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国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発

投稿論文・雑誌(平成26年度分)

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全項共通(国内国外)/人工バリア等の信頼性向上に関する研究(国内国外)/安全評価手法の高度化に関する研究(国内国外)/地質環境特性調査・評価手法に関する研究(国内国外)/地質環境の長期的安定性に関する研究(国内国外) /使用済燃料直接処分に関する研究(国内国外)

全項共通

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 投稿、発表先 発表年
大澤英昭、仙波毅、牧野仁史

放射線被ばくの健康影響リスクに関するコミュニケーションの実践 —福島第一原子力発電所事故の電話相談窓口の経験による環境教育素材の例示—

本論文では、福島県が開設した電話による住民問い合わせ窓口への協力の一派遣者としての実践経験に基づき、放射線に関する質問内容とその時系列的な変遷を分析する。その結果に基づき、事故直後のリスクコミュニケーションにおいては、リスク認知の進展に応じて、リスクの大きさだけではなく、それに対して有効な対処方法を伝えていくことが重要であるといった教訓を報告する。

環境教育 Vol.24 No.3 pp.74-90 2015
大友章司、大澤英昭、広瀬幸雄、大沼進

福島原子力発電所事故による高レベル放射性廃棄物の地層処分の社会的受容の変化

福島原子力発電所事故が高レベル放射性廃棄物の地層施設の社会的受容に及ぼした影響を検討した。福島原子力発電所事故前の2011年2月と事故後の2012年2月に、日本においてネット調査を行い、1,930人の有効回収数を得た。その結果、地層処分施設の立地調査の社会的受容は低下していた。また、世代間主観的規範、社会的便益及び手続き公正さは、事故前後で一貫して地層処分施設の立地調査の受容に影響を与えていた。一方で、事故前の社会的スティグマや世代間主観的規範など倫理的側面である要因は、事故後のそれらに影響を与えていず、事故前後で全く異なる評価をしたものと考えられる。このようなことから、福島原子力発電所事故によって、人々は地層処分の問題をより倫理的な問題として捉える側面が顕在化したと考えられる。

日本リスク研究学会誌 Vol.24 No.1 pp.49-59 2014
杉原弘造

高レベル放射性廃棄物の地層処分

高レベル放射性廃棄物の地層処分に関して、地層処分概念、国の政策、事業、研究開発の概要と経緯、原子力機構における研究開発の経緯と現状、深地層の研究施設計画の概要と調査研究例を紹介する。

岩の力学フォーラム 東京
岩の力学 50年の歩みと未来への展望 pp.113-116
2014
大澤英昭

リスク理解のための双方向リスクコミュニケーション

「リスクガヴァナンスの社会心理学」の7章に、遺伝子組換え農作物に関するコンセンサス会議と吉野川第十堰の可動化計画を例に、市民と専門家が段階的にリスクコミュニケーションを行うことにより、相互に、どのようにリスクの理解を深めたのか、お互いにどのような役割を果たすことができたのかを紹介する。

リスクガヴァナンスの社会心理学 (第7章) pp.121-137 2014
大澤英昭

NIMBY的特徴を有する社会リスクのガヴァナンス

「リスクガヴァナンスの社会心理学」の8章に、NIMBY的特徴を有する社会的リスクの1つとしてHLW地層処分を取り上げ、社会的リスクのNIMBY的特徴とそれをもたらす要因を紹介する。

リスクガヴァナンスの社会心理学 (第8章) pp.139-154 2014

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人工バリア等の信頼性向上に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
津田秀典

ボーリング割れ目柱状図と割れ目系孔間断面図 —グリムゼル岩盤試験場での事例—

地層処分のグラウト注入工では、高レベル放射性廃棄物の埋立てを想定した地下1000m程度までの岩盤割れ目の具体的な存在状態や集合形態を、地質調査の初期段階で限られた岩盤ボーリング調査から明らかにする必要があり、このことは基礎的な課題としてグラウト注入のモデリングや設計施工の成否にかかっている。そこで本論では実物のボーリングコアを模擬した割れ目柱状図を導入し、割れ目の断面記載から孔間・孔外にわたる割れ目の全体像を概観することを試みた。割れ目柱状図により、体系的にどこにどのような割れ目があり、それらがどのように組合さり割れ目集合帯をなしているかを示すとともに、地質・岩級との対応関係を明らかにした。調査の初期段階において、このようにしてみえてくる割れ目の全体像の提示は、後続の詳細調査解析や原位置試験に役立つと考えられる。

応用地質 Vol.55 No.5 pp.216-228 2014
羽柴公博、福井勝則、杉田裕、真田昌慶

稚内層珪質泥岩の力学特性

珪藻土や、それが変成作用により岩石化した珪質岩は、北海道から秋田県、能登半島、隠岐諸島へかけて日本海側に広く分布しており、珪質岩の岩盤中に構造物を建設する際には、その力学特性を把握しておく必要がある。本研究では、北海道天塩郡幌延町の地下深部に分布する珪質岩である稚内層珪質泥岩を用いて、一軸圧縮試験、圧裂引張試験、乾燥収縮試験、時間依存性挙動と強度回復特性を調べる試験を行った。その結果、変形・破壊特性におよぼす水分の影響が大きく、試験室の標準的な環境下で乾燥させるだけで、最大で0.9%程度の軸方向の収縮歪が生じ、強度が2倍程度になることがわかった。時間依存性挙動と強度回復特性に関しては、岩石としては標準的な特性を持っていることがわかった。

原子力バックエンド研究 Vol.21 No.2 pp.75-82 2014

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安全評価手法の高度化に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
三ツ井誠一郎

境矢石遺跡出土鉄器の非破壊分析

鳥取県南部町境矢石遺跡からは見掛け上保存状態の良い考古学的鉄製品が多数出土している。これら出土した鉄製品の腐食状態を把握するため、蛍光エックス線(XRF)及びエックス線回折(XRD)、エックス線コンピュータトモグラフィ(X線CT)を用いた非破壊分析を行った。また比較のため、保存状態の悪い博労町遺跡から出土した鉄製品についてもあわせて分析を行った。その結果、境矢石遺跡と博労町遺跡の鉄製遺物の腐食状態の違いは両遺跡の立地場所の違い、すなわち丘陵部と海浜部における埋蔵環境条件の違い、を反映していることが示唆された。

一般財団法人米子市文化財団埋蔵文化財発掘調査報告書6 一般国道180号(南部バイパス)道路改良工事に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書X 鳥取県西伯郡南部町 境矢石遺跡 第2分冊 pp.35-48 2015
三ツ井誠一郎

鳥取市良田中道遺跡出土袋状鉄斧の埋蔵環境と腐食

2012年6月に鳥取市良田中道遺跡の古墳時代以降の水田土壌から出土した袋状鉄斧は、原形を留めるなど遺存状態が良好であった。この要因を調べるため、埋蔵環境と腐食状態に関する調査・分析を実施した。埋蔵環境として、湧水水質(酸化還元電位、溶存酸素濃度等)の分析、鉄電極の腐食速度(自然腐食速度)等の測定を現地で実施した。鉄斧の腐食状態については、X線CT装置を用いた腐食層厚の計測、ポータブルX線回折・蛍光X線分析装置を用いた鉄斧表面の腐食生成物等の分析を実施した。その結果、腐食生成物層の厚さはおおむね1mm前後であり鉄斧内部は金属鉄であること、表面に生成した菱鉄鉱(FeCO3)が腐食反応を抑制していた可能性があることなどを確認した。

一般国道9号(鳥取西道路)の改築に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書]Z 鳥取県鳥取市 良田中道遺跡 pp.221-230 2015
三ツ井誠一郎

