高速炉サイクル技術に関する研究開発 -高速炉サイクルの確立を目指して-

長期的エネルギー安全保障・地球環境問題に対応するため、次世代高速炉を中核とする核燃料サイクルの確立に向けた技術開発に取り組んでいます。大洗と東海に研究者・技術者を配し、大洗では様々な試験研究成果、国際協力を活用しながら、高速炉システムの設計、計算で原子炉の挙動を評価する研究、安全確保のためのルール作りなどを行うとともに、東海で行う次世代再処理・燃料製造に係る技術開発を含む事業全体の調整等も行っています。

液体ナトリウムを使う次世代高速炉の設計を行っています。

JSFR

様々な国と協力しながら、ナトリウムを使う次世代高速炉の安全確保のための世界標準のルール作りを進めています。

安全基準の階層

安全基準の階層

安全確保のためのルール作りを行っています。

集めて構成

計算機を使ってプラントの様々な動きをとらえる研究を行っています。

ナトリウムの温度分布

ナトリウムの温度分布

計算でプラントの様子を見る研究を行っています

さらに詳しく→ 高速炉・新型炉の研究開発

高速炉サイクル技術に関する研究開発 -高速炉安全性向上を目指した試験研究-

高速炉システムの安全性向上を目指し、炉心の著しい損傷を伴う過酷事故( シビアアクシデント) 等に関する試験研究に取り組んでいます。得られた成果は、国内外の高速炉開発に反映されます。

原子炉容器内の崩壊熱除去に関する試験研究

高速炉は全電源喪失時においても、ナトリウムが自然循環することによって炉心の崩壊熱を除去する設計になっています。
また、炉心の著しい損傷を伴うような過酷事故が発生した場合でも、炉心を安全に冷却できるように、多様な冷却方法を実証するために、国外の研究機関と協力しながら(注)試験研究を行っています。
(注) 仏国とのASTRID協力や第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)

原子炉容器内での自然循環挙動の可視化

炉心の安全性や構造材料の強度特性に関する試験研究

炉心の著しい損傷を伴う過酷事故が発生した場合の溶融炉心物質の挙動や炉心・構造材料の強度特性を把握するため、さまざまな試験研究を行っています。
これらの試験研究によって得られたデータは、国内外の高速炉の安全性の評価に反映されます。

X線による溶融炉心のナトリウム中挙動の可視化

ナトリウムの化学的活性度抑制に関する試験研究

ナトリウムの弱点である化学的活性度を抑制するため、ナノ粒子をナトリウム中に分散させたナノ流体に関する基礎的な試験研究を行っています。
得られた知見は、高速炉の安全性向上に反映されます。

反応抑制効果の実験例

原子炉容器外の事故事象に関する試験研究

過酷事故研究の一環として、事故が原子炉容器の外へ拡大した「炉外事象」を解明するための試験研究を行っています。
近年では、模擬粒子を使用したエアロゾル移行挙動試験を実施しています。今後はソースターム(注)に関する試験も計画しています。
(注)環境へ放出される放射性物質の種類と量

高速炉サイクル技術に関する研究開発 -高速実験炉「常陽」-

○高速炉実験炉「常陽」の研究開発目的

  • 日本初のナトリウム冷却高速炉として、炉心の特性やプラント設備の性能を確認
  • 安全性・経済性を向上するため開発を進めている燃料や材料の照射試験、革新技術の実証
  • 高速中性子の量が大きい特徴を活かした基礎基盤研究

○2003年には原子炉の性能を向上

高速中性子を用いた幅広い試験が実施可能な世界的にも貴重な施設

・原子炉熱出力:100MW(申請中)
・燃    料:ウラン・プルトニウム混合酸化物
・冷  却   材:ナトリウム

高速実験炉「常陽」

高速炉の安全性の実証

  • 全ての電源を失っても、ナトリウムの自然循環により原子炉を冷却できることを実証
  • MOX燃料性能把握・安全性向上に関する試験
    (燃料溶融試験、高燃焼度試験の実施)

高速炉の安全性の実証

使用済燃料の取出しに向けた研究開発

  • 世界最高レベルの高速中性子束により、効率良く照射試験を実施(3.0×1015 n/cm2・s)
  • 多種・多様な照射試験を実施できるキャプセル型照射装置(集合体)の開発

キャプセル型照射試験装置

キャプセル型照射試験装置

放射性廃棄物を減らすための研究

  • 高レベル放射性廃棄物に含まれる放射性核種のうち、長寿命のマイナーアクチノイド(MA)を高速炉の中で核変換する研究の実施
  • MAの一種であるアメリシウム(Am)とネプツニウム(Np)を含有する燃料の短時間の試験を実施
    今後、長期の照射試験を実施する計画

MA含有燃料の照射試験時の炉心構成

さらに詳しく→ 高速実験炉「常陽」

高速炉サイクル技術に関する研究開発 -照射後試験施設-

照射後試験施設では、高速実験炉「常陽」等で照射した様々な燃料や材料の照射後試験(PIE)により、燃料や材料の健全性を確認しています。また、PIE技術と経験を活用して、放射性廃棄物を減らすための研究開発も進めています。

照射後試験施設

放射性廃棄物を減らすための研究

  • 放射性廃棄物中に長期に残留する放射性核種を分離・核変換し、放射性廃棄物を減容・有害度を低減
  • 既存施設を用いたマイナーアクチノイド(MA)の小規模リサイクル試験(SmARTサイクル研究)を推進

MA-MOX燃料製造の開発

  • アメリシウム(Am)をMOX燃料に含有した燃料の製造に関する研究開発を実施
  • 遠隔操作によるMA含有燃料の技術的成立性を実証

照射試験、照射後試験

  • 短時間照射(10分,24時間)試験を実施
  • 照射後のMOX燃料の諸特性を調べ照射挙動評価を実施、MOX燃料の設計に反映
  • さらに長期の照射試験を実施する計画

Am含有MOX燃料の外観及び微細組織

Am含有MOX燃料の外観及び微細組織

SmARTサイクル研究

照射済み燃料から回収した少量のMAを用い、高速炉核燃料サイクルシステムの一貫性やMA-MOX燃料の照射挙動等を確認するSmARTサイクル研究を進めています。

さらに詳しく→ 燃料材料開発部

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

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