第9回 原子力機構報告会
「変革の時~新たなる出発に向けて~」

もんじゅ改革の現状と今後の取組 (テキスト版)

もんじゅ改革の現状と今後の取組
高速炉研究開発部門もんじゅ運営計画・研究開発センター長 家田芳明

○家田センター長 今年(平成26年)10月、もんじゅを支援するために設置されましたもんじゅ運営計画・研究開発センター長をしております家田でございます。よろしくお願いします。
 私からは、「もんじゅ改革の現状と今後の取組」についてご報告させていただきます。

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P1) ここに従来の高速増殖炉開発計画を示しました。高速増殖炉の開発は、国家プロジェクトとして、実験炉、原型炉、実証炉、実用炉と段階的に開発を進めることとされ、実験炉で技術の基礎を確認し、原型炉で発電技術を確立し、実証炉で経済性を見通すことで実用化を図ることとしていました。原型炉段階のもんじゅの役割は、運転・保守経験の蓄積、ナトリウム取り扱い技術の実証、発電プラントとしての信頼性の実証です。
 もんじゅは平成4年末に性能試験を開始し、平成6年4月に初臨界を達成しましたが、平成7年12月に発生しました2次主冷却系ナトリウム漏えい事故の後、14年半の間長期停止状態にありました。平成22年5月に性能試験を再開しましたが、その3カ月後、燃料交換後の片づけ作業中に炉内中継装置の落下トラブルが発生し、2年後にはその復旧を完了しています。しかし、復旧作業の最中、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の重大事故が発生し、我が国のエネルギー政策、原子力政策の見直しが図られてきています。さらに、そのような状況の中でもんじゅにおいて保守管理上の不備の問題が発生し、原子力規制委員会の保安措置命令によりまして、現在は性能試験に向けた準備も実施できない状況にあります。このように、もんじゅはこのスライドに示されたような重要な役割を担っているわけですけれども、その役割を果たせていないという状況です。私自身、長年、高速炉開発に携わってきた者としてまことに申しわけなく思っているところでございます。
 本日は、なぜ保守管理上の不備のような問題を起こし、もんじゅ改革が必要となったのか、もんじゅ改革をどのように進めてきているのか、原子力機構はこれからどうしようとしているのかについてご説明させていただきます。特に、なぜもんじゅが今のような状況になったのかという点をできるだけ丁寧にご説明したいと考えております。
P2) まず、なぜ保守管理上の不備のような問題を起こしてしまったのか、これまでのもんじゅにおける取り組みにおいて何がまずかったのか、何を反省しなければならないのかをお話しいたします。
 理事長からもいろいろ説明がございましたけれども、ここでご説明することは、もんじゅ改革を進めながら分析されてきたことです。
 1つは、ナトリウム漏えい事故以降の対応の不十分さを反省しなければならないと考えております。(ナトリウム漏えい)事故以降の経過の中で、もんじゅを確実に運転でき、技術伝承を行う体制を必ずしも十分に構築できなかったということでございます。
 もんじゅにおいては、平成7年のナトリウム漏えい事故以降、平成22年に一旦性能試験を再開したものの、現在に至るまで長期にわたって運転が停止しています。この期間におきまして、国の高速炉開発計画の見直し等の影響により、電力会社等からの出向者が減少していく中で、原子力機構として実施すべきでありました十分なプロパー職員の配置や育成を行えなかったということがあります。また、もんじゅは、故障、トラブル等の種々の問題を経験しているわけですが、その都度、余り問題を掘り下げずに直接的な対応を繰り返すうちに、自ら課題を摘出し、自ら改善するという取り組み姿勢が薄れてきた面があったのではないかと反省する必要があると考えております。
 こうしたことから、組織としてのマネジメントが的確に行われず、職員個々の技術力や自ら定めたルールを守る意識等の低下を招き、保守管理及び品質保証に係る体制やマネジメントが十分とは言えないものになってしまったと自己分析しているところです。
