の役割を果たしたと言えよう。
 当該坑道はその掘削に先立ち、地表の地質調査およびTEM法による破砕帯調査などにより、確かに「茂住-祐延断層」を貫通することに成功した。しかし結果的には、坑道掘削ありきから出発することとなり、研究の意義付けは後追いになった点は問題である。とくに当該坑道の位置が、「茂住-祐延断層」の末端部にあること、さらには、廃棄物の「地層処分」に用いられるような厳密で実用的な定義に照らして茂住-祐延断層が ‘活断層’に該当するかどうかの検証も明らかに困難な場所であることなどから、その後の努力にも拘わらず活動性の判断材料は依然得られていない。この点は、上記の研究目的に照らして必ずしも適切な調査研究対象であるとは言えず、坑内での臨時観測や連続監視観測の意義を十分合理化できない点が終始問題であった。

2) 茂住-祐延断層の活動性
 茂住-祐延断層については、平成9年度に高原川〜茂住峠〜広川にかけた範囲で地表踏査を行い、断層の地表トレース、活動性の解明を目指した。この結果、茂住-祐延断層に沿って明瞭な変動地形・第四紀層の変形が確認され、詳細な断層トレースが明らかにされた(図4.4.3-3)。活断層としての総変位量は最大0.5km程度であるが、調査範囲内では西に向かって減少し、高原川付近では活断層としての証拠が認められないことが判明した。すなわち、活断層調査坑道付近は「活断層の先端部」とみられる。また長棟川左岸の段丘礫層では、断層運動による傾動が認められた。傾動をもたらした断層の垂直変位は2m以上と考えられ、最新活動による変位の時期は1,860±70yBP84)以降であることが判明した。
 地表調査の結果を受けて、平成10年度には茂住-祐延断層の通過が予想された茂住峠東方地点で簡易トレンチ調査(ジオスライサー85)による地層抜き取り調査)を行った(図4.4.3-4)。抜き取られた地質断面は、茂住-祐延断層の断層破砕帯とそれを覆う新期の堆積物から構成され、断層による変形が明瞭に認められた。断面には少なくとも3回の地震イベントが記録されており、最新イベントは1958年の安政飛越地震であること、活動周期は約1.3万年であることが明らかになった。

3) 跡津川断層の活動履歴
 跡津川断層沿いには明瞭な変動地形が随所に認められ、1858年に発生した安政飛越地震では断層のほぼ全線ですべりが生じたとされている(松田、1966;竹内、1998)。跡津川断層中央部では、宮川村野首地区で行われたトレンチ調査により、約1万年前以降の詳細な活動履歴が明らかにされている(跡津川断層発掘調査団、1989;粟田・佃、1993)が、跡津川断層東部の活動履歴の詳細については不明な点が残されていた。
 このため地質グループでは平成11年度に跡津川断層東部においてトレンチ調査を行い活動履歴の解明を試みた。トレンチ調査を実施した地点は、常願寺川の支流である真川沿いに発達する段丘に跡津川断層が変位を与えていることが観察される露頭(真川露頭)の上部に選定された(図4.4.3-5)。トレンチ内で観察された堆積物には、断層活動に直接起因すると考えられる局所的な変形構造(層面すべり)が顕著に認められ、最近約2.4万年間に6回以上のイベントがあったことが推定される(図4.4.3-6)。
 このトレンチ調査によって得られた資料については、平成12年度もひきつづきデータ解析を行った。このなかで特筆すべき成果として、上記層面すべりが、単なる局所的な地すべりとは異なり、断層の横すべり運動にともなう累積回転変位を記録していることが古地磁気測定によって明らかにされた(図4.4.3-7)。
 跡津川断層東部のイベントと跡津川断層中央部のイベントとは、一部は重なるもののその時代は必ずしも常に一致しているわけではない。このことから跡津川断層東部の活動性は中央部と異なる可能性がある。国土地理院の報告によるクリープ現象が断層西部では見られないことや、微小地震活動の区域性なども考慮すると、跡津川断層はセグメント構造をもつことが明かになった。

4) 跡津川断層と茂住-祐延断層の関係
 跡津川断層と茂住-祐延断層は真川付近で接しているが、活断層としての茂住-祐延断層の地表トレースについての調査は十分になされておらず、有峰湖以東で両断層がどのような関係で会合しているのかは今のところよくわかっていない。真川露頭上部トレンチ調査地点は、従来、跡津川断層の延長上とされていた(山田・竹内、1983)が、跡津川断層とは斜交するリニアメント86)上に位置し、跡津川断層本体とは別のセグメントに属する可能性もある。このリニアメントはむしろ茂住-祐延断層に連続するようにも見える。跡津川断層と茂住-祐延断層の会合関係を明らかにすることは,両断層を含めた跡津川断層系全体の運動メカニズムを検討する上で重要なポイントである。このため,平成12年度には両断層の地表トレースを明らかにするため、祐延湖〜真川露頭にかけた地表踏査を実施した。
 祐延貯水池から北東方向へ、足谷が直線状に延びている。平成11年度の地表地質調査で、常願寺川水系和田川流域足谷の北岸の沢で茂住-祐延断層の露頭が確認されている(ハスバートル ほか、2000)。平成12年度の調査で新たな断層露頭が見つかり、地形測量からも変動地形が読み取られ、本断層の連続性が明らかになった。
 跡津川断層の大露頭(例えば竹内ほか、1991)がある真川流域では、跡津川断層により形成されたリッジの南側斜面で平成11年度にトレンチ調査が実施された(竹内ほか、2000)。平成12年度の調査で、跡津川断層の露頭と思われる露頭が数カ所確認された。また、跡津川断層と複雑な関係にあると思われる小断層も確認された。
 跡津川断層系における茂住-祐延断層の位置づけを明確にするうえで、茂住-祐延断層の深部形態(「茂住-祐延断層は地下で跡津川断層と連結しているか」)を知ることが不可欠であることから、平成12年度に実施された茂住-祐延断層のガイドウェーブ観測を地質グループとして支援し成功させた。さらに、1995年に茂住-祐延断層周辺で取得した反射法記録において、断層に起因するトラップ波の有無について検討した。しかし結果として、断層直上あるいは極近傍で発震した記録は、断層から離れて発震した記録と比べて特に異常が認められなかった。
 両断層の3次元幾何学的関係については,このガイドウェーブ観測や反射法地震探査の解析結果をはじめ、変動地形の空中写真判読や微小地震活動による検討などとあわせて総合的に評価する必要があるため、この問題に関する性急な結論付けは現時点では保留している。第2フェーズでの進展を期する。
 さらに、第1フェーズの地質調査については、活断層調査坑道が茂住-祐延断層で掘削されたことに規定されて、調査対象範囲を同断層に絞らざるを得なかった。平成12年度は、第2フェーズへのリエゾンとして、敢えて跡津川断層を対象にした調査をおこない、真川地域において数カ所の断層露頭を新たに発見した。また、跡津川断層の名の由来になった跡津川では,河床に新しい断層露頭を発見し記載することができた。
 神通川水系高原川支流の跡津川における平成12年度水害防止事業による堰堤補修工事で、跡津川河床に断層露頭が発見された(図4.4.3-8、図4.4.3-11写真A1)。この露頭は跡津川坑道からわずか数十メートルしか離れておらず、坑道を利用したアレイ観測にとっても非常に重要だと思われる。
 幅9mの手取層砂岩、花崗岩や石灰岩からなる破砕帯(図4.4.3-9)が川の左岸に露出し、北東走向の断層が多く確認された(図4.4.3-10、図4.4.3-11写真A2)。また、川の右岸(同写真A3)、旧堰堤の下(同写真A4)にも破砕帯が見られる。これらの露頭では、北東走向の断層が数多く観察された。跡津川断層は見かけ上、高原川を約3km横ずれさせているが、跡津川の支流域での研究はまだ十分ではなかった。この露頭の発見で、空中写真判読による跡津川断層の地表トレースの確度も明らかになった。
 今後、跡津川断層のガイドウェーブ観測においては、この露頭の存在を考慮することによりセンサーや人工発震点の効果的な配置が可能である。

4.4.4 活断層調査坑道における断層岩調査について

(1) 研究の目的
 国土地理院の光波測量によって、跡津川断層がクリープしている可能性が指摘された。本プロジェクトでは、interseismic period におけるクリープの性質をより深く理解するため、地震波観測、GPS測量、活断層調査坑道内における精密測定、および断層の地質学的調査が行われてきた。このうち、本研究では活断層調査坑道における、断層帯の直接および断層掘削コアの観察、岩石および鉱物の組織による変形速度の推定、および変形実験を行ってきた。このうちの一部は、米国のUtah State Univ.のProf. Jim Evansとの共同研究となっている。断層の運動は、必ず断層破砕帯の岩石に記録されている。本研究の目的は断層岩から断層のすべり様式、とりわけクリープの様式を読み出し、その速度を推定することにある。この結果は、測地を始めとする地球物理学的な現位置測定の結果と対比し、その合理性を検討する。またクリープを伴う破砕帯の物質、組織分布を明らかにすることによって、切断面をすべて地震性のものとして取り扱っている活断層研究や、かつての地下深部の震源域地震断層が削剥によって地表に現れた断層帯の震源域挙動の研究にも一石を投じることができるであろう。

(2) 研究経過

1) 平成9年度
 活断層調査削坑道に現れた 2 つの断層破砕帯から直接試料を採取した(千葉大学:伊藤谷生 教授による)。鉱物分析、および微細組織解析を行い、断層帯中軸部の岩石に流動組織が発達することを見いだした(図4.4.4-1)。この組織からクリープ性運動を定性的に推定した。すべり速度の推定に流体力学が有効である可能性を述べた。

2) 平成10年度
 2 つの破砕帯の全体構造を把握するために、先進掘削の際に掘削されたドリルコアの観察を行い、コア研磨組織標本の観察、顕微鏡下の微細組織観察、化学組成分析を行った。Prof. Jim Evans との共同研究となっている。断層破砕帯に見られる流動破砕帯は、乱雑構造 (高速変形構造) 破砕帯が「重複して」発達している。このことは 、地震が発生した「後に」流動が起こっていることを表している。従ってpostseismicかinterseismicの構造であるものと考えられる。また、流動破砕帯の厚みが >10 cm に達する部分が認められた。地表付近における地震断層面の地震時の運動速度は0.1m/s以上であるにも関わらず、現れる断層面はカミソリで切ったような産状を示している。このような高速すべりの時に10cm以上の流動層が形成されることは難しいものと考えられる。しかし、postseismicの時のafterslipのゆっくりとした動きで形成される可能性は否定できない。

3) 平成11年度
 平成11年4月〜11月、平成12年1月〜3月の 2 つの期間に、USGSの Earthquake Hazard Team の Dr. David Lockner の岩石変形実験室において、茂住-祐延断層破砕帯の主力鉱物であるスメクタイトの常温粘性挙動を速度ステップ試験により調べた。この実験の経緯は以下のとおりである。

茂住-祐延断層の断層面から採取した断層岩には流体の流線軌跡に類似した流動構造が顕著に現れていた。

X 線回折分析の結果、同断層内で生成された主要な鉱物は、粘土鉱物の一種のスメクタイトであった。

このことから、この鉱物は岩石力学の常識を裏切っており、低速ならば常温で粘性流動を起こすことが推定された。

 平成10年5月〜平成12年2月の期間にクリープ実験を行った。実験範囲は、常温、地下2kmおよび3kmの静水圧条件 (封圧60 & 90MPa、間隙水圧20 & 30MPa)、滑り速度0.0001μm/s〜10μm/sで106の速度範囲である。この範囲でスメクタイトは常温下で粘性流動を起こすことを確かめた (図4.4.4-2上図)。実験の最低速度は、3.1mm/yearに対応し、跡津川断層の2mm/yearと桁としてほぼ同じである。San Andreas系は、この約10倍の速度なので、実験速度範囲に含まれている。また伊藤久男氏が見つけたようにEpisodic creep(継続時間24時間以内) の場合も、実験の範囲に入っている。実験の最高速度は13m/yearに対応する。この範囲の構成則は

τ= τ0 +η' Ω^n (τ:剪断強度87)、τ0:降伏強度88)、η':plastic viscosity、Ω:シアレイト、n:flow index)

