第10回 原子力機構報告会
「原子力機構の新たな出発 ~研究開発成果の最大化と課題解決に向けて~」

開会にあたって (テキスト版)

開会にあたって
副理事長 田口康

皆さん、こんにちは。副理事長の田口でございます。ただいま冨岡副大臣の御挨拶の中にありましたように、理事長はただいま国会に呼ばれてございまして、本来この開会に当たっての挨拶、説明は児玉理事長から差し上げるところでございますが、かわって私からさせていただきます。

本日は、本当に平日のお忙しい中、この機構の成果報告会にお越しいただき、まことにありがとうございます。

これも先ほど冨岡副大臣から言及していただきましたが、原子力機構が誕生して今年で10年になります。この10年目の今年に、研究開発法人という新しい制度が独立行政法人改革の中でできたわけでございますが、国立研究開発法人として新たなスタートを切らせていただいてございます。4月に児玉理事長が着任いたしまして、かつ新しい法人としてのスタートということで、機構としては、新たな方針、新たなスタートラインに立って今後取り組んでいく所存でございます。

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P) 以下、それについて簡単に御説明させていただきたいと思ってございます。

P) まず国立研究開発法人としてのスタートのポイントでございますが、今年の4月1日から7年間の中長期計画期間が始まってございます。国立研究開発法人制度の1つのポイントは、研究開発成果の最大化を図っていくということでございます。加えまして、機構の原子力の総合機関としての役割によって社会への貢献、国の政策への貢献といったものを図っていくということでございます。

この中長期計画の中身につきましては、この後、理事の大山から詳しく御説明申し上げますが、私からは、児玉理事長が本来ここで述べる予定でございました今後の機構の経営の方針といったものをお話しさせていただきたいと思います。

このスライドに、まず業務実施のポイントということがございますが、原子力に関係する法人でございます。したがって、安全最優先を一番最初に掲げさせていただいてございます。それから、研究開発法人としての経営機能の強化。さらには、組織・業務改革の定着化。これまで機構はさまざまな形の改革を進めてまいりました。これをきちんと組織の中に定着させることが重要だと考えてございます。さらには、トランスペアレンシー、積極的な情報の提供・公開。それから、社会、立地地域からの信頼確保。こういうことを業務の基本として取り組んでいきたいと思ってございます。

さらには、研究開発法人として、大学や産業界との積極的な協力あるいは国際的な協力、さらには安全研究というのもやってございますが、その大きな柱の1つは原子力安全規制行政の支援ということになります。

こういったことを基本に取り組んでいきたいと考えてございます。

P) ここに現状の機構の課題ということで挙げさせていただいてございます。

もんじゅについては、先ほど副大臣から言及がございました。それ以外にも、機構が抱えている多くの施設の高経年化対策、あるいは廃棄物の問題、バックエンド対策、これが機構の経営上非常に大きな課題となっているのが現状でございます。

そういった中、安全確保を最優先に、第3期の中長期計画に従って自律的に変革・成長できる組織にしていきたいと考えてございます。

児玉理事長は、民間で培った企業経営の手法を導入しながら、マネジメント改革、あるいは合理化といったものを進めていきたいということでございます。

ここに赤く、「マネジメント改革」、「情報の見える化」、「コミュニケーション強化」、「施設の更なる重点化」、これを課題解決の4本柱に位置づけてございます。このうち「マネジメント改革」と「施設の更なる重点化」について、少し詳しく述べさせていただきたいと思います。

P) これは、児玉理事長が4月に来られて以来、MVSと言っていますが、ミッション、ビジョン、ストラテジー、組織の使命をきっちりと認識し、将来像を描き、それに合った戦略を立てていくということでございます。ここに書いてございますのは機構全体としてのMVSでございますが、これを各部門にまで落とし込んでいって、それぞれの部門においてもMVSをしっかりと認識した上で、組織のストラテジーを立てて行動していくという方針でございます。

P) この戦略の部分につきましては、ここにBSCと書いてあります。バランスド・スコア・シートという経営評価の言葉になってございますが、こういったことを考えながら戦略を立てていかなければいけない。1つは組織・業務プロセスという観点、それから人、ヒューマンリソースという観点、それから財務や設備の視点、それから最もアウトプットとして重要なのは顧客の視点ということになろうと思いますが、この4つの視点をうまくバランスさせながら業務を進めていくということでございます。

P) もう一つ、施設集約化・重点化でございますが、我々は三位一体と言っていますが、施設の安全確保と集約化・重点化、それからいわゆる廃止措置のバックエンド対策、これを三位一体で進めていかなければいけないと考えてございます。

皆さん御存じの方が多いと思いますが、原子力研究開発機構は多くの事業所を抱え、その中にさまざまな原子力関係の施設を保有してございます。その中には非常に老朽化が進んだもの、あるいは今後新規制基準の対応が必要なものもございます。機構の予算は限られてございますので、これを拠点ごとというよりは機構全体でマネジメントして、これから使っていく施設、廃止措置をしていく施設、こういったものをきっちり戦略的に進めていこうということでございます。

例えば、既に廃止措置の方向性が出ております東海の再処理工場といったものも、早く廃止措置に向けてリスクの軽減なんかを図っていかなければいけない。あるいは、研究用の原子炉、今はとまったままでございますが、これも早く動かしていかなければいけない、あるいは動かしていくものと動かしていかないものをきっちりと分けていかなければいけない。我々はこれをトリアージと呼んでございますが、かなり思い切った改革が必要になるものと考えてございます。

P) その上で、現時点における機構の業務運営の重点施策、機構の業務の重点分野ということで5つ挙げさせていただいてございます。

1つは、福島の復興の支援でございます。福島に関しては、原子力界だけではなく、日本社会全体の大きな課題になってございます。機構の持っている原子力の総合的なポテンシャルを生かして福島の復興に貢献していく、これが特に最近重要なものでございます。

