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研究者紹介

新規配位高分子による放射性セシウム有効利用のための分離・回収法開発

原子力科学研究所 バックエンド技術部 放射性廃棄物管理第1課
南川 卓也

皆さんは、放射性物質が有害であることはよくご存知かと思います。しかし、福島第一原子力発電所事故で有名になった放射性セシウムも、実は年間数億円という単位で海外から輸入されている有用元素であることはご存知でしょうか?放射性元素は、環境や人体への悪影響などの有害な一面と、扱い方によっては工業や医療等に有用なもう一面を同時に持っています。

私の主な仕事は、放射性廃棄物処理の現場管理であり、放射性廃棄物は有効利用の可能性も見極めて廃棄物量を減らしながら、安全な処理処分法を見出すことが必要と日々感じています。私は放射性セシウムの処理が問題となっている今こそ、有効利用の可能性を同時に模索するべきと考え、この概念を導入した新たな研究を行うべく機構内競争的研究資金制度に応募しました。

私の研究では、まず安価に放射性セシウムを放射性廃棄物から取り出す必要があります。これには、既に除染活動などで利用されているゼオライトなどのセシウム分離材料があります。これらは高秩序な細孔をもつため、セシウムのイオンサイズを正確に認識しセシウムを取り込むことができます。しかし、取り込んだセシウムの回収が困難で、天然素材のため細孔のサイズ制御などの改良が不可能であり、セシウムを分離して有効利用する研究が困難でした。

そこで私は配位高分子(metal-organic framework : MOF)という、安価に高秩序な細孔をサイズ制御して合成できる新しい物質に着目し、当資金制度で購入した反応容器、自動滴定装置やイオン選択性電極等を用いて、実際に図-1に示すMOF、(NH4)[Eu(C2O4)2(H2O)] を合成するとともに、セシウム取り込み及び回収反応を解析し、放射性セシウムを有効利用のために、廃液から回収する手法を検討しました。

まず、セシウム取り込み反応を明らかにするため、酸塩基によりMOFを滴定し、反応性を調べました。この結果より、MOF へのCs+イオン取り込み反応はイオン選択性を持ち、以下の反応であることを明らかにしました。

また反応が作用するpH範囲はpH 7~9程度であることを明らかにし、Cs+イオンを取り込んだCs[Eu(C2O4)2(H2O)] (図-1参照)の構造解析に成功しました。


図-1 (NH4)[Eu(C2O4)2(H2O)]及びCs [Eu(C2O4)2(H2O)]の構造

セシウム回収についても同様に調査し、以下の反応を明らかにしました。


以上の結果から、pH 79の範囲では、MOF へのセシウム選択的な取り込み反応が起こり、取り込んだセシウムはpH 45程度の酸性にすればセシウムを完全に回収できることが示され、本研究により放射性セシウムを取り出し、有効利用を可能にする、新たな材料を見出すことに成功しました。(図-2参照)。


図-2 セシウムの分離回収反応とMOF の構造変化

今後は実廃液への利用を考慮し、より良い材料や利用条件の選定を行います。これらの結果はリバプール大学のM.J. Rosseinsky教授の目に留まり、彼の協力で、現在は私自身がイギリスに留学しながら、イギリス企業・政府との連携や資金援助を視野に入れ、世界の様々な専門家と議論をして、新たな実用的廃棄物処理法の開発に取り組んでいます。

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