P3) 2つ目として、原子力規制の変化への対応の不十分さを反省しなければなりません。つまり、電力会社と同等レベルの規制対応ができていなかったということでございます。
 前のスライドで申し上げましたような状況の中、平成20年8月にもんじゅに適用される法令が改正され、約4カ月後の平成21年1月から、保全プログラムに基づく保全活動に対する検査制度が導入されることとなりました。電力会社においては、軽水炉について十分な経験に基づき、時間をかけて保全計画が整備されてきましたが、もんじゅにおいては実効性の観点から十分に検討した保全計画が整備できませんでした。
 その主な理由としては、事前準備が不十分で、法令改正があってから保全プログラム策定作業を開始したために、策定作業の期間が短かったこと、長期間停止状態にあったため、実効的な保全プログラム策定に必要な、十分な運転・保守経験を有していなかったこと、また、高速増殖炉の原型炉であるため、保全に関して実験炉の限られた経験しかなかったこと、ナトリウム系など軽水炉にない系統・設備を有しており、軽水炉の知見の反映も限られたものであったこと、などがあったと考えております。
P4) さらに、最初に保全計画を策定した後には、保全の最適化に向けて点検内容や頻度等の見直しを計画的に図っていくことを考えていましたけれども、結果として保全計画の見直しが十分に進まなかったのが実情です。
 その主な理由ですが、トラブル等の影響で性能試験が計画どおりに進まなくなり、点検計画と実際の工程に不整合が生じているにもかかわらず、適切な見直しに手が回らないということがあった、あるいは、品質マネジメントシステムの本質的な考え方や仕組みなどについて現場に十分浸透していないままに保全プログラムを運用したため、どのような手続きでどのような改善活動を進めるべきかといったことを、現場が十分に理解できていなかったということがあったと考えております。
 以上ご説明しました、長期間停止期間中に対応が不十分だったという2つの点についてまとめますと、1つ目としましては、職員個々の技術力や自ら定めたルールを守る意識が少しずつ低下してきてしまったこと、適切な発電所マネジメントの仕組みや能力が十分に育ってこなかったこと、言いかえれば、保守管理体制の強化、品質保証体制の強化が不十分であったと考えております。
 2点目につきましては、もんじゅの保全計画は、法令に従い、軽水炉の計画を参照して作成したものではありますが、研究開発段階の炉であり、ナトリウム冷却炉であるというもんじゅの特徴に即した実効性の高い計画になっていなかったこと、さらに、その見直しを進めるべきでありましたけれども、それが進んでいなかったために、点検の遅延とか点検漏れといった問題を起こしてしまったということです。
P5) もんじゅの改革が必要になった背景については、今、ご説明したようなことと考えているわけですけれども、このスライドでは、改革に至る経緯、事実関係をご説明します。
 この部分については先ほど来のご説明とダブっているところがございますので、はしょってご説明しますが、電気・計測制御設備における保守管理上の不備を私どもが原子力規制庁にご報告し公表したのが、2年前の今日(11月27日)でございました。
 その後、同じ年(平成24年)の12月に原子力規制委員会
から、点検期限を超過している機器の点検等を実施すること及び保守管理上の不備に関する原因究明、再発防止対策に関する検討を実施・報告することなどの命令を受け、これに対するご報告を翌年1月末に行いました。
 しかしながら、その後の保安検査等において、過去に点検時期を超過していた新たな事実が確認されたことなどによりまして、平成25年5月、原子力規制委員会から保安措置命令及び保安規定変更命令をお受けするに至りました。
 一方、このような流れの中でJ-PARCの事故(J-PARCハドロン実験施設における放射性物質漏えい事故)がありまして、文科省から改革の基本的な方向性が平成25年8月に示されたところでございます。
 これを受けまして、昨年(平成25年)9月から原子力機構改革、その中でのもんじゅ改革が進められてきたところでございます。