妻木晩田遺跡出土鉄器の埋蔵環境と腐食

鳥取県西伯郡大山町富岡・妻木・長田から米子市淀江町福岡に所在する国内最大級の弥生集落遺跡である妻木晩田遺跡からは鉄製品が多数出土している。これら出土した鉄製品の腐食状態を把握するため、蛍光エックス線(XRF)及びエックス線回折(XRD)、エックス線コンピュータトモグラフィ(X線CT)を用いた非破壊分析を行った。また、腐食と埋蔵環境の関係の参考情報とするため、発掘調査が実施されていた箇所において埋蔵環境調査を行った。その結果、X線CT分析により測定した腐食層厚は遺跡にて測定したプローブ腐食速度から推定される腐食量と較べて1〜2桁程度小さく、鉄遺物表面に検出された腐食生成物が腐食反応を抑制していたことが示唆された。

妻木晩田遺跡発掘調査研究年報2014 pp.27-44 2015
X. Liu, J. Ahn and F. Hirano

Conditions for criticality by uranium deposition in water-saturated geological formations

The present study focuses on neutronic analysis to determine the criticality conditions for uranium depositions in geological formations resulting from geological disposal of damaged fuels from Fukushima Daiichi reactors. MCNP models are used to evaluate the neutron multiplication factor (keff) and critical mass for various combinations of host rock and geometries. It has been observed that the (keff) of the deposition become greater with (1) smaller concentrations of neutron-absorbing materials in the host rock, (2) larger porosity of the host rock, (3) heterogeneous geometry of the deposition, and (4) greater mass of uranium in the deposition. The present study has revealed that the planar fracture geometry applied in the previous criticality safety assessment for geological disposal would not necessarily yield conservative results against the homogeneous uranium deposition.

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.52 No.3 pp.416-425 2015
A. Kitamura and A. Kirishima

Recent activities in the field of nuclear waste management

日本原子力学会英文論文誌(Journal of Nuclear Science and Technology)では、放射性廃棄物処理、放射性廃棄物処分と環境、原子力施設の廃止措置技術など、放射性廃棄物処理処分に関する様々な分野を包含している。本報では近年の動向について紹介する。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.52 No.3 pp.448-450 2015
Y. Tachi, M. Ochs and T. Suyama

Integrated sorption and diffusion model for bentonite. Part 1: clay-water interaction and sorption modeling in dispersed systems

ベントナイト中の放射性核種の長期移行挙動を評価するために、統合収着・拡散モデルを開発した。この統合モデル開発において、粘土の表面化学と核種収着を整合的に記述するため、双方で比較的単純なモデルとパラメータを一貫して用いた。特に圧縮ベントナイトへ適用する観点から、1サイトの静電補正を考慮しない表面錯体モデルと1サイトのイオン交換モデルを組合せた単純なモデルを選定した。このモデルの基本パラメータは、精製モンモリロナイトの酸塩基滴定データに基づき評価した。さらに、Np(X), Am(V), U(Y)を対象に、pH、イオン強度、炭酸濃度といった地球化学条件をカバーする収着データセットを抽出し、収着反応の基本定数を導出した。これらの核種の収着データは、溶存化学種の変化との整合も念頭に、炭酸系化学種を含む一連の表面化学種を考慮することによって、定量的に再現することができた。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.51 No.10 pp.1177-1190 2014
Y. Tachi, K. Yotsuji, T. Suyama and M. Ochs

Integrated sorption and diffusion model for bentonite. Part 2: porewater chemistry, sorption and diffusion modeling in compacted systems

圧縮ベントナイトに対する統合収着・拡散モデルを、間隙水化学モデル、熱力学的収着モデル、電気二重層に基づく拡散モデルを整合的に組合せることにより構築した。この統合収着・拡散モデルは、複雑な化学形をとるアクチニド(炭酸錯体が形成される条件下でのNp(X), Am(V), U(Y)を対象に、公開された拡散・収着データ(Da, De, Kd)の部分モンモリロナイト密度依存性に対し適用が検討された。その結果、以前に報告している1価の陽イオン(Cs+, Na+)や陰イオン(Cl-, I-, TcO4-)と同様に、実測データとモデルとの整合性が確認された。以上より、統合収着・拡散モデルは、圧縮ベントナイト中の複雑な化学種の収着・拡散挙動の評価にも適用することが可能であるといえる。

Journal of Nuclear Science and Technology Vol.51 No.10 pp.1191-1204 2014

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
T. Ishidera, S. Kurosawa, M. Hayashi, K. Uchikoshi and H. Beppu

Diffusion and retention behavior of Cs in illite-added compacted montmorillonite

本研究では、イライトを添加した圧縮モンモリロナイト中でのCsの収着拡散挙動について、透過拡散試験により検討を行った。その結果、イライトの添加により圧縮モンモリロナイト中でCsの分配係数の増加が観察されたが、実効拡散係数の増大は観察されなかった。本試験に用いたCsトレーサーの濃度の領域では、CsはFrayed Edge Site(FES)に支配的に収着していると推測される。そのため、イライト中のFESに収着したCsについては、表面拡散による実効拡散係数の増大は無視できることが確認された。

6th Clays in Natural and Engineered barriers for Radioactive Waste Confinement Brussels (Belgium)
Clay Minerals Vol.51 pp.161-172 (2016)
2015
Y. Yoshida, T. Nakazawa and H. Yoshikawa

Partition coefficient of Ra in witherite

ラジウムの毒重石に対する元素分配係数をフリードリフト法を用いた共沈実験により決定した。元素分配係数は(1.3±0.7)×10-1となった。毒重石の結晶内のバリウムとラジウムのイオン半径は同程度であるので、ラジウムは毒重石に取り込まれやすいと予想され、元素分配係数も大きな値になると考えられていた。しかし、測定された元素分配係数は小さいものであった。炭酸により制限される結晶のサイズが、ラジウムを取り込むには十分に大きくないためであると考えられる。

Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry Vol.303 No.1 pp.147-152 2015
D. Rai, A.R. Felmy, D.A. Moore, A. Kitamura, H. Yoshikawa, R. Doi and Y. Yoshida

Thermodynamic model for the solubility of BaSeO4(cr) in the aqueous Ba2+-SeO42--Na+-H+-OH--H2O system: Extending to high selenate concentrations

セレン酸ナトリウム水溶液(濃度0.001〜4.1mol.kg-1)中におけるセレン酸バリウムの溶解度を、室温(296±2K)および窒素ガス雰囲気において研究した。本溶解度測定は過飽和および不飽和の両側から実施し、実験期間を3〜596日とした。得られた実験結果を解釈するためにSITおよびピッツァーのイオン相互作用モデルを使用し、両モデルによる予想値が実験値によく一致していることを確認した。

Radiochimica Acta Vol.102 No.9 pp.817-830 2014
D. Rai, A.R. Felmy, D.A. Moore, A. Kitamura, H. Yoshikawa, R. Doi and Y. Yoshida

Thermodynamic model for the solubility of Ba (SeO4, SO4) precipitates

セレン酸バリウムおよび硫酸バリウム混合沈殿物の溶解度について、セレン酸バリウムのモル分率を0.0015〜0.3830に変化させ、最長302日間の測定を行った。実験系は65日以内に平衡(安定)状態に到達した。固液各相の活量係数導出にはピッツァーのイオン相互作用モデルを用いた。熱力学解析の結果、実験結果はギブズ-デュエムの式を満足せず、単一の固液の反応がセレン酸および硫酸濃度を支配しているわけではないことがわかった。得られたバリウム、セレン酸および硫酸の各濃度は、セレン酸バリウムの理想固溶体で説明でき、やや結晶性の低い硫酸バリウム固相が硫酸濃度を支配していると説明できる。これらの実験においては、固溶体中の硫酸バリウムの成分は、液相に対して熱力学的な平衡に到達しない。実験値の熱力学解釈では、本研究における実験条件全体にわたって、セレン酸バリウムの理想固溶体とやや結晶性の低い硫酸バリウム固相の両方が互いに平衡状態となっていることが示される。

Radiochimica Acta Vol.102 No.8 pp.711-721 2014
Y. Tachi and K. Yotsuji

Diffusion and sorption of Cs+, Na+, I- and HTO in compacted sodium montmorillonite as a function of porewater salinity: Integrated sorption and diffusion model