 で記述できた。τ0 は計測できないので、τ−τ0=τとおいてプロットしている(図4.4.4-2下図)。plastic viscosity(粘性率ではない)は、粘性層の厚みが粘土層全体(100%=1mm)の場合4.07×107、1 % の場合、1.66×107となった。また、flow indexは0.226となった。相関係数は、R=0.998(!)であった。粘性率は上式を微分すれことにより得られる。flow index 1.0なので、シアレイト89)、が大きくなるほど粘性率が小さくなる、すなわちより強度が低下することが分かる。
 以上から、地下浅部におけるクリープの変形速度では、スメクタイトはストークス流90)とみなせる流動を示すことが分かった。常温の臨界シアレイトは、少なくとも0.01/s((10μm/s=0.01mm/s)/1mm)よりは大きい。

4) 平成12年度
 平成12年度には、クリープ領域の精密な断層岩分布図を完成し(図4.4.4-3、4.4.4-4)、合わせて断層岩類の微小構造の検討を行なった。1995年の兵庫県南部地震の際に活動した野島断層の断層岩分布図はほとんど完成している (Tanaka et al.、2000;Tanaka et al.、2001)。これら地震性の物質分布とクリープ性のそれを対比した。いずれも地下の浅い部分であるが、他の exhumed fault91)の研究例からは、地下7〜10kmまではよく似た物質および組織が分布していることが推定される。今回の検討結果では、クリープ性の断層岩類が従来の例に比べてやや厚く発達しているものの、原則として地下深部の震源域破砕帯と同様の構造を持つことが確認された。すなわち、ごく薄い滑り面と、それに付随するダイレータントな断層角礫帯である。さらに我が国でなされた研究例も参考にしながら、地下深部震源域での物質挙動が地表付近にどのように反映されているのか、その関連性を考え、論文をまとめる予定である。また、跡津川断層系の中で微小地震を多発している、Locking section との物質分布の対比は第 2 フェーズの課題であろう。

5) 特集号
 Prof. Evans (Utah State Univ.)がGeophisical Research Letters編集部とコンタクトを取り、同誌に第1フェーズの5年間の成果として特集号を出版する枠を確保した。

(田中 秀実)

4.4.5 ガイドウェーブ観測による茂住-祐延断層、跡津川断層深部構造の推定

(1) 研究の背景
 ガイドウェーブ92)は断層破砕帯内を伝播する境界波であり、トラップ波とも呼ばれる。トラップ波は観測点と震源の両方が同じ断層破砕帯内にある場合のみ観測され、その波形解析により断層深部構造を推定することが出来る。具体的には、断層を横切る地震計アレイ観測により、トラップ波を検出し、その波形モデリングにより断層破砕帯の幅、速度、Q値93)等を推定する。さらに、トラップ波の観測される観測点・震源の組み合わせから、断層破砕帯の3次元構造およびセグメント構造を推定することが出来る(図4.4.5-1)。
 トラップ波の観測は、1980年代後半から主としてサンアンドレアス断層に適用された。日本では1995年兵庫県南部地震の直後の余震観測により、始めてトラップ波が観測された。野島断層でのその後の研究から、ボアホール地震観測の重要性、および地表での観測波形から断層構造を推定する際には注意が必要であること等が分かりつつある。

(2) 研究の目的・意義
 本プロジェクトの対象地域では茂住-祐延断層および跡津川断層がほぼ平行に位置する。跡津川断層ではその一部でクリープ運動の発生が報告されており、地震活動との対応が議論されている。また、茂住-祐延断層においても地質学的研究からクリープ運動の可能性が指摘されている。本研究では、活断層調査坑道内で高密度地震アレイ観測を行うことにより、地上観測では得られない良質の波形データを取得し、両断層の深部破砕帯構造を推定することを目的とする。特に、断層破砕帯が深部まで存在するのか、2つの断層が深部でどのような形態で存在するか(つながっているのか)、クリープ領域と破砕帯構造との関係などに焦点を当てる。坑内観測による良好な波形データに基づき、複雑な現実的な地下構造モデルによる観測波形との比較検討は世界的にも行われておらず、本研究の進展により、断層の深部構造研究の飛躍的進展が期待される。

(3) 研究の経過
 平成8年度:跡津川断層では、跡津通洞坑に地震計アレイ設置し観測を開始。茂住-祐延断層では、観測坑道掘削に伴う発破に対し地表断層上で臨時アレイ観測を行った。
 平成9年度:茂住-祐延断層では、茂住観測坑道内に32点の地震計アレイを設置し観測を開始。
 平成10年度:跡津川断層、茂住-祐延断層での観測データ蓄積と波形解析。
 平成11年度:跡津川断層、茂住-祐延断層での観測データ蓄積と波形解析、および断層構造モデリング。12年度人工地震実験の準備。
 平成12年度:茂住-祐延断層の地表断層上(複数地点)での人工地震実験による浅部破砕帯構造の推定。

(4) 研究成果

1) 観測概要及び観測波形の特徴
 調査坑道内では茂住-祐延断層に関係した2つの破砕帯(A,B)が認められ、これらをまたいで約15m間隔で2Hz、3成分地震計を32点設置した。データはイベントトリガ方式で24ビット、500Hzサンプリングで収録されている。(図4.4.5-2)破砕帯に起因する以下のような特異な波形が得られた。

震央位置が茂住-祐延断層近傍の地震については直達S波の直後に見かけ速度が直達S波に比較して非常に大きく、卓越周波数10Hz程度の波群がA, B破砕帯の近傍に存在する(図4.4.5-3a)。一方、震源が茂住-祐延断層から遠い地震ではこの様な波群は存在しておらず、図に示す特徴的波群がトラップ波と考えられる。

震源位置によらず直達P波、S波の見かけ速度は茂住断層のA, B破砕帯を含む幅約200 mで低速度である。この約200m幅の中でさらにA, B破砕帯部では直達P波、S波の見かけ速度は低速度である(図4.4.5-3b)。この構造は少なくとも深度500m程度までは続いている。またS波後続波部で茂住-祐延断層のA、B破砕帯を含む幅約200 mで反射を繰り返す。

2) 破砕帯の深部構造
 幅200mの低速度帯が地下深部まで連続的に続くモデルを仮定すると卓越周波数3Hz程度のトラップ波の発生が期待される(図4.4.5-4a)。また、震源が破砕帯から2km程度以上離れると、トラップ波に比較して破砕帯内での多重反射が卓越する事が期待される。実際の観測では3Hz程度の低周波の波群はこれまで1度も観測されておらず、また低速度帯内での多重反射が明瞭に見て取れる。これらのことから浅部で確認された幅200mの低速度帯は深度数km以上の地震発生域までは達していないといえる。一方、幅30mの低速度帯のモデルでは卓越周波数10Hz程度のトラップ波の発生が期待される(図4.4.5-4b)。ここで期待されるトラップ波は図4.4.5-3aに見られる波群に近い特徴をもつ。すなわち地震発生域の深度まで幅30m程度の破砕帯が存在しているものと考えられる(図4.4.5-5)。

3) 人工地震実験

a) 目的
 ガイドウェーブ研究では、活断層調査坑道を中心に稠密な地震計アレイ観測を行い、トラップ波と考えられる波群を観測し、断層破砕帯の深部構造の推定を行いつつある。

平成12年度は、断層浅部構造の推定、特に地表・断層トレースと活断層調査坑道内の破砕帯A、Bの連続性を調べることを目的として2000年10月24日夜、人工地震実験を行った。

b) 発破概要
 爆破地点は表4.4.5-1、図4.4.5-6に示す4ヶ所である。S1、S2は活断層調査坑道から東方約2km、S3、S4は活断層調査坑道から東方約4kmである。S1、S2は地上で確認されている茂住-祐延断層の直上とし、S2、S4はそれぞれ約100m程度離れた場所とした。4ヶ所の発破点を設定した理由は、

断層破砕帯内・外に震源を設け、波形の差異を確認する
活断層調査坑道から東方約2km、約4kmの二ヶ所で発破することにより、距離の効果を見る

 である。S3では、トラップ波観測に加えて、周辺微小地震観測点・臨時観測点での観測による地殻構造の決定のため薬量を多くした。
 
 発破孔の地質柱状を図4.4.5-7に示す。

c) 観測体制
 観測は活断層調査坑道アレイ、跡津通洞坑アレイと祐延湖臨時アレイによって行った。

d) 結果
 活断層調査坑道アレイ、跡津通洞坑アレイと祐延湖臨時アレイにおけるS1〜S4発破記録を図4.4.5-8〜4.4.5-19に示す。
 跡津通洞坑アレイと祐延湖臨時アレイでは良好な波形が得られなかった。ここでは活断層調査坑道アレイ(図4.4.5-8〜4.4.5-11)について述べる。

P波初動の見かけ速度、後続波群のcoherencyおよび伝播特性より、破砕帯Aの北側に比べて南側は全体的に低速度で不均質性が大きいこと、アレイ南端から南側では高速度の領域となっていることが推定される。高速度領域にも、断層からの距離に対する速度勾配が存在する(図4.4.5-20)。

断層トラップ波と考えられる波動はS1に対してのみ観測された(図4.4.5-21)。断層からはずれる発破点では観測されない(図4.4.5-22)ことから、断層破砕帯に起因するトラップ波であることが確認された。

 我々がトラップ波と考えている波群は活断層調査坑道アレイではS3発破点では観測されない(図4.4.5-10)。これはS3発破点から活断層調査坑道アレイまでにセグメント構造があり、異なったセグメントに属している可能性もある。
 S1発破の記録(図4.4.5-21)ではA破砕帯、B破砕帯それぞれに見かけ速度無限大の波群が局在しているようにも見える。これらについて今後詳細な解析が必要である。

(伊藤 久男・西上 欽也)

4.4.6 坑内精密計測及び応力測定

(1) 坑内精密観測
 断層をICU(集中監視室)にいれて、地震サイクルに対する知見を得るというのは、地震学者なら誰でも考える夢である。それも手に取れるほど近づいてみる(坑内測定の場合はS/N比をあげて対象を見る)というのが、このプロジェクトの基本思想であろう。
 我々岩盤屋さんは、地震サイクル、といっても跡津川−茂住断層系が近々に大地震にいたる可能性は低いから、いわゆるインターサイスミックな期間(地震と地震の間、歪蓄積期間)に断層とそれを取り囲む周辺岩盤がどのように振る舞うかを知りたいのである。次の地震までのインターサイスミックな期間に、断層は永遠の眠りにつくのか?あるいはゆっくりとしたプロセスが進行するのか?そしてそのバックグラウンドとなる、応力がビルドアップするプロセスが実際に存在しているのか?というような問いに答えることは、地震のサイクルを考えるうえで非常に重要である。しかしながら、インターサイスミックな期間の断層や周辺岩盤の動きや活動は著しく小さいと思われるし、我々がモニターする期間は、地震のサイクルと比較すれば短かすぎるかもしれない。しかし技術的に現存するさまざま測定法に改良を加えて、各々の測定法のもつ理論的な分解能まで測れるような技術を確立すれば、静穏期といえども何らかのプロセスが進行するなら、それらをキャッチできる可能性がある。
 我々坑内計測グループは、断層近傍で、まず岩盤のP波速度や比抵抗の変化を精密かつ連続に測定することからはじめ、次には、個々の測定精度を向上させるだけではなく、アコースティック・エミッション94)の観測、ボア−ホールを使った3成分の歪計測など測定項目を増やしている。異なる物理量の精密連続観測を成し遂げ、その結果を互いに比較検討し、整合性の高い解釈やモデル構築を行って、断層近傍の応力変化や水との複雑な相互作用を詳しく解明するのが我々のゴールだと考えている。

1) 比抵抗の連続観測
 岩盤の比抵抗は、クラックのネットワーク中に存在する水の繋がり具合によって決まる。そして応力はクラックのネットワークの繋がり具合を大きく変える。さらに比抵抗変化は、一般的には応力変化そのものより著しく増幅されることが明かにされている。およそ20年前、東大の油壷で行われた、いわゆる山崎メーターによる比抵抗の連続測定では、海洋潮汐による比抵抗変化が捉えられた(図4.4.6-1、図4.4.6-2)。この観測は驚きであり、油壺の岩石は鯰石と呼ばれた。
 今回のプロジェクトでは、特殊な機械だったため普及しなかった山崎メーターを見直し、最新技術を使った汎用的な機器で継承し、さらに信頼性、精度を上げるための機器開発を行った。まず、回路をすべて差動化して電気的グランドレベルを大地から絶縁できるようにし、商用電源を用いた連続測定を可能とした。流す電流も山崎メーター同様ACとし、信号の処理には、雑音が重畳していても信号を高精度に検出・測定できるようデジタル・ロックイン・アンプを採用した。この結果、誤差やドリフトの原因となるアナログ・フィルターを除去できた。このような新開発の比抵抗計を用いて、油壺において山崎メーターと平行観測を行った結果、我々の開発したシステムは山崎メーターの性能を凌駕しており、5桁の分解能があることが判った。
 一方このシステムを使い、活断層超阿坑道内でも比抵抗の連続観測をはじめた結果、次ぎのようなことが明かになった。

