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■■■□□□ JAEAメールマガジン
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++---- No.99 目次 ----++

現場から ____ 超重元素の化学的研究−先端基礎研究センター

海外事務所便り_ 「オバマ大統領がMagwood氏らをNRC 委員に指名」ほか

広報紙から___  原子力体験セミナーを開催−「夏海湖の四季」(第51号)

プレス発表、お知らせ、採用情報、調達情報

あとがき

━ 現場から ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

超重元素の化学的研究−「最も重い元素」の性質を原子1個レベルで解明する

「元素はいったいどこまで存在するか」そして「メンデレーエフの示した周期律はどんなに重い元素にもあてはまるのか」という疑問の答えを求めて、現在も多くの研究者が超重元素の研究を行っています。

超重元素とは、元素の周期表の下限に位置する最も重い元素のグループで、これまでに118番元素までを合成したとの報告があり、IUPAC(国際純正応用化学連合)およびIUPAP(同物理連合)の合同作業委員会は、112番元素までの発見を認めています。2009年7月には112番元素の発見グループが、地動説を唱えたコペルニクスにちなんでCopernicium(Cp)という名称を提案しているので、近いうちに正式な名称が決まるでしょう。

さて、この超重元素の化学的性質に関しては、気相中や溶液中での断片的なデータが報告されているだけで、ほとんど理解されていないというのが現状です。その理由は、(1)合成には放射性のアクチノイドターゲットが利用できる重イオン加速器が必要なため、原子力機構や米国・ロシア・ドイツなど数カ所の限られた加速器施設でしか実施できないことに加えて、(2)合成される超重元素の寿命が100秒以下と短いうえに生成量が極端に少ないため、「原子1個」を化学的に取り扱う、特殊な実験手法の開発が必要だからです。

私たちは、この超重元素の化学的性質を、周期表上での位置づけとともに理解できるように、茨城県にある東海研究開発センター原子力科学研究所タンデム加速器を利用し、研究を行っています。最初に研究対象としたのは、1分間に数個の原子しか合成できないうえに、半減期78秒でα線を放出して崩壊する104番元素ラザホージウム(Rf)です。このRfを扱うために、数マイクロリットルのイオン交換樹脂に数百マイクロリットルの水溶液を流すという極端に小さな化学分離システムを作製し、1分以内に化学分析からα線測定までを自動で行うことのできる実験手法を確立しました。これによって、統計的な精度を満たすための何千回という繰り返し実験を、数日間にわたって安定して行うことができるようになり、超重元素の化学的研究ではこれまでできなかった様々な水溶液条件におけるRfの系統的な研究を初めて可能にしたのです。この結果、Rfのフッ化物錯体の水溶液中での化学状態を初めて明らかにし、更に、理論計算では周期表上の同族元素と同程度であろうと予測されていたRfのフッ化物錯体の形成が、同族元素と比べて著しく弱いという性質を初めて見出しました。

現在は、更なる実験手法の改良によって、Rfより生成量が1/10と少なく寿命も半分程度である105番元素ドブニウム(Db)を対象に、「Rfで見られた同族元素との違いが、他の超重元素でも現れるか」という点にも注目して、研究を進めています。そして最近、Dbのフッ化物錯体が同族元素間でもタンタルよりニオブに近い挙動を示すという新たな結果を得ることに成功しています。今後はこの化学挙動の違いが溶存状態とどのような関係にあるかについて、溶液の条件を変えた系統的研究を行うことで理解を深めていく予定です。更に、この実験手法を溶液化学的な研究がほとんど進んでいない106番元素シーボーギウムにも応用し、世界に先駆けた研究を進めていきたいと考えています。

(先端基礎研究センター 超重元素核化学研究グループ 塚田和明)

━ 海外事務所便り ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*当機構の海外事務所から寄せられたニュースを紹介します。

☆ ワシントン事務所
<NRCがAP1000の問題点をWestinghouse社に指摘>
 米国原子力規制委員会NRCは10月15日、Westinghouse社に対し、AP1000のシールド建屋が設計上の負荷において十分な安全性を示していないとし、安全機能を満足することを示す試験を行った上で設計変更を行うよう求める書簡を送ったと発表した。
 http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/news/2009/09-173.html