放射性廃棄物地層処分の安全評価において重要となる圧縮ベントナイト中の核種の収着・拡散挙動を把握・評価するため、圧縮モンモリロナイト中のCs+, Na+, I-, HTOの収着・拡散挙動に及ぼす間隙水の塩濃度影響を、実験とモデルの両面から検討した。密度800kg/m3の圧縮モンモリロナイト中の実効拡散係数(De)と分配係数(Kd)を、異なる塩濃度条件下(0.01-0.5M)で取得した。Deは陽イオン濃集と陰イオン排除の効果を示し、この効果は塩濃度とともに大きく変化した。CsとNaのKdも塩濃度とともに大きく変化した。一方、見かけの拡散係数(Da)は塩濃度によってあまり変わらなかった。これら一連の試験結果は、イオン交換収着モデル、狭隘間隙中の電気二重層を考慮した拡散モデルを統合した統合収着拡散(ISD)モデルによって解釈された。このISDモデルを、さらに圧縮ベントナイト中の1価の陽イオンと陰イオンの拡散データに適用し、幅広い密度条件下で拡散データを説明可能であることを確認した。

Geochimica et Cosmochimica Acta Vol.132 pp.75-93 2014

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地質環境特性調査・評価手法に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
藤田朝雄

幌延における地層処分研究開発

幌延深地層研究センターで実施中の幌延深地層研究計画と地層処分研究開発に関わる調査研究について紹介する。

基礎工 Vol.43 No.1 pp.81-83 2015
辻正邦、小林伸司、佐藤稔紀、見掛信一郎

瑞浪超深地層研究所における大深度下でのグラウト設計と施工実績および改良効果の評価

瑞浪超深地層研究所では、研究坑道の掘削工事にあたり、湧水・排水処理の低減と安全な施工の観点から坑道周辺のプレグラウチングを実施している。特に大深度地下では、高水圧と低透水性岩盤といった既往の実績がほとんどない条件下であることから、グラウチング技術の開発を行いながら坑道掘削を進めている。深度500mの研究アクセス南坑道の掘削にあたっては、事前に実施した先行ボーリングの調査結果に基づいて湧水量を予測してプレグラウト設計を行った。探り削孔、材料選定、追加孔の設定、チェック孔による確認などを適切に実施し、適宜仕様を見直しながら施工した結果、3.5MPa以上の高水圧下において十分なグラウト改良効果が得られ、設定した許容湧水量を下回った。

第43回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.7-12
2015
高山裕介、佐藤稔紀、尾上博則、岩月輝希、三枝博光、大貫賢二

瑞浪超深地層研究所における再冠水試験計画; 支保工や埋戻し材の地質環境への影響評価を目的とした力学・水理連成挙動の予察解析

日本原子力研究開発機構東濃地科学センターでは、結晶質岩を主な対象とした深地層の科学的研究を実施している。その一環として、瑞浪超深地層研究所の深度500m研究アクセス北坑道において、坑道の冠水に伴う力学・水理・化学特性の長期変化を複合的に把握する技術の開発を目的として、坑道規模の複合試験(再冠水試験)を実施している。本研究では、坑道冠水に先立ち、坑道内で使用する支保工や埋戻し材(コンクリートや粘土(ベントナイト材料))が周辺岩盤へ与える影響を予察的に推定するための、力学・水理連成現象の解析を実施した。本解析結果は、連成現象を把握するための観測機器の配置や、坑道内で使用する坑道の埋戻し材料の仕様等を決定する際の参考にする。

第43回岩盤力学に関するシンポジウム 東京
講演集 pp.313-318
2015
本島貴之、矢吹義生、南出賢司、名合牧人、青柳和平

初期地圧の異方性を有する岩盤における支保設計と計測結果に基づく妥当性検証について

幌延深地層研究計画の一環として堆積軟岩中に周回状の大深度地下施設を建設するにあたり、事前に初期地圧の調査を行って、掘削方向と主応力の方向の関係に応じて支保パターンを変更する経済設計を試みている。さらに筆者らは、施工時において内空変位の計測を行って掘削方向と内空変位計測結果の関係を整理し、事前に調査を行った初期地圧測定結果が妥当であったかを念頭に、計測結果と予測解析結果との比較をおこなった。その結果、両者の間は正の相関が認められ、値の大小についても変形係数の設定値と実測値との差から想定される範囲に収まっていることが確認された。これらのことから、地上からの調査で実施した初期地圧の測定結果はほぼ妥当であるものと確認された。

第24回トンネル工学研究発表会 東京
トンネル工学報告集 第24巻 pp.1-5
2014
青柳和平、津坂仁和、窪田健二、常盤哲也、近藤桂二、稲垣大介

幌延深地層研究所の250m調査坑道における掘削損傷領域の経時変化に関する検討

幌延深地層研究所の250m調査坑道において、弾性波および比抵抗トモグラフィにより、掘削損傷領域の弾性波速度や見掛比抵抗値の経時変化を計測している。弾性波トモグラフィ調査では、坑道掘削に伴い、壁面から約1mの範囲で弾性波速度が低下した。一方、比抵抗トモグラフィ調査では、掘削に伴う顕著な見掛比抵抗値の変化は見られなかった。さらに、坑道壁面の割れ目の観察結果に基づいて、調査領域の三次元割れ目モデルを作成して、坑道掘削後の弾性波トモグラフィ調査で得られる各測線の弾性波速度と割れ目密度の関係を分析したところ、割れ目密度の増大とともに弾性波速度が低下することが明らかとなった。このことから、弾性波トモグラフィ調査と割れ目密度の検討により、掘削損傷領域を適切に評価できることが示された。

土木学会論文集C Vol.70 No.4 pp.412 - 423 2014
笹尾英嗣

ウラン鉱床の分布と産状からみたわが国の地質環境の長期安定性および天然バリアとしての機能

わが国の高レベル放射性廃棄物の地層処分概念では、地質環境には長期的な安定性、人工バリアの設置環境および天然バリアとしての機能が期待されている。本研究では、ウラン鉱床を地層処分システムのアナログとみなして、わが国の地質環境がこれらの機能を有することの例証とするため、わが国のウラン鉱床の分布と母岩に関する情報をまとめた。ウラン鉱床は様々な年代の地質体に胚胎し、ウランの大部分は粘土、褐鉄鉱などに収着して存在すること、酸化帯では二次鉱物としてウランが固定されていることがわかった。ウラン鉱床を保存してきた地質環境は地質学的な時間スケールで安定に還元環境を保持してきたと推定されることから、地層処分に適した地質環境は広く分布することが示唆される。さらに、ウランの産状からは天然バリア機能の一つである核種の移行を遅延する機能が示唆されることから、日本列島の様々な地質環境において天然バリア機能が期待される。

地質学雑誌 Vol.120 No.10 pp.345-359 2014
石橋正祐紀、安藤友美、笹尾英嗣、湯口貴史、西本昌司、吉田英一

深部結晶質岩における割れ目の形成・充填過程と透水性割れ目の地質学的特徴 —土岐花崗岩を例として—

高レベル放射性廃棄物の地層処分では、長期的な透水性構造の変遷を考慮する必要がある。そのため、本研究では透水性割れ目の特徴に着目し、地下約300mの水平坑道から取得したデータに基づいて、透水性割れ目の変遷について検討を行った。その結果、深度300mの坑道では1670本の割れ目が認められ、そのうち約11%の割れ目が透水性割れ目であった。透水性割れ目のうち、グラウト材で充填されるような割れ目は、割れ目周辺母岩の変質が顕著ではなく、方解石で充填される。一方で、グラウト材で充填されていないが、少量の湧水を伴う割れ目は、水みちとして機能していないと考えられるシーリング割れ目と類似した特徴を示す。割れ目充填鉱物と割れ目周辺母岩の変質に基づくと、これらの割れ目は、花崗岩の貫入・定置(ステージT)後の冷却過程における形成及び熱水活動時期における充填(ステージU)、その後の隆起・侵食に伴う開口・伸長(ステージV)といった履歴が考えられた。また、現在の透水性割れ目は、ステージUにおいて割れ目の充填による透水性の低下を被るが、その後の隆起・侵食に伴う開口又は伸長による透水性の増大によって形成されたと考える。

