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超深地層研究所計画

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トピックス

地下水涵養量を把握するための長期観測の終了

ポイント
  • 10年以上に亘る長期観測を実施し、岩盤への涵養量の空間的・時間的な変化に関わるデータや知見を蓄積することができた。
  • 瑞浪超深地層研究所の建設に伴う表層部の地下水位の変化は発生していないことや、その変化は降水量に同期していることを確認した。
概要

地層処分システムの安全評価においては、深部岩盤中の地下水流動特性を評価することが重要となります。降水が地下に浸み込む量(涵養量)を把握することは、地下水流動特性を理解するうえで必要となります。また、地下空洞の掘削は、表層部の地下水位等の環境に影響を及ぼす可能性があります。

以上のことから、涵養量を算定すること、および、瑞浪超深地層研究所の研究坑道掘削に伴う表層の地下水位や土壌水分の変化の有無を把握することを目的とした観測を長期に亘って行ってきました。

観測の結果、涵養量の空間的・時間的な変化に関わるデータを蓄積することができました。また、表層部の地下水位や土壌水分の変化は、降水量に同期していることや、研究坑道掘削に伴う変化は認められないことが確認されました。

今後は、これまでの観測によって、涵養量を算定するための十分なデータや知見を取得することができたことから、研究坑道の維持・管理等が表層部の地下水位に与える影響を把握するための観測のみ継続し、涵養量を算定するための観測は2014年度末を以て終了することとしました。

内容

地層処分システムの安全評価においては、廃棄物から溶出した核種が地下水によって運ばれる「地下水移行シナリオ」が基本となっていることから、深部岩盤中の地下水流動特性を評価することが重要となります。

瑞浪超深地層研究所周辺の地下水は、降水の一部が地下に浸み込んだものです。この地下に浸み込む水の量(涵養量)を把握することは、地下水流動特性を理解するうえで必要となります。また、地下に坑道などの空洞を掘削すると、その周辺の地下水は空洞に湧き出し、その結果、表層部の地下水位等の環境に影響を及ぼす可能性があります。

以上を踏まえ、①地下水流動特性を把握するための涵養量の算定、および、②瑞浪超深地層研究所の研究坑道掘削に伴う表層部の地下水位や土壌水分の変化の有無の確認、の2つを目的として、表層水理観測を継続的に実施してきました。表層水理観測では、河川流量、気象状態(蒸発散量を算定するための風向・風速や、気温、湿度など)、降水量、土壌水分、および地下水位を観測してきました。また、表層水理観測は、河川流域の上流部と下流部や、異なる表層の地質状況や流域面積を有する小流域(正馬川流域(全域、上流域、下流域、モデル流域)、柄石川流域、日吉川流域、研究所用地等)において実施してきました(図-1)。特に、正馬川流域と柄石川流域では、15年以上に亘って観測を行ってきました。

このように、世界でも例の少ない長期に亘る観測により、涵養量の空間的・時間的な変化に関わるデータを蓄積することができました。その結果、地下水涵養量について以下のような知見が得られました。

  • 地下水涵養量は降水量に応じて年毎に値が大きく変動している(図-2)。正馬川流域全域や日吉川流域では降水量の10~20%が地下水として涵養する。
  • 上流域の方が下流域と比較して涵養量が大きく、上流側の方が降水量の変化に対応した変化が大きい(図-3)。正馬川流域上流域やモデル流域では、20~40%が地下水として涵養する。
  • 広域地下水流動解析に必要となる広領域における平均的な地下水涵養量を算定するためには、解析領域と同規模の流域における水収支の長期観測が有効である。

一方、研究坑道掘削に伴う表層部の地下水位や土壌水分の変化の有無の確認に関しては、これらは降水量に同期して変化しており、研究坑道掘削に伴う変化は認められていません(図-4)。これは、立坑部で深度40m程度に分布する透水性の低い地層によって、地下深部での影響が表層部に達していないことが原因として考えられます。

今後は、これまでの観測によって、涵養量を算定するための十分なデータや知見を取得することができたことから、研究坑道の維持・管理等が表層部の地下水位や土壌水分に与える影響を把握するための観測のみ継続し、涵養量を算定するための観測は2014年度末を以て終了することとしました。

表層水理観測位置図
図-1 表層水理観測位置図
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図-2 涵養量算定結果と年度総降水量の関係
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図-3 涵養量算定結果と年度総降水量の関係
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図-4 表層部の地下水位と降水量の関係
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参考文献

年度ごとのデータ集有り。例えば、以下のとおり。