 もんじゅ改革に当たりましては、理事長を本部長とするもんじゅ安全・改革本部を設置し、改革計画に基づく基本計画、実施計画を作成し、改革活動を推進してまいりました。
P6) もんじゅ改革を進めるには、何が悪かったのか、本質的なところを捉えて対策を施す必要があります。保守管理上の不備に関する一連の事象について、根本原因分析、すなわち、そのような問題を起こしてしまった組織的な要因は何だったのかについて体系的に分析していますので、その結果をご説明します。
 まず、組織的な要因を分析する上で考慮すべき101項目の直接的要因が摘出されました。ここに書いておりますのは代表的な要因でございまして、次のとおりです。点検計画に点検期限の記載がなく、点検期限が不明確であったこと、膨大な量の保全計画や記録を人の手で管理していたこと、点検期限延長の手続に不備があったことでございます。
 これらの直接要因から、背後にある要因、組織要因を探ることに加えて、右側に書いてございますが、もんじゅについて実施された過去の根本原因分析の結果や他の発電所での類似事象から反映すべき点を検討するなどいたしまして、より深い要因を探ることで、大きく4項目の組織要因を洗い出しまして、それへの対策をまとめました。
 その4つの組織要因とは、1つ目は、管理機能が不足していたということです。つまり、管理者の所掌範囲が過大であるにもかかわらず、管理者自らが一担当者となり、マネージャーとしての意識が不足していたために、保守管理における管理機能が十分に発揮されていなかったということでございます。
 2つ目は、チェック機能が不足していたということです。つまり、組織としてルール遵守意識が不足しており、これを是正すべき品質保証室等によるチェック機能が十分ではなかった。保全プログラム策定等への計画的な取り組みの調整、管理機能等が不足していたということでございます。
 3つ目が、保全に係る基盤技術の整備が不足していたということです。つまり、保全計画や点検管理システムが構築途上であるにもかかわらず、頻発するトラブル対応に傾注したために、点検要領標準化等の保守管理に係る課題に対する本質的な対応が十分ではなく、また、これらを実践する要員、体制が不十分であったということでございます。
 4つ目は、安全最優先の意識と取り組みが不足していたということです。つまり、点検期限超過等の保守管理状況の実態把握が不足しておりまして、現場の安全を最優先する意識や資源確保等への取り組みが不足していました。また、過去の根本原因分析の対策取り組みへのフォローも不足していたということが挙げられます。
 今ご説明しました根本原因分析につきましては、もんじゅ改革を進めながら数次にわたって進めてきたものでございますが、ここで分析しております結果に基づいて具体的な対策を立て、順次改革計画に反映し、取り組んできたところでございます。
P7) 続いて、昨年(平成25年)10月以降、どのようにもんじゅ改革を進めてきたのかについてご説明いたします。
 もんじゅ改革を進めるに当たっては、まず改革のあるべき姿を念頭に置きました。不断の努力により自発的に安全を追求し、国民の負託に応え、高速増殖原型炉としての成果を発信することで社会への貢献を果たせる組織になることが本来あるべき姿と考えています。
 こういった組織になるための課題として、大きく5つの課題を挙げました。トップマネジメントにより安全最優先を徹底すること、安全で自立的な運営管理を遂行できる組織・管理体制を確立すること、マネジメント能力の改善、安全最優先を徹底できる組織風土への再生、高い技術力の育成、モチベーションの高揚といったものでございます。
 これらを踏まえまして、具体的な対策を、体制、風土、人の3つに整理して抽出し、改革を実施してきたわけでございます。本年(平成26年)9月までの1年間の実績については、ここでは詳しくご説明しませんが、本日の配付資料に参考資料として載せてございますので、そちらをごらんいただければ幸いでございます。
P8) ここには集中改革の1年間(平成25年10月から平成26年9月まで)の総合評価を示してございます。
