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■■■□□□ JAEAメールマガジン
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++---- No.113 目次 ----++

現場から ____ 低アルカリ性セメントを用いた施工試験−世界初の本格的施工−幌延深地層研究センター

海外事務所便り _ オバマ大統領が一般教書演説で次世代原発建設を明言 ほか

プレス発表、お知らせ、採用情報、調達情報

あとがき

━ 現場から ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

低アルカリ性セメントを用いた施工試験−世界初の本格的施工− 幌延深地層研究センター

幌延深地層研究ユニットが幌延深地層研究センターの地下施設で実施した、低アルカリ性セメントを用いた吹付けコンクリートの施工試験について、紹介します。

高レベル放射性廃棄物の地層処分では、地下施設の建設に際して、坑道の空洞安定性を保つために、コンクリート材料が支保工として使用されると考えられます。この支保工は、特に軟岩系堆積岩の工事では不可欠なものです。通常の土木工事で用いられるコンクリート材料の主成分である普通ポルトランドセメントは、地下水と接触すると近傍の水のpHを12.5以上の高アルカリ性にします(通常の地下水のpHは6〜9程度)。この地下水の高アルカリ化は、地層処分システムを構成する緩衝材や周辺岩盤の性質を変化させ、そのバリア機能を低下させる可能性があります。地層処分研究開発部門では、地層処分の安全性をより確実なものとするため、低アルカリ性セメント(以下、HFSC)を開発し、この課題解決を目指しています。このHFSCは高アルカリ化を抑制(目標はpH11以下)するために、普通ポルトランドセメントにポゾラン材料(注1)であるシリカフューム(注2)とフライアッシュ(注3)を混合し、放射性廃棄物処分場用セメント系材料として特許を取得しているものです。低アルカリ性セメントの開発は、スイス、フィンランド、スウェーデンなど地層処分を計画しているヨーロッパ諸国においても精力的に進められており、坑道の一部で小規模な試験が行われた例もあります。

今年度、幌延深地層研究センターの地下施設の深度140m地点の調査坑道の約70m区間において、上記のHFSCを用いた吹付けコンクリートの施工を実施し、適用性を確認しました(総吹付け面積約930m2、総吹付け量約500m3)。

と、このように書くと、簡単な事のように思われるかもしれませんが、施工後には人が行き来する場所になるわけですから、失敗は許されません。施工試験にたどり着くまでには、様々な検討を行い、坑道の設計基準強度を満たす事は勿論、模擬のトンネルに吹付け施工を行い通常の施工機械で問題が生じないかを確認する作業や、幌延の地下施設工事のコンクリート製造設備を使えるのか、別に設備を準備しなければならないのか・・・などなど、確認すべき事項は多数にわたりました。これまでに実績のない材料を使うわけですから、地下坑道での施工ができるのか、当初心配もありました。その反動のせいで、施工ができたときには、何か現実感がわかなかったものです。

ともあれ、施工試験の結果、吹付けの施工性については通常の土木工事で用いられているコンクリート材料と同等の結果が得られ、施工後の坑道の内空変位などの力学的安定性も通常のコンクリート材料と同等の性能を示し、HFSCが地下坑道での施工に適用できることが確認されました。このように、実際の地下坑道で本格的に施工し、その実用性について確認したのは、世界でも初めてのことになります。

春の訪れとともに幌延深地層研究センターでは、施設見学会を開催します。HFSCの施工部分も含めて、地下の世界をご案内しますので是非お越しください。

幌延深地層研究ユニット 堆積岩工学技術開発グループ 中山 雅

【用語説明】

(注1)ポゾラン材料
それ自体には水硬性はないが、含まれている可溶性のSiO2などが水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と徐々に反応して、不溶性の安定なカルシウムシリケート水和物をつくる材料の総称。セメント材料から溶出するCa(OH)2と反応し、pHを低下させる効果がある(ポゾラン反応)。ポゾラン材料には人工的なフライアッシュやシリカフュ−ム及び天然の火山ガラスや珪藻等がある。