応用地質 Vol.55 No.4 pp.156-165 2014
升元一彦、渥美博行、岩野圭太、川端淳一、瀬尾昭治、三枝博光、尾上博則、澤田淳

割れ目ネットワークモデルによる地下水流動及び物質移動の解析的評価

割れ目系岩盤を対象とした建設プロジェクトや高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価においては、透水性割れ目の特性を把握し、これを考慮した水理地質構造モデルに基づく地下水流動や物質移動の評価が重要であり、割れ目の地質学的特性や水理学的特性の分布を確率的に表現したモデルである割れ目ネットワークモデル(以下、DFNモデル)が広く適用されている。DFNモデル構築にあたっては、割れ目の地質学的特性や水理学的特性が地下水流動や物質移動現象に与える影響を把握し、重要なパラメータを特定しておくことが重要である。そこで、本研究では、物質移動特性に影響を与える割れ目パラメータ特定に関わる検討の一環として、地質学的パラメータや水理学的パラメータといった割れ目のパラメータ間の関連性の有無がモデル化や解析結果に与える影響を評価するために、パラメータ間の相関を考慮したモデルを構築し、相関を考慮していないモデルとの比較を行った。この結果、相関を考慮することにより移動時間のばらつきが大きくなり、相関を考慮することの重要性が示された。

鹿島技術研究所年報 Vol.62 pp.21-26 2014
笹尾英嗣

ウラン鉱床の分布から見た地質環境の安定性

安心安全科学アカデミーでの話題提供の内容をまとめたものであり、わが国の地質体における地質環境(還元性)の長期安定性と、地質環境が有する天然バリア機能の例証として、わが国のウラン鉱床の分布と産状を述べた。この中では、ウラン鉱床は様々な年代の地質体に胚胎し、ウランの大部分は粘土、褐鉄鉱などに収着して存在すること、酸化帯では二次鉱物としてウランが固定されていること述べた。また、ウラン鉱床を保存してきた地質環境は地質学的な時間スケールで安定に還元環境を保持してきたと推定されることから、地層処分に適した地質環境は広く分布することが示唆されることを示した。これらの点から、ウラン鉱床は多様な地質体で認められることから、地質学的な変動帯に位置するわが国の地質体においても、安定な地質環境が存在するとともに、鉱物化と吸着といった物質の移動を遅延し、また固定する機能が期待されることを示すことを述べた。

ESI-NEWS Vol.32 No.4 pp.155-162 2014
佐藤稔紀、見掛信一郎、納多勝、小林伸司

深度500mまでの施工実績にもとづく立坑掘削技術の評価 瑞浪超深地層研究所研究坑道掘削工事

日本原子力研究開発機構では、岐阜県瑞浪市の瑞浪超深地層研究所において研究坑道の掘削を伴う調査研究を実施している。研究所は2本の立坑と複数の水平坑道群からなる地下施設で、現在、深度500mまで掘削が進んでいる。本報告では、これまでの施工実績に基づいて、湧水抑制対策と地山崩落対策について評価した結果を示す。湧水抑制対策では、立坑坑底からアンブレラ型の注入孔を配置してプレグラウトを実施し、所定の透水係数の改善が見られた。地山崩落対策では、ロックボルトによる補強工とシリカレジン注入による先受け工を組み合わせて、断層に沿った立坑掘削を安全に行った。いずれの対策工も、立坑掘削機械であるシャフトジャンボを用いて実施することにより、立坑掘削のショートステップ工法の掘削サイクルに効率よく取り入れることが可能である。

トンネルと地下 Vol.45 No.7 pp.501-510 2014
藤田朝雄

幌延深地層研究センターにおける人工バリア性能確認試験

ニアフィールド環境における熱-水-応力-化学連成モデルの確証及び人工バリアの設計・施工技術の確立に向け、幌延深地層研究センターの深度350mの調査坑道において人工バリア性能確認試験を行うこととした。ここでは、幌延深地層研究計画を概説するとともに人工バリア性能確認試験に係る現状及び計画について報告する。

岩の力学ニュース No.111 pp.1-4 2014
加藤信義、津坂仁和、名合牧人、山上順民、松原誠、重廣道子、相澤隆生、亀村勝美

地下構造物建設における地盤・地質情報の三次元化適用事例

近年、地質調査業務において、地質情報の高度利用の観点から、土木構造物の設計や施工に携わる人への情報伝達ツールとして地盤・地質情報の三次元化が採用されてきている。これを踏まえて、本稿では、北海道電力による純揚水式発電所の地下空洞と原子力機構による幌延深地層研究計画の地下施設の2つの大規模地下施設の設計・施工の事例において、設計の最適化、施工の効率化、高度化、そして、安全の確保のために利用した三次元地質構造・施工情報可視化システムの概要とともに、それぞれの事例における同システムの有用性を記述した。

地質と調査 Vol.139 No.1 pp.17-22 2014

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
K. Koide, H. Osawa, H. Ito, K. Tanai, T. Semba, M. Naito, K. Sugihara and Y. Miyamoto

Current status of R&D activities and future plan and role of JAEA's two generic URLs

原子力機構は高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発を進めており、その一環として日本の多種多様な地質環境に対応するため、深地層の研究施設計画として瑞浪超深地層研究所計画と幌延深地層研究計画を立ち上げた。瑞浪では結晶質岩を対象に深地層の科学的研究を実施している。一方、幌延では堆積岩を対象に深地層の科学的研究と地層処分研究開発を実施している。両プロジェクトとも、計画を「地上からの調査研究段階(第1段階)」「坑道堀削時の調査研究段階(第2段階)」「地下施設での調査研究段階(第3段階)」の3つの段階に分けて進めており、計画全体の期間は約20年である。現在、研究坑道の堀削工事は、瑞浪では深度500mまで、また、幌延では深度350mまで終了している。今後、両プロジェクトでは、地質環境の長期変遷に関する研究を含む第3段階の研究を進めるとともに、深地層の研究施設を地層処分分野の研究者・技術者の育成、国民との相互理解促進、国際協力(特に日本と同様な地質環境をもつ国々)の場として活用していく。

International Waste Management Symposia 2014 (WM 2015) Phoenix (USA) Proceedings of WM 2015 (Internet) 15 pages 2015
T. Munemoto, K. Omori and T. Iwatsuki

Distribution of U and REE on colloids in granitic groundwater and quality-controlled sampling at the Mizunami underground research laboratory

Colloids and their association with analogue elements (U and rare earth elements: REEs) in deep granitic groundwater were investigated at the Mizunami Underground Research Laboratory (MIU). From the perspective of the mobilization of colloids, technical methods for the quality control of groundwater and colloid sampling were proposed. The groundwater and colloids were sampled from boreholes and underground excavations by ultrafiltration by using different pore size membrane.