 当初抽出した課題に対する対策を1年間かけて実施してきた結果、一定の成果が得られていることを確認してございます。しかし、原子力規制委員会からの保安措置命令の解除がされていないということで、課題が残っているのも事実でございます。このスライドの中で、赤文字で示したところが課題の部分になってございますので、そこを拾ってご説明点いたします。
 体制の改革に関しましては、まだ不十分な部分がある保守管理体制、品質保証体制の再構築を行って、継続的にそれらを改善していく必要があると考えてございます。
 風土の改革におきましては、品質保証に係るもんじゅ内でのチェック機能の強化のため、例えば品質保証活動における定期的な内部診断等に取り組むといったことで、品質マネジメントシステムに従った業務遂行の習慣を根づかせていきたいと考えてございます。
 人の改革におきましては、中長期的な観点からもんじゅに必要な技術力を確保・強化できるよう、各種対策を継続的に進めることが重要だと考えてございます。
 このようにまだ課題は残されていますが、1年間の集中改革期間を進めてきた結果、もんじゅ従業員の雰囲気、意識が確実に高揚してきておりまして、運転再開に向けて高いモチベーションを持って取り組んでいるのも事実でございます。
P9) 今ご説明しましたような結果を踏まえ、集中改革期間1年間について、本年(平成26年)9月末に原子力機構としての総括を行ってございます。
 そもそもの改革の発端となった保守管理上の不備に関しては、まだ保守措置命令の解除が達成できていないということで、先ほど申しましたが、保守管理、品質保証といった体制の再構築に向けた作業が、まだ継続中と言わざるを得ません。集中改革期間での取り組みにより、組織、人員、制度などの器はそろってきたわけでございますが、それを使った改革の定着、自立的な改善への取り組みを継続することで改革の総仕上げをすることが必要であると考えています。
 これらのことから、もんじゅについてはさらに半年間(平成26年10月から平成27年3月まで)集中改革期間を継続することになったわけでございます。
 10月からの改革第2ステージでは、先ほどご説明しました根本原因分析の結果を踏まえまして、保安措置命令に係る対策としまして、課題1、2と書いてございますが、保守管理体制、品質保証体制の再構築と継続的改善の2課題、加えまして、より先も見据えた課題としましては、現場技術力の強化、以上を合わせまして3つの課題を挙げてございます。種々の対策をこの3つに整理して再構築し直しまして、重点化した改革に取り組んでいるところでございます。
 このスライドには記していませんが、今現在の状況を申し上げますと、本年(平成26年)11月をめどに提出するとしてきました保安措置命令に対する報告書については、現在最終の仕上がり段階にございます。報告書を含めた作業全般の品質と手続き等について念には念を入れてチェックしていく必要があるとの判断から、報告書の提出は12月中旬ぐらいになる見込みでございます。また、保安規定変更命令に基づく保安規定変更申請につきましては、本報告書の提出に合わせて行う予定としてございます。そういうことでございますけれども、来年(平成27年)3月まで継続する集中改革期間の目標を達成すべく努力していきたいと考えているところでございます。
P10) このスライドには、原子力機構が行った1年間の集中改革期間の総括結果について、外部の専門家の方々から成る検証委員会でいただいた御意見を示してございます。改革が進捗し、変わりつつあるという評価をいただいている一方で、安全管理の問題を抱えている現状は異常なことであって、本来の姿である運転再開を目指すことが重要で、それによって職員の意欲、マイプラント意識の向上、ひいては仕事の質の向上につながるといった御意見とか、保安措置命令に対する総仕上げが必要であって、さらなる6カ月間の集中改革を継続することは適当という御意見もいただいてございます。このような御意見を心に刻みまして、来年(平成27年)3月まで継続する集中改革を不退転の覚悟で進めてまいりたいと考えているところでございます。
P11) 次にお話ししますのは、今後の取り組みでございます。
