独立行政法人日本原子力研究開発機構：JAEAメールマガジン　No.231

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「ふげん」実機材を活用した高経年化調査研究

発電用原子炉の運転期間については、40年という制限を設けることとなる一方、経年劣化の評価と技術能力の審査をパスした場合、例外的に60年までの延長が認められる状況にあります。我が国の発電用原子炉の3分の1は運転を開始してからすでに30年以上を経過しています。原子炉の機器や材料は長期間使用されると、放射線による照射損傷や熱時効（高温下で金属の材料特性が時間経過とともに変化すること）、腐食などに起因する構造材の経年劣化が顕在することが予想されます。そこで、プラント経年劣化状況を調べ、その程度が継続運転に影響を与えるかどうかを予測評価し、必要に応じて補修・取替えを行う事により、発電所の信頼性・安全性を確保して運転ができるよう高経年化対策が行われています。この対策を実施するために、加速劣化試験などにより得られた知見から長期間使用された場合の脆化の程度を予測するモデル（脆化予測式など）が開発されています。より一層の信頼性向上を図るためには、実際にプラントで使用された実機材の材料劣化挙動に関する知見を得て、開発された脆化予測モデルの妥当性を確認することは重要な課題です。

　現在、原子力機構にて約25年の運転を終えて廃止措置が進められている新型転換原型炉「ふげん」には、長期間使用されていた原子炉冷却系統を構成する材料や、電力・信号伝送ケーブル類等があり、これらは軽水炉の高経年化研究にとって非常に貴重な材料です。我々のグループでは原子炉廃止措置研究開発センターと連携を図り、これら「ふげん」の実機材を活用した高経年化調査研究を、原子力安全基盤機構からの受託研究として進めています。また、「ふげん」にはナノスケールレベルの微細組織分析が可能な先端機器を備えた高経年化分析室が関西電力と共同で整備されており、これら分析機器を用いた材料劣化に関する機構論的な研究に取り組んでいます。本研究では、これまでに「保全技術等有効性確認試験」として配管減肉や熱時効および応力腐食割れ等による材料の劣化状況を詳細に調査し、これらの材料劣化事象に対して、高経年化に対応した対策技術や予測評価法の妥当性を検証する研究を進めています。

　本研究は廃炉材料から得られる知見を高経年化研究へと活用する先駆け的な研究であり、引き続き、劣化対策技術の検証と安全規制に適用する手法や判定基準の策定に役立つ研究を推進することにより、原子炉の安全性の一層の向上に応えていきたいと考えています。

（安全研究センター　高経年化評価・保全技術研究グループ）