Progress in Earth and Planetary Science
1:28 doi:10.1186/s40645-014-0028-z
2014
Y. Suzuki, Y. Konno, A. Fukuda, D. Komatsu, A. Hirota, K. Watanabe, Y. Togo, N. Morikawa, H. Hagiwara, D. Aosai, T. Iwatsuki, U. Tsunogai, S. Nagao, K. Ito and T. Mizuno

Biogeochemical signals from deep microbial life in terrestrial crust

土岐花崗岩が対象として掘削された深層ボーリング孔において、深部地下水中の微生物特性の調査を行った。その結果、低硫酸濃度環境下において、微生物的硫酸還元に伴う硫黄同位体分別が認められた。また、硫黄同位体分別の大きな同位体比および炭素同位体比は、メタン生成菌の活性が低いことを示唆した。これらの特徴は、低栄養環境である深部火成岩中の微生物生態系の特徴と考えられた。

PLoS ONE (Internet) Vol.9 No.12 p.e113063_1 - e113063_20 2014
D. Aosai, Y. Yamamoto, T. Mizuno, T. Ishigami and H. Matsuyama

Size and composition analyses of colloids in deep granitic groundwater using microfiltration/ultrafiltration while maintaining in situ hydrochemical conditions

地下水中のコロイドを対象とした研究では、サンプリングの過程における大気への暴露や圧力解放よりコロイドの特性が変化することが問題となっている。本研究では、原位置の環境を維持した状態で地下水を限外ろ過しつつ、コロイドをサンプリングする手法を開発した。また、開発した手法を瑞浪深地層研究所の地下施設から得られる地下水に適用した。その結果、地下水中のコロイドは主にFe, Al, Mg, Siから成る無機コロイドおよび有機コロイドからなり、様々なサイズに分布していることがわかった。また、これらのコロイドが希土類元素と錯体を形成し、特に10kDaから0.2μmの画分に存在するコロイドと軽希土類元素が錯形成していることが明らかとなった。

Colloids and Surface A: Physicochemical and Engineering Aspects Vol.461 pp.279-286 2014
K. Aoyagi, K. Tsusaka, S. Nohara, K. Kubota, T. Tokiwa, K. Kondo and D. Inagaki

Hydrogeomechanical investigation of an Excavation Damaged Zone in the Horonobe Underground Research Laboratory

In a construction of a deep underground facility such as repository for high-level radioactive waste (HLW) disposal, significant changes in hydrogeomechanical properties around a gallery are expected. This zone is called an Excavation Damaged Zone (EDZ). For the safety of HLW disposal, it is necessary to investigate extent and hydrogeomechanical characteristics of an EDZ. In this research, the authors conducted in situ surveys such as seismic refraction survey, geological observation around a gallery, borehole television survey, and hydraulic tests in the Horonobe Underground Research Laboratory. From the results of those surveys, the authors concluded that the extent of the area with high-density of fractures and high hydraulic conductivity was estimated to be about 0.2 to 1.2 m into the gallery wall. The authors also compiled the information of the extent of an EDZ and hydrogeomechanical properties inside and outside of an EDZ as a conceptual model. Since the conceptual models provide the basic idea for determining flow and solute transport in an EDZ, the result of this research provides a useful data for a safety assessment of the HLW disposal.

8th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS8) Sapporo (Japan)
Proceedings of ARMS8  (USB Flash Drive) 8 Pages
2014
D. Asahina, K. Aoyagi, K. Tsusaka, J. E. Houseworth and J. T. Birkholzer

Modeling damage processes in laboratory tests at the Horonobe Underground Research Laboratory

We present ongoing collaborative work applying a rigid-body-spring network (RBSN), a special type of lattice model, to simulate laboratory experiments conducted in the Horonobe Underground Research Laboratory (URL) in Japan. The Horonobe URL Project, which began in 2001, has developed a URL at a depth of about 350 m in a sedimentary rock called the Koetoi and Wakkanai formation. The basic capabilities of RBSN modeling are demonstrated through two standard laboratory tests: (1) split-cylinder (Brazilian) test; and (2) uniaxial compression test. Bulk material properties (i.e., Young's modulus, the strength parameters such as tensile strength, cohesion, and internal friction angle) estimated by the experiments are directly used for the mechanical parameters of springs. Tensorial representations of stress are obtained within the lattice elements and compared with Mohr-Coulomb failure criteria for fracture simulation. Agreement between the numerical and laboratory test results is good with respect to stress development, tensile/compressive strength, and fracture pattern, under the assumption of homogeneous systems using the RBSN model. The connection of hydraulically active fractures is also addressed for both of the simulation studies.

8th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS8) Sapporo (Japan)
Proceedings of ARMS8  (USB Flash Drive) 9 Pages
2014
H. Sanada, T. Sato, Y. Horiuchi, S. Mikake, M. Okihara, R. Yahagi and S. Kobayashi

Analysis of Excavation Cycle Time during Sinking of the Ventilation Shaft at the Mizunami Underground Research Laboratory

日本原子力研究開発機構では、高レベル放射性廃棄物地層処分技術に関する研究開発を実施しており、その一環として超深地層研究所計画を実施している。本計画において、換気立坑掘削の際にサイクルタイムのデータを取得して設計段階で設定したデータと比較した。その結果、実際のサイクルタイムは設計時の2から3倍長くかかっていることが明らかになった。

8th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS8) Sapporo (Japan)
Proceedings of ARMS8  (USB Flash Drive) 7 Pages
2014
M. Tsuji, S. Kobayashi, J. Funehag, T. Sato and S. Mikake

Comparison of grouting with silica sol in the Äspö Hard Rock Laboratory in Sweden and Mizunami Underground Research Laboratory in Japan

溶液型シリカは環境影響が少なくかつ開口幅の小さな割れ目にも浸透する。スウェーデンにおいては、溶液型シリカに関する研究や適用例が最近増えており、割れ目の透水性と理論的な浸透長さによってグラウトの設計が行われる。2008年にはエスポ岩盤研究所の深度450mのトンネルにおいて、2010年には瑞浪超深地層研究所の深度300mにおいて溶液型シリカを用いたグラウトが実施された。双方のグラウトの結果を比較すると、割れ目密度の大きい日本においてもスウェーデンのグラウト技術は適用が可能であり、日本特有のグラウト手法もスウェーデンにおけるグラウト品質の向上に役立つと期待される。

8th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS8) Sapporo (Japan)
Proceedings of ARMS8  (USB Flash Drive) 10 Pages
2014
T. Sato, S. Mikake, S. Kobayashi and M. Tsuji

Status of grouting to reduce groundwater inflow into deep shafts and galleries in the Mizunami Underground Research Laboratory, Japan

日本原子力研究開発機構では、高レベル放射性廃棄物地層処分技術に関する研究開発を実施しており、その一環として超深地層研究所計画を実施している。この計画の中で、施工対策技術として湧水抑制対策技術に関する研究を実施している。瑞浪超深地層研究所の立坑や水平坑道においてグラウトを実施し、普通セメントで2ルジオン、超微粒子セメントで0.2ルジオン、溶液型シリカでは0.29ルジオンという透水性を達成することができた。

8th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS8) Sapporo (Japan)
Proceedings of ARMS8  (USB Flash Drive) 10 Pages
2014
H. Onoe, T. Iwatsuki, H. Saegusa, K. Ohnuki, R. Takeuchi, H. Sanada, M. Ishibashi and T. Sato

Groundwater Recovery Experiment using an Underground Gallery in Fractured Crystalline Rock

高レベル放射性廃棄物の地層処分のサイト選定にあたっては、処分場周辺の地質環境特性を適切に評価する必要がある。処分場などの大規模な地下施設の建設や長期的な施設運用に伴い、地質環境特性が変化する可能性があり、地層処分の安全評価の観点からは、地下施設閉鎖に伴う地質環境特性の回復過程の評価が重要となる。そこで、原子力機構では結晶質岩における地下水圧や地下水水質の回復過程の評価を目的として、岐阜県瑞浪市に建設している瑞浪超深地層研究所の深度500mにある研究坑道において再冠水試験を計画した。本稿では、再冠水試験の概要および調査の進展状況について示す。

8th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS8) Sapporo (Japan)
Proceedings of ARMS8  (USB Flash Drive) 10 Pages
2014
A. Hayano, S. Matsukawa, Z. Xu and K. Itakura

Application of three-dimensional laser scanning data to acquire geometrical data for fractured rock mass modeling

坑道壁面の地質観察は、亀裂性岩盤のモデル化に用いられる割れ目の幾何学的パラメータの設定に必要となるデータが取得できる調査のひとつである。しかしながら、高レベル放射性廃棄物の処分場建設時に行われる坑道壁面の地質観察は、数キロ四方にわたって展開される坑道群に対して行われることから、観察作業の効率化が必要である。また、地質専門家の経験や知識の違いから生じるデータの品質のばらつきを低減するために、客観的なデータ取得手法を用意することも必要である。これらの課題解決には、三次元レーザスキャナの活用が考えられる。本研究では、三次元レーザスキャナを適用した地質観察手法の整備の一環として、亀裂性岩盤のモデル化に必要となる割れ目の幾何学的データを明確にし、それらデータを三次元レーザスキャナデータから取得することを試みた。その結果、三次元レーザスキャナにより生成した傾斜図と傾斜方位図の目視判読により割れ目が抽出され、その割れ目のトレースマップと走向・傾斜が取得された。そして、地質専門家による観測結果と遜色のない割れ目のトレースマップと割れ目の走向・傾斜を取得することが可能であることが確認できた。