 こちらには、運転再開を目指した大まかな流れを示してございます。ここまでで申し上げました改革を実施、保安措置命令の解除を達成しなければなりません。これが当面の目標となります。その先には、第2の目標として、規制基準への適合性審査、すなわち原子炉設置変更許可があります。これに向かって、私どもは新規制基準関連の対応とか破砕帯調査への対応も進めているところでございます。この第2の目標を達成し、必要とされる改造工事を終え、地元の皆さんの御理解も得た上で運転再開に至ることができると考えております。運転再開を実現した後には、本来の研究計画を着実かつ本格的に推進してまいりたいと考えております。
P12) 東電福島第一(東京電力福島第一原子力発電所)の事故以降、国で検討が進められていたエネルギー基本計画が今年(平成26年)4月に閣議決定され、その中にもんじゅの新たな位置づけが示されています。新しい計画では、改めて核燃料サイクルの推進を基本とすることが確認され、もんじゅについては国際的な研究拠点と位置づけられ、徹底的な改革を行った上で、もんじゅ研究計画に示された研究の成果を取りまとめることを目指すこととされてございます。
 このスライドの下側にもんじゅ研究計画について少し書いてございますけれども、高速増殖炉技術開発の成果の取りまとめ、(放射性)廃棄物の減容及び有害度の低減、高速増殖炉/高速炉の安全技術体系の構築という3つの研究開発の柱が挙げられてございます。
P13) こちらに示したのは、もんじゅ研究計画の全体像でございます。先ほど申し上げたように、研究開発の3本柱が掲げられてございます。これらの知見を習得できる5サイクルの運転を終了した時点を成果の取りまとめ時期と定めておりまして、この時期に研究継続の可否を判断することとされてございます。
 この図の中で赤い文字で表記した部分は、国際協力で実施するもの、あるいは国際協力で実施する可能性のあるものを示してございますが、このように国際協力をさまざまに効果的に活用しながら研究開発を進めていくこととしてございます。
P14) 今後の研究開発としまして、3つの柱と国際協力について、少し中身をご説明いたします。
 1つ目の柱は、高速増殖炉技術開発の成果の取りまとめを目指した、高速増殖炉プラントとしての技術成立性の確認でございます。これは、もんじゅを用いて高速炉の基盤技術を検証・実証し、技術確立に導くものでございます。ここに例示したような多くの技術について、その成立性を確認するものです。
 いくつかの例について紹介しますと、1つはこの部分でございますが、炉心・燃料技術については、もんじゅの運転から得られる炉心特性データとか燃料の照射データを用いて炉心や燃料の設計技術を確認いたします。
 プラント保守技術などにつきましては、まさにプラントで実践してみなければ経験として蓄積されないものでございます。ここで得られる成果は、ナトリウム冷却高速炉のためのさまざまなノウハウとして運転保守手順書などに蓄積していくことになりますが、次の世代への技術伝承に活用しますし、今苦労して取り組んでおります保全計画の見直し作業も、まさに重要な研究成果として将来必ず役立つものと信じているところでございます。
P15) 2つ目の柱は、(放射性)廃棄物の減容・有害度の低減を目指した環境負荷低減の有効性の確認でございます。
 ここには、もんじゅを活用する例として、均質プルトニウム、マイナーアクチノイドサイクル技術の有効性確認の例を示してございます。長期間停止している現状のもんじゅには、長半減期のMA(マイナーアクチノイド)の1つであるアメリシウム241が比較的豊富に含まれていることから、この状態で性能試験等の運転を行うことによって、MA含有炉心、すなわちMAを燃焼させるタイプの炉心の特性データを取得することができます。これはアメリシウムのみではありますが、将来のアクチノイドリサイクル実現に向けた、燃料集合体規模での、世界でも貴重なデータを提供するものになります。また、系統的な照射試験を行うことで、プルトニウムやMAを燃焼させて減らすタイプのサイクル技術の有効性を把握することができます。
 このテーマのより詳しい内容につきましては、私の次の報告で大井川次長からご説明させていただきます。
