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原子力機構ニュースロゴ    Ver.42 発行 2007.9.7  日本原子力研究開発機構 広報部
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 台風9号が東日本を縦断中です。進路にあたる地域にお住まいの方は十分ご注意ください。
 9月8日(土)13:30より東海村のテクノ交流館リコッティにてサイエンスカフェinリコッティを開催します。研究者・技術者と一般の方々が気軽に科学について直接語り合える相互理解の場として、サイエンスカフェを定期的に開催しています。今回は、「原子炉を使ったガン治療最前線」と題し、東海研究開発センターにある研究炉JRR−4を使った中性子を用いたがん治療についてお話します。最近は、原子力機構にがん治療について問い合わせがあり、関心の高さが伺えます。講師は、筑波大学大学院医学博士 山本哲哉氏、原子力機構 医学博士 熊田博明です。申込は下記URLからお願いします。
 http://www.jaea.go.jp/04/tokai/science_cafe.html

 さて、今回の「研究開発現場から」は、基礎的・基盤的な研究を行っている原子力基礎工学研究部門からお伝えします。

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【研究開発現場から】 原子力基礎工学研究部門 放射線影響解析研究グループ 赤松 憲
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 こんにちは!当メールマガジンには初めて登場させていただきます。この数年間、悶々と行って参りました研究がようやく実を結びましたので、嬉々としてその内容を紹介したいと思います。

 私の研究テーマは、「電離放射線によって生じるDNA損傷の特徴解明」です。もう少し端的に申しますと「電離放射線がDNAに当たったときにDNAの鎖上にできる傷の種類や量を調べる」ことです。「なんでそんな研究を悶々としてまでやらなアカンの?」って? その説明の前に、まず「DNA損傷」、「電離放射線」について簡単に説明します。
 DNAは生物の機能・遺伝に関わる重要な物質で、いわば2本の長いヒモをらせん状に結いあげたような形状をしております。人間の細胞ひとつひとつにこの「ヒモ」がギュウギュウに押し込められております。細胞1個(直径0.00001メートル程度)に入っているDNAの長さは、なんと2 メートルにもなります。さて、そのような生物にとって極めて大切なDNAですが、様々な要因で傷がついてしまうのです。幸い生物はその傷を治す機能をもっておりますが、傷の種類・量によっては、元通りにならない、あるいは中途半端にしか治せない場合があるようなのです。こういった「失敗」が発ガンの原因のひとつになっていると考えられております。DNAに傷をつけるものですが、私たちの身近にあるものとしては、電離放射線、紫外線、化学物質があります。紫外線や化学物質ではDNAへの作用の仕方が限られているので、生じる傷の種類も少なく既存の分析方法で比較的容易に解明できます。
 一方、電離放射線の場合は傷の種類が極めて多いだけでなく、それらがDNAの鎖の上でどのように散らばっているかということまで気にしなくてはならないので、分析手段の不十分さも相まって解明が非常に困難なのです。さらには「電離放射線」といっても様々な種類(線質)があります。医療機器の滅菌に用いられているγ線、レントゲン写真で使うX線、空気中に微量に存在する放射性元素ラドンから出るα線、等々・・・DNAにできる傷の状態は線質によって違うと考えたほうが自然です。各々の電離放射線によってできるDNAの傷はどのようなもので、その傷を生物はどのような方法で修繕するのかを明らかにすることは、電離放射線をより安全に利用するための指針づくりに役立つのです。

 さて、前置きが長くなりましたが、最近私は、上に述べた背景(夢?)を基に、DNAに生じた傷の種類と量を総合的に調べるための新しい方法を開発しました。本研究ではDNAを分解する酵素や化学薬品を用います。電離放射線を当てたDNAに酵素を作用させますと、傷の種類・量に応じてその分解の速さが変化します。その変化を解析することで傷情報が露わになるのです。また、電離放射線を当てたDNAを予め化学薬品で処理することによって、その薬品に反応する傷のみを取り外すことができます。こうした方法によりDNAの傷を様々な範疇に分け、その範疇に含まれる傷の量を見積もることに成功しました。この成果は今年3月に発行されました国際誌(Analytical Biochemistry)に掲載されております。実際この方法を用いてγ線とα線(ヘリウム原子核)の場合を比較してみますと、電離放射線によって切れたDNAの切断端の種類・量は殆ど同じですが、塩基損傷(鎖を構成している構造体の一部が変化したところ)に関しては相違があることがわかりました。

 このDNA損傷分析方法の開発途中では「この実験、ホンマに意味があんのかな?」という自問自答を何度も繰り返し、文字通り、悶々(問々?)としておりましたが、研究室の皆さんとの他愛のない話で元気を取り戻すことが出来ました(関西ギャグが通じずに凹むこともありましたが・・・)。今後も様々なDNA損傷分析法を開発し線質とDNA損傷の関係に迫っていきたいと意気込んでおります。今後の成果をどうぞご期待ください!