(注2)シリカフューム
ア−ク式電気炉などで金属シリコンやフェロシリコンを精錬する際の排ガス中に含まれる副産物。その成分は80%以上が非晶質の二酸化ケイ素(SiO2)であり、平均粒径は約0.1μmの球状粒子である。

(注3)フライアッシュ
電力会社などで石炭を燃焼させた時に、シリカ分などが溶融・凝結してできる微粉末。微細なビーズ玉の形状で、生コンクリートに混ぜると、ボールベアリングのような働きでコンクリートの流動性を向上させる。主成分はSiO2が50〜70%程度、Al2O3が15〜30%程度である。

━ 海外事務所便り ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*当機構の海外事務所から寄せられたニュースを紹介します。

☆ ワシントン事務所
<DOEがBlue Ribbon Commissionのメンバーを発表>
 DOEのChu長官は1月29日、ヤッカマウンテン計画の代替案を包括的に検討するBlue Ribbon Commissionのメンバー15名を発表しました。
 http://www.energy.gov/news/print/8584.htm

<オバマ大統領が一般教書演説で安全、クリーンな次世代原発建設を明言>
 オバマ大統領は1月27日、議会の一般教書演説において、安全でクリーンな次世代の原子力発電所を米国に建設することを明言しました。
 http://www.whitehouse.gov/the-press-office/remarks-president-state-union-address

<ローレンスリバモア研究所で1メガジュールのレーザー出力に成功>
 国家核安全保障庁(NNSA)は1月27日、ローレンスリバモア国立研究所のNational Ignition Facility(NIF)で、数十億分の1秒間、1メガジュール以上のレーザー出力を出すことに成功し、核融合に必要な条件を達成できることを証明したと発表しました。
 http://nnsa.energy.gov/news/2810.htm

☆ ウィーン事務所
<インドのラジャスタン6号機が臨界>
 インドのラジャスタン原子力発電所6号機(加圧重水炉:22万kW)が1月23日、臨界に達しました。国内では19基目の発電炉となります。
 http://www.npcil.nic.in/pdf/press_23jan10.pdf

☆ パリ事務所
<AREVAが組織改編>
 仏AREVAは1月28日、部門間のシナジー効果を向上させ、顧客利益を増し、原子力市場における同社の優位性を高めることを目的とした組織改編を発表しました。
 http://www.areva.com/FR/actualites-8138/la-nouvelle-organisation-dareva-va-accroitre-son-avance-sur-le-marche-du-nucleaire.html

━ プレス発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ お知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ 採用情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*上記の詳細は http://www.jaea.go.jp/saiyou/index.html をご覧下さい。

━ 調達情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ あとがき ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

先日、日本三名園の一つである茨城県水戸市の「偕楽園」へ行きました。まだ、梅の花を観るには時期が早く、2月20日に開幕する梅まつりに向けて、園内ではいろいろな準備を進めているところでした。今年も多くの人々が、訪れることと思います。

偕楽園以外にも神奈川県小田原市の「曽我梅林」、茨城県つくば市の「筑波山梅林」等へも、良く出かけていますが、梅林や樹木の配置等の関係で、私は「偕楽園」が一番好きです。ぜひ、皆さんも早春の香り漂う、近くの梅林へお出かけになってみては、いかがでしょうか。

さて、我が家の狭い庭にも小さな梅の木が一本あります。毎年この時期には、花が咲き、実を残します。その実を使って梅干しや梅酒を作り、それらを味わうのが、私の楽しみの一つです。ただ、私は普段余り庭の手入れをしないので、味わうだけの私に、家族の目は冷ややかです。(広報部 櫻井敏久)

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【ご感想やご要望】http://www.jaea.go.jp/13/13_1form.shtml

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【発行】独立行政法人 日本原子力研究開発機構 広報部  佐田務、上野信行 JAEAロゴ ○

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