比抵抗変化から岩盤の応力変化をとりだす以前の問題として、鉱柱95)を使った観測では、比抵抗は坑道への通気による岩盤または電極への温度擾乱に第一義的にセンシティブである(図4.4.6-3)。

比抵抗のデータをスペクトル解析したところ、O1、M2分潮の周期にピークがある(図4.4.6-4)。

 このような観測結果は、一見ネガティブにみえるけれども、電極をボーリング孔内に埋設して通気による岩盤への擾乱をさけた測定を行えば、地球潮汐に起因して変化する比抵抗を測定できる可能性があることを示しており、ボーリング孔を掘削して新たに観測を再開する予定である。

2) P波速度変化の精密測定
 岩盤を伝わる弾性波速度が岩盤の応力(+クラックに含まれる水)の状態を良く写し出すことは誰もが予測しているが、これを長期に安定して計測している例は、佐野が釜石鉱山と東大油壺地殻変動観測所で実施している数十メートルの測線を使った測定のみである。
 この方法は基本的には、実験室で岩石試料のP波速度を測定する方法と同じであるが、現場でも高精度で測れるよう、以下のような工夫がなされている。

送波のピエゾ素子96)を高電圧で駆動する。
数千回以上のスタッキングによる信号のS/N比の向上。
送波と記録系を超安定なクロックで完全に同期すること。

 このような工夫の結果、現地の岩盤を透過してきたP波の初動が正確に読めるようになった。さらに付け加えるなら、すでにこのようなシステムを用いて、1994年12月28日の三陸はるか沖地震の本震と余震にともなうコサイスミックな岩盤のP波速度変化(ΔVp)を捕まえたという実績もある(図4.4.6-5、図4.4.6-6)。
 我々のプロジェクトでも、岩盤の応力(+水)状態の変化をモニターするために、佐野が開発したシステムを採用し、活断層調査坑道内の鉱柱に対して精密なΔVpの測定を1999年度の後半から開始した。その結果、P波の走時が数日程度の変動を繰り返しながら減少する(つまりP波速度が速くなる)ことが明かになった(図4.4.6-7)。これは断層周辺の岩盤の応力がゆっくりと上昇することを示している。今後もこの計測を続けるとともに、2測線に増やして測定の信頼性を増す計画である。

3) AE計測(断層が擦れたり、マイクロクラックが発生してミシミシいう音)
 断層面は次ぎの地震まで永遠の眠りについているのではなく、そこではゆっくりとしたマイクロクラッキングのプロセスが進行すると考えられている。このようなマイクロクラッキングは高周波のAEを出すが、断層破砕ゾーンのまわりの岩盤に従来型のAEセンサーを接着して行う計測ではAEは検出できなかった。
 そこで、従来型のAEセンサーではなく、水中投げ込み型のハイドロフォン97)をAEセンサーとして使った。岩盤と比較して水ないし水で飽和した岩盤は超音波を良く通すので、震源決定をふくむAEモニタリングの道が開けた。今後は多チャンネルのハイドロフォン・アレーを設置してAEの震源決定を行う(図4.4.6-8、図4.4.6-9、図4.4.6-10)。

4) 石井式ひずみ計アレーによる断層面周辺の力学的なひずみの連続観測
 比抵抗、ΔVp、AEなどの測定諸量は、岩盤変形そのものではなく、岩盤内の応力がなんらかの道筋で変換されたものである。したがって、我々の観測でも、リファレンスとして、岩盤の変形そのものを測定しておかねばならないと考えた。このためには、坑内に地殻変動の観測所と同等な設備をつくり、岩盤の変形を観測することが考えられる。しかしながら、通気による坑道内環境の擾乱は避けがたいので、通常の傾斜計や伸縮計は使用できない。そこで我々は、ボーリング孔を使った歪測定に実績のある、石井式3成分歪計を使って岩盤の歪の変化をモニターすることにした。ちなみに石井式歪計の分解能は10-8である。

5) 坑内ボーリング孔における間隙水圧の測定
 被圧帯水層98)に井戸を掘ったとき、井戸の水位が地球潮汐に応じて変化したり、地震時に地震計的な応答をしたりすることは良く知られている事実である。しかし、いろいろ井戸を掘っても、地球潮汐に対する応答がみられなかったり、あっても応答感度が著しく違ったりすることも研究を困難にしている。なにがそのような応答の違いをもたらすかを、科学的に推論できるような研究が実施できるフィールドが必要であった。
 さて、サイクル機構は、1999年度から茂住坑内にある2つのボーリング孔(以下B8孔は、破砕帯をはずれた硬い岩盤に掘削された長さ650 mのボーリング孔、No.2孔は、断層破砕帯の近くの岩盤に掘削された長さが十数mのボーリング孔を指す)をパッカーで遮蔽して間隙水圧の測定をはじめた。
 その結果をまとめると、

どちらの場合も、ボーリング孔を塞いでから間隙水圧が上昇して安定に達するまでおよそ6ヶ月かかっている。見方をかえれば、間隙水圧のビルドアップは被圧帯水層の井戸が完成していく様子を示している。

細部を拡大してみると、どちらの孔も見事に地球潮汐を描いており、S/N極めて良い。

スペクトルをとればO1とM2に相当する周期のところに鋭いピークがあらわれている(図4.4.6-11、図4.4.6-12)。そのスペクトル振幅を読めば、各ボーリング孔(に繋がる被圧帯水層)の地球潮汐に対する応答(ないしはその経時変化)を決定できる。

被圧帯水層が弾性的な応答を示すことは広く認められ、次のような理論式が提案されている。


 ここで、Gはせん断定数、BはSkempton定数(1〜0;たとえば1のときは、間隙弾性体にかかる外部応力が増加すると、その増分はすべて間隙水圧によって担われるることを意味する)、νuは非排水状態のポワソン比99)である。
 この式の右辺の定数部を10 GPaとすれば、10-6の歪に対して0.01 MPaの間隙水圧または1 mの水位上昇が作り出される。この式は、被圧帯水層において間隙水圧の変化を観測すれば、地球潮汐が観測できる理論的な根拠を与えている。そしてこの式が、被圧帯水層のスケールに関与しないことに注意されたい。
 さて地球潮汐という観点から、間隙水圧の変化のスペクトル解析を考察すると、B8孔とNo.2孔のO1とM2に対する応答の時間的変化の違いは興味深い。B8孔の場合は、間隙水圧のビルドアップの過程で感度は不変であり、No.2孔の場合は、感度は間隙水圧の上昇とともに変わって行くことが判る。すなわち、2つのエンド・メンバーともいえる井戸が同一地域でみつかったのである。

さらにどちらの孔も、局所地震にも遠地地震にも応答しており、地球潮汐が作り出す岩盤の歪をボアホール歪計で測定して組み合わせれば、被圧帯水層の応答関数が正確に決められる。

(柳谷 俊)

(2) 乾式破砕法応力測定

1) 研究の概要と目的
 乾式一面破砕プローブによる既存坑道を利用した岩盤応力分布計測をめざして、面破砕法による応力測定のメカニズムと適用性を明らかにするための検討を行った。
 また、断層など破砕性岩盤内での測定を可能にする手順の確立をめざして、リボーリングによる応力測定を提案し、その妥当性を数値解析と室内実験により検討した。
 一方、将来、原位置計測を行って岩盤応力分布が得られた場合に備えて、地表面や断層の幾何学条件を考慮に入れた3次元境界要素法(BEM)解析から地表の影響を取り除いた地殻応力を算定し、かつ断層の力学的特性を把握するためのBEM解析コードのフレームを構築した。さらにこれを用いて、以前に調査坑道近傍の1点において実施された二面破砕法による岩盤応力測定の結果を利用し、ただし断層特性を適当に設定して、実際に地殻応力場の算定を試みた。
 本研究の目的はこれらの成果を踏まえて、まず、破砕性岩盤を含めた岩盤内のいくつかの点において岩盤応力測定を行い、測定結果を基にして、地殻応力場を算定し、かつ断層の力学的特性を把握することである。

2) 研究成果

a) 乾式一面破砕プローブによる鋼管内載荷テストおよびその数値シミュレーション(平成10、11年)
 鋼管の厚みを変えた2種類の鋼管内載荷テストを行い、鋼管外周のひずみを観測することによって、摩擦シェルの作用効果を調べた。また、境界要素法による数値シミュレーションにより、摩擦シェルの作用効果を明らかにした(図4.4.6-13)。

b) 乾式一面破砕法による応力測定の実規模室内実験およびその数値シミュレーション(平成10,11年)
 貫通する直径65mmの孔を有する60cm立方の硬質モルタル供試体に載荷フレームとフラットジャッキを用いて種々の組み合わせの外荷重を作用させた後に、一面破砕プローブにより、まず、意図した方向(プローブ開口方向)に人工亀裂を造成した。
 次に、亀裂の再開口実験から得られた孔内載荷−孔径変化曲線から亀裂に作用する直応力成分を求め、外荷重から算定される応力成分と比較することで乾式一面破砕法による応力測定の適用性を確認した。また境界要素法による数値シミュレーションを行い、一面破砕プローブによる亀裂の再開口を再現した、載荷−孔径変化曲線から応力を検出できることを示した(図4.4.6-14)。

c) リボーリングによる破砕性岩盤応力測定の室内実験と数値シミュレーションによる信頼性の検討(平成12年)
 水圧破砕により亀裂を造成した60cm立方の硬質モルタル供試体に直径91mmのボーリング孔を掘削し、モルタルを充填して養生固化した後、その中心に直径65mmのボーリング孔を掘削した。このボーリング孔を用いて、一面破砕プローブにより水圧破砕亀裂と異なる方向に人口亀裂を造成し、この亀裂の再開口圧を供試体に載荷した外荷重と比較し、モルタル充填をしたボーリング孔を用いても応力測定が可能であることを確認した。
 また境界要素法による数値シミュレーションを行い、一面破砕プローブで載荷する孔壁部の材料の剛性が載荷応力の分布にどのような影響を与えるかを調べたところ、ほとんど影響を与えないことを確認した(図4.4.6-15)。

d) 岩盤内応力測定の結果から地殻応力場と断層特性を把握するための逆解析コードの開発(平成9、10年)
 複数の箇所で計測された岩盤内応力の分布から地殻応力場と断層特性を算定するための3次元境界要素法逆解析コードを開発した。また、断層特性を適当に設定することにより、過去に計測された1点の岩盤応力場から地殻応力場を算定し、断層の存在による応力・変位場の擾乱の一例を示した(図4.4.6-16)。

(水田 義明)

4.4.7 活断層調査坑道地下水の化学的調査

(1) 研究の目的・意義
 岐阜県神岡町の茂住鉱山の長棟坑道から、1997年3月に茂住-祐延断層を貫くようにに活断層調査坑道が掘削された。この長棟坑道・活断層調査坑道から湧出する地下水の化学組成・同位体比から、断層内を水がどのように流動し、それによって、どのような岩石−水反応が起きているのか、そしてそれはどのように断層運動と関連しているかを知ることは、断層内における水の挙動や、断層運動や断層内の物質を理解する上で、重要な意義を持つ。

(2) 研究目標・計画
 本研究では、水の化学成分・安定および放射性同位体100)から、断層帯地下水の化学的特徴およびその経時変化を知り、それが断層運動とどのように関連するのかを理解する。また断層帯周辺ではどのように水が流動しているのかを、時間の情報を含めて知ることを目標とし、既存の長棟坑道、新規に掘削された活断層調査坑道から湧出している地下水を定期的に採集し、その化学組成・同位体比の測定を行った。

