■■■   JAEAメールマガジン   ■■■

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2012.2.10/No.211 ━━━

〔現場から〕「冬の除染」(福島技術本部)

〔東日本大震災発生に伴う対応状況〕

〔お知らせ、採用情報、調達情報〕

= 現場から ==========================

冬の除染

内閣府の受託事業である福島県内12市町村21サイトにおける除染のモデル実証が進行中である。生まれ育った土地に少しでも早く帰り、元の生活を取り戻したいと思う人々がいる限り、何としてでも線量率を下げたい、そのためにはどこをどのように除染すればよいのか、福島の現場では毎日毎日苦闘の連続である。
  春に開始が予定されている本格的・大規模な除染に対し、さまざまな除染方法の適用性、必要となる期間・人員・コスト、作業員の安全確保、住民とのコミュニケーションなど、あらゆるデータ・経験を知見として提供することが本モデル実証事業の目的である。
  冬を迎え、福島県の、とくに中通りと会津地方は雪に見舞われる。モデル実証が進行中の川内村ノ貝の坂サイトの積雪は1月30日に45cmに達した。また、飯舘村の除去物を一時保管するクリアセンターでは一日の最低気温は優に-10℃を下回る。飯舘村の隣の川俣町は田に水張りをすれば翌朝天然のスケートリンクができることで有名だし、豆腐を凍らせた凍み豆腐も知られている。
  雪が積もれば除染に入る前に除雪をする必要がある。その分作業が遅れる。降雪はあらかじめ予想できるから遅れは織り込み済みである。しかし予想していなかった雪による放射線の遮へい効果が生じた。先週雪が積もった地域の人々から線量率が下がったとの報告が相次いだ。それは雪による遮へいの影響であって雪が融ければ線量率は元に戻る、線量率を下げるためには除染をしなければいけないとの機構の専門家による発言がテレビニュースで取り上げられた。このニュースを受け、専門家もそう言っていると、インタビューに来たテレビ局もある。
  雪によって遮へいされてしまうので正確な線量率測定ができない。そこで、雪の密度や積雪量のデータから遮へい分を推定する、そんな推定ができないかと思っていたら、なんと20年前の1991年に、原子力機構の前身の研究機関の研究者が発表した論文があることがわかった。そこに示された減衰率のデータを用いて、積雪の状態でも線量率をある程度信頼性をもって推定できる。
  プールの除染は当然ながら不可能である。水が凍ってしまう。そのような厳寒期にプ−ル除染などしなくてもよいのにと思われるだろう。しかし現地には現地の事情がある。学校プールの排水は、市街地ならば下水処理場に向かうが、農村の学校では農業用水路に入るのである。秋に稲刈りを済ませ、その後一切の農作業が終了するまでは、排水が用水路に入ることは避けたい。一方春になれば農作業がまた始まり、そこへ排水するわけにはいかない。だから真冬である。プール除染は分厚い氷を割る作業から始まる。
  家屋の屋根の瓦と瓦の間に水が残ると凍って膨張し瓦をずらす。だから屋根の洗浄で水を下方から上方に向けてはいけないのである。
  土がカチカチに凍る。家屋の庭の土を剥ごうとしてツルハシを持ち出すことになるが、歯が立たない。凍れば土が固まるから剥ぎやすくなるだろう、発塵もない、だから凍結除染はどうかとの提案もあった。しかし、セシウムが浸透している表面2, 3cmがうまい具合に凍結してくれればよいが、気温が-10℃以下にも下がる日々が続けば土の凍結深度は50cm, 60cmに及ぶ。そんな厚さの土を剥げば、発生する廃棄物は大変な量になる。根が深すぎて結局Csを吸い上げてくれなかった夏のひまわりと似て、自然に任せる除染はよほど条件がうまく合わないとうまくいかない。
  うかつだったのが線量計の作動温度である。NaIシンチレーションカウンターの保証作動温度は0〜40℃である。氷点下で表示板に示される値はどの程度真の値からずれているのか。これはきちんと押さえておかなくてはならない。
  その他にも、除染の技術実証公募で採択した試験が各地で行われている。その中には高圧洗浄装置を使った実証実験があった。この実験では、配管を組んだはいいものの、水が凍って、目当ての土壌洗浄処理ができない。それさえ克服しての実証試験だろ、と現場ではっぱをかけているところだ。

(福島技術本部 福島環境安全センター 中山 真一)

= 東日本大震災発生に伴う対応状況 ===============

福島事故による放射性物質の環境放出と拡散プロセスをテーマに公開ワークショップ

原子力機構では3月6日、都内で「福島第一原子力発電所事故による環境放出と拡散プロセスの再構築」をテーマにしたワークショップを公開で開催します。募集は締め切りました。
  http://nsed.jaea.go.jp/ers/environment/envs/FukushimaWS/index.htm

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図書館の福島原発事故参考情報に、研究成果リストを追加

JAEA図書館の福島原発事故参考情報に、原子力機構の研究成果リストを追加しました。また関連文献リストに、「損傷燃料の取り出し」に関する文献情報を追加しました。
  http://jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/ird/index.html

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原子力機構では福島県内で除染モデル実証事業を実施しています。

警戒区域や計画的避難区域などにある12市町村で、除染の効果的な実施のために必要となる技術の実証試験を行っています。
  http://www.jaea.go.jp/fukushima/pdf/kankyoanzen-20120123.pdf

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原子力機構が内閣府の委託を受けて実施している除染技術実証試験の概要を紹介します。

http://www.jaea.go.jp/fukushima/pdf/kankyoanzen-20120120.pdf

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福島第一原子力発電所事故への対応を行っています。

原子力機構は福島第一原子力発電所事故に関して、さまざまな活動を行っています。その全般的な内容については下記をご覧ください。
  http://www.jaea.go.jp/jishin/gaiyou2012/0209.pdf

= お知らせ ==========================

東濃地科学センターは2月12日に瑞浪市でセミナーを開催します。

http://www.jaea.go.jp/04/tono/topics/topics1201_1/index.html

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瑞浪超深地層研究所では2月25日に見学会を開催します。

http://www.jaea.go.jp/04/tono/kengaku/kengaku_miu2.html

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平成24年度核融合研究施設を利用する共同研究を募集します。

http://www.naka.jaea.go.jp/

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週報(2月4日〜10日)

http://www.jaea.go.jp/02/press2011/p12021001/index.html
  http://www.jaea.go.jp/04/turuga/jturuga/press/2012/02/w120210.html
  http://www.jaea.go.jp/04/ztokai/repro/week/s120210/weekly.htm
  http://www.jaea.go.jp/04/tono/syuho/240204_240210.pdf

= 採用情報 ==========================

詳細は http://www.jaea.go.jp/saiyou/index.html をご覧下さい。

= 調達情報 ==========================

詳細は http://www.jaea.go.jp/02/2_6.shtml をご覧下さい。

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【配信希望、アドレス変更、配信停止】 http://www.jaea.go.jp/14/14_0.html

【ご感想やご要望】 http://www.jaea.go.jp/13/13_1form.shtml

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【発行】 独立行政法人 日本原子力研究開発機構  広報部   佐田務、岡田学

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