8th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS8) Sapporo (Japan)
Proceedings of ARMS8  (USB Flash Drive) 9 Pages
2014
T. Fujita, M. Nakayama, K. Tanai and Y. Sugita

Current Status & Future Plan for a Full-scale Engineered Barriers System Experiment in the Horonobe Underground Research Laboratory

In the near-field of a geological disposal system for high-level radioactive waste repository, it is anticipated that the coupled thermo -hydro -mechanical and chemical (THMC) processes will occur, involving an interactive process with radioactive decay heat arising from the vitrified waste, infiltration of groundwater from the host rock into the buffer material, swelling pressure of buffer material due to its saturation and chemical reaction of porewater between groundwater and buffer material. In order to validate the newly developed THMC model and to confirm the engineering technology, the in-situ experimental studies on engineered barriers system (EBS) have been planned with a simulated full-scale EBS at 350m level gallery in Horonobe Underground Research Laboratory (URL),Japan. This describes the current status and future plan for EBS experiment including the site features of the Horonobe URL.

8th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS8) Sapporo (Japan) 2014
K. Tsusaka, D. Inagaki, M. Nago and Y. Ijiri

A Study of Mechanical Stability of Support Elements and Surrounding Rock Mass during Shaft Sinking through a Fault

This study describes the analysis performed on the West Access Shaft of the Horonobe Underground Research Laboratory, which was expected to intersect a fault at the depth of approximately 320 m. Field observation, and measurement data were used to determine analysis conditions including magnitude and orientation of in-situ stress, boundary conditions, and rock mass properties. The fault was modeled as having a dip angle of 40 degrees and apparent thickness of 5 m (equivalent to the height of the excavated rock wall). The shaft sinking procedure was simulated using three-dimensional excavation analysis. The excavation involved installing concrete lining at every 2 m span. The analysis considered two cases of maximum in situ principal stress orientation: (1) perpendicular to and (2) parallel to the fault plane orientation. The results of the analysis indicate that the maximum excavation-induced stress, developed in a single-span lining concrete, was in the direction perpendicular to the maximum in situ principal stress orientation, unaffected by the fault plane orientation. The influence of the fault plane orientation on the excavation-induced stress state was found to be significant above and below the fault rather than in the fault. Another observation was that the excavation-induced stress magnitude appeared to be greater when the maximum in situ principal stress orientation was parallel to the fault plane orientation.

8th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS8) Sapporo (Japan)
Proceedings of ARMS8  (USB Flash Drive) 9 Pages
2014
P. Bruines, T. Tanaka, K. Abumi, S. Hashimoto, H. Saegusa, H. Onoe and M. Ishibashi

Development and application of the GeoDFN and HydroDFN at the Mizunami Underground Research Laboratory

This paper presents the methodology for constructing the geological discrete fracture network (GeoDFN) and hydrogeological discrete fracture network (HydroDFN) models using the data from the Surface-based Investigation and Construction Phases of the MIU Project. In particular, a methodology to determine the parameters for GeoDFN and HydroDFN models, such as the fracture transmissivity distribution, fracture size distribution and fracture density, are investigated. The up-scaled equivalent continuous porous media (ECPM) models, taking into account hydraulic heterogeneity at scales of up to several kilometers, have been developed based on the HydroDFN model. The results of groundwater flow analyses using the heterogeneous ECPM and homogeneous CPM hydrogeological models have been compared to confirm the importance of modeling hydraulic heterogeneity for understanding of groundwater flow condition at a scale of several kilometers.

8th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS8) Sapporo (Japan)
Proceedings of ARMS8  (USB Flash Drive) 10 Pages
2014
K. Tsusaka, D. Inagaki, S. Niunoya and M. Jo

An Investigation on Mechanical Properties of In-situ Rock Mass at the Horonobe Underground Research Laboratory

The Japan Atomic Energy Agency (JAEA) has been promoting the Horonobe Underground Research Laboratory Project in Hokkaido since 2001 to enhance the reliability of relevant disposal technologies through investigations of the deep geological environment in sedimentary rocks of Japan. In the project, investigations on mechanical property of in-situ rock mass were conducted in order to evaluate the methodology to build a mechanical dataset of the rock mass based on the results of laboratory tests using rock cores and borehole logs. In this paper, the methodology to be applied for the surface-based investigation around the URL was studied based on the results of in-situ investigation in the galleries at 250 m and 350 m depths.

8th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS8) Sapporo (Japan)
Proceedings of ARMS8  (USB Flash Drive) 9 Pages
2014
K. Miyakawa, T. Nohara, T. Tokiwa and M. Yamazaki

Seven-year history of vertical hydraulic diffusivity related to excavation around an underground facility

地下施設の掘削により比較的大量の地下水が排水されることによって、岩盤中の透水性などの水理パラメータが影響を受ける可能性が考えられる。本研究では、幌延深地層研究所において観測された大気圧と間隙水圧の長期間の観測記録を用いて透水性の経時変化を得るために、スペクトル解析を行った。本研究により、地下施設の掘削が周囲の帯水層へ影響を与え、鉛直方向の水頭拡散率を低下させていることが明らかになった。地下施設から約130m離れた距離では、地下施設の掘削開始から5年間で約70%の水頭拡散率の低下が観測された。また、地下施設から約860mの距離では、間隙水圧の記録には大きな変化が見られていないものの、約26%の水頭拡散率の低下が観測された。これらの結果は、地下水が移動しにくくなる傾向を示しており、地層処分の長期安定性に関して、安全側の評価が示された。

International Journal of Rock Mechanics and Mining Sciences Vol.70 pp.332-342 2014
H. Yokota and S. Tanaka

PRELIMINARY ANALYSIS OF DIPOLE TRACER MIGRATION EXPERIMENTS IN FRACTURED SEDIMENTARY ROCK AT HORONOBE URL OF JAPAN

天然バリアとしての地質環境中の物質の移動メカニズムを把握するために、北海道北部の幌延町にある幌延深地層研究所の250m調査坑道において、稚内層の泥岩中の割れ目を対象に原位置ダイポールトレーサー試験を実施した。一次元の移流分散方程式から導かれる解析解により予備的な解析評価を行った結果、泥岩中の割れ目の表面はCs+とSr2+に対しては可逆的および不可逆的両方の収着特性を示すが、Co2+とEu3+に対しては不可逆的な収着特性のみを示すことが明らかとなった。今後は、室内試験結果との比較を行いながら、詳細解析を進め、堆積岩の持つ収着特性やその収着システムを明らかにしていく。

The 19th Pacific Basin Nuclear Conference (PBNC-2014) Vancouver (Canada)
Proceedings of PBNC2014-385
2014
K. Aoyagi, K. Tsusaka, K. Kondo and D. Inagaki

Quantitative assessment of an Excavation Damaged Zone from variations in seismic velocity and fracture distribution around a gallery in the Horonobe Underground Research Laboratory

高レベル放射性廃棄物地層処分において、掘削損傷領域(EDZ)の評価が重要となる。特にEDZ内部では、掘削に伴い新たに割れ目が発生することが予想される。これらの割れ目が、坑道周辺岩盤の透水性の増大に寄与することが考えられる。そこで、EDZ内部の割れ目密度を調べるために、幌延深地層研究所の地下坑道において、弾性波トモグラフィ調査と、坑道掘削断面ごとに地質観察を実施した。両者の結果の比較により、割れ目密度の増大とともに、弾性波速度がほぼ線形に低下する傾向が示された。また、EDZ内部の割れ目の密度は、単純な数値モデルにより推定可能であることも示された。以上から、本研究は、弾性波トモグラフィ調査結果からEDZ内部の割れ目状態を予想できるという点において、地層処分に対して有意義なデータを提供しているといえる。

