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研究者紹介

燃料デブリ溶出挙動評価に向けた

作業環境模擬中性子校正場における中性子線量計の応答評価

原子力科学研究所 放射線管理部 放射線計測技術課
西野 翔

原子炉施設や加速器施設などの中性子を扱う施設においては、作業者の被ばく管理を目的として中性子サーベイメータや個人線量計などが広く利用されています。これらの線量計は、通常252Cfや241Am-BeなどのRI中性子線源を用いて校正されますが、RI線源から直接放出される中性子は、数MeV付近に局在したエネルギー分布を示し、実際の作業場のエネルギー分布とは大きく異なる場合が大半です。中性子線量計の応答は、使用する場所の中性子エネルギー分布に大きく依存することから、252Cfや241Am-Beを用いて適切に校正を行っていた場合でも、実際の作業場においては、線量を過大または過小評価してしまうという問題が生じます。

この問題を解決するために考案されたものが、中性子源と減速材を組み合わせることにより実際の作業場の中性子エネルギー分布を模擬した「作業環境模擬中性子校正場」です。作業場に近いエネルギー分布をもつ校正場において線量計を校正することで、作業場においてより正確な線量指示値を得ることが可能となります。今日、作業環境模擬中性子校正場は、世界各国で、それぞれのニーズに基づき独自に開発・利用されています。しかしながら、これらの校正場における標準的な線量計校正方法の考え方は、ISO等の国際規格においても未整備であります。これを整備するためには、私たちが普段使用している中性子線量計が、様々なエネルギー分布をもつ中性子場でどのような応答を示すかについて、系統的に比較したデータを取得するがあります。

そこで私たちは、原子力科学研究所 放射線標準施設棟(FRS)及び核燃料サイクル工学研究所 計測機器校正施設(ICF)に整備された作業環境模擬中性子校正場(図1参照)を利用して、エネルギー分布が異なる種々の中性子場における線量計の応答特性を系統的に評価しました。使用した線量計は、検出器及び減速材の形状が異なる4種類の中性子サーベイメータであり、いずれも日本国内の原子力施設で広く使用されているものです。評価する量は1cm線量当量レスポンス(以下、H*(10)レスポンス)とし、線量計指示値を校正場の基準線量当量率で除した値として定義されます。

図2は、各校正場で得られたH*(10)レスポンスと、場のフルエンス平均エネルギーの関係を示したものです。図中 (A)に示した1 MeV以上のエネルギー領域で中性子が支配的な校正場においては、H*(10)レスポンスの値は1.0±0.3の範囲にほぼ収まり、中性子エネルギー分布の形状に大きく依存しない結果となりました。一方で、図中(B)に示した1 MeV以下の領域にのみエネルギー分布をもつ校正場においては、サーベイメータの種類によって応答の傾向が大きく異なり、2倍以上の過大または0.3倍以下の過小評価をするものもありました。これは、中性子サーベイメータが1~数MeVのエネルギー領域で適切な指示値を与えるよう調整されており、1MeV以下の領域においては相対的にエネルギー応答特性が悪くなることが原因と考えられます。以上のことから、1MeV以下の中性子が支配的となる作業場(例えば、厚い鋼鉄で遮蔽された燃料/デブリの輸送キャスク周辺や、加速器を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の場など)で使用する中性子線量計については、適切な作業環境模擬校正場において校正されることが強く望まれると言えます。今後は、中性子個人線量計へ、同様の研究を展開するとともに、作業環境模擬中性子校正場における線量計校正法の標準化に向けた議論を進めていきたいと考えています。

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