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■■■□□□ JAEAメールマガジン
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++---- No.134 目次 ----++

現場から ____ 太陽系の起源と進化を紐解く宇宙より降りし「塵(ちり)」たち(量子ビーム応用研究部門)

海外事務所便り _ IAEA、途上国の原子力開発支援を議論 ほか

広報紙から ___ ドイツの州議会選挙結果のメルケル政権の原子力政策への影響(原子力海外ニューストピックス2010年第3号)、「ゆめ地創館 GWイベント」を開催(「幌延深地層研究センター報」第2号)

プレス発表、お知らせ、採用情報、調達情報

あとがき

━ 現場から ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

太陽系の起源と進化を紐解く宇宙より降りし「塵(ちり)」たち−量子ビーム応用研究部門

2010年6月13日夜、日本の宇宙探査は大きな一歩を記しました。小惑星探査機「はやぶさ」が数々の危機を乗り越えて地球に帰還したのです。60億キロもの行程を旅して小天体イトカワから試料を持ち帰るお使いを終えての帰還ですから、本当に感慨深いものがあります。

さて、小惑星から持ち帰られる試料は、言うまでもなく極微量です。しかし、最新の分析技術は、たとえ試料が100万分の1グラムしかなかったとしても、そこから多くの情報を引き出すことができます。極微小試料の研究を長年続けている私たち「宇宙塵屋(うちゅうじんや)」は、そうした分析技術を先鋭化させたプロ集団です。宇宙から地球に降ってくるたった一つの目に見えない塵から、元素組成、化学組成、鉱物組成、同位体組成などを明らかにすることができるのです。たとえば、宇宙の塵一粒に含まれるキセノンは、10京分の1グラム(10-17g)ほどです。1マイクログラムの塵の中に10億分の1パーセント含まれているということです。このような気の遠くなるほど微量な元素を検出し、宇宙の謎を明らかにしようとしています。

最近の私たちの研究では、南極で回収された宇宙の塵のうち、大気圏突入時の加熱によって融けて球状になったもの(スフェルール)一粒ずつについて元素分析と希ガス分析を行いました。直径70ミクロンほどの塵の表面を磨いて内部を露出させ、内部構造を観察して元素分析を行った後、一粒ずつの希ガス分析を行いました。ほとんど職人芸です。スフェルールは加熱の影響によって希ガスの大部分が抜けてしまっているため、分析の難易度は極限的に高くなります。こうした史上最高難易度の分析によって、私たちはとても興味深い塵を発見しました。異常に長い「年代」を持つ塵です。希ガス同位体を分析することで、塵がどのくらい宇宙空間に存在していたのかを見積もることができ、これを宇宙線照射年代と言います。宇宙の塵は通常数百万年程度の年代を持っていますが、4億年近い値を示すものを発見したのです。桁違いに長い年代を示す理由として、二つの仮説が考えられました。一つは、太陽から最も遠い惑星である海王星よりもさらに遠くにあるカイパーベルト天体から飛来したものではないかという説。もう一つは小惑星の表面に長期間存在した塵であるという説です。もしこの塵がカイパーベルト天体から飛来したものであるならば、人類が手にした最も遠い天体の試料ということになります。また、小惑星表面のものであれば、はやぶさが持ち帰った試料との対比によって、小惑星表面の進化に関する重要な情報を持った試料であるということになります。いずれにしても、塵一粒が持つ学術的重要性は計り知れないのです。

(量子ビーム応用研究部門 中性子イメージング・分析研究グループ 大澤崇人)

━ 海外事務所便り ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*当機構の海外事務所から寄せられたニュースを紹介します。

☆ ワシントン事務所
<デービス・ベッセ原発の原子炉圧力容器上蓋を前倒しで交換>
 FirstEnergy Nuclear Operating Company (Fenoc)は6月21日、デービス・ベッセ原子力発電所(PWR、オハイオ)の原子炉圧力容器(RPV)上蓋を3年前倒しし、2011年に交換すると発表した。
 http://www.firstenergycorp.com/NewsReleases/2010-06-21%20FE%20To%20Replace%20Davis-Besse%20Reactor%20Head%20Next%20Year.pdf

<高出力全金属燃料の照射試験をATRで実施>
 Lightbridge社(旧Thorium Power社)は6月23日、全金属燃料集合体の照射試験をアイダホ国立研究所の先進試験炉(ATR)で行うことを発表した。
 http://phx.corporate-ir.net/preview/phoenix.zhtml?c=121550&p=irol-newsArticle&ID=1441031&highlight

☆ ウィーン事務所
<IAEA、途上国の原子力開発支援を議論>
 IAEAは6月14日から17日までの4日間、「原子力プログラム計画と戦略開発に関する国際ワークショップ」を開き、35カ国の専門家が、IAEAのツールと手法の適用について議論した。
 http://www.iaea.or.at/NewsCenter/News/2010/development.html

☆ パリ事務所
<CEA、2009年版のリスク管理報告書を公表>
 フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)は6月15日、2009年版のリスク管理報告書を公表した。報告書には、事故・事象、労働災害、放射線防護、ナノ粒子取扱規則、環境モニタリング、緊急時対応、コンピューターシステムの防護など、直面するリスクに対する取組みとその結果が記載されている。
 http://www.cea.fr/var/cea/storage/static/fr/surete/CEA-Bilan-Maitrise-risque-2009.pdf

<仏国CEAと英国NDAが協力協定を締結>
 フランスのCEA(原子力・代替エネルギー庁)と英国NDA(原子力デコミショニング機構)は6月29日、原子力施設の廃止措置及び廃棄物処分の分野で協力を進めていくための覚書に署名を行った。
 http://www.cea.fr/presse/liste_des_communiques/accord_cea-nda_gestion_des_dechets_demantelement-34956

<フィンランド国会、原子力発電所2基の新設を承認>
 フィンランド国会は7月1日、原子力発電所2基の新設を承認した。
 http://www.government.fi/ajankohtaista/tiedotteet/tiedote/en.jsp?oid=302066

━ 広報紙から ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*当機構が社外向けに発行している広報紙などからトピックスを紹介します。

━ プレス発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ お知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ 採用情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*上記の詳細は http://www.jaea.go.jp/saiyou/index.html をご覧下さい。

━ 調達情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ あとがき ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

現存する最古の木造建築である法隆寺。千三百年以上の年月を経たその塔には、ヒノキが使われています。

強度からいえば、日本で使われる一般的な針葉樹の中では、アカマツが最も強く、ヒノキはそれに次ぎます。しかしヒノキが真価を発揮するのは、その耐久性にあります。

ヒノキの中では時間が経過するにつれて、さまざまな抽出物が増えて結晶化し、それが骨格の安定性に寄与していきます。このためヒノキは切られてから二百年ぐらいは徐々に強度を増し、その後はゆるやかに弱くなって、千年ほどでやっと、新材と同じ強さになります。

さらにヒノキは、きわめて耐水性が優れており、内部まで腐りにくいという性質をもっています。これらがあいまって、法隆寺の柱はいまだに、ビクともしないというわけです。

今から千三百年前といえば、飛鳥時代のころ。その当時にはすでに、ヒノキを選び、それを見事に組み合わせた職人芸がありました。すばらしい技術は、やすやすと時空を超えます。(佐)

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【発行】独立行政法人 日本原子力研究開発機構 広報部  佐田務、上野信行  ○

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