━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2009.9.18 ━━━━━━━━

■■■□□□ JAEAメールマガジン
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++---- No.95 目次 ----++

現場から ____ JCO臨界事故から十年を迎えて−原子力緊急時支援・研修センター

海外事務所便り_ 「ドイツ連邦議会選挙と各党の原子力政策」ほか

広報紙から___ イタリアの原子力ルネサンスが始動−原子力海外ニューストピックス(2009年第4号)

プレス発表、お知らせ、採用情報、調達情報

あとがき

━ 現場から ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

JCO臨界事故から十年を迎えて−原子力緊急時支援・研修センター

今年は、JCO臨界事故から10年目を迎え、国、茨城県、東海村など、この十年間を振り返り、再発防止の心をあらたにする取り組みが行われています。関連するシンポジウムなどとして、茨城県(9月26日)、経済産業省原子力安全・保安院(9月30日)、東海村(11月7日)等の行事が開催予定となっています。

JCO臨界事故を振り返ってみますと、事故では二人の方が亡くなられ、また、住民が避難を余儀なくされるなど、原子力の事故として、きわめて重大な事故でありました。

事故の直接原因は、安全規制に違反した装置と運転操作(ステンレス容器、沈殿槽の使用等)により、臨界量以上のウランを入れたことですが、JCO事故の反省点は、大きく言うと以下の三点に集約されるとしています。

1.事故発生原因に関する点としては、安全規制の遵守、運転員への教育が十分でなかったこと、規制当局の検査により発見できなかったこと。

2.事故後の災害対応について、情報不足、連絡・情報共有化の遅れ等により、初動対応、住民対応等がスムーズに実施できなかった点。

3.緊急被ばく医療について、原子力防災に係る医療についての国内体制の改善強化の課題。

これに対する対策として実施されてきた点を以下にまとめます。

1.加工施設へも定期検査の実施を拡大する等規制法の改正、行政庁の規制活動をチェックする等の規制の強化、原子力産業界全体で原子力の安全文化の共有化・向上を図るための「NSネット」設置等が行われた。

2.原子力災害対策特別措置法の制定、地域防災計画の制定、オフサイトセンター、原子力緊急時支援・研修センターの設置、消防、警察、防衛関係者の対応の規定化、原子力総合防災訓練の実施等の災害対応強化が行われた。

3.緊急被ばく医療機関の特定と搬送手段の確認など緊急時医療体制の整備が行われた。

このように、事故原因に対する対応、防災に関する対応、緊急時医療に対する対応の三つの要素について一定の改善策が図られています。

事故から十年目の段階であらためて、事故発生の根本的背景について考えると、事業者をはじめとして、「安全を最優先する」という考え方の欠如、「安全文化」の重要性に対する認識の甘さ、効率を優先してしまう判断の間違いについて再度思い起こさせられると思います。

これらすべてに関わるのは人であり、「安全を最優先する」という考え方、「安全文化」は、法律、組織、体制、の如何にかかわらず最も重要です。原子力に携わる各人が改めて「安全文化」の重要性を再認識する必要があるのではないでしょうか。現状に甘んずることなく、常に「安全文化」への取り組みを日々改善していくことが肝要であると考えています。

(原子力緊急時支援・研修センター長 金盛 正至)

━ 海外事務所便り ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*当機構の海外事務所から寄せられたニュースを紹介します。

☆ パリ事務所
<ドイツ連邦議会選挙と各党の原子力政策>
 ドイツでは4年に1度の連邦議会選挙が9月27日に行われる。ここでは、ドイツの主要政党の原子力政策について紹介する。

・キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)
 原子力はバランスのとれたエネルギーミックスとして当面欠かせない柱である。気候に優しく安価な代替電源を十分な余裕をもって活用できない現状においては、原子力発電を次世代電源までの橋渡し技術として、安全を確保した上でドイツの原子力発電所の運転期間延長を推進する。ただし、原子力発電所の新規建設は行わない。