2014 ISRM European Rock Mechanics Symposium (EUROCK 2014) Vigo (Spain)
EUROCK 2014 Rock Engineering and Rock Mechanics: Structures in and on Rock Masses Extended Abstract p.151 Full-paper pp.487-492
2014

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地質環境の長期的安定性に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
徳安佳代子、田中和広

現世河川堆積物におけるOSL信号リセット —山口県錦川を例として—

光ルミネッセンス年代測定による堆積物の年代測定において重要な前提条件であるブリーチングが、堆積環境の明らかな日本の現世河川堆積物(洪水氾濫原堆積物とチャネル堆積物)で達成されているか否かについてSAR法を用いた測定により確認するとともに、日本の河川堆積物におけるOSL年代測定の適用性について検討した。その結果、現世河で堆積するまでにリセットされず、鉱物粒子に残存するOSL信号強度(残存強度)は、1.2±0.3〜5.9±3.5Gyであり、6〜0.6kaに相当する。これらの結果から、約10万年前の河成段丘堆積物の年代決定にOSL年代測定法が適用可能であることが推定された。

第四紀研究 Vol.54 No.1 pp.1-9 2015
柴田健二、清水麻由子、鈴木和博

JAEA土岐地球年代学研究所のJEOL FE-EPMA -JXA-8530F-を用いたジルコンのCHIME年代測定

EPMAを使ったジルコンやゼノタイムの年代測定(CHIME年代測定)は、年代情報と組成情報を同時にもたらすことから、岩石の年代決定のほか、後背地解析における堆積物の供給源を特定するための強力なツールとなり得る。しかしながら、特性X線の相互干渉が、CHIME年代測定に必要なU, Th, Pb含有量の定量を困難にしている。従来、X線の発生源(分析点)、分光結晶、検出器を結ぶローランド円の半径(R)が140mmの分光器を使用して、高波長分解能化で干渉の影響を軽減させてきたが、近年主流となっているR=100mmの高計数率の分光器を用いて短時間で精度の高い定量を試みた。さらに、日本電子(JEOL)製の電界放出型電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA)JXA-8530Fを使って、CHIME年代測定への最適化を検討した。なお、本研究は「地質環境長期安定性評価確証技術開発」の一環として実施したものである。

第27回(2014年度) 名古屋大学年代測定総合研究センターシンポジウム 名古屋市
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書 XXVI 2014年度 pp.126-131 (2015/3)
2015
南雅代、高橋浩、荒巻能史、國分陽子、伊藤茂、中村俊夫

水試料の14C比較プログラム(RICE-W)  沈殿法の検討

研究機関による前処理法の違い等による水試料中の溶存無機炭素(DIC)の14C分析値のばらつきを比較・検討するため、水試料の14C比較プログラム(RICE-W: Radiocarbon Intercomparison on Chemical Experiments, Water series)を立ち上げた。まず、予備的に採取したDIC濃度・塩濃度の異なる水試料(表層海水,温泉水,地下水, NaHCO3水溶液)を6機関に配布し、各機関それぞれの化学前処理法によってDIC-14C分析を実施し、現在、得られた結果をもとに、RICE-Wプログラムの本格的始動に向けての基礎検証を行いつつある。本稿においては、RICE-Wプログラムの実施状況を簡単にまとめ、特に沈殿法(SrCl2やBaCl2を添加して炭酸塩を生成させた後、リン酸を添加してCO2を発生させる方法)による結果についてまとめた。その結果、塩濃度の高い水試料に沈殿法を用いた場合、沈殿剤(SrCl2, BaCl2), pH調整剤(NH3, NaOH)によっては、沈殿が生成しにくい場合や、沈殿が生成しても炭素回収率が低い場合、そして現代炭素による汚染を受ける可能性があることが明らかとなり、沈殿法の最適な統一基準を設定する必要性が提示された。

第27回(2014年度) 名古屋大学年代測定総合研究センターシンポジウム 名古屋市
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書 XXVI 2014年度 pp.132-137 (2015/3)
2015
K. Yasue, T. Ishimaru, K. Kobori, K. Umeda and N. Nakatsuka

Subsurface geological mapping of the Japanese islands

日本列島の地下における地質の分布状態および地質構造の概略を全国規模で把握することは、放射性廃棄物地層処分やCO2地中貯留等といった地質環境の長期的利用の観点から重要である。日本列島の地下地質に関する情報としては、既存の地質図幅にいくつかの鉛直断面図として報告されているが、全国レベルでの水平断面図として取りまとめられた例はない。著者らは、2001年より前に公開された地質図・地質断面図・ボーリング等の地下情報を用いて日本列島の海抜0m, -500m, -1000mの水平地質断面図を作成した。また、同データを用いて新第三紀層以上の地層を剥ぎ取った表層地質図を作成した。

地質学雑誌 Vol.120 No.12 pp.XIII - XIV 2014
安江健一、高取亮一、谷川晋一、二ノ宮淳、棚瀬充史、古澤明、田力正好

内陸部における侵食速度の指標に関する検討 : 環流丘陵を伴う旧河谷を用いた研究

侵食は、日本における高レベル放射性廃棄物の地層処分の実現可能性を考える上で、重要な自然現象の一つである。本研究では、侵食速度の指標として、環流丘陵を伴う旧河谷に着目した。この旧河谷は、分布が乏しい流域があるものの、日本列島の各地に分布し、様々な比高を持つことから、侵食速度を算出する際の有効な指標になると考えられる。この旧河谷を用いた事例研究を、熊野川(十津川)の中流域において行った結果、旧河床堆積物を覆う角礫層は最終間氷期以前の堆積物と考えられ、離水年代は12.5万年前かそれより古いと考えられる。この離水年代と旧河床堆積物の現河床からの比高から算出した下刻速度は、約0.9m/kyかそれより遅い可能性がある。より確度の高い侵食速度の算出には、環流旧河谷に分布する旧河床堆積物や斜面堆積物などを対象とした年代測定が今後の課題である。

地質学雑誌  Vol.120 No.12 pp.435-445 2014
M.H.T. Mirabueno, M. Torii, E.P. Laguerta, P.J. Delos Reyes, E.B. Bariso, M. Okuno, T. Nakamura, T. Danhara, Y. Saitou-Kokubu, T. Fujiki and T. Kobayashi

Stratigraphy and AMS Radiocarbon Dates of Cored Sediments (IrBH-2) from the Irosin Caldera, the Philippines

フィリピン、イロシンカルデラ内のIRBH-2で、深度50mのコア試料を0.5mごとに採取して記載した。泥炭質堆積物(深度約7〜10m)から植物片の放射性炭素年代をAMS法により1.1〜1.8kBPを得た。コア試料中では、ラハールと河川堆積物が多く認められた。深度12mまでは、安山岩質の河川堆積物と少量のラハールからなる。深度20〜50mの間に、8枚の降下テフラが挟まっている。テフラの屈折率測定から、後カルデラ火山の活動は、安山岩質〜デイサイト質が主で、流紋岩質の噴火が少量起こったことが示された。流紋岩質テフラとイロシン火砕流の岩石記載学的特徴の類似性は、後カルデラ火山の活動期でも、イロシンカルデラ起源のマグマの噴火が起こったことを示す。上位の火山性堆積物は、得られた放射性炭素年代もあわせて考慮すると、ブルサン火山複合体で唯一活動的であるブルサン火山からもたらされたものと考えられる。