(3) 研究成果

1) Na/Ca比と断層破砕帯の分布
 土壌中には、植物の呼吸作用やバクテリアによる有機物の分解によって放出されたCOガスが数パーセント程度の高濃度で存在する。このCOは、地下水に溶けて炭酸(HCO)を作る。そして、この炭酸が岩石中の石灰石(CaCO)と反応して、それを溶かし出し、水の中に1つのカルシウム(Ca2+)イオンと2つの炭酸水素(HCO3-)イオンを作り出す。そのため、普通の地下水の主要化学成分はCaとHCO3イオンである。実際本研究でも、茂住林道の沢水や茂住谷川などの地表水と、茂住-祐延断層から数km以上離れた地点で採集された、茂住坑道の入り口に近い部分の地下水では、そのような水であった(図4.4.7-1)。
 なお、図4.4.7-1、4.4.7-2では、水質をヘキサダイアグラムを用いて表示している。これは、左上:Na+K、左中:Ca、左下:Mg、右上:SO4、右中:HCO3、右下:Clに各イオンを取り、それを線で結んだものである。また図では1目盛が2 meq/Lとなっている。
 しかし、図4.4.7-2に見られるように、長棟坑道の奥の部分および活断層調査坑道から湧出している地下水では、陰イオンはHCO3イオンと変わりないものの、主要な陽イオンはNaイオンで、普通の地下水とは大きく異なっていた。この断層破砕帯では、母岩(手取層群の砂岩・泥岩など)中にないCaモンモリロナイトの形成が認められている(田中、私信)。Caモントリロナイトは長石の風化によって形成される鉱物であり、断層に近い所の湧水でNaイオが多いことは、Naを含む長石の風化に伴うNaイオンの溶脱や、風化の結果生じた粘土鉱物中の交換性Naイオンと地下水のCaとのイオン交換の結果、Naの増加とCaの低下が起きたためと思われる。
 このように、断層に近い所の地下水では主要な陽イオンはNaであるが、多少はCaイオンも存在している。そこで地下水のNa/Ca比をとると、その値は断層破砕帯内部とその近傍で最も高く、それから離れるにつれて徐々に低下していた(図4.4.7-3)。
 このようにNa/Ca比と断層運動の強弱との間には対応関係が見られた。地下水のNa/Ca比は断層運動の強弱の指標として大変有用であると考えられる。また、地質調査では断層帯を通過したと判定された断層調査坑道の最奥部でも、地下水のNa/Ca比は1よりも大きく、Na型の水であった。Na/Ca比から判断される断層破砕帯は、肉眼による判定よりもかなり広く、肉眼による判定よりも鋭敏に断層運動を検出していると言えよう。

2) 水の年齢と破砕帯の分布
 水素の放射性同位体であるトリチウム101)、および炭素の放射性同位体である14Cを用いて、長棟坑道・活断層調査坑道内の地下水の年代を測定した。その結果、既存の長棟坑道ではすべて10年以内の若い水であることが判明した。
 一方、新しく掘削された活断層調査坑道の地下水は、一部を除いてトリチウム濃度は2TU以下と低かった。トリチウム濃度が低い水のいくつかについて、14C法で年代を求めた所、6,000年〜18,500年前と約1万年前後の古い水であることが判明した。
 しかし、断層調査坑道の破砕帯Aの部分の地下水は、トリチウム濃度が6程度であり、その年齢が10年以内の若い水であった。破砕帯Aの直上には茂住谷川が流れており、この水が破砕帯Aを通して急速に地下に流入していることが、この結果から認められた。これは破砕帯Aは空隙が多いことを示しており、このことから破砕帯Aは活動的であることがうかがえる。
 一方、もう一つの破砕帯である破砕帯Bから採集された地下水は、その水の酸素同位体比が-11.8‰と、ほかの大部分の地下水の酸素同位体比である-11.3〜-10.6‰に比べてはるかに低かった(図4.4.7-5)。このように破砕帯Bの地下水の酸素同位体比は極めて低く、現在この地域で降る降水の酸素同位体比では説明がつかない。このことから、この地下水は1万年くらい前の氷河期の水であることが推定された。破砕帯Bでこのような古い水が保持されていることは、断層粘土の充填により水の動きが少ないことを示している。それゆえ、この破砕帯Bは過去には活動的であったかもしれないが、現在は活動的でないことが推定された。

3) 水の時間変化
 さらに、水の化学組成の測定を連続して行った結果、図4.4.7-6に示すように、1999年には、破砕帯A付近の214m地点の地下水は、そのNa/Ca比(meq比)が1997年に比べて4割程度減少していることが観測された。このことは、破砕帯Aに存在する断層粘土の、CaイオンをNaへと交換するイオン交換能力(Caイオンを粘土に吸着し、粘土中のNaイオンを放出する能力)が落ちてきていることを示している。破砕帯Aに多量の断層粘土があればこのようなNa/Caの減少は起こり得ず、この減衰は破砕帯Aにおける断層粘土の量がそう多くはないことを示しているのかもしれない。さらに2000年には、Na/Ca比の低下が活断層調査坑道全体で見られるようになった。
 1997年から1999年の3年間の、各地下水の安定同位体比の変化の傾向を調べた所、既存の長棟坑道のCaHCO3型の地下水および、活断層調査坑道の252mより奥の部分から湧出している地下水では、この3年間ほとんど変化していないか、やや増加する傾向であった(図4.4.7-7)。しかし、断層破砕帯内およびその近傍に位置する、長棟坑道のNaHCO3型の地下水や調査坑道0m〜242m地点の地下水では、この間に酸素同位体比は0.4〜0.8‰減少した。
 このように破砕帯での水の同位体比の変化は、明らかに断層破砕帯の外部とは違う傾向を示した。また水の酸素同位体比と水素同位体比の変動を比較した結果、破砕帯の地下水は、酸素同位体比が時間とともに低い方向に変化しているのに対し、水素同位体はあまり変化しない傾向を示した。
 このように水素同位体比は変化せずに、酸素同位体比だけが時間とともに低い方向に変化することは、1997年当時の水は岩石と相互作用をして、岩石の高い酸素同位体比を取り込んだ水であり、時間の経過とともにそのような水が押し流されて、1999年には、そのような岩石水反応を起こしていない水に変化しつつあることを示している。しかし1999年と2000年の間には1999年に見られたような大幅な変化は見られていない。

4) 地下水の起源
 断層調査坑道の破砕帯内外で岩石試料・粘土を採集し、その中に含まれるカルサイトの炭素および酸素同位体比を測定した。岩石中のカルサイトの酸素同位体比は5‰程度であったが、破砕帯AおよびBから得られた試料では5〜17‰程度と大きく違っていた。このことは、破砕帯中のカルサイトは元々の母岩のカルサイトではなく、断層運動中あるいはその後に形成されたものであることを示している。そして、酸素同位体比から推定されるカルサイトの形成温度は、ほぼ常温であったことが判明した。このことから、断層運動に伴う熱水102)の上昇など、破砕帯の温度が上昇したことはなく、上で述べた、水の化学成分や同位体比変化などの岩石水相互作用は、常温で起こったものである事が判明した。一方、岩石中のカルサイトの炭素同位体比は-9〜-3‰の範囲にあった。断層帯内部のカルサイトもその範囲にあったが、破砕帯Bの部分で試料を密に採取して測定したところ、破砕度2の安山岩質岩脈で-3.6‰と最も高く、この部分が地下深部からのCO2ガスなどの通路になっていた可能性がある。

(佐竹 洋)


5. 研究業績一覧
5.1 地震発生に関する研究 研究業績一覧


[学会報告]

〔1996年〕

1. 熊澤峰夫・藤井直之・小川克郎・山岡耕春・渡辺誠一郎・熊谷博之・鈴木和司・石川秀蔵・山田守・中野優・羽佐田葉子・西原真仁・池田典宏・井上修一・宮川幸治・福和伸夫・石原競・三浦和孝・山田聡・武井康子・東原紘道・島崎邦彦・新谷昌人・中谷正生・束田進也・安藤雅孝・西上欽也・山川稔・坪田浩二・長谷川健・花木達美・圓尾等・長谷吉二・小金井義則・大島宏之・立石博(1996):アクロスシステム開発研究の現状報告.地球惑星科学関連学会1996年合同大会予稿集,E21-03.

2. 熊澤峰夫・石原競・鈴木和司・小川克郎(1996):SH波発生用アクロスの地表面カップラー().日本地震学会講演予稿集1996年度秋季大会,P42.

3. 國友孝洋・石原競・池田典宏・山岡耕春・熊澤峰夫・小川克郎(1996):回転型ACROSSの周波数安定性.日本地震学会講演予稿集1996年度秋季大会,P47.

4. 小川克郎・熊澤峰夫(1996):音波と電磁波のアクロスによる地殻内の水と応力と物理的状態の常時リモートセンシングへむけて.日本地震学会講演予稿集1996年度秋季大会,P45.

5. 山岡耕春・國友孝洋・花木達美・石原競・池田典宏・羽佐田葉子・宮川幸治・中野優・熊澤峰夫(1996):精密制御定常震源と時間区間蓄積記録装置のGPS刻時による遠隔同期計測実験.日本地震学会講演予稿集1996年度秋季大会,P46.

6. 山岡耕春・武井康子・熊澤峰夫・藤井直之・小川克郎・熊谷博之・鈴木和司・渡辺誠一郎・束田進也・中野優・羽佐田葉子・池田典宏・井上修一・宮川幸治(1996):火山の地下構造をさぐるACROSSシステムの開発.地球惑星科学関連学会1996年合同大会予稿集,C22-11.

〔1997年〕

7. 羽佐田葉子・池田典宏・山岡耕春・熊谷博之・國友孝洋・石原競・中谷正生・中野優・宮川幸治・奥田隆・熊澤峰夫・小川克郎(1997):淡路島におけるACROSS探査実験 2.データ解析とその結果.地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集,C42-P09.

8. 平井誠・熊澤峰夫・國友孝洋・鈴木和司(1997):次世代アクロス震源開発.日本地震学会講演予稿集1997年度秋季大会,P61.

9. 池田典宏・石原競・中谷正生・宮川幸治・小川克郎・山岡耕春・國友孝洋・羽佐田葉子(1997):アクロス/HITによるアレイ観測とその観測.日本地震学会講演予稿集1997年度秋季大会,B52.

10. 熊澤峰夫(1997):電磁界変動研究に関する主張と提案:反先行現象シンドローム,もっと広い周波数帯での観測,そしてもっと精密な電気伝導度分布の解明にむけて.Conductivity Anomaly研究会論文集,1-8.

11. 熊澤峰夫・羽佐田葉子・熊谷博之(1997):拡散場アクロス.日本地震学会講演予稿集1997年度秋季大会,P58.

12. 熊澤峰夫・國友孝洋・山岡耕春・小川克郎・花木達美・何培明(1997):東濃地科学センターにおけるアクロス研究 ―現状と展望―.地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集,C42-P10.

13. 熊澤峰夫・中野優・中谷正生・宮川幸治・山岡耕春・小村英智・関淳・小白井敏明・新谷正人(1997):地震計の不安定性と精密加速度計測系の開発 ―アクロス信号の信頼できる取得のために―.地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集,C42-P10.

14. 熊澤峰夫・鈴木和司・石原競・中谷正生・小川克郎・三浦和孝・長谷吉二・小金井義則・圓尾等(1997):HIT型アクロス(II)震源装置の設計と製作.地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集,C42-P02.

15. 熊澤峰夫・武井康子(1997):地下構造音波ホログラフィ用アクロスアレイ.地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集,C42-P05.

16. 國友孝洋・平井誠・熊澤峰夫・宮川幸治・小林和典・山岡耕春(1997):回転型ACROSSの周波数変調制御による多チャンネル同時送信の精度.日本地震学会講演予稿集1997年度秋季大会,P60.

17. 國友孝洋・熊澤峰夫・山岡耕春・青木勝・石原競(1997):回転型ACROSSの精密周波数変調制御.地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集,C42-P07.

18. 國友孝洋・山岡耕春・熊澤峰夫・小川克郎(1997):回転型ACROSSの精密制御遠隔操作システム.地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集,C42-P08.

19. 宮川幸治・小林和則・山岡耕春・國友孝洋・平井誠(1997):淡路島のFMアクロスによる地震波速度の時間変化の検出.日本地震学会講演予稿集1997年度秋季大会,C65.

20. 宮川幸治・國友孝洋・山岡耕春・熊澤峰夫(1997):ACROSSによる地震波速度構造の時間変化の検出.地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集,C42-10.

21. 小川克郎・熊澤峰夫・石原競・中谷正生・國友孝洋・藤井直之・山岡耕春・熊谷博之・武井康子・中野優・羽佐田葉子・宮川幸治・池田典宏・鈴木和司(1997):HIT:可搬型ACROSS.地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集,C42

22. 小川克郎・熊澤峰夫・熊谷博之(1997):電磁アクロス:電気伝導度構造解析の新手法.地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集,C42

23. 山岡耕春・小林和典・國友孝洋・熊澤峰夫・安藤浩・岩崎慎(1997):DATAMARK LS8000SHを用いたACROSS時間区間蓄積型記録装置.日本地震学会講演予稿集1997年度秋季大会

24. 山岡耕春・國友孝洋・熊谷博之・石原競・中谷正生・中野優・羽佐田葉子・池田典宏・宮川幸治・奥田隆(1997):淡路島におけるACROSS探査実験 1.実験の概要.地球惑星科学関連学会1997年合同大会予稿集,C42-12.

