平成14年度東濃地科学センター事業説明
説明資料
核燃料サイクル開発機構
東濃地科学センター
 
1.業務概況

 東濃地科学センターでは、高レベル放射性廃棄物を安全に処分するための地層処分技術に関する研究のうち、国の計画に示された深地層の科学的研究(地層科学研究)を進めています。地層科学研究は、地下深い所の地下水や岩盤の様子(地質環境)を知るための手法を確立することを目的とした研究です。
 地層科学研究とは、地下の深いところが「どうなっているのか」「なぜそうなったのか」「これからどうなっていくのか」を知るための手法を確立する研究です。これらの研究をより一層拡充させるために、「超深地層研究所計画」を進めています。平成14年度より、超深地層研究所計画のうち、瑞浪市有地に設置する研究所を瑞浪超深地層研究所と呼称するとともに7月より施設の造成工事に着工いたします。また、当センター周辺の広い範囲を研究対象とした「広域地下水流動研究」、および火山、活断層、隆起・沈降などの自然現象を対象とした「地質環境の長期安定性についての研究」、東濃鉱山を利用した「東濃鉱山における調査研究」を行っています。
 地層科学研究は放射性廃棄物を用いる研究ではありません。また、この地域を放射性廃棄物の処分場とするための研究でもありません。
 ウラン資源の海外調査探鉱については、これまで確保してきたウラン鉱業権益を整理するための手続きを進めており、平成14年9月には業務を終了する予定です。


2.平成13年度の業務実績
地層科学研究
◇ 超深地層研究所計画
 超深地層研究所計画については、瑞浪市有地(約7.5ヘクタール)の賃借に関し、平成14年1月17日瑞浪市との間で土地賃貸借契約及び土地賃貸借契約に係る協定書を締結し、研究坑道等を設置した研究を行うこととしました(瑞浪市有地に設置する研究所を瑞浪超深地層研究所と呼称します。)。
 瑞浪超深地層研究所においては、浅層ボーリング調査や物理探査の準備を行いました。また、研究施設の建設については、研究坑道や造成の設計を開始し、設計に必要な土質調査や測量等を行いました。
 正馬様用地では、深さ1,000m程度までの地下の状態を把握するために、平成12年度より継続して深層のボーリング調査を行うとともに、掘削したボーリング孔に地下水のモニタリング装置を設置しました。また、一つのボーリング孔から長時間にわたって地下水を少しずつ汲み上げて、周辺のボーリング孔で地下水の流れに伴って発生する水圧の変化を観測する調査を行いました。さらに、表層水理調査や地下水の長期観測を継続して行いました。これまでのデータを用いて地下水の流れを予測するための解析を行いました。この他、地下の地質構造を推定するため、浅いボーリング孔を掘削しそれを利用し物理探査(人工的な地震波を利用する弾性波探査)を行いました。また、溜池取水口の整備工事を6月に終え、これをもって用地内の工事は完了しました。
◇ 広域地下水流動研究
 広い範囲の地下水の流れなどを総合的に把握するための調査手法の開発と、得られたデータを解析し他にも適応可能となるよう普遍化するための調査手法の研究開発を東濃鉱山周辺の約10km四方の地域で行っています。平成13年度は地表から地下の状態(地質構造)を把握するための電気探査を行うとともに、表層水理調査や地下水の長期観測を行いました。また、既存の深層ボーリング孔に地下水の状態を長期間観測するためのモニタリング装置を設置しました。さらに、これまでに得られたデータを用いて地下水の流れを予測するための解析を行いました。
◇ 東濃鉱山における試験研究
 堆積岩を対象に、岩盤の力学的な安定性、坑道周辺の地質環境の状況や変化、岩盤中の物質移動・固定の状態、月吉断層の地質学的・地球化学的な特性などを明らかにすることを目的とした研究を行っています。平成13年度は地下深部の応力や岩盤の長期的な挙動を計測する技術開発のため、東濃鉱山内に短いボーリング孔を7孔掘削しました。また、長期岩盤挙動の坑内観測、坑道周辺の水理・地球化学研究、物質移動・固定の研究および月吉断層に関する研究を行いました。
◇ 調査技術の開発
 地下深部(1,000m程度)までの岩盤の透水性(水の通り易さ)や、地下水の化学的な性質を調査するための技術と装置の開発および、地下構造と地下水の分布の長期的な変化を地表から継続的に観測するモニタリング技術の開発などを進めています。平成13年度は、地下深部地下水調査装置の改良と、地表からのモニタリングのための装置開発および現場試験を実施しました。 
◇ 地質環境の長期安定性に関する研究
 火山、活断層、隆起・沈降などの自然現象や過去の変化に関するデータを集めながら、それらの自然現象が地下深いところの岩盤や地下水に与える影響を調べる方法や技術を整備しています。
 平成13年度は、活断層が認められない地域で発生する地震や地殻変動・侵食作用・海水準変動の複合による地形の変化などについて研究を行いました。また、地下の地質環境が将来どのように変化していくのかを予測する手法の開発を始めました。  
◇ 陸域地下構造フロンティア研究
 平成8年度から平成12年度までの第1フェーズ研究成果の外部評価を反映して、第2フェーズの研究を開始しました。第2フェーズでは、地震が発生する地下深部を監視・観測するためのアクロス(精密制御定常信号システム)の研究開発と、活断層がどの様に発達し周辺にどの様な影響を与えるかを知るための活断層研究を行います。これらの研究では、東濃鉱山およびその周辺や岐阜県北部の跡津川断層の周辺地域等における調査と観測が基礎となります。
 
