2010年4月13日、米国のクリントン国務長官とロシアのラブロフ外務大臣は、ワシントンにおいて、双方、34トンの兵器級プルトニウム処分を取り決めた「防衛目的にとって不要として指定されたプルトニウムの管理及び処分及び関連する協力に関する協定」(2000年9月1日署名、以下、「2000年協定」)の改正議定書に署名した。
主な改正内容は、
2000年協定では、ロシアは自国のVVER-1000型軽水炉4基を使用したプルトニウム処分を想定していたが、国際的な資金支援が得られず、2007年までに処分を開始するとしていた協定の履行が進まなかった。その後、米露両国は、2007年11月、共同声明により、米国の4億ドルを上限とする支援を条件に、残りはロシア負担で(米露は第3国の貢献も募るとしている)、ロシアの高速炉BN-600とBN-800を用いてプルトニウムを処分することとし、それを反映させた形で協定を改定することに合意した。その後、米露間の協定改正の交渉が行われ、ワシントンで開催された核セキュリティサミットの機会に、改正議定書の締結に至ったもの。議定書は、当面、1994年に発効した第1次戦略核兵器削減条約(START-I)で余剰となった34トンのプルトニウムのみを処分対象としている。
これに先立つ4月8日、オバマ米国大統領とメドヴェージェフロシア大統領は、プラハで行われた首脳会談において、START-Iの後継条約となる、「戦略的攻撃兵器の更なる削減及び制限の措置に関する米露間の条約」に署名した。その内容は、条約発効から7年経過後は、配備済みの大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、重爆撃機に搭載される核弾頭の数を1,550に制限するとともに、配備済みのICBM、SLBM、重爆撃機の数を700に制限する、未配備分も含めたこれら運搬手段の総数は800に制限するというもの。
新軍縮条約により核弾頭配備数はSTART-Iより大幅に削減されるが、余剰となった核弾頭解体とそれに伴い蓄積される兵器級プルトニウムの恒久的処分が合意されなければ、核テロの脅威とセキュリティコストは増大するのみ、このため、米露はいずれ更なる解体プルトニウム処分の必要性に迫られると予想されている。この意味で、今回の議定書とその着実な履行は、4月8日の新軍縮条約と対をなすオバマ政権の核廃絶政策の重要な一歩である。今後、米露はプルトニウム処分の実施要領の取決め、4億ドルの用途と支援時期協議、IAEAとモニタリング・インスペクションに関する協議などを開始することになる。
米国は、米国内の軽水炉で処分するため、サバンナリバーMOX燃料製造プラントを建設中(2016年運転開始)、一方、ロシアは高速炉BN-800の建設(2014年運転開始)とMOX燃料工場をクラスノヤルスクとデイミトロフグラードに建設する準備を進めている。今後、米露両国で遅くとも2018までの処分開始に向けての準備と協力が本格化する。
原子力機構は2000年よりロシアの研究所と高速炉でバイパックMOX燃料を用いた処分の共同研究を進めてきた。ロシアの解体プルトニウム処分は、このバイパック燃料(他国の高速炉はすべてペレット燃料)が使用される見通し。原子力機構は、今後も、日本製燃料被覆管を用いたバイパック燃料による安定的・確実な処分技術開発や兵器級プルトニウムのモニタリング・インスペクション技術開発などの分野で、日本・米国・ロシアの3カ国共同プロジェクトを計画し、米露解体プルトニウム処分の推進に協力してゆく予定。
2010年4月13日、米国のクリントン国務長官とロシアのラブロフ外務大臣は、ワシントンにおいて、双方、34トンの兵器級プルトニウム処分を取り決めた「防衛目的にとって不要として指定されたプルトニウムの管理及び処分及び関連する協力に関する協定」(2000年9月1日署名、以下、「2000年協定」)の改正議定書に署名した。
主な改正内容は、
2000年協定では、ロシアは自国のVVER-1000型軽水炉4基を使用したプルトニウム処分を想定していたが、国際的な資金支援が得られず、2007年までに処分を開始するとしていた協定の履行が進まなかった。その後、米露両国は、2007年11月、共同声明により、米国の4億ドルを上限とする支援を条件に、残りはロシア負担で(米露は第3国の貢献も募るとしている)、ロシアの高速炉BN-600とBN-800を用いてプルトニウムを処分することとし、それを反映させた形で協定を改定することに合意した。その後、米露間の協定改正の交渉が行われ、ワシントンで開催された核セキュリティサミットの機会に、改正議定書の締結に至ったもの。議定書は、当面、1994年に発効した第1次戦略核兵器削減条約(START-I)で余剰となった34トンのプルトニウムのみを処分対象としている。
これに先立つ4月8日、オバマ米国大統領とメドヴェージェフロシア大統領は、プラハで行われた首脳会談において、START-Iの後継条約となる、「戦略的攻撃兵器の更なる削減及び制限の措置に関する米露間の条約」に署名した。その内容は、条約発効から7年経過後は、配備済みの大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、重爆撃機に搭載される核弾頭の数を1,550に制限するとともに、配備済みのICBM、SLBM、重爆撃機の数を700に制限する、未配備分も含めたこれら運搬手段の総数は800に制限するというもの。
新軍縮条約により核弾頭配備数はSTART-Iより大幅に削減されるが、余剰となった核弾頭解体とそれに伴い蓄積される兵器級プルトニウムの恒久的処分が合意されなければ、核テロの脅威とセキュリティコストは増大するのみ、このため、米露はいずれ更なる解体プルトニウム処分の必要性に迫られると予想されている。この意味で、今回の議定書とその着実な履行は、4月8日の新軍縮条約と対をなすオバマ政権の核廃絶政策の重要な一歩である。今後、米露はプルトニウム処分の実施要領の取決め、4億ドルの用途と支援時期協議、IAEAとモニタリング・インスペクションに関する協議などを開始することになる。
米国は、米国内の軽水炉で処分するため、サバンナリバーMOX燃料製造プラントを建設中(2016年運転開始)、一方、ロシアは高速炉BN-800の建設(2014年運転開始)とMOX燃料工場をクラスノヤルスクとデイミトロフグラードに建設する準備を進めている。今後、米露両国で遅くとも2018までの処分開始に向けての準備と協力が本格化する。
原子力機構は2000年よりロシアの研究所と高速炉でバイパックMOX燃料を用いた処分の共同研究を進めてきた。ロシアの解体プルトニウム処分は、このバイパック燃料(他国の高速炉はすべてペレット燃料)が使用される見通し。原子力機構は、今後も、日本製燃料被覆管を用いたバイパック燃料による安定的・確実な処分技術開発や兵器級プルトニウムのモニタリング・インスペクション技術開発などの分野で、日本・米国・ロシアの3カ国共同プロジェクトを計画し、米露解体プルトニウム処分の推進に協力してゆく予定。
(参考)
2000年協定
第1次戦略兵器削減条約(START-I)
戦略攻撃能力削減に関する条約(モスクワ条約)
(情報ソース)
【解説:政策調査室 山村、技術開発支援室 舟田】