放出放射能に関する解説

 

トリチウム

 

 トリチウムは水素の同位体で、弱いβ線を放出して崩壊する半減期12.3年の放射性核種です。自然界では、宇宙からの放射線と空気中の窒素との相互作用でトリチウムが作られきわめて僅かですが水の中に存在しています。使用済燃料中にはウランの核分裂などにより発生したトリチウムが含まれています。そのうち半分程度は、使用済燃料の被覆管に吸収されており、固体廃棄物として貯蔵されます。残りの半分程度は廃液中に水のかたちで含まれますが、人の健康等に影響が出ないよう厳重な管理の下に海洋に放出されます。トリチウムの放出するβ線のエネルギーは弱く、薄いアルミニウム膜程度でそのβ線をさえぎることが出来ます。

  

クリプトン

 

 自然界のクリプトンは、空気中にごく薄い濃度で存在するガスで、ネオンやアルゴン等と同様に不活性なガスです。このため、地表や生物体に濃縮されたり、蓄積されることはありません。クリプトンは自動車のフォグランプや住宅の照明にもクリプトン球として使われています。天然のクリプトンはすべて非放射性ですが、再処理施設の気体廃棄物中には放射性クリプトン(Kr-85:半減期10.76年)が含まれており、人の健康等に影響が出ないよう厳重な管理の下に排気筒から大気に放出されます。放出されたクリプトンは天然のクリプトンと同様に濃縮されたり、蓄積されることはありません。


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