〔1998年〕

25. 池田典宏・山岡耕春・国友孝洋・平井誠・小川克郎・宮川幸治・小林和典・熊澤峰夫(1998):ACROSSのアレイ観測と解析.地球惑星科学関連学会1998年合同大会予稿集,Ad-P003.

26. 熊澤峰夫(1998):地震フロンティア「アクロス研究」の現状,および地下の高分解能監視機能確保に不可欠な高性能地震計スーパーアレイ構築の必要性.地球惑星科学関連学会1998年合同大会予稿集,Ad-002.

27. 熊澤峰夫・中島崇裕・羽佐田葉子(1998):電磁アクロスの一般理論と実用化の意義.日本地震学会講演予稿集1998年度秋季大会,B07.

28. 熊澤峰夫・中島崇裕・羽佐田葉子・鈴木敬一(1998):連続波地中レーダデータの存否セプストラム解析.日本地震学会講演予稿集1998年秋季大会,P87.

29. 熊澤峰夫・中島崇裕・國友孝洋・鶴我佳代子・鈴木敬一・西山英一郎・坪田浩二・長谷川健・藪内聡(1998):アクロスレーダの開発とその展望.日本地震学会講演予稿集1998年度秋季大会,P86.

30. 國友孝洋・熊澤峰夫・平井誠(1998):ACROSS用地震計の選定.日本地震学会講演予稿集1998年度秋季大会,P80.

31. 國友孝洋・鶴我佳代子・熊澤峰夫(1998):回転型ACROSSの震源特性 ―送信条件の安定化―.日本地震学会講演予稿集1998年度秋季大会,P79.

32. 宮川幸治・小林和典・山岡耕春・國友孝洋・羽佐田葉子・宮島力雄(1998):淡路島におけるアクロス信号の位相変化.地球惑星科学関連学会1998年合同大会予稿集,Ad-P004.

33. 中島崇裕・熊澤峰夫・羽佐田葉子・坪田浩二(1998):電磁アクロス:一般的な電気伝導性誘電体中の伝達関数.日本地震学会講演予稿集1998年度秋季大会,P84.

34. 中島崇裕・國友孝洋・熊澤峰夫・鶴我佳代子(1998):電磁アクロス:拡散場アクロスの送受信技術開発の中間報告.日本地震学会講演予稿集1998年度秋季大会,P85.

35. 鶴我佳代子・國友孝洋・熊澤峰夫・中島崇裕(1998):回転型ACROSSによる周辺地盤の震動特性解析.日本地震学会講演予稿集1998年度秋季大会,P81.

〔1999年〕

36. 熊澤峰夫(1999):放射性廃棄物質地層処分の論理と倫理 ―全地球史解読研究からの視点―.地球惑星科学関連学会1999年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Am-002.

37. 熊澤峰夫(1999):高レベル放射性廃棄物地層処分の方法論と技術論.地球惑星科学関連学会1999年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Am-003.

38. 熊澤峰夫(1999):地震電磁気現象に関する未解決問題の整理と具体的アプローチの検討.日本地震学会講演予稿集1999年度秋季大会,C48.

39. 熊澤峰夫・國友孝洋・横山由紀子・中島崇裕・鶴我佳代子(1999):日本列島地下常時監視ステイションの一つとしての釜石坑道.日本地震学会講演予稿集1999年度秋季大会,C63.

40. 熊澤峰夫・中島崇裕・鶴我佳代子・國友孝洋(1999):アクロスデータの構造逆解析法:モード解析法試論.地球惑星科学関連学会1999年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Se-P008.

41.Kumazawa, M., Nakajima, T. and Yokoyama, Y. (1999): A new electromagnetic sounding method, EM-ACROSS. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, GP31C-12.

42. 國友孝洋・熊澤峰夫(1999):降雨による地盤振動特性の変動 ―回転型ACROSSの連続運転実験―.日本地震学会講演予稿集1999年度秋季大会,P171.

43. 國友孝洋・熊澤峰夫・山岡新春(1999):ACROSSにおける周波数変調の有効性と送信装置特性を考慮した変調波形の最適化.日本地震学会講演予稿集1999年度秋季大会,P177.

44. 國友孝洋・山岡新春・熊澤峰夫・井上修一・池田典宏・宮川幸治・渡辺誠一郎(1999):精密制御定常信号システム(ACROSS)におけるFM送信技術とその有効性.物理探査学会第101回学術講演会論文集,79-83.

45. 中島崇裕・熊澤峰夫・國友孝洋・鶴我佳代子・羽佐田葉子(1999):電磁アクロスとCSMTの特性比較.地球惑星科学関連学会1999年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Eb-P006.

46. 中島崇裕・横山由紀子・熊澤峰夫(1999):電磁アクロス探査法の最適化.第106回地球電磁気・地球惑星圏学会講演会,B22-P065.

47. 鶴我佳代子・熊澤峰夫・中島崇裕(1999):弾性波および電磁波動場における吸収境界条件とその特性 ―密度・誘電率を複素数にしての数値計算―.地球惑星科学関連学会1999年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Se-P007.

48. 鶴我佳代子・熊澤峰夫・國友孝洋・山岡新春(1999):可搬型アクロス震源(通称HIT)の振動特性.日本地震学会講演予稿集1999年度秋季大会,P78.

49. 横山由紀子・中島崇裕・熊澤峰夫(1999):周期信号を用いた電磁気探査でのデータ処理方法.第106回地球電磁気・地球惑星圏学会講演会,B22-P066.

〔2000年〕

50. 羽佐田葉子・熊澤峰夫・國友孝洋(2000):アクロスで取得した周波数応答関数の存否法による走時観測 1. 10〜30Hz帯における実体波の分散.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Ai-P004.

51. 生田領野・森口賢治・宮川幸治・國友孝洋・山岡耕春(2000):野島断層注水実験における,ACROSSによる地震波速度変動の観測.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Sc-010.

52. 熊澤峰夫(2000):ACROSSの開発研究報告と地震場の監視.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Ai-009.

53. Kumazawa, M., Yokoyama, Y. and Nakajima, T. (2000): A model for decomposition of electromagnetic transfer function in 3D structure. American Geophysical Union 2000 Fall Meeting, GP61B-05.

54. 國友孝洋・熊澤峰夫(2000):東濃アクロス地震計アレー観測システム.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Ai-P005.

55. 國友孝洋・熊澤峰夫・鶴我佳代子(2000):精密簡便な実用的地震計検定装置の考案と実験.日本地震学会講演予稿集2000年度秋季大会,P013.

56. 國友孝洋・梅田章・熊澤峰夫・飯岡比呂志・尾原隆正・福島武博(2000):三次元振動台による地震計の精密検定(序報).日本地震学会講演予稿集2000年度秋季大会,C81.

57. 中島崇裕・國友孝洋・熊澤峰夫・横山由紀子(2000):東濃電磁アクロスシステム技術開発と送信受信点間の伝達関数の試験観測.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Eh-P002.

58. 中島崇裕・國友孝洋・熊澤峰夫・横山由紀子(2000):電気ダイポールからの送信信号モニタリングの試み.第107回地球電磁気・地球惑星圏学会講演会,C22-P82.

59. 鶴我佳代子・熊澤峰夫・國友孝洋・山岡耕春(2000):可搬型弾性波送信震源(HIT)実用化に向けた加振部装置技術の開発.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Ai-P002.

60. 横山由紀子(2000):情報量規準を使用しないARオーダの推定法.第15回ディジタル信号処理シンポジウム講演論文集,197-202.

61. 横山由紀子・中島崇裕・熊澤峰夫(2000):人工電磁波源を用いた3次元構造探査で扱う送受信点間伝達関数の性質とその処理法.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Eh-P001.

62. 横山由紀子・中島崇裕・熊澤峰夫(2000):人工電磁波源を用いた3次元構造探査で扱う送受信信号間伝達関数の性質とその処理法2.第107回地球電磁気・地球惑星圏学会講演会,C41-04.

[誌上報告]

〔1998年〕

1. 熊澤峰夫(1998):地下構造状態の常時遠隔監視技術の開発研究と地震発生場解明に向けたテストフィールド実験.月刊地球号外 新地震予知研究,20,174-177.

〔2000年〕

2. 熊澤峰夫・國友孝洋・横山由紀子・中島崇裕・鶴我佳代子(2000):アクロス:理論と技術開発,及び将来展望.サイクル機構技報,9,115−129.

3. 中島崇裕・國友孝洋・熊澤峰夫・横山由紀子(2000):電磁アクロスの開発と送信実験.地震研究所彙報,75,229-244.

4. 横山由紀子・熊澤峰夫・國友孝洋・中島崇裕(2000):精密に制御された電磁波を用いた3次元精密構造探査のためのディジタル信号波形の設計.地震研究所彙報,75,265-282.

5. 横山由紀子・熊澤峰夫・中島崇裕(2000):射線モデルと自己回帰型のモデルを組み合わせた電磁場伝達関数の分解方法 ―水平成層構造の場合―.地震研究所彙報,75,245-263.

〔2001年〕

6. Hasada, Y., Kumagai, H. and Kumazawa, M. (2001): Autoregressive modeling of transfer functions in frequency domain to determine complex travel times. Earth, Planets and Space, 53, 3-11.

7. Yamaoka, K., Ikuta, R., Miyakawa, K., Kunitomo, T. and Kumazawa, M. (2001): A precise method for monitoring the temporal variation of wave propagation. Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

8. Yamaoka, K., Kunitomo, T., Miyakawa, K., Kobayashi, K. and Kumazawa, M. (2001): A trail for monitoring temporal variation of seismic velocity with ACROSS system. Island Arc.

9. Yokoyama, Y., Kumazawa, M. and Nakajima, T. (2001): Transfer function measured by electromagnetic sounding with an accurately controlled signal. Earth, Planets and Space.

5.2 地震と地下水挙動に関する研究 研究業績一覧

[学会報告]

〔1996年〕

1. 脇田宏・五十嵐丈二・梅田浩司(1996):岐阜県土岐における地下水位観測:遠地大地震前の変化.地球惑星科学関連学会1996年合同大会予稿集,F31-08.

〔1997年〕

2. Kusumoto, F., Ishii, H. and Soma, K. (1997): A study on rock behavior of diverging tunnels using the new measuring system, Proceedings of ISRM 8th Congress, 1403-1406.

〔1998年〕

3. 浅井康弘・青木治三・大久保慎人・吾妻瞬一・地震地下水研究チーム(1998):岐阜県瑞浪市における地下水位連続観測.日本地震学会講演予稿集1998年度秋季大会,P67.3. 石井紘(1998):地震予知研究のためのボアホール地殻活動総合観測装置と岩盤工学への応用.第19回西日本岩盤工学シンポジウム論文集,3-10.

4. 吾妻瞬一・地震地下水研究チーム(1998):97年3月愛知県東部の地震に対する東濃鉱山周辺の地下水応答特性.地球惑星科学関連学会1998年合同大会予稿集,Si-P002.

5. 吾妻瞬一・地震地下水研究チーム(1998):総合観測井における水位・歪・傾斜・水温・地下水溶存ガスの同時連続観測.日本地震学会講演予稿集1998年度秋季大会,P65.

6. 吾妻瞬一・大澤英昭・地震地下水研究チーム(1998):東濃鉱山周辺における地震に対する地下水位・間隙水圧の変動特性.日本応用地質学会平成10年度研究発表会,21-24.

7. 石井紘(1998):地震予知研究のためのボアホール地殻活動総合観測装置と岩盤工学への応用.第19回西日本岩盤工学シンポジウム論文集,3-10.

8. 石井紘・中尾茂・松本滋夫・平田安廣(1998):ボアホール地殻活動総合観測装置で観測された伊豆半島東方沖群発地震の前兆的地殻変動.「地下深部における地殻変動連続観測に向けて」研究会集録,47-51.

9. 山内常生・石井紘・松本滋夫・平田安廣(1998):初期応力測定用メモリー内蔵回収型歪計の開発.第19回西日本岩盤工学シンポジウム論文集,73-78.

10. 山内常生・石井紘・松本滋夫・平田安廣(1998):初期応力測定用メモリー内蔵回収型歪計の開発.「地下深部における地殻変動連続観測に向けて」研究会集録,8-13.

〔1999年〕

11. 浅井康広・青木治三・北川有一・吾妻瞬一・山内常生(1999):岐阜県東濃地域で観測された,1999年3月16日滋賀県北部地震(M4.9)に伴う歪・地下水位変化.日本地震学会講演予稿集1999年度秋季大会,P159.