P16) 3つ目の柱でございますが、高速増殖炉の安全性強化を狙いとした安全技術体系の構築でございます。
 高速増殖炉の安全性強化の研究は、新規制基準への対応検討のために既に実践的に行っているところでございまして、ここではそれを紹介させていただきます。
 もんじゅを対象とします新規制基準は、研究開発段階炉に関する基準として昨年(平成25年)7月に原子力規制委員会により策定されてございますが、安全審査を行うまでに改めて検討して見直すとされているものでございます。
 こうした中、私ども原子力機構は、外部の専門家の方々を含む「もんじゅ安全対策ピアレビュー委員会」というものを設置いたしまして、もんじゅの特徴を踏まえて安全確保の考え方の検討を実施いたしました。
 審議の結果、もんじゅに対して適切な対策を講ずべき主要な16項目の要求事項が取りまとめられてございます。審議の中では、検討材料として、私どもが開発しております安全評価手法の最新の研究開発成果が使われてございます。右側の表にはその抜粋を示してございます。ナトリウム冷却高速炉に特徴的なところは、この中で、青色で示してございます。
 1点だけご説明しますと、この部分(格納機能喪失の防止)でございますが、格納機能喪失の防止については、ナトリウム冷却炉の特徴である原子炉容器からナトリウムが無くなることを防げるということを踏まえ、溶融燃料による原子炉容器破損の可能性が実質上除外されるように適切なアクシデントマネジメント策を講じる必要があるという要求がされております。
 こういった事柄を含めて、16項目の要求事項を取りまとめて報告書にしたものでございます。この報告書につきましては、今年(平成26年)7月末に原子力規制委員会に提出させていただいておりまして、原子力規制庁にご説明させていただいているところでございます。私どもといたしましては、この報告書の内容を新規制基準の見直しの際に御活用していただければと考えているところでございます。
P17) 高速炉サイクルの技術開発においては、開発を効果的・効率的に進めるために、国際協力の活用がますます重要になっているところでございます。このスライドは、国際協力の進め方の分類と重点的な取り組み分野を整理したものでございます。
 2国間協力は、主としてアメリカ、フランス、加えてロシア、韓国などとの間で実施しているものですが、2国間協力は密接な協力が可能な方法でありまして、図に示したような分野で、具体的な研究プロジェクト及び個別研究開発での相互貢献を行っていくことになります。
 多国間協力としては、我が国は第4世代原子力システムに関する国際フォーラム、GIF(Generation IV International Forum)に参加しておりますが、こういった高速炉を開発する国々との間の協力では、共通の規格や基準を検討、策定することが有効でございます。こうした観点で、GIFのもとでは、高速炉の安全基準や運転・保守ガイドラインの構築に関して我が国主導で議論してきているところでございます。
 また、3番目のIAEA、国際原子力機関の取り組みには、原子力開発国以外の国も参加していることから、基盤的なデータ共有などの活動を実施してきてございます。
 これらの国際協力のうち、特に高速炉に関する安全基準の策定とか安全ガイドラインの策定につきましては、我が国が提案し、リードしてきた分野でございますけれども、今後も引き続き積極的に推進していく所存でございます。
P18) 最後にまとめさせていただきます。
 私どもは、現在進めておりますもんじゅ改革を、もんじゅを中心に原子力機構一丸となって今年度(平成26年度)末までに確実に成し遂げ、諸課題を解決し、性能試験の再開を実現することで、研究開発機関としての国民からの負託に応えていく所存でございます。
 そして、もんじゅ研究計画に基づいて、もんじゅを活用した研究開発を進め、高速炉の実用化につなげていきたいと考えてございます。
 また、国際協力を積極的に活用して効率的、効果的に研究開発を進めまして、世界に貢献する成果を上げていくという考えでございます。
 今後とも引き続き皆様のもんじゅへの御支援をよろしくお願いいたします。
 私からの報告は以上です。御清聴ありがとうございました。