超深地層研究所計画
物質移動の調査研究
岩盤中の物質移動に関する調査研究は、第三段階の調査研究として、岩盤中の物質移動の現象に関する理解や、それに係わる調査技術や解析・評価技術を開発することを目標としました。
これまでに、研究坑道からのボーリング調査(図1)を行い、岩盤中の主な物質の移動経路となる割れ目の分布などから、割れ目を大きく6つのタイプ(図2)に分けて研究を進めました。
また、ボーリングコアを利用して、岩盤中を物質が拡散する様子を調べるために実験室内で試験(透過拡散試験:図3)を行いました。
透過拡散試験の結果、土岐花崗岩中の変質部の試料は、未変質部の試料と比べて実効拡散係数が高い(=物質が拡散しやすい)傾向があることが分かりました(図4)。この傾向は、これまでの研究結果と整合的です。
その一方で、いわゆる健岩部(肉眼で変質が認められない部分)についても、元素が移動する現象(マトリクス拡散)が生じることが明らかになりました。この元素の移動経路は、斜長石中に生じた小さな空隙であると考えられます(図5)。さらに、顕微鏡観察で得られた空隙率と、透過拡散試験で把握した実効拡散係数を比較したところ、両者には強い正の相関があることが明らかになりました(図6)。
これまで、花崗岩の健岩部における元素の移動現象(マトリクス拡散)については不明な点が多かったのですが、我々の研究によって、健岩部においてもマトリクス拡散が生じることや、その経路が主に斜長石であることが明らかになりました。