2つ目は、施設の安全な稼働というのがございました。先ほどの三位一体にもつながりますが、高経年化対策や新規制基準対応なんかをきっちりやって、試験研究炉を初めとする原子力施設を安全に稼働させていく。

真ん中にございますのが、原子力の課題の解決、いわゆる先端的な研究あるいは安全研究、さらには原子力の人材育成、これはエネルギー基本計画でも、原子力発電を20%程度ということでキープしていくためには、人材、基盤になる技術、こういったもののベースをきっちり原子力機構で確保していく必要があると考えてございます。

もんじゅについては、後ほど詳しく説明いたします。

それから、バックエンド対策。この中には、研究所等廃棄物といって、電力の放射性廃棄物ではなくて研究所から出てきたRIも含めた廃棄物の処分といったものも、日本全体の処分の役割を機構が果たすことになってございます。これをしっかりやっていかなければいけないということです。

P) 次はもんじゅについて説明させていただきます。

もんじゅにつきましては、皆さん御存じのように、11月13日に規制委員会から文部科学省に対して勧告が発せられてございます。JAEAとしては、こういう事態になったことを大変申しわけなく思っております。ただ、一方、今現在もんじゅを預かっているのは機構でございますし、今もんじゅが抱えている保守管理の問題は原子力機構自身が解決していかなければいけないということで、今、現場一丸となって保守管理問題の解決のための取り組みをしているところでございます。

P) 現状の課題と対応につきましては、11月2日に規制委員会と理事長との意見交換で理事長から発表させていただいた内容でございます。3.を特にごらんになっていただきたいのですが、根本的な課題の解決にオールジャパンの体制で取り組むということで、今、現場にメーカー・電力の人間が集結しつつあるところでございます。

また、1.のもともと問題になりました保全計画の見直しとか未点検機器の解消といったものは、来年春までに終了させるべく着実に作業が進んでいるところでございます。

P) これが全体のスケジュールになります。来年5月には、とりあえず今のオールジャパン体制によってもんじゅをきれいな状態にしたいという計画でございます。

P) 以下、少し駆け足になりますが、この1年の主な動きということで、幾つか紹介させていただきたいと思ってございます。この1年の研究成果で主なものとして、この後のプログラムで、ローレンシウムとか塩水で育つヨシなんかの話は別途説明がございますが―

P) そのほかの研究成果として、ここには2つ挙げさせていただいてございますが、医療用のテクネチウム、これは従来は原子炉で製造してございましたが、これを加速器で生成して、かつ医薬品の基準をクリアしたとか、あるいは、これは高崎のTIARAという放射線ビームの装置でございますが、そこで花を自在に品種改良していくという技術を実用化したということがございます。

P) また、福島におきましては、今年非常に大きな動きがございました。

先般、これは安倍総理にも参加いただきましたが、楢葉の遠隔技術開発センター、これは、福島の原子炉のモックアップをこの中に置いて、さまざまな解体のための技術開発をしようというものでございます。

それから、今後、デブリの取り出しも含めて東電の福島原発の廃止措置を進めていくためには、かなりブレークスルーが必要でございます。そのためには基礎基盤に返って研究開発を行う必要がございます。その中核として廃炉国際共同研究センターを春に設立いたしまして、先ほど副大臣からございましたが、富岡町で建設が始まったところでございます。

そのほか、福島環境創造センターということで、これは環境省と一緒にやっている事業でございますが、これもこの秋に開所式を迎えてございます。

P) 原子力科学研究においても、ここにありますようなウラン化合物による強磁場下での超伝導特性の解明とか、J-PARCにおきましても、より強度の高い中性子が発生できる技術が確立されてございます。

P) また、東海再処理施設でございますが、これもプルトニウム溶液を着実に処理していくという作業が進んでございますし、今後、ある意味で最も原子力の開発・利用にとって重要な高レベルの放射性廃棄物の処分技術の研究開発も幌延と瑞浪で着実に進んでございます。

P) また、核融合につきましては、ITERの建設が現地で始まってございますが、トロイダルコイルという大きなコイルを日本で製作して、幾つかのものがもうでき上がって、今後現地に運んでいくということでございます。

それから、青森と那珂研究所で行っているブローダーアプローチ、これはEUとの協力による事業でございますが、那珂研あるいは青森にヨーロッパからの機器が運び込まれて、着実に成果が上がりつつあるということでございます。

P) さらに、安全研究といたしまして、これはCIGMAという非常に大きな装置でございますが、シビアアクシデント時の炉内の気体の挙動を解明するための装置。

あるいは、高速炉においては、ここは後ほど詳しく説明がございますが、カザフスタンでの研究開発などが進んでございます。

P) 以上、駆け足になりましたが、最後にもう一度、機構の今後の方針を確認させていただきます。

今年、国立研究開発法人として新たなスタートを切りました。さらに、理事長を4月に民間から迎えまして、民間手法を導入した新たな取り組みということでマネジメント改革を行っております。

さらに、資源は限られてございますので、事業の重点化を施設の廃止措置なども含めて進めていくということでございます。

いずれにせよ、原子力機構が今後とも我が国唯一の総合的な原子力の研究開発機関あるいは専門機関として能力を発揮していくためには、こういった経営面の再生が必要だと考えてございます。それによって機構がこれからより社会に貢献できるように努力していきたいと思います。私も副理事長として児玉理事長を支えて、今機構が取り組んでいる課題の解決に向けて一歩二歩前進させていきたいと思ってございますので、皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。

御静聴ありがとうございました。