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第4回 「原子力防災訓練の法的枠組み」(平成25年7月)

 当コーナーの第1回では、原子力災害に関する法令の概要を紹介しましたが、今回は、原子力防災訓練がどのような法的枠組みで実施されているのか解説します。

1. 法的枠組みの概要

 原子力防災訓練は、図1に示すように、原子力災害対策特別措置法(原災法)、原災法の規定により字句を読み替えて適用される災害対策基本法(災対法)、及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)に基づき実施されています。

 

図1 原子力防災訓練に係る主な法律

 災対法第48条では、災害予防責任者(指定行政機関の長、地方公共団体の長、指定公共機関、原子力事業者等)にそれぞれ又は他の災害予防責任者と共同して防災訓練を実施すること、及び災害予防責任者の職員等が防災訓練に参加することを義務付けています。また、同条では、災害予防責任者が周辺住民に対して防災訓練への協力(参加、場所の提供など)を要求できること、及び防災訓練において都道府県公安委員会が道路の通行制限等をできることも定めています。

2. 災害予防責任者が共同で実施する原子力防災訓練

 災害予防責任者が共同で実施する原子力防災訓練は、原災法第13条に詳しい規定があり、国が主導的な役割を果たすために、内閣総理大臣が作成する計画に基づいて行います。この災害予防責任者が共同で実施する原子力防災訓練は、原子力総合防災訓練と呼ばれます。原子力総合防災訓練の計画は、中央防災会議が毎年度策定する総合防災訓練大綱を受けて、内閣官房原子力防災会議事務局と原子力規制委員会が共同して、指定行政機関、地方公共団体、原子力事業者等とも連携して毎年度作成します。なお、図2の点線で囲まれた訓練要綱及び訓練要領が原子力総合防災訓練の計画に相当するものです。また、総合防災訓練大綱は、原子力災害の他に、津波災害、地震災害、風水害等に対する国全体の防災訓練の実施方針を示したもので、この中には、「防災の日」の9月1日に総合防災訓練を実施すること等も記載されています。

図2 災害予防責任者が共同で実施する原子力防災訓練(原子力総合防災訓練)のフロー


3. 災害予防責任者がそれぞれ実施する原子力防災訓練


(1) 災害予防責任者がそれぞれ実施する訓練の全体像

 災害予防責任者がそれぞれ実施する原子力防災訓練は、図3に示すように、指定行政機関、地方公共団体、原子力事業者等がそれぞれ又は連携して実施します。

 

図3 災害予防責任者がそれぞれ実施する原子力防災訓練のフロー


 各訓練の対象者、頻度、内容等は、指定行政機関については防災業務計画に、地方公共団体については地域防災計画に、原子力事業者については原子力事業者防災業務計画にそれぞれ示されています。また、防災基本計画の原子力災害対策編には、原子力防災訓練において各実施主体が確認すべき共通的な項目や要件が整理されています。

(2) 原子力事業者がそれぞれ実施する原子力防災訓練

 災害予防責任者がそれぞれ実施する原子力防災訓練の中でも、特に、原子力事業者がそれぞれ実施する原子力防災訓練は、図4に示すように、その計画段階から原子力防災専門官及び原子力規制委員会の指導を受けます。



図4 原子力事業者がそれぞれ実施する原子力防災訓練の結果報告、改善等


 原子力事業者は原災法第13条の2の規定に基づき、訓練の実施結果を原子力規制委員会に報告するとともに、その要旨を公表し、報告を受けた原子力規制委員会は訓練の実施結果が原子力災害の防止に十分でないと認めるときは、内閣総理大臣の意見を聴いて、原子力事業者に防災訓練の改善措置を命令することができます。また、原子力事業者がこの改善措置命令に違反したときは、原災法に基づき、原子力事業者への罰則(1年以下の懲役、百万円以下の罰金)を、及び原子炉等規制法に基づき、原子力規制委員会は原子力事業者への原子炉設置許可の取り消し等、又は1年以内の原子炉の運転の停止等を命ずることができます。この原災法に基づく訓練結果の報告、改善措置命令、罰則、及び原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可の取り消し等の規定は、東日本大震災以降に新たに設けられたものです。  なお、原災法に規定する防災訓練以外にも、原子力事業者は原子炉等規制法に基づく保安規定の中で、保安教育としてシミュレータ訓練等を従前から行っています。
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