開かれた研究体制
 国内外研究機関からの研究員(客員研究員、博士研究員、国際特別研究員)の受け入れ、大学等との共同研究、東濃地震科学研究所との研究協力、ペレトロン年代測定装置による他の機関等から依頼のあった試料の分析などを行いました。
 また、外部研究機関も利用できる施設として、瑞浪インターガーデン用地内に建設した瑞浪地科学研究館の共同研究棟の利用を平成13年4月から開始するとともに、瑞浪地科学研究館の向かいに宿泊施設を建設するため、用地の造成工事を行い、建物の建設工事を開始しています。
 
海外ウラン鉱業権益の移転
 サイクル機構のカナダ現地法人を解散しました。オーストラリアについては、残存権益を売却した後、現地法人を解散し、清算手続きを開始しました。
 
安全管理
 東濃鉱山等の施設及び各種作業、並びに施設周辺の安全確保のため、法令に基づく管理、測定等を行うともに自主保安にも努めています。平成13年末現在で連続無災害日数約4200日を達成しています。また、東濃鉱山の周辺の環境放射線(能)については、法令等に基づく定期的な測定および結果の監督官庁への報告、ホームページへの掲載等を行いました。

 
3.平成14年度の業務計画

地層科学研究 
◇ 超深地層研究所計画
 瑞浪超深地層研究所においては、平成14年度上期には堆積岩中の地下水の様子などを調べるための浅層ボーリング調査(4孔)を行います。下期には、深層ボーリング調査(1,500m程度)を計画しています。また、深層ボーリング調査の開始に先立ち、瑞浪超深地層研究所やその周辺における断層の存在など地下の大まかな状態を把握するため、地上で地質調査を行うとともに、主に瑞浪超深地層研究所周辺の道路沿いに測線を設定して人工的な地震波を利用した物理探査を行います。
 正馬様用地においては、地下の状態をより詳しく把握するために、既存のボーリング孔を少し深く掘り下げ、それを利用した鉛直物理探査を行います。また、既存の深層ボーリング孔に地下水を長期観測するためのモニタリング装置を再設置します。さらに、表層水理および地下水の長期観測を継続します。
 一方、施設建設については、平成14年度の7月頃から、瑞浪超深地層研究所の造成工事に着工する予定です。また平成15年度から予定している研究坑道基礎の掘削工事に向けて、平成14年度には掘削用の櫓などの地上施設の製作を開始していきます。更に並行して、瑞浪超深地層研究所の構内整備も行っていく予定です。  
◇ 広域地下水流動研究
 既存のボーリング孔を利用した水理調査を行うとともに、地下水を長期観測するためのモニタリング装置を設置します。また、地下の大まかな状態を把握するために人工的な地震波を利用した物理探査を行います。平成14年度下期には、地下水の状態などを把握するため、深層ボーリング調査(2孔)を開始します。この他、新たに河川流量の観測を行うとともに、従来から行ってきた表層水理および地下水の長期観測を継続します。これらの結果を用いて地下水の流れを予測するための解析を行います。
◇ 東濃鉱山における試験研究
 岩盤力学に関する研究では、開発した応力測定技術の性能試験および長期岩盤挙動の坑内観測を行います。坑道周辺の地質環境に関する研究では、坑道のまわりの地下水の長期観測を行います。また、平成14年度からはナチュラルアナログ研究として、平成13年度までの物質移動・固定および月吉断層に関する研究を継続し、ウラン鉱床を長期間にわたり保存している地層の特性なども研究します。
◇ 調査技術の開発
 地下深部地下水調査装置の改良を継続し、坑道掘削時調査用機器の開発を開始します。また、地表からのモニタリングのための現場試験を継続し、解析ソフトウェアと装置の開発整備を行います。 
◇ 地質環境の長期安定性に関する研究
 平成13年度に引き続いて、自然現象(火山、活断層、隆起・沈降など)や過去の変化に関するデータを集めながら、それらの自然現象が地下深いところの岩盤や地下水に与える影響を調べる技術や方法を整備します。また、地下の地質環境が将来どのように変化していくのかを予測する手法の開発を継続して行います。
 また、地震研究については、陸域地下構造フロンティア研究の第2フェーズを継続します。アクロス研究では、機器の精度と解析技術を高める研究と合わせて、それらの有効性を確かめるため、東濃鉱山およびその周辺における観測試験の強化を図ります。また、活断層研究では、平成13年度に強化した測地用GPS観測網による跡津川断層周辺の大地の動きの精密観測の他、地震観測や地質調査により、活断層の性質とその影響を研究します。
 
開かれた研究体制
 国内外研究機関からの研究員(客員研究員、博士研究員、国際特別研究員)の受け入れ、大学等との共同研究、東濃地震科学研究所との研究協力、ペレトロン年代測定装置による他の機関等の依頼のあった試料の分析等を通じ、東濃地科学センターを開かれた研究施設としていきます。
 また、大学との連携強化を図る一環(連携大学院制度)として金沢大学と「金沢大学大学院自然科学研究科の教育研究に対する連携・協力に関する協定」を締結いたしました。
 瑞浪インターガーデン用地内の瑞浪地科学研究館の向かいに建設中の宿泊施設については、引き続き建設工事を行い、平成15年3月に竣工の予定です。
 
海外ウラン鉱業権益の移転
 オーストラリア現地法人の清算を完了します。
 
安全管理
 東濃鉱山等の施設及び各種作業については、従来からの法令に基づく管理、測定等を行うとともに自主保安にも努め、安全を確保していきます。また、周辺の環境放射線(能)については、従来からの定期的な測定および報告を継続するとともに、情報開示にも努めます。
以 上
 
・超深地層研究所計画(1) 
・超深地層研究所計画(2) 
・超深地層研究所計画(3) 
・超深地層研究所計画(4) 
・広域地下水流動研究 
・東濃鉱山における調査試験研究 
・調査技術の開発 
・地質環境の長期安定性に関する研究