地学雑誌 Vol.123 No.5 pp.751-760 2014
梅田浩司、安江健一、石丸恒存

地層処分と地質環境の長期安定性「地質環境の長期予測と不確実性についての検討例」

地層処分の安全評価に関連する地質学的現象のうち、地殻変動のように変化が遅く、永続性がある現象には、外挿法が有効な予測法と考えられている。外挿法による予測が可能な期間については、過去の傾向がどの程度継続していたかを把握することが重要となる。これまでに得られている様々な地形・地質学的情報によると、概ね中期更新世以降と考えられている。一般に、外挿法のような時系列解析モデルを用いた予測では、一般に過去の期間(N)に成り立っていた関係性は、0.1〜0.2N程度であればそれが継続する確率が高いと考えられていることから、信頼性の高い予測が行える期間は将来10万年程度が目安と考えられる。さらに、国際FEPシナリオのうち、地質の変化に伴う水文学的/水文地質学的変化に着目し、実際のフィールドを例に、地下水理の変動傾向に基づく外挿によって将来予測を試みるとともに、稀頻度のイベントを考慮しつつ予測に伴う不確実性についても検討した。なお、本件は日本原子力学会バックエンド部会からの依頼原稿である。

原子力バックエンド研究 Vol.21 No.1 pp.43-48 2014

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国外
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
Y. Ogawa, M. Ichiki, W. Kanda, M. Mishina and K. Asamori

Three-dimensional magnetotelluric imaging of crustal fluids and seismicity around Naruko Volcano, NE Japan

将来の地層処分システムに重大な影響を及ぼす可能性がある現象の潜在的なリスクを排除するためには、地表からの調査の段階において、地下深部におけるマグマの存否や分布をあらかじめ確認しておくための調査技術が必要となる。本件では、鳴子火山周辺地域を対象として、これまでに原子力機構及び大学等が観測した地磁気・地電流データを統合解析することによって、地殻内の三次元比抵抗構造を推定した。その結果、鳴子火山に供給するマグマ及びそれに関連する高温流体の存在を示唆する低比抵抗体が認められた。この結果は、地磁気・地電流観測がマグマの存否やその三次元的な分布を確認する方法として有効であることを示唆する。

Earth Planets and Space Vol.66 No.1 pp.158_1 - 158_13 2014
K. Umeda, K. Asamori, A. Makuuchi and K. Kobori

Earthquake doublet in an active shear zone, southwest Japan: Constraints from geophysical and geochemical findings

宮崎市南部から霧島火山群を経て鹿児島県北西部に延びる地域は、1997年鹿児島県北西部地震(双子地震)をはじめとする東-西方向の高角左横ずれを示す地震が多数分布する剪断帯として知られている。しかしながら、この地域には活断層を含む明瞭な変動地形が認められないことから、ここでの地殻変動は地質学的に極めて新しい時代に始まったと考えられる。深部比抵抗構造解析および地下水の溶存ガスの希ガス同位体分析によると、沖縄トラフから上昇したアセノスフェアに由来するマントル起源の流体が剪断帯の下に広く存在することが明らかになった。この地域のネオテクトニクスには、マントル起源の流体や霧島火山群下のマグマ等によって生じた地殻の不均質性が関与している可能性がある。

Tectonophysics Vol.634 pp.116-126 2014
Y. Kokubu, A. Matsubara, M. Miyake, A. Nishizawa, Y. Ohwaki, T. Nishio, K. Sanada and T. Hanaki

Progress on multi-nuclide AMS of JAEA-AMS-TONO

日本原子力研究開発機構東濃地科学センターでは、1997年に加速器質量分析施設であるJAEA-AMS-TONOを設置し、14C及び10Be測定を行っている。現在さらに測定核種を増やすため、26Al-AMSの構築を試みている。本発表では、施設の現状とともに現在取り組んでいる多核種AMSへの試みについて報告する。本施設は、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関わる地質環境の長期安定性研究における14C及び10Be年代測定を行うため、14C及び10Be測定を行っている。現在さらに26Al年代測定を可能にすべく、26Al測定のための測定条件の検討及び試験測定を実施している。

13th International Conference on Accelerator Mass Spectrometry (AMS-13) Aix en Provence (France)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B Vol.361 pp.48-53(2015/10)
2014
M. Okuno, K. Wada, M. Torii, T. Danhara, T. Nakamura, Y. Kokubu, L. Gualtieri and S. Brenn

AMS radiocarbon dates for tephra layers in Adak Island, Aleutian Islands, Alaska

アラスカ、アリューシャン列島のアンドレアノフ諸島に属するアダック島は、完新世の土壌-テフラ層に覆われている。テフラ層序はこの島の年代学的枠組みを構築するうえで有効であり、ブラック(1976)は、顕著な3枚のテフラ堆積物(下位よりMain, Intermediate, Sandwich)があると報告している。本研究では、年代学的枠組みを再検討するため、ヘブン湖の近くで採取した泥炭堆積物コアについてAMSによる放射性炭素年代測定及び岩石組織分析を行った。また、スリーアーム湾周辺で採取した木炭も年代測定した。Main, Intermediate, Sandwich, YBO及びForty Yearテフラの噴火年代は、およそ9.5, 7.2, 4.7, 3.6及び0.4cal ka BPであった。

13th International Conference on Accelerator Mass Spectrometry (AMS-13) Aix en Provence (France) 2014
M. Minami, H. Takahashi, T. Aramaki, Y. Kokubu, S. Ito, H. Wada and T. Nakamura

Start on RICE-W (Radiocarbon Intercomparison on Chemical Experiments, Water series) program

水試料中の溶存無機炭素(DIC)の放射性炭素分析のための前処理手法として、沈殿法やバブリング法、ヘッドスペース抽出法がある。これらの前処理手法にはそれぞれ利点欠点がある。そこで、我々は、水中DICの二酸化炭素抽出の過程で炭素同位体分別や汚染があるかどうか確かめるため、水試料の前処理手法の違いによる放射性炭素濃度の相互比較を実施することとした。4種類(表層海水、地下水、温泉水、重炭酸ナトリウム溶液)の8つの水試料を準備し、6つの日本のAMS施設にて相互比較を実施している。本発表では、その結果について報告する。

13th International Conference on Accelerator Mass Spectrometry (AMS-13) Aix en Provence (France) 2014
A. Matsubara, Y. Kokubu, A. Nishizawa, M. Miyake, T. Ishimaru and K. Umeda

Quaternary Geochronology Using Accelerator Mass Spectrometry (AMS) - Current Status of the AMS System at the TONO Geoscience Center

第四紀地質年代学は加速器質量分析AMSによって大きく前進している。それに用いられる代表的な核種として10Be, 14C, 26Al, 36Clがよく知られる。当施設では、それらの核種のAMS測定に向け技術開発を進めている。ここでは当施設の複数核種のAMS測定に向けた取り組みと現状について述べる。

Geochronology: Methods and Case Studies pp.3-30 2014
K. Tokuyasu

Relationships among thermoluminescence color image, impurity concentration and characteristics of OSL signal from quartz grains extracted from sediments in Japan

変動帯に位置する日本では、様々な種類の岩石が分布している。そのため、堆積物中の石英粒子は、様々な種類の源岩からもたらされた石英粒子が混在しており、そのOSL信号特性は源岩の種類に依存すると考えられる。一般的に、fast成分が存在する石英試料を用いることは、正確なOSL年代測定を行うために不可欠である。しかし、日本の河成段丘堆積物の中には、fast成分が検出されたとしても、OSL信号が不安定なために、OSL年代値が若く見積られてしまう場合がある。この問題を理解し、OSL年代測定に適用可能な選択条件を決定するため、OSL信号特性と試料の地質背景に関連すると考えられる、堆積物試料の熱ルミネッセンスカラーイメージ(TLCI)と不純物濃度について調べた結果を報告する。

14th International Conference on Luminescence and Electron Spin Resonance Dating (LED 2014) Montreal (Canada) 2014

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使用済燃料直接処分に関する研究

国内
著者 タイトル(クリックで要旨) 発表先 発表年
畑中耕一郎、柴田雅博

7-5 直接処分

直接処分の対象となる使用済燃料の特徴を整理するとともに、直接処分に関する諸外国の状況を概観し、全体計画を踏まえたわが国での直接処分に関する研究開発の取り組みの現状について解説する。

日本原子力学会ホームページ 2014

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