【原子力基礎工学研究部門の概要】
 原子力基礎工学研究部門では原子力の研究・開発、及び利用の基盤形成と、新たな原子力利用技術の創出を図る、基礎的・基盤的研究開発を行っております。これらの課題の中に放射線防護に関する研究があります。ここでは放射線影響研究上の重要なターゲットとなるDNAの損傷・修復過程の研究等を進めています。
 (ホームページ → http://www.jaea.go.jp/04/nsed/index.html

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【最新情報】
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07.8.30<プレス発表>高速増殖原型炉もんじゅの工事確認試験終了及びプラント確認試験の開始について掲載しました。
07.8.31<プレス発表>平成19年新潟県中越沖地震を踏まえた対策に関する調査・検討結果の報告について掲載しました。
07.8.31<プレス発表>文部科学省及び茨城県への報告漏れ等に関する調査結果の報告等について掲載しました。
07.8.31<プレス発表>高速増殖原型炉もんじゅ「プラント確認試験」の開始について掲載しました。
07.9.5<プレス発表>世界で初めて数百MeV級重イオンで1ミクロン以下のビーム形成に成功について掲載しました。
07.8.27<お知らせ>「平成19年度 東濃地科学センター 地層科学研究 情報・意見交換会」及び「第12回東濃地球科学セミナー」のご案内について掲載しました。
07.8.31<お知らせ>平成20年度「先行基礎工学研究」についてのご案内を掲載しました。
07.9.5<お知らせ>平成19年度出資者・寄附者懇談会を開催しましたについて掲載しました。
07.9.5<お知らせ>国際シンポジウム「核不拡散と原子力の平和利用」開催案内について掲載しました。

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【プレス発表】
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平成19年8月30日、高速増殖原型炉もんじゅの工事確認試験終了及びプラント確認試験の開始について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/04/turuga/jturuga/press/press.html

平成19年8月31日、平成19年新潟県中越沖地震を踏まえた対策に関する調査・検討結果の報告について(お知らせ)について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/02/press2007/p07083102/index.html

平成19年8月31日、文部科学省及び茨城県への報告漏れ等に関する調査結果の報告等について(お知らせ)について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/02/press2007/p07083103/index.html

平成19年8月31日、高速増殖原型炉もんじゅ「プラント確認試験」の開始について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/04/turuga/jturuga/press/press.html

平成19年9月5日、世界で初めて数百MeV級重イオンで1ミクロン以下のビーム形成に成功について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/02/press2007/p07090501/index.html

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【お知らせ】
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平成19年8月27日、「平成19年度 東濃地科学センター 地層科学研究 情報・意見交換会」及び「第12回東濃地球科学セミナー」のご案内について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/04/tono/topics/topics0708_1/070827.html

平成19年8月31日、平成20年度「先行基礎工学研究」についてのご案内を掲載しました。
http://www3.tokai-sc.jaea.go.jp/sangaku/4-information/info070901.html

平成19年9月5日、平成19年度出資者・寄附者懇談会を開催しましたについて掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/02/news2007/070906/index.html

平成19年9月5日、国際シンポジウム「核不拡散と原子力の平和利用」開催案内について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/04/np/shiryou/sympo2007/index.html

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【採用情報】
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平成20年度日本原子力研究開発機構博士研究員を募集します。
書類提出期限:平成19年9月21日(金)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment22.html

原子力基礎工学研究部門では、グループリーダを募集します。
書類提出期限:平成19年9月21日(金)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment23.html

J−PARCセンターでは、研究系職員(キャリア採用)を募集します。
書類提出期限:平成19年9月28日(金)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/career/career08.html

原子力基礎工学研究部門では、研究系職員(キャリア採用)を募集します。
書類提出期限:平成19年10月5日(金)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/career/career09.html

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【調達情報】
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平成18・19年度 一般競争(指名競争)参加資格審査申請書の受付について。
http://www.jaea.go.jp/02/format/index.html

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■申し込みいただいた皆様に独立行政法人日本原子力研究開発機構の情報を配信しております。

■アドレス変更・配信停止については、以下のホームページをご覧ください。
  http://www.jaea.go.jp/14/14_0.html
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【編集・発行】独立行政法人日本原子力研究開発機構 広報部広報課
        http://www.jaea.go.jp/

【お問合わせ】お問い合わせフォームより → http://www.jaea.go.jp/13/13_1form.shtml
 原子力機構ホームページ、メルマガへのご意見、ご質問、お問い合わせなど皆様の声をお寄せください。

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