<オバマ大統領がMagwood 元DOE 原子力局長らをNRC 委員に指名>
 オバマ大統領は10月9日、William Magwood 元DOE 原子力局長とGeorge ApostolakisMIT 教授をNRC 委員に指名すると発表した。本指名により、NRC 委員の欠員状況が解消される。また、委員会の構成は、民主党系委員3 名(Jaczko 委員長、Magwood、Apostolakis)と共和党系委員2 名(Klein 委員、Svinicki 委員)となる。
 http://www.whitehouse.gov/the_press_office/President-Obama-Announces-More-Key-Administration-Posts-10/9/09/

<NRC が格納容器のひび割れ調査に検査チームを派遣>
 NRC は10月9日、Crystal River 原子力発電所(PWR、838MWe、Babcock & Wilcox 社製、1977 年運転開始)で10/5 に発見された格納容器のひび割れを調査するため、検査チームを派遣すると発表した。
 http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/news/2009/09-055.ii.html

<イタリアと原子力開発に関する協定に署名>
 米国とイタリアは9 月29 日、「原子力分野での産業・商業協力に関する共同声明」と「民生用原子力の研究開発分野での二国間協力協定」に署名をした。
 http://www.energy.gov/news2009/8086.htm

☆ パリ事務所
<CEAカダラッシュでプルトニウム量を過小評価>
 フランス原子力安全委員会ASNは、カダラッシュにあるフランス原子力庁CEAの解体中の施設で、CEAがプロトニウム量を過小に評価し、またその事実を3カ月間、ASNに報告していなかったことを公表した。ASNは、この件に関して、国際評価尺度INES評価で「2」の評価を行った。

☆ ウィーン事務所
<IAEA/IRRS による英国規制当局に対するピアレビューが終了>
 IAEA は10月13日、英国規制当局である保健安全執行部(HSE)原子力課に対し、10 日間にわたって行ったIRRS(総合的規制評価サービス)ピアレビューが終了したと発表した。
 http://www.iaea.org/NewsCenter/PressReleases/2009/prn200911.html

━ 広報紙から ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*当機構が社外向けに発行している広報紙などからトピックスを紹介します。

━ プレス発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ お知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ 採用情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*上記の詳細はhttp://www.jaea.go.jp/saiyou/index.htmlをご覧下さい。

━ 調達情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ あとがき ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今月19日から、医療従事者に対する新型インフルエンザ用ワクチンの接種が始まりました。当機構においても、春先から新型インフルエンザへの対応が図られてきましたが、本格的なインフルエンザシーズンに備えて、うがいや手洗い、マスクの着用などの感染防止対策の励行が改めて呼びかけられています。

ところで、今年の夏にオーストラリアに渡航した知人の話によると、オーストラリアではマスクは感染者が着用するもので、予防のために着用するという習慣がないそうです。オーストラリアに行ってから数日後、知人はマスクを着用して近くのスーパーでピーマンを買って支払いをしようとしたところ、レジ担当の人がうつされては困るとさっと身を引いてしまったそうです。知人は、自分は感染者ではない、あくまでも予防のためにマスクを着用しているのだと英語で説明しようとしたそうですが、残念ながらそれをうまく説明できるほどの語学力はありませんでした。結局、レジ担当の人がお金はいいから早く帰ってくれと身振りで示すので、お金を払わずにピーマンを持ち帰ったとのことです。

知人の例では、マスク着用に対する誤解が着用者にとってハッピーエンドとなったケースかも知れませんが、誤解は生じないに越したことはありません。そこで、外国語で、たとえば、“インフルエンザ予防のためにマスク着用を!”等のキャッチフレーズを印刷したマスクが発売されないものかと秘かに期待しているところです。もっとも外国では、公共の場でマスクをする習慣がほとんどないので、国内ではもちろん、外国でも売れないかも知れませんね。(広報部 板橋靖)

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【発行】独立行政法人 日本原子力研究開発機構 広報部  佐田務、上野信行 JAEAロゴ ○

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