・自由民主党(FDP)
 脱原子力政策は、現時点では経済面及び環境面から誤りである。再生可能エネルギーがベースロード電源を十分賄える電力を生産でき、石炭火力発電所向けの二酸化炭素回収貯留(CCS)技術を商業規模で活用できるようになるまで、過渡的な技術として原子力発電は必要である。このため、安全を確保しつつ原子力発電所の運転期間は延長する必要がある。

・社会民主党(SPD)
 原子力利用には大きなリスクが潜んでおり、放射性廃棄物の最終処分問題は今日に至るまで解決されていない。原子力法の定める脱原子力政策を貫徹し、2021 年までに原子力利用を廃止する。それまでは全ての原子力発電所で、可能な限り高水準の安全基準を運用するとともに、絶えざるバックフィットを義務付ける。原子炉の運転延長は、新技術に対する必要な投資を遅らせる結果となる。

・緑の党
 原子力法に基づき、次の政権任期中に最大7基の原子炉を閉鎖する。老朽化し、とりわけリスクの高いものは閉鎖を前倒しにする。テロ攻撃の危険があることから、それ以外の原子炉も可能な限り速やかに閉鎖しなければならない。運転期間延長の余地は全く存在しない。

☆ ウィーン事務所
<IAEA、2030年までの世界の原子力発電見通しを発表>
 IAEAは9月8日、2030年までの世界のエネルギー、電力需要や原子力発電設備容量などを推計した「Energy, Electricity and Nuclear Power Estimates for the Period up to 2030(2009Edition)」を公表した。この報告は毎年取りまとめられているもので、今年発表された報告によれば、2030年の世界の原子力発電設備容量見通しは370GWe(低ケース)〜810GWe(高ケース)で、昨年の予測を8%上回っており、高ケースの場合は、現行(2009年)370GWeの2倍以上になると評価している。
 増加が最も多く見込まれる地域は極東(中国、日本、韓国を含む)で、北米及び東南アジア・太平洋地域はやや減少、その他地域は概して微増傾向にある。また、例外的に、インド、パキスタンを含む中東・南アジア地域における高ケース成長が昨年予測よりも15GWe上昇していることが挙げられる。
 http://www.iaea.org/NewsCenter/News/2009/npprojections.html
 http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/RDS1-29_web.pdf

<第53回IAEA総会が開幕>
 第53回IAEA総会が9月14日(月)〜9月18日(金)、オーストリアウィーンのIAEA本部で開催された。初日のセッションでは、エルバラダイ事務局長の演説に引続き、日本の天野之弥前ウィーン代表部大使が次期事務局長として正式に承認された。
 天野大使は宣誓に引続いて、受諾スピーチを行い、現在、世界は核拡散や核テロのリスク拡大、温室効果ガス放出増加への懸念と同時にエネルギー需要の増大などの中にあり、IAEAはこうしたグローバルな課題に対して原子力技術を活用して取り組む能力と責任を有していると述べるとともに、こうした貢献は、IAEAが核不拡散と原子力の平和利用をバランスよく推進することができたときに最大限発揮されると語った。
 また、IAEA及び一部加盟国等(日本、アルゼンチン、インドネシア、韓国、ルーマニア、ロシア、南ア、スウェーデン、米国、WINS, WNU 等)から展示コーナーが設置された。日本からは原子力機構、日本原子力産業協会、放射線医学総合研究所が共同で出展し、JAEAはもんじゅ、核融合、J-PARCについて紹介しました。

☆ ワシントン事務所
<DOE国家核安全保障庁が下院小委員会でMo99製造推進を証言>
 下院エネルギー環境小委員会は9月9日、医療用放射性同位元素不足を解消するための法案「American Medical Isotope Production Act of 2009」に関する公聴会を開催し、この中でDOE国家核安全保障庁(NNSA)のStaples部長は「Global Threat Reduction Initiative」のもと、高濃縮ウランを使用しないMo99製造技術を確立することを推進していくと証言した。NNSAは、すでに将来Mo99を製造する企業と協力契約を結び技術開発を行っており、2013年末までに米国内需要を賄うことを目指している。なおNNSAは、年間3000万ドルを本技術開発に費やす意向であるとしている。
 http://nnsa.energy.gov/2518.htm