12. 吾妻瞬一・地震地下水研究チーム(1999):土岐花崗岩体は地下の覗き窓か?(地下水応答を示す地震と領家帯の分布の相関の有無).日本地震学会講演予稿集1999年度秋季大会,P124.

13. 吾妻瞬一・地震地下水研究チーム 脇田宏(1999):地震に対する東濃鉱山周辺の地下水応答(構造敏感性か,間隙水圧の伝播か?).地球惑星科学関連学会1999年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Sj-P005.

14. 池田隆司・小村健太郎・飯尾能久・石井紘・松本滋夫・山内常生(1999):阿寺活断層ドリリング(?)―岐阜県福岡町における地殻応力測定―.日本地震学会講演予稿集1999年秋季大会,C13.

15. 石井紘・山内常生・松本滋夫・青木治三・吾妻瞬一(1999):深いボーリング孔内のオーバーコアによる歪み観測と初期応力測定.日本地震学会講演予稿集1999年秋季大会,C11.

16. 石井紘・山内常生・佐野修・平野享・松本滋夫・平田安廣・中尾茂(1999):釜石鉱山における3次元歪み・応力観測 ―トンネルの2km奥,かぶり450m地点での2本のボーリング孔における歪み観測による―.日本地震学会講演予稿集1999年秋季大会,C60.

17. 北川有一・地震地下水研究チーム・浅井康広(1999):岐阜県土岐市東濃鉱山周辺の観測井での地震に伴う地下水位・間隙水圧変化.日本地震学会講演予稿集1999年度秋季大会,P158.

18. 栗田泰夫・高瀬信一・川邊岩夫・伊藤貴盛(1999):活断層・地震地球化学観測点.日本地質学会第106年学術大会,見学旅行案内,1-16.

19. 三輪篤・佐々木嘉三・武藤大輔・鈴木亮(1999):東濃鉱山におけるラドン観測.地球惑星科学関連学会1999年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Ma-010.

20. 山内常生・石井紘・松本滋夫・平田安廣(1999):初期応力測定用インテリジェント回収型歪計の開発.日本地震学会講演予稿集1999年秋季大会,C02.

〔2000年〕

21. 吾妻瞬一・北川有一・地震地下水研究チーム 脇田宏(2000):岐阜県土岐市の東濃鉱山周辺で行っている地殻内部の多成分連続観測について.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Ai-011.

22. 石井紘・山内常生・松本滋夫・池田隆司(2000):インテリジェント回収型歪計を用いた超深度ボーリング孔における歪観測とオーバーコアによる初期応力測定.物理探査学会第102回学術講演会論文集,109-113.

23. 北川有一・吾妻瞬一・地震地下水研究チーム 脇田宏(2000):岐阜県土岐市東濃鉱山周辺で行っている地下水位測定及び他の観測項目の地震関連現象の考察.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Ai-P003.

24. 松本滋夫・石井紘・山内常生・窪田亮(2000):超深度ボーリング孔における初期応力測定のためのオーバーコアリングシステムと方法について.物理探査学会第102回学術講演会論文集,394-397.

25. 山内常生・石井紘・松本滋夫(2000):超深度ボアホールにおける初期応力測定のためのインテリジェント回収型歪計の開発.物理探査学会第102回学術講演会論文集,104-108.

[誌上報告]

〔1996年〕

1. 田阪茂樹・佐々木嘉三(1996):小型ラドンデータロガーの開発.RADIOISOTOPES,45,741-752.

2. 田阪茂樹・佐々木嘉三・川田保至・桐山晃(1996):小型ラドン測定システムの開発.岐阜大学地域共同研究センター研究成果報告書,6,45-52.

〔1997年〕

3. 石井紘(1997):深部ボアホール地殻活動総合観測と今後の地震予知研究.月刊地球号外 地殻化学のフロンティア,18,109-114.

4. Ishii, H., Chen, G. and Ohnishi, Y. (1997): Estimation of far-field stresses from borehole strainmeter observations. Rock Stress (Sugawara and Obara ed.), Balkema, 259-264.

5. Ishii, H., Yamauchi, T. and Kusumoto, F. (1997): Development of high sensitivity borehole strainmeters and application for rock mechanics and earthquake prediction study. Rock Stress (Sugawara and Obara ed.), Balkema, 253-258.

6. 田阪茂樹・佐々木嘉三・山内常生・宮島力雄・和田博夫(1997):岐阜県神岡鉱山における地下水中のラドン濃度連続観測.月刊地球号外 地殻化学のフロンティア,18,28-35.

〔1998年〕

7. 藤森邦夫・石井 紘・向井厚志・中尾茂・松本滋夫・平田安廣(1998):注水試験に伴う地殻変動.月刊地球号外 断層解剖計画,21,38-43.

8. 石井紘(1998):深部ボアホール地殻活動総合観測の重要性・今後の短期予知研究と地殻変動連続観測.月刊地球号外 新地震予知研究,20,198-204.

9. 石井紘・藤森邦夫・向井厚志・中尾茂・松本滋夫・平田安廣(1998):深度800mのボアホールにおける地殻活動総合観測.月刊地球号外 断層解剖計画,21,14-20.

10. 石井紘・大倉敬宏(1998):南アフリカ金鉱山における歪観測と地震発生 ―震源近傍における観測―.月刊地球,7,419-422.

11. Ito, T., Kawasaki, K., Nagamine, K., Yamamoto, K., Adachi, M. and Kawabe, I. (1998): Seismo-geochemical observation at a deep bore-hole well of Nagashima spa in the Yoro-Ise Bay fault zone, central Japan. J. Earth Planet. Sci. Nagoya Univ., 45, 1-15.

〔1999年〕

12. Ito, T., Nagamine, K., Yamamoto, K., Adachi, M. and Kawabe, I. (1999): Preseismic hydrogen gas anomalies caused by stress-corrosion process preceding earthquakes. Geophysical Research Letters, 26, 13, 2009-2012.

13. King, C.-Y., Azuma, S., Igarashi, G., Ohno, M., Saito, H. and Wakita, H. (1999): Earthquake-related water-1evel changes at 16 closely clustered wells in Tono, central Japan. Journal of Geophysical Research, 104, B6, 13073-13082.

〔2000年〕

14. King, C.-Y., Azuma, S., Ohno, M., Asai, Y., He, P., Kitagawa, Y., Igarashi, G. and Wakita, H. (2000): In search of earthquake precursors in the water-level data of 16 closely clustered wells at Tono, Japan. Geophysical Journal International, 143, 469-477.

15. 北川有一・吾妻瞬一(2000):東濃鉱山周辺における地下水位の地殻ひずみ・気圧応答の周波数特性と地震に伴う地下水位変動の研究.サイクル機構技報,8,57-63.

16. 松原正也・田阪茂樹・佐々木嘉三(2000):World Wide Webを用いた地下水中ラドンデータ表示システムの構築.岐阜大学教育学部研究報告(自然科学),24,2,41-46.

17. 松本滋夫・石井紘・山内常生・窪田亮(2000):超深度ボーリング孔における初期応力測定のためのオーバーコアリングシステムの開発.東京大学地震研究所技術報告,6,1-9.

18. 森康則・山下瑠佳・川邊岩夫・伊藤貴盛・永峰康一郎・大井田徹・藤井直之(2000):長島観測井で観測された温泉ガス組成の地震地球化学的変化:H2/Ar比のスパイク状およびランプ関数状変化とその解釈.地震,53,165-176.

〔2001年〕

19. Asai, Y., Aoki, H., Tanaka, T., Kitagawa, Y. and Azuma, S. (2001): Comparison of tidal changes of ground strain and groundwater level observed at clustered boreholes in Tono region, central Japan. 測地学会誌, 47, 1, 134-140.

20. Ishii, H. and Yamauchi, T., Matsumoto, S. and Nakao, S. (2001): Development of multi-component borehole instrument for earthquake prediction study, some observed example of precursory and co-seismic phenomena relating to earthquake swarms and application of the instrument for rock mechanics. Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

5.3 活断層帯での地殻変動研究 研究業績一覧

[学会報告]

〔1997年〕

1. 平原和朗・安藤雅孝・細善信・和田安男・中野健秀(1997):跡津川断層GPS観測網.日本地震学会講演予稿集1997年度秋季大会,C61.

2. 伊藤久男・西上欽也・桑原保人・何培明(1997):跡津川,茂住祐延断層におけるガイドウェーブ観測の概要.日本地震学会講演予稿集1997年度秋季大会,P107.

3. 水田義明・栗山憲・ブディ スリスティアント・劉承論(1997):地層科学研究における3次元境界要素法解析.境界要素法論文集,14,105-110.

4. Mizuta, Y. and Sulistianto, B.(1997):Determination of tectonic stress from stress measurement at shallow depth, a numerical approach.日本地震学会講演予稿集1997年度秋季大会,B78.

5. 竹内章・伊藤谷生・岡田洋一・迫垣内薫・何培明(1997):活断層調査坑道で確認した跡津川断層系・茂住祐延断層(速報).日本地震学会講演予稿集1997年度秋季大会,P106.

〔1998年〕

6. 安藤雅孝(1998):活断層帯での地殻活動 ―陸域地下構造フロンティア研究.地球惑星科学関連学会1998年合同大会予稿集,Ad-003.

7. 平原和朗・安藤雅孝・細善信・和田安男・中野健秀(1998):GPS観測から跡津川断層の動きを探る.地球惑星科学関連学会1998年合同大会予稿集,Sg-012.

8. 金安蜀・伊藤潔・安藤雅孝(1998):Spatial distribution of scattered wave energy beneath Hida region, Japan.球惑星科学関連学会1998年合同大会予稿集,SL-P012.

9. Jin, A., Moya, C.A. and Ando, M. (1998): Simultaneous determination of site amplification and source paremeters for small earthquakes using GA inversion method.日本地震学会講演予稿集1998年度秋季大会,A31.

10. 水田義明・Sulistianto, B.(1998):浅所応力測定からの地殻応力場の推定と活断層特性の把握 ―数値解析によるアプローチ―.第10回岩の力学国内シンポジウム講演論文集,115-120.

11. 佐竹洋・村田正信(1998):地下水から見る茂住断層周辺の水の動き.地球惑星科学関連学会1998年合同大会予稿集,Sg-014.

12. 佐竹洋・村田正信(1998):地下水から見る茂住断層周辺の水の動き.日本地球化学会年会,11B04.

13. 武部晃充・竹内章・伊藤谷生・迫垣内薫・岡田洋一・中川靖浩・哈斯巴特尓・何培明(1998):跡津川断層系,茂住祐延断層地表調査結果.日本地質学会第105年学術大会,293.

14. 竹内章・伊藤谷生・迫垣内薫・岡田洋一・中川靖浩・哈斯巴特尓・武部晃充(1998):跡津川断層系,茂住祐延断層の変動地形と活動性.日本地質学会第105年学術大会,292.

15. 田中秀実・伊藤谷生・竹内 章・桧晋一郎・富田直人(1998):茂住−祐延断層を貫通する掘削坑道における断層破砕帯の産状 ―クリープ性の断層岩組織と微小地震空白域の関係について―.地球惑星科学関連学会1998年合同大会予稿集,Sg-013.

16. 和田博夫・伊藤潔・和田一成(1998):跡津川断層周辺における稠密地震観測.地球惑星科学関連学会1998年合同大会予稿集,Ad-P005.

〔1999年〕

17. Ando, M. (1999): Overview and purpose of active fault research at the Mozumi-Atotsugawa fault system: Progress report. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S42D-02.

18. Evans, J.P. and Tanaka, H. (1999): Preliminary microstructural analysis of fault-related rocks from the Mozumi fault, Japan: Evidence for creep processes at shallow levels. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S42D-12.

19. ハスバートル・竹内章・伊藤谷生・迫垣内薫・武部晃充・新見健・木下博久・野原壯(1999):跡津川断層系,茂住祐延断層の活動履歴.日本地質学会第106年学術大会,P-174.

20. Ito, H., Kumahara, Y., Kiguchi, T., Fujimoto, K., Ohtani, T., Lockner, D., Naka, H. and Tanaka, H. (1999): Subsurface structure and physical properties of the Nojima fault from borehole and core measurements. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S42D-09.

21. Ito, H., Kuwahara, Y. and Nishigami, K. (1999): Array observation of fault guided waves at the Mozumi and Atotsugawa faults. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S42D-11.

22. 伊藤久男・西上欽也・桑原保人(1999): 跡津川断層,茂住断層の深部構造:トラップ波の解析から.日本地震学会講演予稿集1999年度秋季大会,P142.

