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原子力機構ニュースロゴ    Ver.47 発行 2007.11.22  日本原子力研究開発機構 広報部
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 原子力機構理事の片山正一郎です。日頃より当機構のメールマガジンをご愛読頂き誠に有難うございます。
 先日、宇宙航空研究開発機構の月周回衛星「かぐや」が、38万キロメートル離れた月の上空から撮影した地球の出、地球の入りなどの鮮明な画像が公表されました。ご覧になられた方も多いと思います。荒涼とした月の上空の漆黒の宇宙の中に浮かぶ小さな地球は大変美しいものでした。その小さな地球の上で66億人を超える全人類が、一人一人その人にとってはかけがえもなく大切な喜びや悲しみとともに一生懸命生きているということになります。この映像は、地球環境問題の重要性と科学技術の力の偉大さを改めて印象づけました。このプロジェクトに参画された関係各位のご尽力に対し心から敬意を表します。

 原子力機構は、原子力の果たす重要な役割である環境・エネルギー問題の解決や原子力による新たな科学技術・産業の創出に向け、その基礎・基盤研究から実用化を目指すプロジェクト研究まで、総合的な研究開発を進めております。科学技術を通じ人類の幸福のため、引き続き努力して参りますのでよろしくしくお願い申し上げます。

 さて、今回の「研究開発現場から」は、バックエンド推進部門からです。

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【研究開発現場から】 バックエンド推進部門  廃棄物確認技術開発グループ 片山 淳
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 研究開発活動等から発生するRI・研究所等廃棄物を処分するに当たっては,放射性廃棄物(廃棄体)毎に放射能濃度等に関する評価が必要になります。全ての核種を逐一分析することは実際的ではないため,外部測定が可能なコバルト-60等のγ核種から他の難測定核種を評価する手法が有効とされています。この放射能評価を行うためには,廃棄物を発生する施設の種類毎に廃棄物に含まれる核種間の相対濃度等を統計的に解析する必要があり,放射能測定に多大な時間と労力を要することになります。そこでバックエンド推進部門では従来の分析・測定法に代わり、簡易・迅速な放射能測定手法の開発を進めていますが,私はこの開発グループに所属しており,現在主としてヨウ素-129等の長半減期核種を担当しています。

 ヨウ素-129は,代表的な核分裂生成物の長半減期核種(半減期1570万年)です。廃棄物中のヨウ素-129は濃度が低く,直接放射線計測することは困難であるため、放射化分析がこれまで利用されてきました。この従来法では,感度を稼ぐためにg(グラム)レベル以上の試料に対して前処理と放射化学分離を精密に行う必要があります。

 ヨウ素-129のような長半減期核種の分析では,原子数で計測する方が感度の上で有利であると一般的に言われています。しかし,原子数で計測する代表的手法である質量分析法を適用するには、同重体(同じ質量を持つ他元素の同位体)やアバンダンス感度(同じ元素の同位体存在度を識別する能力を示し,例えばヨウ素であればヨウ素-129/ -127同位体比で10の10乗台以上が必要)について十分検討する必要があります。当機構の青森研究開発センターむつ事務所で稼働中の加速器質量分析装置(AMS)は、同重体に対する高い選択性と高いアバンダンス感度を有し、かつ高感度の質量分析が可能です。
 AMSは主として放射性炭素年代測定法に用いられていますが,我々はAMSの感度の高さに着目して廃棄物分析への応用を行い,試料量をmg(ミリグラム)レベルにすることで前処理の負担を大きく減らしました。また, AMSのターゲット(実際に装置に装填するヨウ化銀:AgI)を製作するために使われていた化学分離法等を見直し,溶媒抽出によらないディスク分離を適用することで分離の簡易・迅速化と有機廃液の大幅な抑制が実現しました。その結果,少ない試料から効率よくヨウ素-129の分析が可能となり,他の核種との濃度相関などを解析するためのデータが蓄積しつつあります。