━ 広報紙から ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*当機構が社外向けに発行している広報紙などからトピックスを紹介します。

イタリアの原子力ルネサンスが始動−原子力海外ニューストピックス(2009年第4号)

<20年ぶりに原子力復活の兆し>
 イタリアでは、1986年4月に起きたチェルノブイリ原子力発電所4号機の事故後、原子力開発の是非を問う国民投票が1987年11月に行われ、原子力開発の推進に関する法律の廃止が決まった。これによって、当時運転中の3基の原子炉が停止し、ほとんど完成しかけていた2基の1000MWのBWRは建設中止となった。また、核燃料サイクル施設も廃止となった。
 原子力の廃止から20年以上がたち、地球の気候変動対策の一環及びエネルギー安全保障の向上のため原子力発電を復活させて、電力の輸入化石燃料への依存度を引き下げることを選挙公約としたベルルスコーニ率いる中道右派が2008年4月の選挙で勝利。原子力復興のための法案が上院では2009年5月に、また下院では7月に可決され、イタリアの原子力ルネサンスが始まった。

<2030年までに電力の25%を原子力で>
 2007年の国内の発電量は3140億kWh(グロス)、輸入発電量は450億kWh(ネット)で、電力需要の約14%を輸入に頼っている。電力輸入量は世界一で、輸入量のほとんどはフランスの原子力発電所で発電されたものである。またイタリアの電力料金は、世界の主要国の中でも非常に高く、家庭用は日本の約1.6倍、産業用では約2倍となっている。なおイタリア政府は、2013年までに最初の原子炉を建設し、2030年までには8〜10基の原子炉を建設して電力供給量の25%を原子力発電で賄う計画だ。また成立した法律は、原子炉の安全基準、放射性廃棄物の貯蔵に関する規則、建設サイトの選定、建設立地自治体への補償に関する規則など、原子力発電所の建設に関連する規則等を6カ月以内に構築することを明記。現在、原子力施設の廃止に関する規制を担当している環境保護庁とは別に、原子炉の安全規制を担当する原子炉規制庁を新たに設置することになっている。

<課題は建設資金と建設サイトの確保>
 とはいえ、世界的な共通の問題である建設資金の確保と建設サイトの確保の問題が、ベルルスコーニ政権の前に立ちはだかっている。2008年7月に行われた世論調査では賛成が54%、反対が36%と賛成が過半数を占めているがNIMBYは世界共通の現象であり、あるエネルギーの専門家は人口密度が高いイタリアで新規原子炉と放射性廃棄物の建設サイトを見つけることは極めて困難だと述べている。

*詳細は、原子力海外ニューストピックス(2009年第4号)をご覧ください。http://www.jaea.go.jp/03/senryaku/topics/t09-4.pdf

━ プレス発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ お知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ 採用情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*上記の詳細はhttp://www.jaea.go.jp/saiyou/index.htmlをご覧下さい。

━ 調達情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

一般競争(指名競争)参加資格の定期審査は、随時受け付けています。
 http://www.jaea.go.jp/02/format/index.html

入札情報などは、下記をご覧下さい。
 http://www.jaea.go.jp/02/compe/02.html

━ あとがき ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

秋の虫のひとつであるバッタ。このバッタが過密な状態で育つと、群生相と呼ばれるこの特殊な形態のものが発生することがあります。

この群生相のバッタは、跳躍に使われる後ろ足が短く、飛ぶための羽根が長いのが特徴です。羽根が長いのは、過度な密集を避けて、遠くへ飛び立つことを宿命づけられたためなのでしょう。

飛蝗(ひこう)とも呼ばれるこの群生相のバッタは、中央アジアやアフリカで大発生し、ときとして農作物に大きな被害をもたらすことがあります。

私たち人間も、この地上ではどうやら、過密状態を迎えつつあるようです。温暖化は、それを予感させるエピソードのひとつのような気がします。それを英知で乗り切ることができなければ、群生相のような適応を迫られる可能性もありえます。私たちは、「今」を静かに試されているのかもしれません。(さ)

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【発行】独立行政法人 日本原子力研究開発機構 広報部  佐田務、上野信行 JAEAロゴ ○

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