23. Ito, K. and Wada, H. (1999): Seismic activity along the Atotsugawa fault, central Japan and its relation to creep movement and tectonics. IUGG, Abstract, A167.

24. Ito, K. and Wada, H. (1999): Seismic activity along a creep fault (Atotsugawa fault) in central Japan and its relation to tectonics. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S42D-07.

25. 岩岡圭美・伊藤潔・和田博夫・大見士朗・川崎一朗(1999):発振機構と精密震源分布から求めた1998年飛騨群発地震の破壊面.地球惑星科学関連学会1999年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Sk-049.

26. Kuwahara, Y. and Ito, H. (1999): Borehole observation of trapped waves to deduce the subsurface structure of the Nojima fault. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S42D-10.

27. Masuda, K., Doan, M.L., Nishizawa, O., Lei, X. and Ito, H. (1999): Laboratory study of water-induced fracturing and internal fault structure. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S42D-03.

28. Mizuta, Y., Sulistianto, B., Ohnishi, Y., Narita, T., Ishihara, H. and Takehara, T. (1999): Stability evaluation taking strata boundary and tectonic stress into consideration. Proceedings of ISRM 9th Congress, 1163-1166.

29. Nishigami, K., Ito, H., Kuwahara, Y. and Ito, K. (1999): Shallow structure of the Mozumi-Sukenobu fault estimated from the explosion data. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S51A-25.

30. 野原壯・渡辺邦夫・田中秀実・武部晃充・山下貢・何培明(1999):茂住−祐延断層活断層調査坑道における断層破砕帯周辺の割れ目と透水性について.地球惑星科学関連学会1999年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Sb-009.

31. Satake, H., Murata, M. and Hayashi, H.(1999): Geochemistry of groundwater in and around the Mozumi-Sukenobu fault, northern central Japan. Chinese Science Bulletin, 44, 261-262.

32. 竹内章・伊藤谷生・迫垣内薫・武部晃充・岡田洋一・新見健・木下博久・ハスバートル(1999):跡津川断層系・茂住祐延断層の発掘調査結果.地球惑星科学関連学会1999年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Sb-004.

33. Takeuchi, A., Ongirad, H., Takebe, A., Sakogaichi, K. and Nohara, T. (1999): Results of excavation survey on the Mozumi-Sukenobu fault of the Atotsugawa fault system, Central Japan. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S51A-23.

34. Tanaka, H., Ito, H., Ando, M. and Ikeda, R. (1999): Whole view of the four drilling cores penetrating the Nojima fault at various depths down to 2000m beneath the surface. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S42D-08.

35. Tanaka, H. and Ito, T. (1999): Creep motion of the Mozumi-Sukenobu fault deduced from the flow texture in the ongoing processed fault rocks. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S51A-24.

36. Tanaka, H., Lockner, D. and Ando, M. (1999): Nonlinear viscous behavior of clay (montmorillonite) and its implication for fault creeping. 9th Hubbert Quarum Symposium.

37. Yamashita, F. and Yanagidani, T. (1999): Measurements of earth resistivity for monitoring stress-induced changes close to an active fault. American Geophysical Union 1999 Fall Meeting, S51A-26.

〔2000年〕

38. 安藤雅孝(2000):跡津川−茂住活断層フロンティア計画.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Ai-010.

39. ハスバートル・竹内章・迫垣内薫・武部晃充(2000):跡津川断層系茂住祐延断層の東端部の特徴.日本地質学会第107年学術大会,P-118.

40. Has, B., Takeuchi, A. and Takebe, A.(2000):The Activity characteristics of Mozumi-Sukenobu fault, Atotsugawa fault system, central Japan.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Sl-012.

41. 平原和朗・安藤雅孝・細善信・和田安男(2000):GPS観測から推定された跡津川断層固着モデル.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Ai-P008.

42. 伊藤久男・西上欽也・桑原保人(2000):ガイドウェーブ観測による茂住・祐延断層,跡津川断層深部構造の推定.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Ai-P001.

43. 伊藤潔・岩岡圭美・和田博夫・大見士朗・川崎一朗(2000):飛騨山脈における地震活動の特徴とテクトニクスとの関係.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Sk-P007.

44. 伊藤潔・和田博夫(2000):跡津川断層付近の地震活動とテクトニクス.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Ai-P007.

45. 岩村陽・淡路動太・高木秀雄・竹内章・板谷徹丸・岡田利典(2000):跡津川断層系の断層ガウジのK-Ar年代.日本地質学会第107年学術大会,P-141.

46. 松村一男・伊藤潔・大見士朗・和田博夫・金安蜀(2000):アナログ地震波形記録のディジタルデータベース作成.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Si-007.

47. 水田義明・石田毅・中山芳樹・新宮和喜(2000):乾式一面破砕応力測定法の適用性に関する数値シミュレーション.資源・素材2000秋季大会,A3-11.

48. 中山芳樹・新宮和喜・山下貢・石田毅・水田義明(2000):乾式一面破砕応力測定法の適用性に関する室内実験.資源・素材2000秋季大会, A3-10.

49. 西上欽也・伊藤久男・桑原保人(2000):茂住・祐延断層における破砕帯トラップ波観測.東京大学地震研究所特定共同研究B「短波長不均質構造とその波動論的作用」研究会,133-135.

50. 西上欽也・水野高志・伊藤久男・桑原保人・今西和俊・木口努(2000):茂住・祐延断層における破砕帯トラップ波観測(2)人工地震実験.東京大学地震研究所特定共同研究B「短波長不均質構造と高周波地震波の輻射特性」.

51. 武部晃充・竹内章・ハスバートル・迫垣内薫(2000):跡津川断層東部,真川露頭上部トレンチ調査結果.地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,CD-ROM予稿集,Sl-011.

[誌上報告]

〔1993年〕

1. 和田博夫・伊藤潔・梅田康弘・角野由夫(1993):焼岳火山付近の群発地震観測.京都大学防災研究所年報,36,B-1,291-303.

〔1995年〕

2. 和田博夫・伊藤潔(1995):跡津川断層付近の地震活動.京都大学防災研究所年報,38,B-1,235-250.

〔1996年〕

3. 和田博夫・伊藤潔・安藤雅孝・和田一成(1996):神岡鉱山・茂住坑における地震観測.京都大学防災研究所年報,39,B-1,241-250.

〔1997年〕

4. Mizuta, Y. (1997): Stress measurements by borehole pressurization and its potential for future rock engineering projects in Japan. Rock Stress (Sugawara and Obara ed.), Balkema, 51-56.

5. Mizuta, Y. and Kato, Y. (1997): Stability evaluation of an underground opening used for special experiment. Environmental and Safety Concerns in Underground Construction (Lee, Yang and Chung ed.), Balkema, 327-331.

〔1998年〕

6. 安藤雅孝(1998):活断層帯での地殻活動研究(地震フロンティア研究)概要.月刊地球,20,3,127-132.

7. 平原和朗・安藤雅孝・細善信・和田安男・中野健秀(1998):GPS観測から断層の動きを追う.月刊地球,20,3,149-153.

8. 伊藤久男・西上欽也・桑原保人(1998):トラップ波から断層のつながりを追う.月刊地球,20,3,154-159.

9. 伊藤潔・和田博夫・和田一成(1998):地震活動で断層の動きを追う.月刊地球,20,3,136-141.

10. 伊藤谷生・竹内章・田中秀実・西川有司・迫垣内薫・岡田洋一(1998):活断層地下観測場:茂住祐延断層調査坑道(速報).月刊地球,20,3,182-187.

11. 水田義明(1998):地殻応力は計らなければ分からない.月刊地球,20,3,177-181.

12. 佐野修・柳谷俊(1998):地殻の連続精密観測からなにがわかるか?.月刊地球,20,3,172-176.

13. 佐竹洋・村田正信(1998):地下水から見る断層周辺の水の動き.月刊地球,20,3,160-164.

14. Sulistianto, B., Kido, T. and Mizuta, Y. (1998): Determination of far field stress from the point stress measurement, a numerical approach. 資源と素材, 114, 461-466.

15. Sulistianto, B. and Mizuta, Y. (1998): Development of 3D indirect boundary element methods which consider joint slip and joint separation. 資源と素材, 114, 73-78.

16. 竹内章(1998):跡津川断層と茂住祐延断層.月刊地球,20,3,133-136.

〔1999年〕

17. 劉承論・水田義明・栗山憲(1999):Kelvin解による3次元仮想応力法中の解析積分について.資源と素材,115,719-724.

18. Sulistianto, B. and Mizuta, Y. (1999): Stress distribution in the vicinity of right strike-slip fault, a numerical approach. 資源と素材, 115, 651-659.

19. 和田博夫・伊藤潔・大見士朗・岩岡圭美・池田直人・北田和幸(1999):1998年飛騨山脈群発地震.京都大学防災研究所年報,42,B-1,81-96.

〔2000年〕

20. 安藤雅孝・活断層研究チーム(2000):跡津川断層帯での地殻活動研究.サイクル機構技報,9,131-141.

21. 哈斯巴特尓・竹内章・迫垣内薫・武部晃充・伊藤谷生・新見健・木下博久・野原壯(2000):跡津川断層系・茂住祐延断層の活動性.月刊地球号外 活断層と古地震,28,113-118.

22. Jin, A., Moya, C.A. and Ando, M. (2000): Simultaneous determination of site responses and source parameters of small earthquakes along the Atotsugawa fault zone, central Japan. Bulletin of the Seismological Society of America, 90, 6, 1430-1445.

23. 和田博夫・伊藤潔・大見士朗(2000):飛騨山脈の群発地震(その2)―周辺活動域への影響―.京都大学防災研究所年報,43,B-1,115-121.

〔2001年〕

24. Ando, M. (2001): Introduction of the volume "Seismogenic process monitoring". Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

25. Ando, M. (2001): Keynote on "In-situ monitoring of seismogenic process". Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

26. Ando, M. (2001): Comprehensive studies of the Mozumi-Atotsugawa fault system -Observations from a 480m tunnel excavated through the active fault-. Geophysical Research Letters, Special Issue (Tanaka, Evans and Ando ed.).

27. Forster, C.B., Evans, J.P., Tanaka, H., Watanabe, K., Effreys, R. and Nohara, T. (2001): Near-surface hydrologic structure of an active fault: The Mozumi fault, Japan. Geophysical Research Letters, Special Issue (Tanaka, Evans and Ando ed.).

28. Hirahara, K., Ando, M., Hoso, Y., Wada, Y. and Okura, T. (2001): Dense GPS array observations across the Atotsugawa fault, central Japan. Geophysical Research Letters, Special Issue (Tanaka, Evans and Ando ed.).

29. Ito, H. and Kawahara, Y. (2001): An episodic creep event at the Atotsugawa fault. Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

30. Ito, H. and Kuwahara, Y. (2001): Studies on fault activity at the Atotsugawa fault -Is the Atotsugawa fault creeping?-. Geophysical Research Letters, Special Issue (Tanaka, Evans and Ando ed.).

31. Ito, H., Kawahara, Y., Ito, S. and Imanishi, K. (2001): Monitoring earthquakes and crustal deformation by the multicomponent borehole instrument in the close vicinity of the seismogenic zone in western Nagano region. Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

32. Ito, H., Nishigami, K. and Kuwahara, Y. (2001): Array observation of fault guided waves at the Mozuni and Atotsugawa faults. Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

33. Ito, H., Nishigami, K. and Kuwahara, Y. (2001): Fault guided waves at the Mozumi and Atotsugawa faults. Geophysical Research Letters, Special Issue (Tanaka, Evans and Ando ed.).

34. Ito, K. and Wada, H. (2001): Seismic activity along a creeping fault (Atotsugawa fault) central Honsyu, Japan. Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

35. Ito, K. and Wada, H. (2001): Implication of heterogeneous seismic activity along the Atotsugawa fault zone, central Japan: Relationship between seismicity and creep movement. Geophysical Research Letters, Special Issue (Tanaka, Evans and Ando ed.).

36. Ito, S., Ito, H., Ellsworth, W.L. and Prejean, S.G. (2001): Q and the slow initial phase of earthquakes in western Nagano, central Japan. Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

37. Jin, A., Ito, K. and Ando, M. (2001): Coda amplitude distribution beneath Hida region, central Japan. Earth, Planets and Space.

38. Kano, Y., Kawakata, H. and Yanagidani, T. (2001): Time-dependent characteristics of the asperity contacts probed by using transmitted P-wave. Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

39. Nishigami, K. (2001): Investigation of deep structure of active faults using scattered waves and trapped waves. Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

40. Nohara, T., Tanaka, T., Watanabe, K., Furukawa, N. and Takami, A. (2001): Hydro-geological properties of host and fault rocks in the Mozumi-Sukenobu fault zone. Geophysical Research Letters, Special Issue (Tanaka, Evans and Ando ed.).