 一方,試料量中のヨウ素-129がより微量な試料では,ターゲットのヨウ化銀を製作する際に必要となる担体(微量の元素や化合物の化学操作・物理操作を効果的に行うために加える物質)のヨウ素-127を少なくしなければなりません。しかし,ヨウ化銀は沈殿物として回収するので,化学分離の操作上最低でも1mgの担体を加える必要があります。フランスの研究者は,沈殿生成によらない手法として銀の粉末にヨウ素分子(I2)を吸着させる方法を用いましたが,ヨウ素分子を吸着させるのに一昼夜以上の時間を要します。そこで我々は化学メッキを応用して高性能の吸着剤を開発しました。その結果,担体のヨウ素を0.2mg程度まで減らすことに成功し,数分以内にヨウ素分子を吸着させることが可能になりました。さらに,操作に要するガラス器具等の使用数を少なくすることでガラス器具に付着するバックグラウンドのヨウ素-129を抑制することができるようになりました。この開発により,ヨウ素-129の分析がいっそう簡易・迅速化できる見通しを得ています。吸着によるAMSターゲット作製の手法が確立すれば,廃棄物の分析だけではなく,海水試料等を多数処理する必要のある環境科学の分野に適用し研究者の負担を軽減することが期待できるのではないかと考えています。

【バックエンド推進部門の概要】
 バックエンド推進部門では、自らの原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処理・処分を計画的、安全かつ合理的に実施するため、機構全体に共通するバックエンド対策に必要な技術開発、関連技術の調整、計画の立案・推進を進めています。
 主要な技術開発として、廃止措置計画の検討に必要となる廃止措置エンジニアリングシステム、クリアランスの実施を支援するクリアランスレベル検認評価システムの開発、超臨界二酸化炭素を媒体とする除染技術開発、金属触媒を用いる硝酸イオンの還元分解技術開発、放射性廃棄物管理システムの開発、RI・研究所等廃棄物に関する放射能特性の評価、放射能測定の簡易・迅速化技術の開発などを挙げることができます。また、RI・研究所等廃棄物の処分に向けた計画調整、処分場の概念設計等も進めています。
 (ホームページ → http://www.jaea.go.jp/04/be/index.htm

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【最新情報】
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07.11.15<プレス発表>研究用原子炉「JRR-3」の米国原子力学会ランドマーク賞受賞について掲載しました。
07.11.21<お知らせ>「原子力の日」記念 第32回中学生作文募集および第39回高校生論文募集表彰式について掲載しました。

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【プレス発表】
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平成19年11月15日、研究用原子炉「JRR-3」の米国原子力学会ランドマーク賞受賞について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/02/press2007/p07111501/index.html

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【お知らせ】
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平成19年11月21日、「原子力の日」記念 第32回中学生作文募集および第39回高校生論文募集表彰式について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/02/news2007/071120/index.html

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【採用情報】
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光医療研究連携センターでは、特定課題推進員を募集します。
書類提出期限:平成19年11月30日(金)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment33.html

量子ビーム応用研究部門放射光科学研究ユニットでは、研究系職員を募集します。
書類提出期限:平成19年12月3日(月)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/career/career13.html

量子ビーム応用研究部門では、任期付研究員を募集します。
書類提出期限:平成19年12月7日(金)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment34.html

システム計算科学センターでは、研究系職員を募集します。
書類提出期限:平成19年12月18日(火)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/career/career14.html

原子力機構では、技術系職員を募集します。
書類提出期限:平成19年12月25日(火)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/career/career12.html

平成20年度特別研究生を募集します。
書類提出期限:平成20年1月11日(金)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/internship/internship03.html

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【調達情報】
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平成18・19年度 一般競争(指名競争)参加資格審査申請書の受付について。
http://www.jaea.go.jp/02/format/index.html

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■申し込みいただいた皆様に独立行政法人日本原子力研究開発機構の情報を配信しております。

■アドレス変更・配信停止については、以下のホームページをご覧ください。
   http://www.jaea.go.jp/14/14_0.html

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【編集・発行】独立行政法人日本原子力研究開発機構 広報部広報課
         http://www.jaea.go.jp/

【お問合わせ】お問い合わせフォームより → http://www.jaea.go.jp/13/13_1form.shtml
 原子力機構ホームページ、メルマガへのご意見、ご質問、お問い合わせなど皆様の声をお寄せください。

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