41. Sano, O., Hieda, H. and Hirano, K. (2001): A precise measurement of sound velocity for a monitoring of small stress change. Seismogenic Process Monitoring (Ogasawara, Ando and Yanagidani ed.), Balkema.

42. Satake, H., Murata, M. and Hayashi, H. (2001): Geochemistry of groundwater in and around the Mozumi-Sukenobu fault. Geophysical Research Letters, Special Issue (Tanaka, Evans and Ando ed.).

43. Takeuchi, A., Ongirad, H. and Takebe, A. (2001): Recurrence interval of big earthquakes along the Atotsugawa fault system, central Japan -Results of seismo-geological survey-. Geophysical Research Letters, Special Issue (Tanaka, Evans and Ando ed.).

44. Tanaka, H. and Lockner, D.A. (2001): Plasatic behavior of smectite clay minerals under hydrostatic, low strain rate, and room temperature conditions and its implication for shallow fault creep. Geophysical Research Letters, Special Issue (Tanaka, Evans and Ando ed.).

45. Watanabe, K., Aluwihare, S. and Takebe, A. (2001): Hydrogeological structure of a large fault zone developed in the Mozumi-Sukenobu fault. Geophysical Research Letters, Special Issue (Tanaka, Evans and Ando ed.).

5.4 共同発表

[学会報告]

1. 齋藤宏・湯佐泰久・小出馨・松井裕哉・太田久仁雄・濱克宏・川瀬啓一・杉原弘造・中島崇弘・吾妻瞬一(1999):東濃地科学センター,東濃鉱山・超深地層研究所計画用地.日本地質学会第106年学術大会,見学旅行案内書,29-46.

2. Saito, H., Yusa, Y., Koide, K., Matsui, H., Ota, K., Hama, K., Kawase, K., Sugihara, K., Nakajima, T. and Azuma, S. (1999): THE TONO MINE (Geoscientific studies). The 7th International Conference on Radioactive Waste Management and Environmental Remediation (Field Trip), ASME1999 (ICEM '99), 1-30.

[誌上報告]

1. 熊澤峰夫・國友孝洋・脇田宏・吾妻瞬一・安藤雅孝・何培明(1997):「陸域地下構造フロンティア研究」の現状.動燃技報,104,95-106.

2. 國友孝洋・吾妻瞬一(1998):遠隔観測手法で地殻の動きを監視.SEISM0, 2,7,2-3.

International Workshop on Frontiers in Monitoring Science and Technology for Earthquake Environments at Tono Geoscience Center, JNC. Program & Abstracts. (November 16-19, 1998)

1. Kumazawa, M. (1998): A new light and new eye to look into the solid Earth and a potential monitoring methodology of geodynamic states -Introduction to ACROSS-. A1.

2. Yamaoka, K. (1998): General theory and overview of the AC ACROSS. A2-1.

3. Kumazawa, M. (1998): Theoretical basis, development and prospect of EM ACROSS -An approach unifying low frequency MT and high frequency rader-. A2-2.

4. Kumazawa, M. (1998): Sompi cepstrum analysis method for general wave element deconvolution -Towards the real time color holography-. A2-3.

5. Takei, Y., Suzuki, K. and Kumazawa, M. (1998): Basic theory of active seismic source -Radiation mechanism, force type, efficiency, stability, controllability, mechanical constraints and so on-. AP1-1.

6. Kunitomo, T., Yamaoka, K., Inoue, S., Ikeda, N., Watanabe, S. and Kumazawa, M. (1998): Micro-hertz control technology of frequency-modulated rotary type transmitter to radiate a set of plural sinusoids with a 20 tonf in amplitude. AP1-2.

7. Tsuruga, K., Kunitomo, T., Kumazawa, M. and Nakajima, T. (1998): Characteristics of ground motion driven by a rotary-type ACROSS at the Tono test site. AP1-3.

8. Moriguchi, K., Miyakawa, K., Yamaoka, K. and Kumazawa, M. (1998): Linear motion-type seismic source utilizing electro-magnetic force -Experiment on its versatile utility and performance-. AP1-4.

9. Hirai, M. and Kumazawa, M. (1998): Linear motion-type seismic source utilizing two arrays of rotating magnets -Theory of an ideal seismic source with the least energy loss without eigenfrequency-. AP1-5.

10. Ogawa, K., Kumazawa, M., Suzuki, K., Nakatani, M., Ishihara, K., Miyakawa, K., Ikeda, N., Hasada, Y., Kunitomo, T., Fujii, N. and Yamaoka, K. (1998): Portable type ACROSS technology for geophysical prospecting and the experiments in the geothermal area in Yamagawa -Towards the technical development of handy tool for the field works on routine basis-. AP1-6.

11. Kunitomo, T. and Kumazawa, M. (1998): A strong demand for the high fidelity seismomoters with stability and low cost -Results of the measurements of frequency characteristics-. AP1-7.

12. Nakano, M., Miyakawa, K., Nakatani, M. and Kumazawa, M. (1998): Method and experiment of simultaneous calibration of seismographs on ACROSS observations to obtain unbiased signal. AP1-8.

13. Takei, Y., Hasada, Y., Yamaoka, K., Tsukada, S., Suzuki, K., Nakano, M., Miyakawa, K., Ikeda, N., Inoue, S. and Kumazawa, M. (1998): The first successful experiment of seismic ACROSS in the Nagoya University campus. AP1-9.

14. Yamaoka, K., Kunitomo, T., Ishihara, K., Hasada, Y., Miyakawa, K., Ikeda N., Yamada, M., Nakano M. and Kumazawa M. (1998): The first successful experiment of remote synchronization of ACROSS system using GPS clock. AP1-10.

15. Yamaoka, K., Ikeda, N., Miyagawa, K., Kunitomo, T. and Kumazawa, M. (1998): Array observation of ACROSS signals at Mizunami and Yamagawa and the result of data analysis. AP1-11.

16. Miyakawa, K., Kobayashi, K., Yamaoka, K. and Kunitomo, T. (1998): Temporal variation of phase in ACROSS signals for monitoring the underground states -A trial of detecting the tidal strain-. AP1-12.

17. Kobayashi, K., Yamaoka, K., Miyakawa, K. and Kunitimo, T. (1998): Monitoring of the temporal variation of the fault after 1995 Kobe earthquake with ACROSS system. AP-13.

18. Kumazawa, M., Nakajima, T. and Hasada, Y. (1998): Theoretical basis of EM ACROSS and its prospect -General theory on the electromagnetic signal transmission in the Earth as a conductive dielectric medium-. AP2-1.

19. Kumazawa, M., Nakajima, T. and Tsubota, K. (1998): Effect of frequency-dependent electric properties of the rocks on the signal transmission -Phenomenological evaluation of dielectric dispersion, physics behind it and the observables of the physical states within the Earth-. AP2-2.

20. Nakajima, T., Kumazawa, M., Kunitimo, T. and Tsuruga K. (1998): Current approach and the preliminary results on the EM ACROSS utilizing the diffusional transmission of electromagnetic signals in the MT range -DF(diffusion field) ACROSS with low frequency electromagnetic signals-. AP2-4.

21. Hasada, Y., Yoneda, A., Nomura, T. and Kumagai, H. (1998): ACROSS as a general measurement system of a linear system -Example of material characterization for a mm scale sample in laboratory-. AP3-1.

22. Kumazawa, M., Hasada, Y., Nakajima, T., Suzuki, K. and Nishiyama, E. (1998): Wave element deconvolution of radar data by means of Sompi cepstrum to analyze the travel time and physical dispersion of electromagnetic wave transmitted between the two bore holes. AP3-2.

23. Hasada, Y. and Kumagai, H. (1998): Numerical experiments of the complex Sompi cepstrum method using synthetic wave forms. AP3-3.

24. Kumazawa, M. (1998): Demands for the basic study on the inversion of the physical states in addition to the geometric-structures inversion -What do we need?-. AP3-4.

25. ACROSS team (1998): How to develop the across technology to meet the vast demands from the geophysical prospecting on routine uses?. AP4-1.

26. ACROSS team (1998): Potentiality of simultaneous application of the AC and EM towards the characterization and monitoring the structural sensitivity originated from H2O molecules in the Earth crust. AP4-2.

27. ACROSS team (1998): A proposal of the underground monitoring system of tectonics-active Japanese Islands as a national project. AP4-3.

28. Wakita, H. (1998): Introduction to geochemical, hydrological, and strain measurements. W1.

29. King, C.-Y., Azuma, S., Igarashi, G., Ohno, M., Saito, H. and Wakita H. (1998): Earthquake-related water-level changes at 16 closely clustered wells in Tono, central Japan. W2-3.

30. Igarashi, G. (1998): Temporal variations of tidal response of well water level related to earthquakes. W2-4.

31. Ishii, H. and Yamauchi, T. (1998): Multi-component borehole instrument for earthquake prediction study and it’s application for rock mechanics. W2-5.

32. Asai, Y., Aoki, M., Okubo, M. and Azuma, S. (1998): Continuous observation of ground water level. WP-2.

33. Azuma, S. and the Earthquake/Groundwater Research Team (1998): Monitoring groundwater behavior, emitted gases, and crustal activities (accompanying earthquakes) in and around the Tono Mine. WP-3.

34. Sasaki, Y., Tasaka, S., Mutou, D., Miwa, A., Suzuki, R. and Azuma, S. (1998): Observations of ground water radon concentration at the Tono Mine, Gifu prefecture, central Japan. WP-4.

35. Tasaka, S., Sasaki, Y., Matsubara, M., Mutou, D. and Takada, H. (1998): Continuous monitoring of underground water at Atotsugawa fault. -Relation of radon concentration, water temperature and water flow rate to series of earthquakes near the Nagano and Gifu boundary-. WP-5.

36. Ando, M. (1998): Overview and purpose of the active fault prove at the Mizumi-Atotsugawa fault system. F1.

37. Satake, H. and Murata, M. (1998): Geochemistry of groundwater in and around the Mozumi-Sukenobu faults. F2-4.

38. Sato, H., Nakahara, H., Hayakawa, T., Nishimura, T. and Ohtake, M. (1998): Radiative transfer theory-based inversion for the high-frequency energy radiation from an earthquake fault. F3-4.

39. Furumoto, M., Ichimori, Y., Hayashi, N. and Sato, T. (1998): Secular and tidal components of P wave velocity change in the source area of the presumed Tokai earthquake. F4-6.

40. Tanaka, H. (1998): Creep motion of the Mozumi-Sukenobu fault deduced from the flow texture around brecciated clast in the fault rocks. FP-1.

41. Ito, K., Wada, H. and Wada, K. (1998): Seismic Activity near the Atotsugawa fault, central Japan. FP-2.

42. Ito, H., Nishigami, K. and Kuwahara, Y. (1998): Array observation of fault guided waves at the Mozumi and Atotsugawa fault. FP-3.

43. Jin, A. and Ando, M. (1998): Simultaneous determination of site response and source parameters of small earthquakes along Atotsugawa fault zone using GA inversion method. FP-4.

44. Nishigami, K. (1998): Deep structure of the San Andreas, Calaveras and some other active faults in central California: An inversion analysis of coda envelopes from local earthquakes. FP-5.

45. Hirahara, K., Ando, M., Hoso, Y., Wada, Y. and Nakano, T. (1998): Dense GPS network for detecting the motion of Atotsugawa fault. FP-6.

46. Sano, O., Hirano, T. and Yanagidani, T. (1998): A plan for a continuous precise measurement of sound velocity near the Mozumi fault. FP-7

47. Mizuta, Y. (1998): Stress distribution in the vicinity of right strike-slip fault. FP-8.

48. Yanagidani, T. and Yamashita, F. (1998): The precise AC-based earth-resistivity measurement system using phase-sensitive-detection technique -Preliminary monitoring of ongoing stress-related process in the close vicinity of the Mozumi fault; I-. FP-9.

49. Yanagidani, T., Teshima, M. and Yamashita, F. (1998): AE monitoring in the site-investigation tunnel at the Mozumi fault -Preliminary monitoring of ongoing steress-related process in the close vicinity of the Mozumi fault; II-. FP-10.

50. Fujinawa, Y. and Honkura, Y. (1998): Understanding of seismotectonics through a window of crustal conductivity. FP-11.

51. Watanabe, K. (1998): Hydrogeological structure of a fault zone of Mozumi-Sukenobu fault. FP-12.



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